天上界の崩壊を防ぐため、世界を巡る歌士官を描く
本作の舞台は仙人と人間が住む天上界。なお、時は現代である。かつて五山(瀛州、崑崙、蓬莱、岱輿、員喬)があり、それぞれの山に人柱として封じられた、悪神の四凶(共工、饕餮、渾沌、窮奇)が、外界から国を隠し守護していた。しかしある時、四凶は逃げ出し、五山のうち岱輿と員喬が崩れ落ちてしまう。そして同時に、八百万の神も国外へ流出した。以来、国政を担う八人の仙人、八仙と神獣の天狗が代わって人柱となり、国を支えている。しかし、四凶を連れ戻さないかぎり、いずれ国は崩壊してしまう。そこで、神獣を捕らえ四凶を連れ戻す役目を担う「歌士官」という職が作られた。八仙は人柱として各地に縛り付けられており、外界と行き来できるのは、歌士官のみである。天上界は、水門により日本海海底にある竜宮と繫(つな)がっており、歌士官は逃げ出した神々を連れ戻すため、竜宮の赤門を通って世界中へ出かけていく。
歌士官の仕事と踏々歌
歌士官は「踏々歌」という呪術を使い、神や地霊を「斎」と呼ばれる数珠(じゅず)に封じ込める「潔斎」を行う。「踏々歌」は神々に奉納する儀式である。まずは、歩法で対象となる神を中心に据え、儀式の相手を明確にする。次に、唄による願い事を行い「斎」に宿り移ってもらうのである。歌士官は外界で神を集めるほか、彼らと主従関係を結び、調教・使役することもある。また、役に立つ神を調教師に預けた後、他の市民に貸し出すことも仕事のひとつ。調教された神々は、移動手段や農耕の補助、力仕事や子守まで、あらゆるところで人々の役に立っている。なお、能力が高い神やレアな神は、高値で取り引きが行われる。
徐々に明かされていく天上界の過去
主人公の一葉は孤児であり、神獣の天狗である白豪に育てられた。その白豪は、一葉が幼い頃、八仙の一人である藍采和に捕縛され、現在は国の人柱となっている。白豪を人柱から解放するには、四凶を連れ戻して再び各地に封じるしかない。一葉は白豪を救うため、藍采和のもとで修行をして歌士官となった。しかし、四凶を追ううちに、一葉は自身の出生の謎や、従神である滇紅の秘密を知ることになる。本作はファンタジーバトルをメインにしているが、登場人物や天上界の意外な過去が、徐々に明かされていく人間ドラマの要素も強い。
登場人物・キャラクター
一葉 (いちよう)
歌士官の職につく19歳の青年。首に生えた小さな羽を赤い布で隠している。八仙の一人で伝説の歌士、藍采和の唯一の弟子だが、地霊を連れ帰ったことがなく「史上最も出来そこないの歌士」と言われている。「踏々歌」では見事な舞を見せるが、唄は壊滅的な音痴である。そのせいか、弱い地霊では一葉の「踏々歌」に耐えられず、一瞬で消滅してしまう。滇紅、花果、流という中級神を従えている。
滇紅 (てんこう)
一葉の従神である中級の水神。過去の記憶はない。赤い髪と紫の瞳が特徴。ミクロネシア地方の遺跡に封印されていたが、初仕事で出かけた一葉に封印を解かれて主従関係を結んだ。普段は明るく元気でおっちょこちょいな性格。戦闘時は一葉の「踏々歌・解式」で別人のようになり、好戦的で高飛車になる。
花果 (かか)
一葉の従神である中級神。「竦斯」と呼ばれるレアな種族。通常は聡明な女仙の姿をしており、愛玩用として引く手あまたの優良種だが、一葉の調教のせいで幼い子供の姿をしている。ただし、戦闘時には頭の羽と鋭い爪を持つ大人の女性に変化する。
流 (りゅう)
一葉の従神である中級神。雷雨を呼び、雷をエサにする雷神。女神によってある島に閉じ込められていたが、一葉に救われた。普段は獣の姿をしており、一葉の頭上がお気に入り。人間になるときは男の子の姿になる。
白豪 (はくごう)
天狗と呼ばれる神獣。猫のような顔と巨体が特徴。崑崙の西王母の側近で守護の任にあたり、人柱として天上界を支える務めもはたしている。一葉の育ての親で、彼からは「しろ」と呼ばれる。
書誌情報
ハイガクラ 16巻 一迅社〈ZERO-SUMコミックス〉
第1巻
(2008-11-25発行、 978-4758053822)
第16巻
(2023-08-24発行、 978-4758039161)
ハイガクラ 新装版 6巻 一迅社〈ZERO-SUMコミックス〉
第1巻
(2024-02-29発行、 978-4758084741)
第2巻
(2024-02-29発行、 978-4758084758)
第3巻
(2024-03-26発行、 978-4758084826)
第4巻
(2024-03-26発行、 978-4758084833)
第5巻
(2024-04-23発行、 978-4758084970)
第6巻
(2024-04-23発行、 978-4758084987)