概要・あらすじ
21世紀に発生した男性消失により人類社会が女性のみで構成されるようになった西暦3992年、この世で唯一の男性として生を受けた安斎・Y・姫は、男性であることが原因となり、幼なじみの伊集院・R・皇と破局に至る。時は流れ、男性である自分を嫌悪する姫と、裏切られたとの思いから男性を嫌悪する皇は、ともに特務研究局の局員となる。
登場人物・キャラクター
安斎・Y・姫 (あんざい・いあんと・ひめ)
男性消失後の西暦3992年、産婦人科医の両親(母さんとママ)のもと、世界で唯一の男性としてこの世に生を受ける。伊集院・R・皇の幼なじみで、互いに愛し合っていたが、男性としての肉体を嫌悪して苦悩する。中等部進級式の日に自分が男性であることを皇にカミング・アウトするが破局に至った。母さんの死を契機に、ママの実家である月小路家に引き取られ、小間使いのような扱いを受けながら育つ。 月小路家でともに過ごした月小路霧江とともに特務研究局に入局、地下にあるメディア管理部で勤務する。局内での呼び名は「モグラ」。いつか女性の肉体を持つことを切望している。
伊集院・R・皇 (いじゅういん・れべっか・こう)
安斎・Y・姫の幼なじみ。姫を愛し、出産の義務が適用される18歳になったら、姫の子供を産もうとしていたが、中等部進級式の日、姫から自分が男性だと告白され、愛する人間に裏切られたとの思いから、出産、男性、黒髪、黒い瞳など、姫の記憶にまつわる全てを嫌悪するようになる。福祉科学省地方支局の遺伝子学課に勤務していたが、優秀な成績により若干18歳で特務研究局に招致され、月小路霧江の下で局員として働くことになる。 中央(特務研究局)志望の動機は出産義務の免除である。
月小路 霧江 (つきこうじ きりえ)
安斎・Y・姫の遠い血縁者。月小路家を継ぐ者として、家が望むことを為すため、感情を殺して生きてきたが、片親の死により月小路家に引き取られた姫とともに過ごすうち、姫の身体の真実を知らないまま強く惹かれるようになる。特務研究局の局長として、女性消失回避のための男性製造プロジェクトの責任者を務める。 局員である姫、皇、ナナセ(ナナセ・N・マナミ)、カヤシマ(カヤシマ・M・イヅミ)の上長。男性を家畜として認識し、自分ならば男を完全に御してみせると断言する。
ビビエン・優里 (びびえん・ゆうり)
福祉科学省地方支局における伊集院・R・皇の恋人。皇に特務研究局局員が出産義務を免除されるという情報をもたらし、結果、中央(特務研究局)への赴任が決まった皇と別れることになる。自毛は黒髪だが、皇に嫌われないため、赤毛に染めていた。
ナナセ・N・マナミ
特務研究局の局員。計器のコンディションを把握できるほどの動物並みの聴力を有する。口は悪いが、表裏のない率直な性格で、子供好き。
カヤシマ・M・イヅミ
特務研究局の局員。K-10Rのオペレーションシステムをバージョンαにアップグレードするほどの優秀なエンジニアだったが、アップグレードをともに担当した妻が「K-10Rα」の完成を目前にして死亡、半ば自棄になって特務研究局に志願したという過去を持つ。
看守 (じぇいらー)
サキュバス予備軍(キャリア)隔離施設の責任者として、絶対的な権力をふるう。
集団・組織
特務研究局
『テンペスト』に登場する組織。月小路霧江を局長とする福祉科学省の下部組織。今後最短50年で発生する女性消失を回避するため、SRY遺伝子の持ち主である男性を新たに作り出すという特務を受け、ゲノム操作のエリートを招集した。局員は出産の義務を免除されるが、局からの要請により、男性を産むための着床実験被験体としてその身体を提供しなければならない。
場所
隔離施設
『テンペスト』に登場する施設。サキュバスを通過して生き残った者達を、サキュバス予備軍(キャリア)として隔離収容する。サキュバスにより命を落とすのは、18歳以上の人々であるため、施設に収容されるのは未成熟な子供たちである。施設内では、看守が絶対的な権限を有し、収容された子供たちは名前を剥奪され、番号で呼ばれている。
イベント・出来事
サキュバス
『テンペスト』に登場する現象。人間の男性が、特筆できる症状も予兆もないまま、眠ったまま死に至るという現象。男性消失の10日前、WHO(世界保健機構)が特例で汎発流行(パンデミック)認定したが、現象の対象となる男性が絶滅したため、その原因は定かではない。
その他キーワード
男性消失 (めーる・ろすと)
『テンペスト』に登場する現象。西暦2012年、全世界規模のサキュバスにより、世界中の男性が死滅した現象を指す。その原因は定かにされていないが、フォトンベルトと呼ばれる磁気嵐群の中を太陽系が通過する際、強力な磁力がヒトの持つY染色体を破損させ、その持ち主である男性が死に至ったとの説が教科書には採用されている。
女性消失 (ふぃめーる・ろすと)
『テンペスト』に登場する現象。女性の寿命が加速度的に減少していく現象で、特務研究局の対策チーム招集時から最短50年で全女性が消滅すると算出されている。卵子・卵核同士の結合による重卵受精が短命化の原因であり、回避するためにはSRY遺伝子の干渉、つまりSRY遺伝子の持ち主である男性を新たに作り出す必要がある。
K-10R (こうのとり)
『テンペスト』に登場する機械。卵子の採取から分娩まで出産に関する全てのプロセスをこなすナノテク分娩台。最新のバージョンは「K-10Rα」(コウノトリアルファ)となり、オペレーションシステムのプログラムを、カヤシマ・M・イヅミと死別したカヤシマの妻が担当した。