概要・あらすじ
手と言葉を持ったイヌ族の世界。田舎育ちのシバは剣士になることを夢見て都に向かった。その途中、軍族に追われて死んだスパイから機密書類を託され、反聖(政)府組織ゲリケンのピッチーたちと知り合う。彼らを通して、イヌ族ではないヒトと出合うシバ。たどりついた都で機密書類を運んだ功績から剣士になれたものの、軍族から追われ、なぜか貴族からも追われる身となった。
ゲリケンの掃討作戦からピッチーを救出する際、神殿に迷い込み、神の存在を知る。シバはヒトとともに、貴族と軍族、商民の不正を暴くためにシリウスの双ツ星として立ち上がった。ところが、それをネコに利用され、ついに神殿が破壊された。
登場人物・キャラクター
シバ
剣士になることを夢見て田舎から都会に出てきた若イヌ。全身が黒で、目と鼻が大きく、頬の毛が立っている。尾は白く巻いている。旅の途中で軍族に追われて、瀕死の貴族の密偵から密書を預かる。ゲリケンのピッチーと不思議なヒトに出会い、一緒に都へ向かう。密書をワワ卿のもとに届けた功績で剣士となる。 郊外のチンクシャの家に下宿する。だが、貴族のボルゾイ卿に裏切られ、軍族や商民たちと同様に戦争を望んでいることに悩む。都に到着後、別れていたピッチーを訪ねると法王の襲撃を受けていて、ピッチーたちと誤って神殿の中へ逃げ込み、神の存在を知る。都を脱出して子イヌのチビワンに匿われたが、追手の出現で反撃を決意。 ヒトと組んでシリウスの双ツ星と名乗り、兵器工場などを破壊した。今度はそれをネコに利用されて町は大混乱。その機にネコは世界征服を企てて神殿を襲撃。激戦の中、ヒトに導かれて神殿の奥に進み、神と会う。神から真実を知らされた後、イヌたちに新しい世界の到来を説き、啓蒙をしていく。 ヒトと同様に超能力に目覚めていく。ヒトとは一緒にいるだけで気持ちが安らぐ関係。
ヒト
ゲリケンが隠れ家にしていた廃墟に住み着いた謎の存在。全身に毛がなく鼻は低く尾がない。言葉を話せないが、シバには声が聞こえる。それは超能力の精神感応であった。イヌの両親に育てられたが、死別して仲間を探す旅をしていた。ゲリケンの隠れ家が政府に空爆されたためシバと都に向かう。 シバからは他のイヌの前に出るときは変装をするように言われたが、あまり守らない。器用な手を活かしてチンクシャの研究を手伝うようになる。この頃からシバとの会話が普通になり、他のイヌたちの心を読み始める。戦争になるとたくさんのイヌたちが死ぬという道理を説き、シバに影響を与えた。シバとともに戦争を防ぐためにシリウスの双ツ星として兵器工場などを破壊。 混乱の中で神への接触を試みる。神から真実を教えられた後、シバとともにイヌたちに新しい世界の到来を説き、啓蒙をしていく。超能力も念動力が使えるように発達した。正体は、神の遺伝子と合成された女性の遺伝子の賭け合わせで、神にイヌたちの相談役として作られた「息子」。
ピッチー
反政府組織ゲリケンのメンバー。全身白い毛の小型犬の少女。ベルトの左にナイフを差している。貴族の密書を狙う軍族に追われたシバを助け、ゲリケンの理念を説く。兄が神のことを詩った罪で首を刎ねられたことなどから、聖府が「神のお告げ」だと圧政を敷くのはでっちあげだと考えている。隠れ家が聖府に空爆されたためシバとともに都に出る。 だが、シバが貴族の飼犬である剣士になったため別れる。都のゲリケンの隠れ家に潜伏していた。再び聖府に襲撃され、シバとともに神殿に逃げ込んでしまう。なんとか郊外に脱出したものの、都での地下生活が祟って病気で倒れてしまう。チビワンから使われていない猟師の小屋を教えてもらい、そこで静養した。 シバとヒトに戦争をやめさせるために都へ向かうように進言。足手まといになるため、自分は小屋でシバの帰りを待つことにした。このとき、将来を誓う。神と会って戻ったシバとともに以前からの小屋で暮らしている。
コジロー
反聖府組織ゲリケンのメンバー。長身の猟犬で垂れ耳。頭の右側は黒、左側は白の二色で、右目はつぶれている。尾は細くまっすぐ。背中に長い刀を差している。攻撃的な性格ですぐに刀を抜こうとする。隠れ家が空爆されてピッチーとはぐれたが、都にやってきて商民ペイキンの用心棒になった。ボルゾイ卿に疑惑を質そうとしたシバと、商談に訪れていたペイキンに同行していて再会。 その後ピッチーと合流を果たす。都の隠れ家が襲撃されたとき、シバたちとともに神殿に逃げ込んだ。法王を倒そうと襲いかかったが、巨大神像の光線により塵と化した。聖府の襲撃のときにシバが居合わせたため、スパイではないかと疑っていた。
チンクシャ
都の郊外で暮らす工民。ブチの毛並みで脳天が禿げ、やや小柄な体格。錬金術師としてさまざまな研究・実験を行っていて、その研究費不足を埋めあわせるためにシバとヒトを下宿させる。しばしば実験に失敗して爆発事故を起こし、それが評判となって商民ペイキンにバクダン開発への協力を持ちかけられる。 巨額の援助に惹かれてバクダン開発に参加したが、イヌを大量に殺す兵器だと知り逃走。爆発事故で発見した、自宅地下に広がる有史以前の地下鉄遺構にシリウスの双ツ星とともに潜伏する。工場内部の情報をシリウスの双ツ星に提供した。後にピッチーらの暮らす郊外の小屋へ移った。
ブルチーフ
軍族の兵士。鉱夫の息子に生まれ、苦労して隊長職を手に入れた。垂れ耳の猟犬タイプで目の周りは黒。額中央にツギ痕がある。貴族の密書奪取の任務を与えられていたが、シバに密書を運ばれてしまい、その失敗のために隊長職を首になった。その恨みから町のゴロツキを金で雇って、シバの殺害を依頼した。
ワワ卿 (わわきょう)
気の弱い貴族。たいへん小柄で垂れ目のイヌ。密書を運んできたシバに、貴族階級の内情を語り、剣士に取り立てた。軍族の攻勢に耐えられるよう、商民ペイキンの提案に応じて、領地と城を担保に軍資金を借りることにした。だが、そのペイキンが軍族とつながっていることを知らされ愕然とする。
ボルゾイ卿 (ぼるぞいきょう)
軍族との戦いを推進している貴族。大柄で鼻は長く耳は短い。ワワ卿がシバに内情を軽々に明かしたことを糾弾し、独断でシバに刺客を放った。貴族階級を軍族から守るため、戦うことを他の貴族たちに呼びかけている。商民ペイキンを招き、準備を整えている。神殿崩壊後、新政府の国務大臣になる。
ブルーン
軍族の長官の一人。顔の真ん中にうすい色があり、頬肉が垂れていて、全身の毛は短く、がっしりした体型で手足が短い。葉巻を愛用している。貴族階級の解体を積極的に進めており、商民ペイキンから新兵器の提供を受ける予定だった。神殿崩壊後、新政府の総統に就任する。
ペイキン
商民。軍族と貴族の双方に兵器を売り込んでいる死の商民。豊かな毛並みで太め。垂れ目でいつも口元に薄笑いを浮かべている。貴族と軍族の双方に武器の売り込みと資金協力を持ちかけ、いがみ合わせている。商民仲間のチャウチャウが聖府に賄賂を贈って取り入っているのではと接近してきて、商談に加わりたいと申し出たが、検討することで別れた。 実は聖府の法王からの指示で両者の対立をあおっていた。バクダン開発などのためにチンクシャら錬金術師を集め、兵器工場を次々に建設し、開戦目前まで準備を整えた。だがシリウスの双ツ星に兵器工場を破壊され、貴族と軍族の双方から責任を問われ、破滅を自覚して錯乱。自ら館に火を放って死んだ。
法王 (ほうおう)
聖府のトップ。大柄で温厚そうな顔だちで、黒い大きな垂れ耳とがっしりした顎をしている。神の指示を受けて商民ペイキンを操り、貴族と軍族を戦わせようとしている。神の忠実な部下だったが、ネコに殺害された。
巨大神像 (きょだいしんぞう)
『ドッグワールド』に登場したロボット。神殿の奥深く法王だけが入れる神の間にいる、人頭獣体の巨大なロボット。動きはしなやかで素早い。シバとヒト、ピッチー、コジローが神殿に迷い込んだときに、法王を追って目撃。法王に襲いかかったコジローを額からの光線で塵にした。ネコの襲撃で警備用ロボットと戦い爆発。
チビワン
羊飼いに引き取られた捨てイヌで、左目から耳にかけてが黒い。都から逃亡してきたシバとヒト、ピッチーを匿った。使われていない猟師の小屋を提供したほか、食物なども提供。剣士であるシバに憧れ、巫女兼剣士になりたいと思っている。追手の襲撃騒動で都に出てボルゾイ卿の剣持ち小姓になる。 シバとヒトがシリウスの双ツ星だと気付き、ボルゾイ卿に密告しようか迷っているところをネコに襲われてしまう。危ういところをシバに助けられ、シバたちに合流。この頃からヒトの声が聞こえるようになる。
シリウスの双ツ星 (しりうすのふたつぼし)
シバとヒトが戦争を止めさせるために活動するときのコンビ名。次々にペイキンの兵器工場を破壊し、戦争の準備を大きく遅らせた。工場を警備する兵士たちとは剣士姿で戦い、襲撃後に「シリウスの双ツ星」と壁にサインを残した。排煙や廃液、悪臭などで兵器工場への反対運動があったので、一部から英雄視された。 だが、それをネコが利用。一般市民も対象に無差別殺人を始め、血文字で「シリウスの双ツ星」と書き残したため、都を挙げて行方を探し始めた。
ネコ
実在した伝説の動物。悪霊の使者で、イヌの誕生とともに世界から姿を消したと言われていた。イヌとほぼ同じ大きさ。大きな目と牙を持つ。イヌの心を操り、肉を食らう。神殿を制圧すればイヌの世界を支配できると考え、シリウスの双ツ星を利用して大挙して神殿に攻め込んだ。法王を殺し、警備用ロボットを操縦する神官の心を操って、警備用ロボットと巨大神像を戦わせた。 結果として神殿は崩壊してしまう。
神 (かみ)
巨大神像のさらに奥で暮らしていた老人。黒目のない垂れ目で鷲鼻、禿げ頭の男性。上半身裸でいる。7000年生きている、極端に老化が遅い不死族。全身銀色で目鼻のない巨大な人型ロボット、タイタンの中にいた。人類が気象コントロールに失敗して全滅する2000年前に生まれ、人類全滅後たった一人で300年暮らした後に、イヌの世界創世を決意。 遺伝子操作でイヌに頭脳と言葉、自由な指と直立する脚を与えた。イヌの世界はできたが、2000年を経て文明が停滞していることに気付き、階級制度などの必要悪を導入。ある段階で必要悪を取り除いて修正する予定だったが、事態が複雑化。生きることに疲れ、後はイヌに任せようとも考えたが、無責任すぎるために相談役としてヒトを生み出した。 こうした真実をシバとヒトに告げた後、タイタンでいずこかへ飛び去った。
場所
神殿 (しんでん)
聖府が置かれている都の中心。バベルの塔を思わせるらせん状の巨大な建物。法王を頂点に聖職者が働いている。中には先史時代のさまざまな髪の彫刻が安置されている。仏像を見たペイキンがヒトと似ていると気付いた。最奥の神の間は法王だけが入れる神との謁見の部屋で、巨大神像がその奥にいる。 神殿内部には先史時代の遺物が多くあり、警備用の戦闘ロボットや空爆用の重爆撃機などが隠されている。ネコの襲撃により巨大神像と警備ロボットが激突し、跡形もなく崩れ去った。崩落する最中に、全身銀色の巨大なロボット、タイタンが脱出していった。