ライブダンジョン!

ライブダンジョン!

dy冷凍の小説『ライブダンジョン!』のコミカライズ作品。突如、異世界に転移したゲーマーの青年、京谷努は、現実世界に帰還するためゲームの知識を活かしてダンジョンを攻略し始める。仲間との連携と、緻密な戦略で巨大なモンスターを倒していく努の姿を描く、ファンタジーバトルアクション。コミックスのカバー裏にはdy冷凍の書き下ろし小説が収録されている。「ドラドラドラゴンエイジ」で2018年4月から配信の作品。

正式名称
ライブダンジョン!
ふりがな
らいぶだんじょん
原作者
dy冷凍
作画
ジャンル
バトル
 
ファンタジー
レーベル
ドラゴンコミックスエイジ(KADOKAWA)
巻数
既刊13巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

ダンジョンへようこそ!

ゲーマーの青年、京谷努は、長年遊んできたMMORPG「ライブダンジョン!」がサービス終了を迎えることを知り、最後に、一人で五人のキャラクターを操作して、ゲームのダンジョンをクリアするという難行に挑戦する。無事にダンジョンをクリアした努であったが、そこで謎のメッセージを受け取り、異世界に転移してしまう。何が起きたのかもわからず、努はいきなりモンスターに殺されてしまう。死んだと思った努であったが、気づくと犬人の青年、ガルムに介抱されており、自分が死んでも蘇生魔法で生き返ることのできる「神のダンジョン」に来たことを知る。無一文で異世界に放り出されたという現状を把握した努は、唯一手元に残った黒杖を売ることを決意。杖を鑑定したエイミーの助言に従い、オークションに杖を出品したことで、莫大な資金を手にする。しかし、それが虫の探索者たちの手によって悪目立ちしたことで、努は孤立してダンジョンの攻略もできなくなってしまう。日本への帰還の手がかりがダンジョンにあると推測した努が、なんとかダンジョンの攻略をしたいと考えると、そこにガルムが手を差し伸べ、彼とエイミーが臨時に努に手を貸してくれることとなる。努はゲーム時代に培った知識を使い、「三種の役割」を検証。これによって不遇な境遇に置かれていたガルムは一線級の活躍を見せ、三人は破竹の勢いでダンジョンを攻略していく。

捏造記事

一刻も早く神のダンジョンの攻略を進めたいと考えていた京谷努であったが、三人は50階層のボスモンスター、シェルクラブを目前にして意見が割れていた。ガルムエイミーにとって現役時代に勝つことが叶わなかったシェルクラブは因縁の相手で、二人は及び腰だったのだ。特にエイミーにとってシェルクラブは、所属していた仲間との仲が決裂したトラウマそのもので、彼女は強硬にシェルクラブ討伐に反対する。しかし、努はシェルクラブ討伐用の作戦を立案し、二人を説得。エイミーも渋々、一度だけ戦うことを了承する。作戦は順調に進み、戦況は優位かと思われていたが、戦いの最中にも努とエイミーの意見が対立。エイミーはつい努を「幸運児」呼ばわりして、彼に失望される。だが、シェルクラブを無事に倒したことで、エイミーは自分の意見が間違っていたことと失言を謝罪する。かつてのトラウマから仲間に見捨てられることを極度に恐れたエイミーの謝罪は、泣きながらの大騒ぎとなり、その出来事は迷宮都市でちょっとした注目を集めることとなった。この一件以来、エイミーは努を気に入り、取材に来た新聞記者のミルルにも努のことを褒め称えて話すが、エイミーに心酔するミルルは、実は努を貶(おとし)めることを目的としていた。そして、先のエイミーが大泣きした出来事を「努がエイミーの弱みを握って脅迫している」と曲解して捏造(ねつぞう)記事を作り、迷宮都市に広めるのだった。

神竜人のギルド長

京谷努は捏造記事が出回ったことで、探索者だけではなく、街の人間からも嫌われて完全に孤立してしまう。ガルムがいち早く駆け付けたことで難を逃れたものの、エイミーは捏造記事に腹を立てて、新聞を発行しているソリット社に殴り込みに行って捕まってしまう。ギルドミルルの取材を許可したことを深く謝罪し、ギルド長のアブソリュート・カミーユが捕まったエイミーの代わりに、努の悪名を雪(そそ)ぐ手伝いをすることを約束する。一方の努はこの状況を変えるべく、現状最強のボスモンスター、火竜を倒し、それによって得られる名声で悪名を覆そうとカミーユに提案する。方針を固めた一行は準備を整え、神のダンジョンの攻略を開始。ユニークスキルを持つカミーユは卓越した力を持つが、それだけに周囲がカミーユに合わせて連携するのは難しく、努たちは連携を試行錯誤することとなる。その攻略中、出会ったミーシルは努に助けてもらったことで、記事がウソだったことを悟り、努と交友を育む。さらにほかのパーティーとの交流によって、努は当たり前と思っていたヒーラーの検証に思い至り、飛ぶヒールにバリエーションを作り出すことでカミーユとの連携の問題を解決することに成功。こうして準備万端整った一行は、火竜に戦いを挑む。

火竜の咆哮

神のダンジョンの60階層のボスモンスター、火竜は、その圧倒的な力で数々のパーティーを葬ってきた。ゲーム時代の知識を駆使すれば倒せると考える京谷努は、入念に準備を整えてやって来たが、開幕早々アクシデントが発生。アブソリュート・カミーユは竜に近しい特性を持つため、火竜との格の違いを明確に感じ、早々に戦意喪失してしまったのだ。攻撃の要のアタッカー不在で、戦うことを余儀なくされた努たちであったが、ガルムと努はみごとな連携でそれを乗り切る。目の前で奮闘する二人の姿を見てカミーユは奮起し、ユニークスキルを成長させることで、戦線に復帰。新たな力を得たカミーユに対し、ガルムも限界を超えて己の力を発揮し、三人は一人も死者を出さずに火竜を討伐するという快挙を成し遂げる。三人の活躍は神台を通して迷宮都市にも放映されており、それを見た民衆は予想外の結果に大喝采。努の汚名は返上され、ソリット社も努の要求を受け入れ、捏造記事を謝罪。事件の原因となったミルルの悪行を公開することで、彼女の野望を完全に潰(つい)えさせるのだった。エイミーもそんな努たちの活躍を見て、自分が火竜戦に参加できなかったことに落ち込みながらも、努からエイミー自身の強みを教えてもらったことで復調し、努のパーティーに復帰する。

役割指導

京谷努は復帰したエイミーと交わした約束を守るため、彼女を加えての再びの火竜討伐戦に挑む。今回はアブソリュート・カミーユと入れ替わる形でエイミーが参加したことで、周囲は戦力不足だろうと考えていたが、大方の予想に反して前回よりも圧倒的に早く火竜を討伐することに成功。これによって努の火竜討伐は幸運だけではないと証明されることとなり、彼らの戦いぶりを大手クランも注目し始める。今までの臨時パーティーは努の悪名を晴らすためのものだったが、これによって臨時パーティーは役割を果たしたと見なされ解散し、それぞれ元の仕事場に戻ることとなる。またカミーユは、努の提唱したアタッカータンクヒーラーの「三種の役割」を広めたいと考えており、これに迷宮都市のヒーラーの現状を嫌っていた努は快諾。努は一時的にギルド職員となり、大手クランを中心に三種の役割を講義する。そして努は大手クランに所属するヒーラーのステファニーユニスをそれぞれ弟子とする。しかしユニスは努を低レベルと見下し、努の言うことを全然聞かなかった。努はユニスに早々に見切りをつけ、ステファニーの教育に注力し、その結果、ユニスはとんでもない地雷ヒーラーとなってしまう。ユニスの問題行為を知ったクランリーダーのレオンはすぐさま努に謝罪。彼から事情を聞いた努は、渋々ユニスの再教育を引き受けるのだった。

弟子の成果

クラン「金色の調べ」に所属するユニスは実はクランリーダーを務めるレオンの妹で、レオンの妹であるという理由だけでヒーラーとして重宝されていた。ユニスにその事実は秘密にされていたが、彼女自身それを薄々感じており、実力でヒーラーの座を手に入れるためにも努に頭を下げて教えを乞う。ユニスが辛らつに接するのは努のみで、本来のユニスは人当りがよく、意外にもヒーラーとして得難い才能を秘めていた。一方、まじめに努から教わっているステファニーは着々と実力をつけ、ヒーラーとしての役割に前向きな気持ちを抱き始める。そしてステファニーは修行の総仕上げとして、努から火竜の討伐を課せられる。努の教えを自分の力に昇華したステファニーは強敵相手にも互角に立ち回り、トラブルにも対応して堂々とした戦いを展開。ささいなミスで全滅寸前まで追い詰められるも、ステファニーは土壇場でパーティーを立て直し、みごとに火竜を討伐する。このステファニーの活躍はヒーラーの役割を周囲に知らしめることにつながり、努はヒーラーの現状を変えるという目的を達成するのだった。そしてギルドより課せられていた「三種の役割」を教えるという仕事を達成した努は、次の段階に進むべく、自らのクランを立ち上げることを決意。パーティー解散に最後まで反対していたエイミーと、努に付いていきたいと考えていたガルムはいずれ努のクランに合流することを約束する。

関連作品

小説

本作『ライブダンジョン!』はdy冷凍の小説『ライブダンジョン!』を原作としている。原作もゲーマーの青年、京谷努がゲームに酷似した異世界に転移し、現実世界に帰還するため仲間たちとダンジョンの攻略を進めていくファンタジーバトルアクションとなっている。原作小説版はカドカワBOOKSから刊行され、キャラクターデザインはMika Pikazoが担当している。

登場人物・キャラクター

京谷 努 (きょうたに つとむ)

ゲーマーの青年。年齢は22歳。中肉中背で、黒い髪を短く切りそろえている。ネットゲーム「ライブダンジョン!」を7年間プレイし続けており、サービス終了間際、ダンジョンをクリアした際に謎のメッセージを受け取り、異世界に転移する。ゲーム時代最も長く愛用していたジョブ「白魔道士」となり、ゲーム時代の装備を持って転移するが、転移直後に100階層のボスに遭遇して即死する。その後、迷宮都市に死に戻りし、現状を把握。唯一、手元に残った黒杖を売りさばいて当面の資金を手にするが、運よく黒杖を手にしたことで「幸運児」という異名が付き、それが悪目立ちしたことで孤立してしまう。その状況を不憫に思ったガルムがギルドに掛け合い、ガルムとエイミーが臨時のパーティーメンバーとして合流し、彼らを率いて戦う。ゲーマー時代に培ったアタッカー、タンク、ヒーラーの「三種の役割」を提唱し、それを使うことで急速に神のダンジョンの攻略を進めていく。京谷努自身、ゲーマー時代も引く手あまたのヒーラーだっただけに、人間関係などトラブルに巻き込まれた経験も豊富。また日本への帰還を第一に考え、その手がかりを求めて神のダンジョンを攻略しているため、ダンジョン攻略以外のことに関してはドライな一面を覗かせる。一方でゲーム時代から攻略に関しては人一倍熱心で、スキルを練習したり、新たな戦法を考えたりすることには積極的。それだけに現状の「蘇生特化ヒーラー」は、パーティーに寄生しているのと変わらないと思っており、嫌っている。また攻略の楽しさを他人にも味わって欲しいと思っているため、ステファニーの教育には熱心に取り組んでいた。異世界に転移直後死んだことがトラウマとなっており、「死にたくない」という思いが強い。

ガルム

ギルドで働く犬人の青年。年齢は20歳。藍色の髪を肩まで伸ばしている。長身で容姿が整っているため、女性にモテるが、性格はかなり実直な堅物であるため、周囲の目を気にせずストイックな生き方をしている。孤児から探索者になったが、就いたジョブが「騎士」であるため、STRの低さから活躍できずにいた。ただそれでも戦い続ける姿は壮絶の一言で、血まみれになり、半狂乱になりながら戦う姿から「狂犬のガルム」の異名で呼ばれていた。またその性格から曲がったことが大嫌いで、かつては孤児に無法を働く犯罪者クランに殴り込みにいき、壊滅させた過去がある。現在はギルド職員となり、黒門の門番として働いているため、偶然、京谷努が死に戻りしたところに居合わす。それ以降、何かと努の世話を焼いており、幸運児騒動の際も真っ先に力を貸しに行っている。口数は多くないが面倒見がよく、誰とでも分け隔てなく接するが、同僚のエイミーとだけは仲が悪い。努から「三種の役割」を教わったことで、急速にタンクとしての役割を身につける。今まで不遇扱いされていたタンク職を復権させるチャンスと思っており、仲間のタンクに教育する際も、一番力を入れていた。2度目の火竜撃破後に、努との契約が終わりパーティーを解消されるが、後任の職員を育て次第、自分も努に合流するつもりでいる。

エイミー

ギルドで働く猫人の少女。年齢は18歳。白い髪をボブカットに整え、猫の耳と尻尾が生えている。明るく快活な性格をしており、老若男女問われずに好かれる人気者だが、同僚のガルムからは蛇蝎(だかつ)の如く嫌われている。希少な鑑定のスキルを持っているため、ギルドでは持ち込まれるアイテムの鑑定員として働いている。京谷努の持ち込んだ黒杖の鑑定を行い、その希少性からオークションに出すことを勧める。それによって黒杖は高く売れたが、努にいわれのない悪評が広まったため、それを補填するため一時的に彼のパーティーメンバーとなる。5年前に探索者となり、天性のセンスと持ち前の明るさ、恵まれた容姿からアイドル探索者として人気を集める。頭角を現してからは「乱舞のエイミー」の二つ名で呼ばれるようになるが、シェルクラブを倒せず頭打ちとなってしまう。エイミー自身に才能があり、向上心もあったが、周囲は次第にエイミーに付いていけなくなり、所属していたクランは内部崩壊。その時、仲間だった者に冷たい言葉を投げかけられたことがトラウマとなっており、パーティーやクランに対して否定的な感情を抱いている。しかし努たちとパーティーを組み、因縁のシェルクラブを打倒したことで、努のパーティーに愛着を感じるようになる。そのため、捏造記事が出回った際も一番腹を立て、ソリット社に単身殴り込みに行って捕まることとなった。捏造事件が解決後は、アブソリュート・カミーユと入れ替わる形で努のパーティーに復帰。努の2度目の火竜討伐戦に同行し、火竜討伐を成し遂げるが、これによって努の悪名が雪がれたと判断され、パーティーを解消される。パーティー解散には最後まで反対しており、後任のギルド職員が育ったあとは職員を辞めて努に合流するつもりでいる。

アブソリュート・カミーユ

ギルドでギルド長を務める神竜人の女性。年齢は32歳。赤い髪をストレートロングに伸ばし、赤い龍の鱗(うろこ)が体に生えている。豪快でさばさばした性格で、かつては名の知れたクランのリーダーを務めており、外のダンジョンをいくつも制覇し、迷宮都市に流れ着く。夫がいたが死別したため、夫に託されたギルドを切り盛りしている。ユニークスキル「龍化」を持つ。ミルルの京谷努への取材を許可するが、そのせいで捏造記事が出回ったため、努に謝罪して彼の悪名を雪ぐため火竜討伐に協力する。竜人の中でも特別な神竜人で、なおかつ歴戦の猛者であるため、その力で努の戦いを大きく助けるが、火竜討伐戦では同じ竜であるのが災いして火竜から格の違いを叩きつけられ、開戦直後に戦意喪失してしまう。その後、努たちの戦いぶりを見て奮起し、現役時代ですら成しえなかった龍化の完全制御を成し遂げて戦線に復帰して火竜を討伐する。努の悪名が払しょくされたのを機に通常業務に戻るが、努に「三種の役割」を広めて欲しいとお願いしたり、ギルドに勧誘したり、何かと気にかけている。

ミーシル

クラン「シルバービースト」を率いる人間の中年男性。無精ひげを生やした荒くれ者のような外見をしているが、面倒見がよくて良識人。探索者の稼ぎも孤児を救うための慈善事業に使っているため、クランメンバーからも慕われている。神のダンジョンで危機に陥っていたところ、京谷努たちに助けられる。当初は捏造記事のせいで努を警戒していたが、その後誤解が解けたことで彼を気に入る。努も何かと気にかけており、ミーシルが努の飛ぶヒールの価値にいち早く気づき、それを取り入れる際には、検証と引き換えに協力。クランメンバーのロレーナに飛ぶヒールを教えている。

レオン

クラン「金色の調べ」を率いる金狼人の青年。金髪の髪を刈り上げ、狼の尻尾と耳を生やしている。迷宮都市でも屈指の実力者の一人で、全身から自信をみなぎらせている。自分のAGL(素早さ)を2段階上げるユニークスキル「金色の加護(ゴールドブレス)」を持ち、その容姿と性格も相まって英雄的存在として祭り上げられている。絶滅寸前の金狼族であるため、子孫を多く残す義務があり、女性なら誰彼構わず口説いている。クランもレオンの恋人や妻で構成されるハーレムとなっており、周囲にいつも女性を侍(はべ)らせている。しかしその結果、クランリーダーとして人間関係に思いを悩ませる自業自得の結果になり、戦闘の際も女性たちがレオンを巡って勝手な行動をするせいでうまく戦えず、火竜を倒せず伸び悩んでいた。実は別の種族だがユニスとは実の兄妹。当初は別々に暮らしていたらしく、ユニスもそのことを知らずにレオンに一目惚れして金色の調べに入った。ユニスを溺愛しており、彼女を傷つけないため、自然な形でユニスが別の人に惚れるのを待っている。またユニスが京谷努に失礼な態度を取った際には土下座して謝罪し、ユニスにもう一度チャンスを与えて欲しいとお願いしている。

ユニス

クラン「金色の調べ」に所属する狐人の少女。金髪のショートカットで、狐の耳と大きな尻尾を生やしている。語尾に「なのです」と付けるしゃべり方をする。無邪気で明るい性格で、素の態度で人を魅了する天然の人たらし気質。クランでは一軍に属するヒーラーで、レオンやほかのクランメンバーからもかわいがられている。実はユニスは母親の血を色濃く継いだせいで種族が違うが、レオンとは実の兄妹。当初は色々あってレオンが兄と知らず、神台で見たレオンの姿に一目惚れして、クラン入りする。薄々自分が「レオンの妹」だから重宝されていることに気づいており、実力で一軍のヒーラーの座を手に入れたいと思っている。周囲からかわいがられてきたため、若干、自意識過剰になっており、レオンが褒めた京谷努に悪い意味で対抗心を抱き、彼には辛らつに接する。努と出会った当初も自分よりレベルが低い努を完全に見下し、徹頭徹尾彼をこき下ろした。努から「三種の役割」を教わる際も、彼の忠告を無視して見せかけの技ばかり練習したため、努から「地雷ヒーラー」呼ばわりされた。その後さすがに反省し、努に謝罪して一から教わり直したため、メキメキと実力を伸ばしていく。自意識が強い発言が目立つが、努の設置型ヒールをすぐさま習得したりと、ずば抜けたセンスを持っている。努を何かと意識しており、金色の調べにスカウトしたり、火竜討伐後真っ先に報告しに行ったりしている。

ルーク

クラン「アルドレットクロウ」を率いるハーフエルフの少年。深緑色の髪で、フード付きのローブを身にまとっている。子供っぽい見た目をしているが、長寿なエルフの血を引いているだけあり、年齢は20歳を超える。「召喚士」と呼ばれる魔石を使って、魔物を召喚する職業に就いている。ボスモンスターすら召喚することができるが、そのためにはボスの魔石が必要となるため、非常にコストパフォーマンスが悪いのが欠点。そのためクランを作り資金問題を解決しようとしたが、今度は大きくなるクランを運営するために手を取られているのが悩み。

ステファニー

クラン「アルドレットクロウ」に所属する人間の少女。桃色の髪をストレートロングに伸ばし、三角帽子をかぶっている。語尾に「ですわ」と付けるしゃべり方をする。着ているドレスは、現在手に入る物の中ではかなり高性能な自慢の一品だが、露出度が高いのを難点だと思っている。アルドレットクロウでの役割はヒーラー。生真面目でおとなしい性格をしており、現状の蘇生特化ヒーラー戦法も時代の流れだと仕方なく受け入れている。京谷努が提唱した「三種の役割」を学び、努からヒーラーの立ち回りを教わる。ユニスと違いまじめなため、努からも期待されており、スパルタ指導に根を上げながらも着々と実力を伸ばしていく。ヒーラーに求められる指揮官として高い適性があり、教育の総仕上げとして火竜戦ではヒーラー兼指揮官として活躍。パーティーメンバーが三人死亡し、全滅一歩手前まで追い込まれつつも、そこからパーティーを立て直して三人蘇生という離れ業をしつつ火竜を打ち倒した。これによって探索者たちから迷宮都市屈指のヒーラーとして認められるようになり、ステファニー自身のヒーラーとしての役割を前向きに受け入れられるようになる。努にアルドレットクロウへのスカウトを断られつつも、努から自分を超えるヒーラーになる可能性があると教えられ、その期待を込めて手書きの指南書を受け取っている。これによって努への好意がどんどん膨れ上がり、敬虔な信徒のように努を崇(あが)めはじめている。

ソーヴァ

クラン「アルドレットクロウ」に所属する人間の青年。赤い髪を長く伸ばし、前髪で右目が隠れるようにセットしている。多くの武器を使いこなすマルチウェポン使いで、アルドレットクロウではアタッカーとして活躍している。ふだんは強気な態度だが、有名なアタッカーの戦い方を模倣したり、高名なアタッカーに会うとガチガチに緊張したりと、ミーハーな部分がある。京谷努の唱えた「三種の役割」について、すぐにヒーラーの価値には気づいたが、タンクの役割については否定気味だった。ステファニーとは幼なじみの関係で、彼女からたびたび忠告を受けていたが、火竜戦でタンクを無視して独断専行したため、遂にステファニーから見捨てられて死亡する。その後、ステファニーに復活させてもらい、無事に火竜を倒したことで反省し、現在はかなり性格がおとなしくなっている。

アルマ

クラン「黒魔団」に所属する人間の女性。黒い髪を腰まで伸ばし、とんがり帽子をかぶっている。クラン内での役割は魔法を使ったアタッカー。京谷努から黒杖をオークションで買い取り、その実力を大きく伸ばして、クランメンバーたちと共に火竜の初討伐を成し遂げた。その際、討伐に成功したのは努のお陰と感謝し、彼に「幸運児」の異名を名づけた。もともと人気のあるクランであったうえに、火竜初討伐のインパクトは強く、探索者の中でもトップクラスの知名度を得ることとなったが、その後、異名が悪目立ちして努が孤立してしまったことには気まずい思いを抱いている。このため努からも隔意を持たれており、努が「三種の役割」を提唱した際もクランぐるみで不参加を貫いている。

クリスティア

クラン「迷宮制覇隊」を率いるダークエルフの女性。銀色の髪を長く伸ばし、つねに目を閉じている。ジョブは白魔道士。冷淡で無感情ながら礼儀正しく、思考は柔軟性がある。京谷努の「三種の役割」が有用と見ると、すぐさまそれを取り入れるように部下たちに指示をすると共に、努自身にも興味を持ち迷宮制覇隊にスカウトしようと考えている。

ブルーノ

迷宮都市で警備隊の隊長を務める男性。筋骨隆々とした大男だが、仕草や口調が女性っぽく、髪を長く伸ばして化粧をしている。体中の筋肉を大きく膨れ上がらせることで、VITを大きく上昇させるユニークスキル「肉体鎧(マッスルボディ)」を持ち、発動させた際のVIT評価はガルムすら超えるS+。熟練探索者の攻撃すらまったく効かない実力者で、その肉体の頑丈さを活かして犯罪者を取り締まっている。正義感の強い人物で、かつて荒れに荒れていた迷宮都市の状況が許せず、荒くれ者の探索者相手にも一歩も譲らず、警備隊として街の治安を守っている。エイミーが捏造記事に腹を立て、ソリット社に殴り込みをかけた際には、エイミーを無力化して捕まえた。

魔石換金所の店番 (ませきかんきんじょのみせばん)

魔石換金所で店番をしているドワーフの少女。褐色肌で、茶色の髪をショートカットに整えている。年齢は15歳。ドワーフなため非常に小柄な体型をしている。しかしその力はかなりパワフルで、小さな体で大きな魔石や木樽を運んでいる。金に汚く、ギルドより魔石を安く買い叩く時もあるが、珍しい魔石であればギルドより高く買い取ってくれる時もある。捏造記事が出回った際には京谷努に冷たく当たっていたが、ガルムに説得され、取引だけはしていた。その後、努たちが火竜を倒した際には手のひらを返して接し、その商魂の逞(たくま)しさから努はいっそ清々(すがすが)しさすら感じている。鍛冶場で働く祖父がおり、鍛冶のために強力な火の魔石が必要だったため、努から火竜の魔石をかなり色を付けて買い取っている。

森の薬屋の店主 (もりのくすりやのてんしゅ)

森の薬屋の店主を務めるエルフの老婆。穏やかな物腰で、いつも笑顔で接客している。長寿なエルフの老人なだけあり、かなりの知識と技術を持ち、薬の調合に関してはかなりのもの。値段は張るがほかの店の同じポーションよりも明らかに効果が高く、味も飲みやすいと評判。精神力回復用の青いポーションを買うため、京谷努もたびたび訪れている。蘇生特化ヒーラー戦法がメインとなってから何人も再起不能となったヒーラーを見てきたため、努のことを何かと気に掛けている。捏造記事で努の悪評が広まった際も、変わらず接していた。努たちが火竜戦に向かう際には取って置きのポーションを渡し、彼らの戦いを大きく手助けした。年寄りなだけ意外と抜け目がなく、火竜戦以降、ヒーラーが見直され青色ポーションの需要が増えた際には値を上げてちゃっかり儲(もう)けを得た。だが儲けたお礼に、努にだけは前の値段で売っている。

ミルル

新聞記者の狸人の女性。茶色の髪をボブカットに整え、大きな耳と尻尾が生えている。迷宮都市でも最大手の新聞社「ソリット社」に所属しており、快進撃を続ける京谷努たちの取材に訪れる。だが実はかなりのミーハーで、目当ては努とパーティーを組んでいたガルムとエイミーで、彼らに対してばかり取材していた。特にエイミーに対する執着は異常ともいえるレベルで、努が彼女に付きまとっていると一方的に邪推し、彼を陥れるための捏造記事を書いて新聞に掲載している。努たちが火竜討伐後、捏造が発覚してソリッド者の上司たちと共に謝罪するも、形だけの謝罪で全然反省しておらず、体を武器に編集長に取り入り、すぐに復帰して再び努を陥れるつもりでいた。しかし、それを見抜いていた努に逃げ道を塞がれ、エイミーに直に説得されたことでミルルの野望は完全に潰える。その後は、努とソリッド社の交渉によって、新聞に彼女の悪行がすべて掲載されてミルルの記者生命は断たれ、ミルルに協力していた編集長も平社員に降格している。それでもエイミーへの思いをあきらめきれず、探索者に転身。努と同じ白魔道士となり、成り上がってやろうと意気込むも、ミルルの悪名は「狡猾女」として探索者のあいだにも広がっていたため、虫の探索者に目を付けられる自業自得の末路を迎える。

シェルクラブ

神のダンジョンの50階層のボスモンスター。巨大なカニのモンスターで、岩石のような頑丈な甲羅を持つ。ゲームの「ライブダンジョン!」にも登場したボスモンスターで、ゲームでは51階層の浜辺に現れていた。頑丈さもさることながら、見た目に似合わずかなり機敏で、敵からある程度ダメージを受けると逃げ出し、隠れているあいだにダメージを回復するという特性を持つ。ゲーム時代は罠を張ることで、逃げるのを阻止することができたが、神のダンジョンには罠用のアイテムが存在しないため逃亡を阻止するのは困難。このためシェルクラブ討伐は非常に困難で、ここを突破できずしり込みする探索者も多い。現在はアタッカーの四人によって逃亡する前に一気に倒す方法が主流となっている。京谷努は逃亡箇所を3か所まで絞ったうえで、毒入りのエサを放置することで回復を阻止し、弱体化する方法を取ったことで突破に成功する。

火竜 (かりゅう)

神のダンジョンの60階層のボスモンスター。巨大なドラゴンで、口から強力な火の息を放って空を飛ぶ。ゲームの「ライブダンジョン!」にも登場したボスモンスター。迷宮都市では過去最強のボスモンスターといわれていたため、京谷努の黒杖でアルマが討伐成功した際には大きな騒ぎとなった。開幕に放つ火竜の咆哮(ほうこう)は、それ自体が強烈な初見殺しで、心が弱いものはこれを聞いただけで戦意喪失する。また、この咆哮は竜に近しい者ほど強烈に感じ、竜人であればアブソリュート・カミーユのようなふだんは気の強い者でも恐慌状態に陥ったりする。非常に強力なモンスターで、空を自在に飛びながら火を放つため、その討伐難易度は高い。弱点は額の水晶で、火竜はこの水晶から風の力を引き出し飛んでいるため、水晶を破壊することで飛行能力を封じることができる。努が「三種の役割」を利用して倒したことで、三種の役割は大きく注目されることとなる。

集団・組織

ギルド

迷宮都市に存在する組織。神のダンジョンに潜る探索者たちの互助組織で、探索者のためにステータスカードの作成や更新、パーティーの斡旋、魔石の買い取りなど幅広い業務を行っている。ギルド職員になる条件は非常に厳しく、ダンジョンをある程度潜っており、かつギルドの課した厳しい試験を突破し、面談の上決定される。そのためギルド職員には元一線級の探索者も数多く在籍しており、アウトローの多い探索者への抑止力となっている。

金色の調べ (こんじきのしらべ)

レオンが率いるクラン。ほとんどがレオンと婚姻関係のある女性で構成されたハーレムクランで、迷宮都市の中でもその知名度はかなり高い。ユニークスキルを持つレオンが英雄的活動をすることもあって人気はあるが、レオンを巡って女性同士の戦いが繰り広げられているのが特徴。特にレオンを回復させるヒーラーは嫉妬を買いやすく、内部で熾烈(しれつ)な争いがあるため、レオンの妹であるユニス以外ではヒーラーの役割を担うことすらできない。また、レオンと妻たちの様子は神台でも映されており、レオンをかばって女性が死亡したり、レオンに口移しで薬を飲ませたりと、やたらラブロマンス色があるが、観客たちからは見飽きられており、反応は若干冷ややか。またよくも悪くもレオンありきのクランであるため、回復や支援がレオンに偏るというバランスが悪い部分がある。しかし、それでも一線で活躍する確かな実力を持つクランで、努の提唱した「三種の役割」を取り入れた以降は火竜の討伐に成功している。

アルドレットクロウ

ルークが率いるクラン。さまざまな種族やジョブの探索者が所属した迷宮都市でも最大規模のクランで、現在はパーティーが20軍まで存在しており、状況に応じて臨機応変にパーティーを入れ替えて探索する。人材の豊富さを活かして臨機応変に対応できるのが強みで、京谷努の戦いぶりを見て、「三種の役割」が提唱される前に見様見真似でタンクを活用するなど、試行錯誤を積極的に行なっている。また、探索者以外の職業の者も数多く所属しており、鍛冶師によって装備を整えられたり、料理人によって食事を用意されたりと、福利厚生もかなりしっかりしている。一方で人数が多いがユニークスキル持ちはおらず、英雄的活躍をして目立つ人間がいないことから、迷宮都市の住人たちからの評価は「地味」。また努はアルドレットクロウの効率を求める姿勢を気に入りつつも、「蘇生特化ヒーラー」の生みの親という点に難を示している。

黒魔団 (こくまだん)

少数精鋭のクラン。アルマが京谷努の黒杖を買い取り、それをもって火竜の初討伐に成功したため、名実共に迷宮都市のトップクランに君臨している。クランリーダーがユニークスキル持ちなのもあり、住民からも人気のクランとなっている。一方、火竜討伐後は、ほかのクランが簡単には突破できないと判断し、攻略速度を緩めて取材やスポンサーからの支援で日銭を稼いでいる。「三種の役割」を取り入れるのにも消極的で、ギルドが主催する努の講義にも参加しなかった。

迷宮制覇隊 (めいきゅうせいはたい)

クリスティアが率いるクラン。迷宮都市のクランの中ではかなり毛色が違い、迷宮外での活動をメインにしている。魔物のスタンピードを防ぐため、外のダンジョンの魔物を定期的に間引いているが、その活動内容上、死が身近であるため、クランメンバーは総じて死に対する忌避感が強く、死んでも生き返れる神のダンジョンでの戦いに悪感情を抱いている。魔物を倒すことで人々の生活を守るのを使命としており、進んで危険な外のダンジョンに飛び込むため、住民や貴族たちからも信頼されている。

場所

神のダンジョン (かみのだんじょん)

神の管理するダンジョン。ゲームの「ライブダンジョン!」と似た構造をしている謎の迷宮で、迷宮都市の転移陣から入ることができる。迷宮の中は草原や浜辺など、さまざまな世界が広がっており、「黒門」に到達することで、次の階層に行くことができる。黒門のある場所はランダムで、誰か一人でも通ると消え去り、別の場所に出現する。一度行った階層であれば、転移の際に入り直すことができるが、未到達の階層に行くことはできない。迷宮を探索する者は「探索者」と呼ばれ、迷宮都市には名誉と富を求めて多くの者が探索者を生業としている。ダンジョンは神のダンジョン以外にも存在するが、神のダンジョンの最大の特徴は「神の恩賜」によって「死なない」ことで、たとえダンジョン内で死んだとしても、短時間であればヒーラーの蘇生魔法「レイズ」で蘇生することができる。またヒーラーの蘇生が間に合わなかったとしても、死んだ探索者は装備の中で最も価値あるものを持った状態で、ダンジョン外の黒門から放り出される。ただし神のダンジョンでは、「悪意をもって人を殺してはならない」という「神の規則」が存在し、これに反すると神の恩賜は奪われ二度とダンジョンに入れなくなる。探索者がダンジョンを攻略する様子は神台によって町中に配信されていることもあり、迷宮都市では娯楽としても人気で、一線で活躍する冒険者は新聞社による取材や、スポンサーからの支援によって多くの収入を得ることができる。

迷宮都市 (めいきゅうとし)

神のダンジョンの存在する街。神のダンジョンを探索することでもたらされる魔石と、その探索の様子を映し出す神台によって一大産業を築いており、探索者が花形職業として持てはやされている。街の周囲にはほかのダンジョンも存在するが、神のダンジョンの出現以降は、外のダンジョンを攻略する者は減少の一途をたどっている。そのためスタンピードがたびたび起きているが、迷宮都市には貴族が張り巡らした強力な防御結界があるため、ほとんど被害は出ていない。この防御結界は魔法による産物で、これが貴族の権威の象徴にもなっている。

その他キーワード

飛ぶヒール (とぶひーる)

京谷努の使う魔法の通称。白魔道士の代表的な回復魔法である「ヒール」は、迷宮都市の探索者から見ると射程が非常に短く、使い勝手が悪いが、努はゲームの「ライブダンジョン!」でもともとそうだったという認識があったため、遠距離に魔法を飛ばすことができる。その様を見て「飛ぶヒール」「飛ばすヒール」と呼ばれるようになる。なお、ヒールが代表的な魔法であるためその名前が採用されたが、ほかの支援および回復魔法も飛ばすことが可能。当初は努の唯一無二の技だったが、努が検証の結果、魔法への認識を改めて練習すれば誰でも身につけられる技とわかり、迷宮都市のヒーラーに広められていくこととなる。また認識の結果、さまざまな派生技が生まれており、飛ばす距離とスピードを上げる「弾丸型」や、魔法を特定の場所に設置する「設置型」などが編み出されている。今までの白魔道士の魔法の価値を一変させたが、一方で飛ばすゆえに敵に当たる危険性もあり、敵を回復したり支援したりする場合もある。そのため技術的難易度は高く、使いこなすには相応の訓練が必要。

龍化 (りゅうか)

アブソリュート・カミーユのユニークスキル。これを使うと体中の鱗が発光し、背中に翼が生え、龍の特徴が色濃く出た姿となる。この姿となると高速飛行が可能となるほか、LUK以外のステータスが軒並み1段階上昇する。ただし龍化すると龍の本能が強く出てしまうため、視野が狭まり、半ば暴走状態となってしまうデメリットが存在する。現在の龍化はこれでもかなり制御できている状態で、カミーユが若かった頃はもっと手が付けられなかったスキルだったとのこと。また強力な反面、消耗も激しく、使い続けていると気を失ってしまうデメリットが存在する。火竜との戦いでカミーユが壁を乗り越えたことでさらに成長し、自我を保ったままの状態で発動させることができるようになった。

ヒーラー

「三種の役割」の一つ。パーティーの回復を担う役割で、主に「白魔道士」や「祈禱師」のジョブがその役割を担う。現状の神のダンジョンでは、白魔道士はスキルを遠隔で発動させることができないため、隠れながらPTのサポートをしたり、回復したりすることがメインとなっている。ただし現在はポーションの性能が上がり、回復役としては若干力不足。また、ヒーラー系のジョブは神のダンジョン内でのみ、死者を復活させるスキルを習得するが、これもある程度近づいて使わなければならないため、ヒーラーの身を危険にさらし、場合によっては犠牲にすることもいとわずに復活させる「蘇生特化ヒーラー」戦法がメインとなっている。蘇生特化ヒーラーはアタッカーのような華々しい活躍はできず、蘇生のたびに死の苦しみを味わうため現状に不満を抱いている者が多く、中には心を壊してしまう者もいる。京谷努が三種の役割を公開し、飛ぶヒールや蘇生や回復によるヘイト管理を広めたことでヒーラー系ジョブの価値は一変し、迷宮都市では一線でも活躍できるジョブとして注目されるようになった。

タンク

「三種の役割」の一つ。仲間を守るため、敵のヘイト(敵意)を引きつける役割で、主に「騎士」「重騎士」などのVITが高く、ヘイトを集めるスキルを持つジョブがその役割を担う。現在の迷宮都市ではタンクの役割そのものが知られておらず、騎士や重騎士はSTRが低いため、一線で活躍できないジョブだと認識されている。このためタンク職は三種の役割によるヘイト管理に多大な期待を寄せている。

アタッカー

「三種の役割」の一つ。敵を攻撃する役割で、さらにアタッカーには「剣士」や「拳闘士」のように近接攻撃する者と、「弓術士」や「黒魔道士」のように遠距離攻撃する者が存在する。現在の迷宮都市では花形ジョブで、一線で活躍するアタッカーには固定のファンやスポンサーが付き、それだけで生活できるほどの収入を得ることができる。一方で現在の迷宮都市はアタッカーによるごり押し戦法がメインとなっているため、全体的に伸び悩んでいる。三種の役割においては、アタッカーはヘイトを取りやすいジョブであるため、タンクとの連携が大事だとされている。タンクと連携の取れないアタッカーは、ヒーラーの負担を増すため、結果的にパーティー全体を危機に陥らせる原因となる。そのためステファニーは火竜討伐戦で、独断専行するソーヴァを見捨てるという選択をすることで、パーティーの立て直しを図った。

ステータス

探索者の能力を表したもの。「STR(筋肉)」「DEX(器用さ)」「VIT(頑丈さ)」「AGI(敏捷性)」「MND(精神力)」「LUK(運)」の六つの項目と「ジョブ」「スキル」の欄が存在し、「ステータスカード」を参照することでそれらを確認することができる。ステータスの評価はAからDが存在し、さらにAよりも上にS評価が存在する。またステータスが同じ段階とされても、実際には細かな違いが存在し、それはA+やA-といった形で表記される。ステータスカードはギルドに10万ゴールド払うことで発行してもらうことができ、ジョブはカードが発行された際にランダムで決定する。一度決まったジョブは変更不可。ステータスカードの枠の色は、最高到達階層によって変わる。ステータスカードはただ単にステータスを確認するだけではなく、神のダンジョンにおいて「神の恩寵」と「神の規則」を適用するためにも重要な役割があり、ステータスカードを持たない者は神に人として見なされず、神の規則が適用されない。そのためステータスカードを持たない探索者は「モグリ」と呼ばれ、探索者がモグリを殺したとしても「神の規則」に反したとは見なされない。またステータスカードにはパーティーの結成にも使われるため、探索者にとってなくてはならないものとなっている。

ユニークスキル

特定の個人が持つ固有のスキル。ゲームの「ライブダンジョン!」には存在しない異世界独自のもので、「神に選ばれた者」だけが手に入れられるともいわれている。効果はそれぞれ違い、ステータスを底上げするものや、アブソリュート・カミーユの龍化のように龍の力を身に宿すものなど種類はさまざま。また基本的にユニークスキルは固有のものだが、血縁者であれば同じものを発現することもある。限られた者にしか発現しないため、探索者たちからは羨望の的となっており、ユニークスキルを持つ者を英雄的存在と見なす者も多い。ユニークスキルは使っていくことで成長し、新たな力に目覚めることがあり、カミーユの場合は火竜との戦いで壁を一つ乗り越えたことで龍化のスキルに変化が訪れている。

神台 (しんだい)

神のダンジョンに存在する機能の一つ。ゲームの「ライブダンジョン!」に存在した配信機能に近いもので、神のダンジョンを攻略する探索者の様子を映像として街中に配信することができる。映像や音声はダンジョン内に存在する「神の眼」と呼ばれるカメラのようなものを使って撮影され、リアルタイムで配信される。神台は街の中央にいくつも存在し、「一番台」「二番台」というように、数字が割り振られており、数字が若い番号ほど高い階層を攻略している探索者の姿が映される。また若い番号ほど大きな映像となり、注目度も大きくなる。神台は一般人だけではなく、同業の探索者や各企業、新聞社もチェックしているため、神台での活躍がそのまま探索者の人気につながる。企業の中には人が多く見ているという神台の性質を利用して、自社の商品を宣伝するため、探索者のスポンサーになる企業も存在する。人気がある探索者はスポンサー以外にも、大手クランからスカウトが来たりするため、探索者にとって人気は重要な要素となっている。そのため探索者は人気を得るために、あえて神台に人が多い時間帯に攻略を始めるなど時間調整をしたり、神台に自分の姿が映えるように映す方法を研究したりしている。また、神台で探索者の活躍を追いかける「迷宮マニア」と呼ばれる者たちも存在し、彼らは探索者やダンジョンについて深く考察しているため、迷宮都市でも屈指の情報通となっている。

モンスター

ダンジョンに生息する怪物。さまざまな種類が存在し、神のダンジョンでは特定の階層にのみ出現する巨大モンスターの「ボスモンスター」も存在する。また神のダンジョンのモンスターは、倒されたら粒子化して「魔石」を残して消滅する。魔石は魔力の宿った石で、さまざまな用途があるため、多くの探索者がこれを求めて神のダンジョンを探索する。一般的に強力なモンスターが落とす魔石ほど大きく、貴重なものとなっている。さらに神のダンジョンのモンスターは、運がよければ倒した際に宝箱を落とすことがあり、ここから貴重なアイテムを手に入れることもできる。ほかのダンジョンの場合、モンスターは粒子化せず、その死骸をそのまま素材として回収することができる。ただし神のダンジョンと違い、ほかのダンジョンでは死んだらそれまでなため、ほかのダンジョンでモンスターと命がけで戦う人間は少ない。しかしほかのダンジョンを放置しておくと、モンスターが無制限に増えてダンジョンからモンスターが氾濫する「スタンピード」が発生するため非常に危険とされる。氾濫したモンスターは近場の街を襲うが、迷宮都市は強力な防御結界で被害がほとんどないため、スタンピードへの危機感は薄い。

魔法 (まほう)

魔石を使って超常現象を引き起こす技。神の恩寵である「スキル」とは似て非なるもので、魔法の技術は貴族たちが独占し、一般市民は使うことはできない。魔石が必要だが、魔力を自在にあやつるためスキルに比べて汎用性が高く、強力な魔石があればそれだけその効果を底上げできるのが特徴。迷宮都市には強力な魔法によって防御結界が張り巡らされており、貴族たちの権威の象徴にもなっている。また一般市民は魔法を使うことはできないが、無色の魔石を原動力に動く「魔道具」が一般家庭にも普及している。

虫の探索者 (むしのたんさくしゃ)

一部の探索者に対する蔑称。縮めて単に「虫」とも呼ばれる。実力も向上心もなく、いつまでも神のダンジョンの低階層でくすぶり、チンピラまがいの犯罪や、新人探索者に詐欺まがいの取引を持ち掛けて潰したりと問題行動を繰り返している。そのため同業の探索者はもちろん、街の人間からも蔑みを込めて「虫の探索者」と呼ばれている。またギルドの定めたルールの裏をかいたりする者が多いため、虫の探索者の被害に遭った新人探索者は泣き寝入りすることがほとんど。なお、問題行動を起こすものの、神のダンジョンの禁忌に触れるため人殺しは行わない。

ライブダンジョン!

京谷努がプレイしていたMMORPG。神々が人の戦う姿を見るため、ヒマつぶしにダンジョンを作り出したという設定で、モンスターを倒してダンジョンを攻略していくのが主な楽しみ方となっている。またこのゲームならではの特色としてライブ配信機能が充実している点があり、熟練のプレイヤーは引く手あまたの存在となる。ただ現在は人気が下火となっており、プレイヤーの数は少なく、数か月後にサービス終了も決定されている。努はこのゲームをプレイしていたところ、謎のメッセージを受け取り、異世界に転移することとなった。ゲームの「ライブダンジョン!」は神のダンジョンに酷似しており、努はゲームで培ったプレイヤースキルと知識を駆使して、ダンジョンを攻略していく。一方でゲームにはなかったシステムや、細かな差異も存在し、努はそれらを検証しながら攻略を進めている。

クレジット

原作

dy冷凍

キャラクター原案

Mika Pikazo

書誌情報

ライブダンジョン! 13巻 KADOKAWA〈ドラゴンコミックスエイジ〉

第9巻

(2022-07-08発行、 978-4040745978)

第10巻

(2023-02-09発行、 978-4040748696)

第11巻

(2023-09-08発行、 978-4040751276)

第12巻

(2024-03-08発行、 978-4040753713)

第13巻

(2024-10-09発行、 978-4040756509)

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