ディメンション W

ディメンション W

岩原裕二の代表作。舞台となるのは近未来の世界で、人々は「コイル」の恩恵でエネルギー問題から解放されていた。不正コイルを回収するのを生業としているマブチ・キョーマは、ある日、一人のアンドロイド少女、百合崎ミラと出会って彼女を相棒にするが、それは世界の謎にせまる大きなきっかけとなる。人間とアンドイドがバディとなって戦う、サイバテックバディアクションで、緻密に描かれたサイバーパンクな世界観が魅力となっている。スクウェア・エニックス「ヤングガンガン」2011年19号から2015年23号まで連載後、同社「月刊ビッグガンガン」2016年Vol.01から2019年Vol.07にかけて連載された作品。2016年1月から3月にかけてテレビアニメ版がTOKYO MX・BS11ほかで放送された。キャストはマブチ・キョーマを小野大輔、百合崎ミラを上田麗奈が演じている。

正式名称
ディメンション W
ふりがな
でぃめんしょん だぶりゅー
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
 
バトル
レーベル
ヤングガンガンコミックス(スクウェア・エニックス)
巻数
全16巻完結
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無尽蔵のエネルギーを生み出す「コイル」

時は西暦2072年、人類はX、Y、Zに続く第4の次元軸「W」を発見した。人類はかつてニコラ・テスラが提唱し、遂に実現に至らなかった「世界システム」を、Wに存在する無尽蔵のエネルギーを取り出すことに成功して、世界中のエネルギー問題を解決したことにより、実現することができた。世界システムは次元間電磁誘導装置「コイル」に、エネルギーを供給することで個人でも簡単に使用することができ、世界はコイルを中心に回っていると言っても過言ではなかった。しかし、エネルギー問題が解決した一方で、新たな格差社会が生まれ、貧困層には「不正コイル」が広まり、犯罪の温床となっていた。 

不正コイルを回収する回収屋

不正コイルは犯罪の温床となっているが、それを回収する仕事にも需要が生まれている。警察だけでは不正コイルの回収に手が回らないため、不正コイルの回収を生業とする者たちが生まれ、彼らは「回収屋」と呼ばれていた。回収屋はその性質上、アウトロー気質(かたぎ)の者が多い。特に主人公のマブチ・キョーマは、その中でもとびっきりの変人でコイルを嫌悪し、未(いま)だに旧時代の電化製品や車を愛用していた。不正コイルの回収には犯罪者と対峙(たいじ)することもあるが、マブチはその際も投てき用の鉄串を使う徹底ぶりで、コイルの使われた最新鋭の武器はいっさい使用しない。しかし、その仕事ぶりはベテランの域に達しており、任された仕事の成功率は非常に高い。 

謎の少女型アンドロイド

マブチ・キョーマはいつもどおり、不正コイルの回収を行っていたが、その仕事中に謎のアンドロイド娘、百合崎ミラと出会う。コイルの誕生によってロボット産業も台頭しており、高価ではあるものの、世界にはアンドロイドが出回り始めていた。しかし、アンドロイドはあくまでロボットであるため、プログラムで人間のように振る舞うことはあっても、人間とはまったく違う存在だった。だが、百合崎ミラは涙を流すなど、どう見ても人間の感情を持っているようにしか見えず、その構造は謎に包まれていた。マブチとミラは不正コイルを巡って、紆余(うよ)曲折の末にバディを組んで回収屋として働くこととなる。ミラの出自には世界システムの生みの親である百合崎士堂博士も深くかかわっており、ミラ自身も知らない過去を知ることが、世界の闇へとせまる道筋になっていた。 

登場人物・キャラクター

マブチ・キョーマ

「回収屋」を営む中年男性。黒髪に顎ひげを生やし、目つきの鋭いワイルドな風貌をしている。不正コイルの回収を生業としており、荒事にも慣れている。仕事に対してはプロ意識が高く、合理的に物事を考えて行動している。一方で偏執的とも言えるほどコイル嫌いで、家庭にまでコイルが普及した現代も専用の発電機を使い、旧世代の家電や車を未だに使い続けている。また、ほとんど流通しなくなったガソリンを仕事の報酬代わりにもらうほどの徹底ぶりで、唯一のコイル製品は仕事で使う携帯電話のみとなっている。不正コイルの回収にはトラブルがつきものだが、戦闘能力や判断能力が高いため、武器も投てき用の鉄串や体術だけで、反グレ集団程度なら一人で壊滅させることができる。不正コイルを追っている際に、たまたま現場に居合わせた百合崎ミラを同業者の横やりとカンちがいして激怒。時同じくして百合崎士堂がすべてのコイルを自爆させた事情を知らないマブチ・キョーマは、機能停止したミラを戦利品として持ち帰ってしまう。その後、ミラから百合崎一家失踪の真実を知り、嫌々ながらも彼女をバディにして回収屋を続けている。

百合崎 ミラ (ゆりざき みら)

謎の少女型アンドロイド。ライトグリーンの髪が特徴で、愛嬌のある顔立ちをした少女。頭のパーツと、お尻から生えた尻尾のようなプラグがなければ、人間と見分けがつかないほどに完成度が高い。アンドロイドにもかかわらず喜怒哀楽の感情表現が豊かで、当初マブチ・キョーマは中に人間が入った「全身義体」ではないかと疑ったほど。アンドロイドであるため驚異的な記憶力に加えて、生身の人間では太刀打ちできないほどの腕力を誇る。世界システムを構築した百合崎士堂を慕っており、妻娘を殺され、逃亡生活を送っている士堂を献身的に支えている。その正体は士堂の妻で、現代のアンドロイドのオリジナルを作った世界最高位のエンジニアの百合崎セイラが最後に開発したアンドロイド。百合崎ミラの起動実験中にセイラとその娘の苺は、士堂の研究成果を欲した上層部に殺され、ミラの中にはその犯行現場の一部始終が映像ログとして残っている。逃亡生活を続けていた士堂はなんらかの計画を画策していたようで、自分が死んだ場合はミラに「不正コイルを追え」という命令をあらかじめ植え付け、マブチに回収されたあとに士堂の死を悟ったミラは回収屋に志願し、マブチのバディとなる。

書誌情報

ディメンション W 全16巻 スクウェア・エニックス〈ヤングガンガンコミックス〉

第1巻

(2012-04-25発行、 978-4757535756)

第16巻

(2019-08-24発行、 978-4757562592)

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