MIST GEARS BLAST

MIST GEARS BLAST

根ノ國の少女のナギは滅びに瀕した故郷を救うため、災いの霧に包まれた地上へ旅立つ。ひたむきな少女の意思が、絶望を希望に変えるファンタジーバトルアクション。本作『MIST GEARS BLAST』は「Project MIST GEARS」の一つで、スマートフォン向けゲーム『MIST GEARS』とストーリーが密接にリンクしている。「少年ジャンプ+」で2018年50号から2019年34号まで配信されていた作品。

正式名称
MIST GEARS BLAST
ふりがな
みすと ぎあ ぶらすと
原作者
田中 創
漫画
ジャンル
アクション
 
ファンタジー
関連商品
Amazon 楽天

世界観

本作『MIST GEARS BLAST』の舞台となるのは、厄災のに包まれた異形の怪物がはびこる世界。わずかな安全圏に押し込まれ、緩やかな滅びを迎えつつあった人々は、災いの霧を力に変える希望の鋼「ミストギア」を手に未曽有の厄災に抗う。本作はスマートフォン向けゲーム、漫画、小説を中心に複数のメディアで同時に楽しむ「Project MIST GEARS」の一環となっている。それぞれの作品は世界観を共通しつつも、コンテンツとしては独立しており、独自の展開をする。また「Project MIST GEARS」は複数の物語が「ギア」としてかみ合い、壮大な世界観を形成するのをコンセプトとしている。

あらすじ

第1巻

根ノ國の少女のナギは、病気がちだった母親と死別したのをきっかけに、故郷を出る決心を固める。周囲の反対を押し切り、行方不明になった父親を捜すため、そして存亡の危機に立たされた故郷を救うため、ナギは地上へと向かう。初めて見る地上に感動するのもつかの間、ナギはの毒に体を蝕まれ、命の危機を迎えてしまう。さらにミストエネミーにまで襲われるが、そこに駆けつけたアラシたちに救われるのだった。彼らに連れられて王都ブリザイエンに到着したことで、ナギは外の世界にも人間が生きていることを知って感動。さらに外の世界の現実と、霧に対抗するための希望を目にしたナギは、アラシに勧誘されてGEARSに入隊する。その後、ナギはミストギアロータス」を装備し、アラシと共に初任務に赴くが、アラシが道に迷ったことで偶然にも樹木の村「トロンコ村」へとたどり着く。そこで虫型のミストエネミーに襲われていた村を助けるのと同時に、村の近くを調査することでナギたちはGEARSの探し求める「ミスト源」への手がかりを手に入れるのだった。

第2巻

ナギたち第四小隊は、クラウディア・ヘイゼルバッハ・フォン・ヴァルクスより異常事態の調査を命じられる。北の大地「ポロ・ウパシ」へと向かったナギたちを待ち受けていたのは、奇妙なミストエネミーキメラだった。ナギの強力な一撃で一度は打ち倒すものの、驚異的な再生能力を持つキメラはすぐさま復元し、ナギをかばったアラシをその身に吸収してしまう。駆けつけたトルナード=ヴェイルの援護で危機を脱した第四小隊は、アラシを助けるために奔走。そしてトルナードとの特訓で新たな力を身につけたナギは、仲間たちと共にキメラとの再戦に挑む。

メディアミックス

小説

「Project MIST GEARS」の一環で、田中創原作による小説『MIST GEARS GHOST』が集英社より2018年10月29日に刊行されている。『MIST GEARS GHOST』には本作『MIST GEARS BLAST』にも登場しているクラウディア・ヘイゼルバッハ・フォン・ヴァルクス第七小隊の面々が登場しており、内容は本作の前日譚にあたる内容となっている。

スマートフォン向けゲーム

「Project MIST GEARS」の一環で、スマートフォン向けゲーム『MIST GEARS』が2018年11月26日から2019年7月31日まで配信されていた。内容は刻一刻と変化するフィールドを探索するエンバイロメントRPGで、仲間を率いてミストエネミーを倒すゲームとなっている。ゲームのストーリーは本作『MIST GEARS BLAST』に密接にリンクしており、第四小隊の活躍を描く本作に対して、ゲームは第七小隊の活躍が中心に描かれるストーリーとなっている。また2019年7月30日に、「Project MIST GEARS」の公式サイトで『MIST GEARS 最終章』が配信された。『MIST GEARS 最終章』はゲームのストーリーを軸に、漫画と小説のストーリーを織り込んだ本シリーズの集大成となる小説で、と人類の戦いの終止符が描かれている。

登場人物・キャラクター

ナギ

根ノ國出身で、桃色の髪を肩まで伸ばした少女。年齢は15歳。頭に大きなリボンを付け、袴のような形をした民族衣装を身にまとっている。行方不明の父親、イブキの行方と故郷を救う方法を探すため、相棒のコダチと共に地上へと旅立った。地上に出て早々、ミストエネミーに襲われて半死半生になっていたところ、アラシたちに救われる。その後、故郷を救うためにGEARSに所属し、アラシが隊長を務める第四小隊に配属される。小さい体に見合わず怪力の持ち主で、重すぎて誰も動かせなかったロータスを使いこなす。ロータスを使った際の一撃は主級ミストエネミーを葬り去るほどの威力を誇り、その戦闘能力の高さはGEARS内でも屈指で、期待の新星と注目されている。父親の言っていた「ぶち壊せない壁なんてない」という信念を受け継いでおり、一度決めたことにはまっすぐ突き進むひたむきな性格をしている。しかしその性格は、一歩まちがえれば無鉄砲と同義で、策もなしに飛び出して危険に陥ることも多かったが、次第に周囲と打ち解け、ナギ自身の欠点を仲間と協力し合うことで補うようになっていく。

アラシ

GEARSの第四小隊で隊長を務める青年。トップハットをかぶり、白のメッシュが混ざった黒い前髪を目元を隠すまで長く伸ばしている。ひょうひょうとした態度で周囲を煙に巻くうさんくさい性格をしている。意図的に自分をミステリアスに演出するのを楽しんでいる謎多き人物だが、どこか抜けた部分があり、方向音痴でよく任務の最中に迷い、行方不明となることも多い。最近はデュオ=グランディスに方向音痴対策として帽子に発信機を仕込まれている。所持している傘型のミストギアは雷をあやつる力を持ち、攻防一体で遠距離攻撃もできる優れもの。威力をしぼって精密射撃をすることも可能で、アラシ自身の射撃の腕も相まって非常に強力なミストギアとなっている。実は「アラシ」の名は偽名で、本名は「バラム・ヘイゼルバッハ・フォン・ヴァルクス」。クラウディア・ヘイゼルバッハ・フォン・ヴァルクスの兄でもある。ヴァルクス帝国国王の嫡子だが、王位継承権は放棄している。王室の密命に従って霧の翼を独自に追っており、その一環でロック・シンドラーと出会い、ひそかに協力関係にある。

デュオ=グランディス

GEARSの第四小隊で副隊長を務める青年。オレンジ色のホウキ頭で、ミストギアの知識に関してはGEARSでも随一のギアヲタク。まじめな性格で、適当な言動が目立つアラシをフォローしている。3年前、アラシの部下になったばかりの頃は、ミストギア技師の祖父が残した「無人航空機型ギア」を完成させることに注力し、周囲に心を開かず隊の中で孤立していた。しかし、デュオ=グランディス自身の作ったギアが暴走した事件でアラシと協力したのをきっかけに、彼を隊長として信頼するようになった。この経験は現在でもデュオの中では特別な思い出となっており、キメラの戦いでは、わずかな時間でアラシの真意を読み取り、アラシ不在の中、隊をまとめてキメラ打倒の作戦指揮を執る。キメラを倒してアラシの救出には成功するが、キメラとの戦闘で左腕を失い、戦闘員として引退を余儀なくされる。その後はギア技師としてGEARSに貢献する方針を固める。

ロゼ=スカーレット

GEARSの第四小隊に所属する女性。長く伸ばした黒い髪をおさげにし、肌を露出した軽装のファッションに身を包んでいる。細腕ながら、斧型のミストギアを振るうパワーファイターで、高い戦闘能力を誇る。毒舌でアラシを「迷子」、デュオ=グランディスを「オタク」と言ってよくからかっている。ふだんの厳しい物言いに隠れがちだが、情に厚く面倒見のいい性格で、新人のナギのことは気に掛けている。ミーハーで、同じ斧使いである第三小隊の隊長を務めるギュスターヴ=グレイシャーを尊敬し、彼を前にするとテンションが上がる。

コダチ

ナギの相棒の狼。手のひらにおさまる小さな体で、白いモコモコとした毛並みをしている。周囲からは子犬としか思われていないのが不満で、犬と言われると激怒する。ふだんはナギの肩あたりに乗り、行動を共にしている。小さいながら頭はよく、ナギの合図に従ってミストギアを発動したり、息の合った連携を見せる。また動物であるために霧の影響が少なく、短時間であればミストギアなしでも霧の中で活動ができる。

トルナード=ヴェイル

GEARSの第七小隊で副隊長を務める女性。銀色の髪を長く伸ばした怜悧な雰囲気を漂わせる剣士で、「エース・オブ・エース」の異名を持つGEARS最強の戦士。剣型のミストギア「晴嵐」を持つ。その突出した能力からチームでの活動が極端に苦手で、命令に従わないワンマンプレイが多いため、GEARS内ではその強さとは裏腹に評判はかなり悪い。現在は信頼できる仲間を得たことで心境に変化が訪れており、物腰も少し柔らかくなり、周囲の声にも耳を傾けるようになっている。キメラとの戦いで第四小隊に合流。アラシを助けたい彼らの心意気を汲み、ナギの特訓に付き合う。実は10年前、霧の翼に人体改造された被検体。その身にはミストコアが埋め込まれており、これが彼女の異常な強さの秘密で、その性質はいわば人型のミストエネミーともいうべき存在となっている。

クラウディア・ヘイゼルバッハ・フォン・ヴァルクス

ヴァルクス王国の第一王女。王族ながら霧の脅威に対抗するため、「ディア・クレール」という偽名を使ってGEARSに所属しており、第七小隊に配属されていた。現在はそれがバレて王室に連れ戻されているが、たびたびディアとして抜け出しており、アラシからは「おてんば娘」といわれている。ミストエネミーとの大規模な戦いで仲間たちを失い、失意に暮れていたがナギとの出会いで勇気づけられる。その後は、病に倒れた父王に代わり、王族としての役目を果たすべく、霧への大規模反抗作戦「オペレーション・ミストブレイク」を主導する。数少ないアラシの正体を知る人物の一人で、彼には表ざたにできない事情をたびたび相談している。

ブリット=ゼーヴァルト

GEARSの第五小隊で隊長を務める少年。GEARSの隊長の中でも最年少の13歳で、子供ながら非常にしっかりした性格の持ち主。GEARSの中では面倒見のいい人物として通っており、ほかの隊の人間からも慕われている。またGEARS内でも有数の情報通でもあり、新人のナギのことも知っていた。GEARSに不慣れなナギを見かけ、見ていられず彼女を案内し、各隊の特徴を彼女に教える。珍しい弦楽器型ミストギア「ラウドノーツ」を持ち、ラウドノーツによる指向性のある音波攻撃を得意とする。直接的な破壊力は低いものの、直撃すれば首領級エネミーでさえも脳神経を一時的に麻痺させ、行動不能に陥らせることができる。ラウドノーツをあやつるため、その対策にヘッドフォンをいつも付けている。

フリエレン・ド・アレヴィ

ミスト技術研究所に所属する研究者の男性。歯車をいくつも組み合わせた奇妙な眼鏡を掛けている。軍での階級は少佐。知的好奇心を満たすために行動するマッドサイエンティストで、盗聴や盗撮の常習犯。自身が気になる情報を手に入れると、空気を読まずに登場して己の要求をつきつける。それらの所業からGEARS内では「変態」と嫌われているが、能力そのものは有能で、霧対策で大きな貢献を果たしている。科学の発展のためなら手段を選ばないが、科学は「人類の役に立つために存在する」のを信念にしているため、霧の翼の所業には嫌悪をあらわにしている。

ベリヒト

霧の翼に所属する壮年の男性。瘦せ気味の体型で、左腕に金属製の義手を装着して、教団員の証である赤いローブを身にまとっている。霧の翼が行っている人体実験を主導している、人を人とも思わぬ冷酷非道な狂人。数多の人間を失敗作として処理しているが、良心の呵責はいっさいなく、己の悲願を叶えるためにすべてを犠牲にして突き進む。キメラを作り出した張本人で、北の大地「ポロ・ウパシ」ではキメラを野に放ち、そのデータを収集していた。

ロック・シンドラー

「赤の間者」のコードネームで呼ばれる謎の男性。黒い髪を長く伸ばして右目に眼帯を付け、着流しを羽織っている。10年前、霧の翼に所属していたが、彼らの非人道的な所業に嫌悪を覚え、当時彼らによる施術を受け、死にかけていたトルナード=ヴェイルをさらう。トルナードを助けるためにGEARSを頼り、彼女の助命と引き換えに、霧の翼の情報を渡すスパイとして働く契約を交わす。「赤の間者」はGEARSに付けられたコードネームで、表向きは霧の翼の一員として働きながら、その情報をアラシに流している。その正体はナギの父親「イブキ」その人。霧から故郷を救うべく旅立つが、霧の翼によって人体実験の材料にされ、その施術で過去の記憶をいっさい失う。現在は記憶を失いつつも「霧を晴らす」という妄執に取りつかれており、かつての優しげな性格は面影もなく、目的のためなら手段を選ばない冷血漢へと変わり果てている。GEARSを利用して霧の翼をつぶすつもりだったが、キメラに苦戦するGEARSを見て彼らに見切りをつける。その後は「ミスト源」の情報を彼らに流しつつ、霧を根絶すべく独自の行動を取り始める。

キメラ

霧の翼の実験によって誕生した新種のミストエネミー。いくつものミストエネミーの集合体ともいえる存在で、さまざまな動物の特徴を併せ持つ異様な姿をしている。食べた物を取り込む性質を持ち、食べれば食べるほど巨大で強力な存在へと変貌していく。また知能も高く、人語を解してしゃべることもできる。北の大地「ポロ・ウパシ」で人やミストエネミーを殺し、それらを吸収して大きく成長していた。人間の脳みそが好物で、彼が殺した人間は頭だけない惨殺死体となる。ナギたち第四小隊と戦い、一度は体を吹き飛ばされるが、すぐに再生。ナギをかばったアラシを取り込む。力に執着しており、力強い肉体を持つナギを狙っていたが、駆けつけたトルナード=ヴェイルに撃退され、撤退する。その後はナギを今度こそ取り組むべく、周囲のミストエネミーを食らい尽くし、山のような巨大な肉体を得て再戦するが、取り込んだはずのアラシの反撃と第四小隊の連携で、本体のミストコアを破壊されて死亡した。

集団・組織

GEARS (ぎあーず)

ヴァルクス王立軍が霧を晴らすことを目的に設立した調査隊。正式名称は「General Exceeding Armored Researchers」で、頭文字を取った「GEARS」を通称とする。隊は七つの小隊が存在し、それぞれの隊を率いる小隊長と全部隊を統括する総隊長で隊の上層部は構成されている。王室から全面的なバックアップを受けており、王都では唯一、戦闘用ミストギアの所有を許可されている。現在はクラウディア・ヘイゼルバッハ・フォン・ヴァルクスの主導のもと、霧の発生源である「ミスト源」をつき止め、それを塞ぐのを目的とする「オペレーション・ミストブレイク」を進行している。また隊には王室にかかわりが深い人物も所属しており、彼らは王室から密命を受け、危険なカルト集団「霧の翼」の調査も極秘で行っている。

第七小隊 (だいななしょうたい)

GEARSの部隊の一つ。マクシミリアン=グランドーが率いる問題児ばかりが集まった落ちこぼれ部隊で、GEARSの隊員たちからは「クズナナ」の悪名で呼ばれている。しかし最近は少しずつ改善し、誰もが手を焼く問題児であったトルナード=ヴェイルを手懐けたこともあり、少しずつ周囲の見る目が変わっている。スマートフォン向けゲーム『MIST GEARS』の主人公が所属する部隊で、同作ではこの部隊を中心にして話が展開される。

霧の翼 (きりのつばさ)

謎の宗教団体。霧を「神気」と呼び、その力を体に取り組むことで霧の克服をしようとしている。10年ほど前から王都周辺で見られるようになり、教団員はその証となる赤いローブを身にまとい、ミストギアなしで高濃度の霧の中を平然と佇む。霧に包まれた世界に絶望した人々のあいだで大きな注目を浴び、信者を増やし続けている。その実態は、人体実験を行っている非人道的な組織。ミストエネミーからミストコアを取り出し、それを人間に移植する実験を行っている。その実験の成功率はわずか5%ほどで、成功しても本来の記憶や人格が失われる狂気の代物となっている。頂点には教主と呼ばれる存在がおり、教主は霧の根源に深くかかわっているとされる。

場所

根ノ國 (ねのくに)

地下洞窟の奥深くに存在する国。煉獄の日以降、霧から逃れるために地下に向かった人たちが集まって作った国で、「地上に出るべからず」を国の唯一絶対の掟としている。国の人間は外に出ず、ほとんどの者が洞窟内で一生を送るため、現在の外界の知識はいっさいない。国の人々は独特の文化圏を構築しており、着物のような民族衣装を身にまとう。また「ヒカリダケ」という発光するキノコを洞窟の至る所に栽培しているため、洞窟内はつねに一定の明るさで包まれている。国民の主食はキノコで、キノコは洞窟内で栽培されているため、民は洞窟内部で完全に自給自足を行っている。霧に対して鉄壁の防御を誇っていたが、15年前に起きた地震によって外との壁に亀裂が生まれ、少しずつ霧が根ノ國へと漏れ始めている。このことは一部の人間以外には秘密にされているが、ナギの父親のイブキはそれを知り、故郷を救う術を探すために地上へと旅立った。

その他キーワード

(きり)

世界全体を覆いつくす謎の霧。霧を吸い込んだ者は肉が石のように硬くなり、やがて命を失う。また人間以外の動物が霧を吸うと、その肉体を変貌させて「ミストエネミー」へと変貌させる。70年前、のちに「煉獄の日」と呼ばれる日に突如現れ、世界中の人間に絶望を振りまいた。現在になっても霧は晴れることはなく、人類は根ノ國や王都ブリザイエンのような地形的に霧が入りにくい部分に、わずかに残っているだけとなっている。霧は物質を腐食する能力もあり、ガスマスクを付けていても、すぐさま腐食して使用者を死に至らしめる。現状、王都の者たちが作り上げたミストギアのみが、霧に対抗する唯一の手段になっているが、年々霧は濃度が濃くなっており、人類を緩やかに絶望へと導いている。また霧の翼の者たちは霧を「神気」と呼び、天からの恵みと称え、それを身に取り込むことで克服しようとしている。

ミストエネミー

霧によって変質した生物の総称。人間が霧を取り込むと死んでしまうが、一部の生物は霧の持つ力に適合し、異形の怪物へと姿を変える。ミストエネミー化した生物は、元の姿の時よりも凶暴化して強い力をあやつるようになる。動物のミストエネミーが多いが、中には昆虫のミストエネミーも存在し、その種類は多彩。ただし、人間だけは極端に霧の毒性への耐性が低いため、人間がミストエネミー化することはない。ミストエネミーは長期間、霧に触れた生物が体内に「ミストコア」と呼ばれる超高密度結晶体を生成することで変貌する。またこの性質を逆手に取れば、人間以外の生物であれば短時間なら霧の中でも問題なく活動させることも可能となっている。ミストコアは霧を取り込んで莫大なエネルギーを生み出す性質を持つため、人類はこの特性を利用してミストギアを生み出した。

ミストギア

霧をエネルギーに変える装置。絶望の象徴である霧を人々の糧へと変換するため「希望の鋼」とも呼ばれる。王都ブリザイエンはミストギアの技術を早期に確立し、大型ミストギア「ミストフィルター」を完成させたことで、煉獄の日から今日まで生き延びた。現在では街中のインフラにもミストギアは使われており、民の生活に根差している。ミストギアはミストエネミーの体内に存在するミストコアを機関部に据え、コアに周囲の霧を吸収させることで稼働する。このため、ミストギアを稼働させれば霧の中でも問題なく活動できる。ただしミストギアが吸収できる霧には許容量があり、高濃度の霧を一度に浴びると吸収しきれず、霧の毒性が所有者を襲うため、ミストギアの守りも完璧ではない。GEARSは霧の中での探索とミストエネミーへの対抗のため、戦闘用のミストギアを多数配備している。

ロータス

ナギに与えられたミストギア。第七小隊の隊長を務める、マクシミリアン=グランドーが発注した手甲型のミストギアだが、重すぎて扱えなかったために欠陥兵器として死蔵されていた。重すぎることを除けば十全に機能するため、有害な霧を防ぐためのガスマスク代わりに持ち運びされており、霧の中で死にかけていたナギの手に渡る。通常形態は焦げ茶色の装甲で覆われた手甲で、非常に頑強な造りをしている。また中のトリガーを引くことで展開し、モチーフとしている「ロータス(蓮)」の花の形となり、光弾を放つ砲としても利用可能。その威力は首領級ミストギアを一撃で吹き飛ばし、周囲の霧を一時的にとはいえ晴らすほど。高威力だが超重量なせいで誰にも扱えず、実質的に怪力を持つナギ専用のミストギアとなっている。通常時のロータスは安全性のためにリミッターが設けられているが、これを解除することで電磁誘導による超高速の一撃「蓮華一閃(ブラスト)」を放つことができる。ただし、蓮華一閃を放つためにはロータスの安全装置を解除し、臨界限界までエネルギーを溜める必要がある。莫大なエネルギーを扱うため、わずかな刺激も厳禁で、エネルギーを溜めているあいだは動くことはできない。もし動いた場合、溜めたエネルギーがメルトダウンを引き起こし、大爆発に至るとされる。

クレジット

原作

田中 創

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