見知らぬ三人に課せられた理不尽なゲーム
事務員の菊田藍、高校生の牧野健太、ネイルサロン店長の緒方睦美の三人は、たまたま同じ場所で事故に遭って死を自覚するが、次の瞬間、夢の中のような空間にいた。そこで、宙に浮かぶ謎の拡声器から、ある条件をクリアすれば寿命を与えるというゲームを持ち掛けられる。その条件とは「ほかの二人と毎日握手」することだった。三人は当初、その条件がそこまで難しいことではないと高をくくっていたが、年齢や性格、立場と何もかもが違う三人が毎日会って握手を交わすというのは、彼らの想像を遙かに超える困難なミッションだった。三人は自分たちの生活を維持しながら、自分とほかの二人の命を守るため、互いにさまざまな作戦を立てて実行に移すことになる。
三人を取り巻く複雑な人間関係
不可解なゲームに巻き込まれた三人は、やがてそれぞれの仕事や学校、プライベートにも変化が表れる。緒方睦美は、恋人の木村吉郎に振られてすっかり意気消沈し、仕事を失ったうえに一時は握手をやめて死を覚悟するほどだった。牧野健太は裕福な家庭に育ち、学校でも人気者として知られていたが、ゲーム好きが高じて部活を辞めた挙句、思いを寄せられていた莉緒に別れを告げたことで、同級生たちとのあいだに溝ができてしまう。あるトラウマを抱えるオカルト嫌いの菊田藍は、尊敬する姉貴分の栗山春子からさらに気遣われるようになるなど、ゲームによって大事な「存在」に気づくことになる。
ゲームを通じて結ばれる新しい絆
運命を共有することになった菊田藍、牧野健太、緒方睦美は、生きていくために互いの立場を超えて団結を強いられる。健太と睦美は、持ち前の明るさからすぐに打ち解けるが、学校や家庭など過去のトラブルによってトラウマを抱える藍は、健太と睦美がいい人だと理解しつつも、二人とかかわることにどうしても及び腰になっていた。しかしゲームに翻弄されながらも、毎日つながりを持たざるを得なくなり、年下の健太に負担をかけないように気遣い、恋人を失って憔悴(しょうすい)した睦美を励ますなど、人を大事に思う気持ちを学んで成長していく。
登場人物・キャラクター
菊田 藍 (きくた あい)
事務職として働く女性。年齢は25歳。黒髪をショートボブに整えている。ある日、横断歩道で信号無視したトラックに轢(ひ)かれて死亡する。いっしょに事故に巻き込まれた牧野健太、緒方睦美と共に臨死体験で、拡声器から神様のような存在の声が響き、「君たちの寿命はあと1秒で終了だけど、プラス60年あげてもいいよ」と提案され、その申し出を受け入れる。人付き合いが苦手でオカルト嫌いということもあり、当初は拡声器のことを白昼夢と考えており、完全に疑っていた。しかし、元の世界に戻ったあと、ギリギリまで握手をしなかったことで拡声器のある空間に引き戻されかけたため、あの出来事が事実であることを実感する。
牧野 健太 (まきの けんた)
高校2年生の男子。年齢は17歳。年齢の割に妙に大人びており、ひょうひょうとした雰囲気を漂わせている。ある日、菊田藍と緒方睦美と共に横断歩道で信号無視したトラックに轢(ひ)かれて死亡する。二人と共に臨死体験で、拡声器から神様のような存在の声が響き、「君たちの寿命はあと1秒で終了だけど、プラス60年あげてもいいよ」と提案され、その申し出を受け入れる。柔軟な思考の持ち主で、拡声器の声をすべて信じていないわけではない。そのため、拡声器に怯える緒方や、かたくなに拡声器のことを否定する菊田のあいだを取り持つことが多い。周囲にはあまり本心を見せないものの、藍や睦美と毎日握手するために長年打ち込んできた部活をこっそり辞めるなど、陰ながら尽力している。
書誌情報
テトテトテ 4巻 集英社〈マーガレットコミックス〉
第1巻
(2023-02-24発行、 978-4088447612)
第2巻
(2023-08-24発行、 978-4088448121)
第3巻
(2024-02-22発行、 978-4088448756)
第4巻
(2024-08-23発行、 978-4088430478)