ナチュン

ナチュン

脳の左半分を失った天才数学者・デュラム教授が作った映像、「デュラム・ヴィデオ」に隠された真実を知った青年・テルナリが、世界を揺るがす大きな事件に関わっていくさまを描く。近未来の沖縄を舞台とした海洋SF漫画。作者は文化人類学者・生態人類学者でもあり、大学院時代に行った沖縄でのフィールドワークの経験が、本作のもとになっている。講談社「アフタヌーン」2006年8月号から2010年4月号まで連載。

正式名称
ナチュン
ふりがな
なちゅん
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
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概要・あらすじ

2035年、稀代の天才数学者フランシス・デュラム教授は、不慮の事故によって脳の左半分を欠損してしまう。言語野を失った教授は、突然イルカの生態研究に転進、イルカの姿を撮影し、それを「数学論文」として学会に提出した。教授の奇行に学会は困惑し、失笑するだけであった。しかし、その映像「デュラム・ヴィデオ」を見た青年・テルナリはある啓示を受け取る。

それは、完璧な「人工知能」の造りかたであった。世界征服すら成し遂げられると確信したテルナリは、さらにイルカの研究を行うために沖縄の離島マケイ島に住み込むことに。やがて「デュラム・ヴィデオ」の秘密が明らかになるにつれ、テルナリは世界の真理に触れる大きな事件に関わっていくことになるのだった。

登場人物・キャラクター

石井 光成 (いしい てるなり)

28歳の大学院生。通称「テルナリ」。アメリカに留学中、デュラム・ヴィデオを見て人工知能の作り方を発見した。沖縄の離島マケイ島に住み込み、イルカの研究を行いつつ、ゲンのもとで漁師として働くことになる。最終的な目標は「世界征服」。目的の達成を第一に考える、自己中心的な性格の持ち主。

ドル子 (どるこ)

マケイ島に住む女性。耳は聞こえているが、言葉を話すことも、理解することもできない。ほとんどの人が本名を知らず、島のオバアたちからは「泥女」、テルナリからは「ドル子」と呼ばれている。漁師として生計を立てており、祖母とともに島のはずれで暮らしている。霊力の強い家系に生まれ、不思議な力を持つ。イルカたちとコミュニケーションをとることができ、テルナリの研究を快く思っていない。 ゲンには密かに思いを寄せている。実は本名は「みこと」で、この名で呼ばれると性的に興奮し、虚脱状態に陥ってしまう。

我那覇 元清 (がなは げんせい)

マケイ島の漁師。43歳。愛称は「ゲン」、「ゲンちゃん」。イルカの生態研究にやって来たテルナリを船に乗せ、漁師の仕事を教え込んでいく。粗暴かつ偏屈な性格で、テルに協力する際も、無理難題を押し付けた。ドル子に好意をもたれていることに気がついているが、彼女が自分の娘かもしれないと疑っていたため、その思いに答えられずにいた。

新城 かなえ (しんじょう かなえ)

ゲンが捕った魚を卸しているすし屋の妻。マケイ島出身の19歳。息子がいるが、実の子ではなく旦那の連れ子。中学時代にドル子の面倒を見させられており、彼女のことを嫌っている。魚を卸しに来たテルナリと出会い、親密になっていく。

フランシス・デュラム (ふらんしすでゅらむ)

フィールズ賞、ノーベル物理学賞の両方を受賞した天才数学者。2035年、42歳のとき交通事故で脳の左半分を欠損。数学界を引退、イルカの生態研究に転向し、泳ぐイルカの姿を撮影した映像(デュラム・ヴィデオ)を「数学論文」として提出した。その後、表舞台から姿を消し、世界中の海域に出没するようになる。敬虔なカトリックで、神の存在を実証しようとしていた。

ゼルダ・ブレイクスリー (ぜるだぶれいくすりー)

デュラム教授の教え子。37歳の女性。バチカンに協力し、デュラム教授のアイデアである「超知性」の誕生を実現させるべく、研究を行っている。デュラム教授と大学で出会い、彼に恋愛感情を抱いていた。デュラム・ヴィデオに反応した人間を把握しており、テルナリに接触する。

クルツ・ゼブコウスキー (くるつぜぶこうすきー)

ゼルダ・ブレイクスリーと行動をともにする男性。ロシア出身。元民間軍事企業の社員で、荒事に強い。

シモン・ゼフィアス (しもんぜふぃあす)

バチカンの枢機卿。ハイチ出身で、南米とブラックアフリカを基盤にし、アフリカ系初のバチカン国務長官まで登りつめた。バチカン政庁の実務と人事を取り仕切り、「黒い枢機卿」の異名を持つ。デュラム教授のアイデアを利用し、アフリカに神を顕現させようと目論む。

ミハイル・キビスティク (みはいるきびすてぃく)

数学者。デュラム教授の教え子で、ゼータ関数の最終解決を発見した天才。だが、法則を公表せず、絶対に解けない暗号システムを作り出し、ネットバンク「OZON」を立ち上げ世界一の大金持ちとなった。ゼルダ・ブレイクスリーに恋愛感情を抱いている。

デンカ

エラブ島の網元・糸満家の長男なので「デンカ」と呼ばれている。本名は不明。漁師を仕切り、過酷な深海追い込み漁を行っている。父は元ヤクザで本土や大陸の裏社会とも関係を持つ。ゼルダ・ブレイクスリーと通じ、自分のもとで働いていたテルナリを彼女に引き渡そうとした。

キマラ

ポリネシア系の女性。深海で強制労働をさせられていた。拉致されたテルナリと出会い、彼の子を孕む。

その他キーワード

デュラム・ヴィデオ (でゅらむゔぃでお)

脳の左半分を欠損したデュラム教授が撮影した映像。泳ぐイルカの姿が2時間50分31秒にわたって収められている。映像自体に意味はなく、サブリミナル効果で見たものの意識を変容させ、デュラム教授の思考をなぞるようになる。この映像に反応したものは革新的アイデアを得るが、ほとんどは精神が壊れるか死亡している。

人工鰓肺 (じんこうさいはい)

水中での呼吸を可能にする装置。世界の海上労働者に普及している。脇の下に差し込まれたバイパスを通して気管と接続される。鼻栓をし、口を閉じた状態で吸気し肺を膨らませると、水中から取り込んだ酸素が肺の中に流れ込むという構造。ただし、長時間連続で使用すると内蔵モーターの疲労とフィルターの汚れが問題となるため、定期的に水中から出る必要がある。

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