あらすじ
第1巻
幼少時に『ドラえもん』に夢中になったむぎわらしんたろうは、少年の頃から漫画家になる事を夢見ていた。幾度も投稿を重ねた末に、念願の「藤子不二雄賞」を受賞した直後、むぎわらに「藤子プロでアシスタントをしないか」という声がかかる。こうしてあこがれの藤子・F・不二雄のアシスタントとなったむぎわらは、大好きな『ドラえもん』の背景を描ける事に、まるで夢のようだと喜びをかみしめていた。同時にむぎわらは、デビューを目指して描いた自らの作品にも、藤子から丁寧なアドバイスをもらうなど、その暖かな人柄にも惹かれていく。しかし、藤子は徐々に体調を崩す事が増え、藤子プロに出社せず、病院や自宅で原稿を描くようになる。そして、大長編作品の『ドラえもん のび太のねじ巻き都市冒険記』の連載中、藤子は帰らぬ人となってしまう。
関連作品
本作『ドラえもん物語 ~藤子・F・不二雄先生の背中~』の後半は、『ドラえもん』の大長編作品の一つで、実際に藤子・F・不二雄の遺作となった『ドラえもん のび太のねじ巻き都市冒険記』をめぐるエピソードが主体となっている。『ドラえもん のび太のねじ巻き都市冒険記』は全6回の雑誌連載が予定されていたが、藤子は第2回までを完成させた段階で逝去。しかし、自宅の机には、続きの原稿の下絵や構想が残されており、むぎわらしんたろうをはじめとする藤子プロのメンバーが制作を引き継いで、作品を完成させる事となった。
登場人物・キャラクター
むぎわら しんたろう
若手時代、藤子プロでアシスタントを務めていた男性漫画家。7歳の時に『ドラえもん』と出会い、藤子・F・不二雄にあこがれを持ちながら漫画家を目指すようになった。15歳から「藤子不二雄漫画賞」に投稿をはじめ、4年後に受賞を果たす。その直後、編集者から「藤子プロに入社してアシスタントにならないか」と声をかけられ、藤子のアシスタントとなった。藤子の仕事ぶりや優しい人柄に触れ、強く感銘を受ける。入社6年目にはチーフアシスタントとして制作を支えるようになった。『ドラえもん のび太のねじ巻き都市冒険記』の連載中に藤子の訃報に接し、遺族から藤子の遺した続きの下絵や構想を引き継ぐ。その後、重圧に耐えながらも、藤子プロのほかのスタッフと共に作品を完成させた。実在の人物、むぎわらしんたろうがモデル。
藤子・F・不二雄 (ふじこ えふ ふじお)
むぎわらしんたろうが幼少期からあこがれていた男性漫画家。本名は「藤本弘」で、周囲からは本名で呼ばれる事が多い。寡黙だが温厚な性格で、アシスタントにも丁寧な物腰で接する。アシスタントとして藤子プロに入社したむぎわらにも、彼の描いたオリジナル原稿に詳細なアドバイスをしたり、映画や演劇を紹介したりと、漫画家として成長できるよう親身になって世話をした。毎日決まった時間に藤子プロの事務所に出社して原稿を描いていたが、晩年には体調を崩し、事務所に現れない事が多くなる。大長編の『ドラえもん のび太のねじ巻き都市冒険記』の連載中、自宅で倒れ亡くなった。実在の人物、藤子・F・不二雄がモデル。
伊藤 善章 (いとう ぜんしょう)
藤子プロのマネージャーの中年男性。のちに同社の社長となる。藤子プロが発足したばかりの時から、制作現場を仕切っている。入社したばかりで頼りなかったむぎわらしんたろうにもテキパキと指示を出し、彼の成長の一助となった。大長編の『ドラえもん のび太のねじ巻き都市冒険記』が未完のまま藤子・F・不二雄が亡くなったあとには、制作を引き継いだむぎわらを𠮟咤激励して支える。実在の人物、伊藤善章がモデル。
場所
藤子プロ (ふじこぷろ)
藤子・F・不二雄による漫画制作プロダクション。もともと「藤子不二雄」は二人の漫画家の共同ペンネームだったが、1988年に二人はコンビを解消して独立し、藤子・F・不二雄が藤子プロを立ち上げた。当初は伊藤善章がマネージャーとなり、実務を仕切った。設立間もない時期、編集者を通じた勧誘により、「藤子不二雄漫画賞」を受賞したばかりのむぎわらしんたろうがアシスタントとして入社する。事務所は東京都新宿区にあり、藤子やスタッフ達が集まって『ドラえもん』などの原稿を制作していた。