見世物小屋に売られる双子の姉弟
主人公である双子の姉弟は、1歳にも満たない時に母に棄てられ、伯父夫婦の家に預けられる。「ミソ」「ショウユ」という身も蓋もない名称で呼ばれる二人は、伯父夫婦とその息子たちに虐待されて育つが、やがて体の痣(あざ)を忌み嫌われ、人買いに売られてしまう。そしてたどり着いたのが、東京浅草の見世物小屋であった。ヘルベルト汪(ウォン)という怪人が牛耳る見世物小屋はフリークスの集団だったが、双子はトミノ(姉)とカタン(弟)という新しい名前をもらい、仲間たちに暖かく受け入れられる。その後二人は、客が書いた文字を目隠しをしたトミノが当てる「千里眼」という芸で活躍していたが、ウォンの新たな野望により引き裂かれてしまう。
双子を巡る不思議な因縁を描く
ウォンは見世物小屋にいた手足が4本ずつの蛸娘、エリーゼを教祖に仕立て上げ、「黄金卍教」という宗教を立ち上げる。トミノはエリーゼの世話係に選ばれ浅草を離れることになった。一方のカタンは、火吹きの練習中に火傷を負ったことをきっかけに、東京から遥か彼方の孤島に送られ、人工的な異形にされそうになる。こうして双子は引き裂かれ、それぞれの地獄を生きることになる。物語の途中で、双子を棄てた母が、銀幕で活躍する幽霊役を得意とする女優、歌川唄子であること、父がウォンであることが判明するが、双子はその事実を知らない。本作は、強い絆で結ばれた双子を主人公に、彼らを巡る不思議な因縁を描いた物語である。
怪奇幻想的な世界観
本作の主な舞台は、大正末期から昭和初期頃の浅草である。映画館や浅草花屋敷、看板やのぼりといった当時の文化風俗が丁寧かつリアルに描かれている点が大きな特徴となっている。また、見世物小屋には手足が8本ある蛸娘のエリーゼ、小人症の青年、ケンちゃん、多毛症の熊童子、シンちゃんといった面々が登場し、怪しくも魅惑的な雰囲気を醸し出す。エロティックでグロテスクな描写も多く、代表作『少女椿』にも通じる怪奇幻想的な世界観を、作者独特の繊細な線画により耽美に描き出している。
登場人物・キャラクター
トミノ
二卵性双生児の姉。ドイツと中国のハーフで見世物小屋や芸能界を牛耳るウォンと映画女優の唄子の間に生まれる。生まれてまもなく伯父の家に預けられ、その後見世物小屋へとたどり着いた。おかっぱ頭が特徴で左脇腹に大きな痣がある。伯父の家では「ミソ」と呼ばれていたが、見世物小屋では、雑誌に載っていた「トミノ目薬」の広告を偶然目にした仲間が「トミノ」という名をつけた。弟のカタンとは心理的な共鳴や予知夢のような不思議なつながりがある。
カタン
二卵性双生児の弟。ドイツと中国のハーフで見世物小屋や芸能界を牛耳るウォンと映画女優の唄子の間に生まれる。右脇腹にある大きな痣が特徴。生まれてまもなく伯父の家に預けられ、その後見世物小屋へと売られた。伯父の家では「ショウユ」と呼ばれていたが、見世物小屋では、雑誌に載っていた「トミノ目薬」の広告を偶然目にした仲間が、目薬の製造会社が「化丹」だったことから「カタン」という名をつけた。姉のトミノとは心理的な共鳴や予知夢のような不思議なつながりがある。
書誌情報
トミノの地獄 全4巻 KADOKAWA〈ビームコミックス〉
第1巻
(2014-11-25発行、978-4047300484)
第2巻
(2016-05-25発行、978-4047309487)
第3巻
(2017-04-24発行、978-4047345980)
第4巻
(2019-02-12発行、978-4047355347)







