ダメ人間の漫画家がトラ猫に転生
漫画家の高畑寿々男は仕事中にアルコールを飲み、なけなしの生活費もパチンコに費やすなど、筋金入りのクズ男。自らの才能を過信しているが、漫画家としてもパッとしない。ある日、寿々男はパチンコで大勝するものの、帰宅途中に歩道橋から転落して命を落としてしまう。しかし、あの世の裁判長は、寿々男の身の程知らずのポジティブクズぶりに呆れ、「家族の本当の心」「自身の本当の心」を見つめ直すことをうながす。そして、1年の執行猶予期間中に家族と共に暮らすため、寿々男はオスのトラ猫の体を与えられる。猫の「トラさん」として転生を果たした寿々男は高畑家の飼い猫となり、三人での生活をとおして自分自身と家族の関係に思いを馳せる。
トラさんとしての新しい生活
猫の「トラさん」に転生した高畑寿々男は、突然死んでしまったため、妻の高畑奈津子と娘の高畑実優を心配していたが、二人は寿々男の死の悲しみを乗り越え、たくましく日々を過ごしていることに安堵する。そんな中、奈津子のおなかに二人目の子供がいることが発覚し、トラさんは一番大事な時に自分がそばにいられないことに悔恨の念を抱く。その一方で、遺作となった漫画「せきららくん」が実写映画化され、奈津子に高額の印税が入り、二人目の子供も無事出産したことで、初めて自分が彼女たちの役に立ったことを実感する。そして、もう自分がいなくても高畑家は幸せになれることに喜びと寂しさを覚えつつ、残された時間を大切に家族や知り合った猫たちとの触れ合いを深めていく。
トラさんに課せられた新たなる役割
家族と共に1年の時を過ごしたトラさんは、高畑寿々男として生まれ変わりを司る関所に戻り、再会した裁判官に対して家族と再会させてくれたことに感謝の言葉を伝える。裁判官もまた、家族や仲間の猫に惜しみない愛情を注いだトラさんを高く評価し、再び猫として現世で暮らせるようにする代わりに、トラさんと同じように動物に転生した人間たちのアドバイザーになってほしいと依頼する。そして半年後、トラさんに再転生した寿々男は、高畑奈津子や高畑実優と再会し、長男の高畑寿喜斗の誕生を喜びつつ、娘のためにセキセイインコに転生した「ユーちゃん」や、恋した男性の気持ちを知るために犬に転生した「からあげ」と出会い、先輩として彼女たちの心に寄り添う。
登場人物・キャラクター
トラさん
オスのトラ猫。かつては「高畑寿々男」という名前の漫画家で、年齢は38歳。明るく優しい性格ながらも、お調子者で他人に甘えがちなところがあり、妻の高畑奈津子に迷惑ばかりかけていた。ある日、歩道橋の上から落ちて死亡したが、魂の関所で「裁判官」を名乗る男性から生前の行いを咎められ、猫の姿に転生して1年の執行猶予期間中に家族と共に暮らすことを命じられる。人間の頃の記憶はそのままで、猫とも会話することができる。ただし言葉を話せないため、人間と直接意思を交わすことはできない。「トラさん」と名付けられ、高畑家に住むようになってからもクズ男だった頃と性格は変わっていないが、奈津子や娘の高畑実優、ホワイテストやガブといった転生後に知り合った猫との交流を経て、人間も猫も絆こそが幸福につながることを実感する。また、遺作となった漫画「せきららくん」は、寿々男の死後に爆発的にヒットし、実写映画化されるほどの注目を浴びることとなる。寿々男の小4の娘・高畑実優は、ひそかに寿々男の漫画のファン。
高畑 奈津子 (たかはた なつこ)
高畑寿々男の妻。年齢は34歳。寿々男とは対照的にまじめな性格のしっかり者で、ふだんはパートとして働いている。ルーズな性格の寿々男の代わりに、編集部との電話対応も担当している。寿々男のだらしなさには辟易しているものの、彼の優しい性格や家族思いな一面に好感を抱いている。寿々男が不慮の事故で命を落とすが、葬式や日常生活では気丈に振る舞っていた。そんなある日、娘の高畑実優がトラさんを拾ってくる。当初は、二人分になった食費がまた一人分増えるなどと飼うことに反対し、実優が自分の食事を半分あげると言っても首を縦に振れずにいた。しかし、「パパがいなくなった事を『食費が二人分になった』なんてうそでも言っちゃダメ!」と続けた実優の言葉にハッとして飼うことを許可し、高畑奈津子自身もすぐにトラさんを気に入るようになる。のちに体調に不調をきたすが、その原因が妊娠であることが判明する。
書誌情報
トラさん 全3巻 集英社〈マーガレットコミックス〉
第1巻
(2014-12-25発行、 978-4088453248)
第2巻
(2017-02-24発行、 978-4088456317)
第3巻
(2019-01-25発行、 978-4088441603)