天才ゆえの苦悩
綾瀬川次郎は抜群の運動神経の持ち主で、水泳やテニス、体操と何をやっても短期間でトップに立つほどの才能にあふれている。それは同時に、努力を重ねてきた子供たちに挫折を味わわせることにもなっているが、これは綾瀬川自身にとって本意ではなく、これが彼のスポーツに打ち込む熱意を奪っている結果ともなっている。本作は、天才であるがゆえに苦悩する綾瀬川が、自分も仲間も楽しめるスポーツを求めて模索する様子が描かれており、誰よりも優れた資質を持つことが、必ずしも恵まれているわけではないことがたびたび主張されている。
期待をかける大人とコンプレックスに悩む子供たち
綾瀬川次郎の持つ天性の資質は、周囲の大人たちを虜(とりこ)にし、子供たちには強烈なコンプレックスを植え付けてしまう。綾瀬川は、よくも悪くも特別視される境遇に心底嫌気が差しており、自らの才能を世に知らしめるより、周囲と溶け込むことを望み、時には手を抜いてでもチームメイトに花を持たせようとしている。だが、彼の行動の大半が裏目に出てしまい、なかよくなったチームメイトたちも、そのほとんどが綾瀬川のもとを離れていく。
苦労の末に見つけた「野球」という居場所
スポーツを純粋に楽しめないことに悩んでいた綾瀬川次郎は、弱小野球チーム「足立バンビーズ」に入団したことで、仲間と共にプレーする楽しさを知る。しかし、監督からその才能を活かさないのはもったいないと、やがて日本代表チームのセレクションを勧められる。そしてチームの選抜テストや練習を経て、綾瀬川は野球の面白さを知り、他者の反感を買ってでも自らのレベルアップを目指しハングリー精神に目覚めていく。一方で、友人たちとなかよく野球をすることにも未練を残しており、ジレンマに苦しんでいる。
登場人物・キャラクター
綾瀬川 次郎 (あやせがわ じろう)
小学5年生の男子。あらゆるスポーツに関して、天才的な資質を秘めている。明るくまじめな性格ながら、周囲の様子を過度に気にしてしまう繊細な心の持ち主。家族がスポーツ全般に疎いことから、当初は自分の才能を自覚していなかったが、テニスや体操、水泳を通して、自分の才能が特別であることに気づく。友達と共にスポーツを楽しむことを望んでいるものの、その並外れた才能から大人たちには過剰な期待を寄せられ、チームメイトからはコンプレックスを抱かれ、厳しい目を向けられている。そんな境遇に心底うんざりしていたが、弱小野球チーム「足立バンビーズ」に入団し、監督やチームメイトから素直に頼られたことに喜びを感じ、やがて野球そのものに魅了されていく。しかし、綾瀬川次郎の才能を世の中に知ってほしいと考える監督から、U-12日本代表への参加を持ち掛けられ、再び自らの才能を巡るトラブルと向き合うことになる。
雛 大吾 (ひな だいご)
小学5年生の男子。関西の野球チーム「寝屋川ファイターズ」のキャッチャーとして活躍しており、チームメイトの巴円とバッテリーを組んでいる。努力家で上昇志向が強く、円と共にさらなる飛躍を遂げたいと考えている。U-12日本代表の入団テストで出会った綾瀬川次郎とバッテリーを組むことになり、即席ながらみごとなコンビネーションを見せた。これがきっかけとなり、綾瀬川と共に周囲から注目を浴びるようになるが、円がエースナンバーを奪われることを危惧し、綾瀬川の才能を理解しつつもつい反発している。
書誌情報
ダイヤモンドの功罪 7巻 集英社〈ヤングジャンプコミックス〉
第1巻
(2023-06-19発行、 978-4088927671)
第2巻
(2023-07-19発行、 978-4088927688)
第3巻
(2023-10-19発行、 978-4088928647)
第4巻
(2023-12-19発行、 978-4088930718)
第5巻
(2024-03-18発行、 978-4088932057)
第6巻
(2024-06-19発行、 978-4088932668)
第7巻
(2024-09-19発行、 978-4088933832)