魔術士オーフェンはぐれ旅

魔術士オーフェンはぐれ旅

秋田禎信の小説『魔術士オーフェンはぐれ旅』のコミカライズ作品。金貸しを営む黒魔術士のオーフェンは、金を貸しているボルカンが持ってきた怪しい儲󠄀(もう)け話にかかわった事で、異形の化け物に襲われてしまう。長年探し求めていた因縁の存在との再会を経て、魔術士たちの陰謀に巻き込まれていくオーフェンの戦いを描くファンタジーアクション。「ファミ通コミッククリア」で2016年8月から連載の作品。本作はコミックス各巻の刊行形態およびタイトルが原作準拠となっており、第1巻から第2巻が『魔術士オーフェンはぐれ旅 我が呼び声に応えよ獣』上下巻、第3巻から第4巻は『魔術士オーフェンはぐれ旅 我が命にしたがえ機械』上下巻、第5巻は『魔術士オーフェンはぐれ旅 我が胸で眠れ亡霊』というタイトルになっている。

正式名称
魔術士オーフェンはぐれ旅
ふりがな
まじゅつしおーふぇんはぐれたび
原作者
秋田 禎信
漫画
ジャンル
アクション
 
ファンタジー
関連商品
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世界観

本作『魔術士オーフェンはぐれ旅』の舞台は、魔術の力が存在するファンタジー世界。ただし、一般的な剣と魔法のファンタジーとは違って文明は近代的に発展しており、保存食として缶詰があったり、人々はスーツを着たりと、衣食住のすべてに人々の近代的な生活が見て取れる。宗教はドラゴン種族を信仰するものが存在するが、信仰対象となっていた天人は滅亡しているとされる。そのため、現在は天人と魔術士の対立がドラゴン信仰者と魔術士のあいだに名残として残っており、地域によっては魔術士は迫害の対象となっている。種族は人間種族以外に、背の低い地人と呼ばれる種族が存在する。

あらすじ

我が呼び声に応えよ獣(第1巻~第2巻)

オーフェンは、金を貸していたボルカンから怪しい儲󠄀(もう)け話を持ち掛けられ、エバーラスティン家を訪れるが、オーフェンはそうと知らずにボルカンの企てた結婚詐欺の片棒を担いでしまう。腹を立てたオーフェンは事実を有耶無耶にして逃げようとするが、エバーラスティン家を何者かが襲撃する姿を目撃する。そしてオーフェンが目撃したのは、変わり果てた姿で暴れ回るアザリー・ケットシーだった。アザリーを退けたオーフェンは詐欺罪で捕まるが、クリーオウ・エバーラスティンと取り引きを交わし、護衛として雇われるのを条件に釈放される。エバーラスティン家はアザリー以外にも何者かに狙われており、敵の目的が屋敷のどこかに保管されているバルトアンデルスの剣と知ったオーフェンは、その探索を行う。しかしその最中、屋敷は賊に襲われる。辛うじて賊を撃退するのに成功するオーフェンだったが、賊の正体はかつての師であるチャイルドマン・パウダーフィールドだった。チャイルドマンの目的はアザリーの抹殺と剣の回収であり、それに力を貸せとオーフェンに問いかける。オーフェンはアザリーを守るため、チャイルドマンと戦う決心を固めるが力及ばず、目の前でアザリーは滅ぼされてしまう。しかしオーフェンは死に瀕(ひん)したアザリーから意外な言葉を聞き、自身が大きな思い違いをしていたのに気づくのだった。

我が命にしたがえ機械(第3巻~第4巻)

因縁に決着をつけたオーフェンは、借金を踏み倒したうえにバルトアンデルスの剣を持ち逃げしたボルカンを追うべく、旅に出る。魔術を習うために弟子入りしたマジクと、旅に押しかけてきたクリーオウ・エバーラスティンと共に、一行は水の都のアレンハタムに赴く。オーフェンはボルカンたちを探すべく、大陸魔術士同盟のアレンハタム支部に行くが、そこで何者かの襲撃を受ける。オーフェンは廃墟と化した支部から知人のステファニーを救い、町にはびこるドラゴン信仰の影を危惧する。そして再度の襲撃でボルカンたちが人質に取られていると察したオーフェンは、ステファニーから事情を聞き、敵は天人の遺産である殺人人形だと知る。殺人人形はアレンハタムの地下遺跡のバジリコック砦に陣取っているため、ステファニーに案内を頼み、オーフェンは遺跡に向かう。オーフェンは多彩で強力な力を持つ殺人人形に苦戦するが、クリーオウの不意打ちとマジクの底力によって殺人人形は破壊。殺人人形の力を逆に利用する事で遺跡そのものを破壊し、殺人人形の脅威を完全に退けるのだった。

我が胸で眠れ亡霊(第5巻)

アレンハタムを発ち、北へと向かったオーフェンは道中、暗殺者のヒリエッタに襲われる。オーフェンはトトカンタで非合法の金貸しを営んでいたため、同業者のオストワルドに恨みを買い、暗殺者を送られてきたのだ。しかしヒリエッタは、自身の本当の依頼者は別におり、本来の依頼は腕の立つ魔術士を探し出し、キンクホールの村に案内する事だとオーフェンに伝える。ほかの暗殺者の襲撃から逃れるために、オーフェンはヒリエッタの申し出を受け入れ、キンクホールの村へ向かう。そしてキンクホールにたどり着いたオーフェンは、宿屋に宿泊するが、その夜、謎の幽霊に襲われる。さらに、オストワルドに雇われた暗殺者と巨大なトカゲの化け物まで現れて、現場は騒然。ヒリエッタの助けを借り、かろうじて窮地を乗り切ったオーフェンは、彼女の本当の依頼人であるキエフ・フォノゴロスから実験動物「クリーチャー」が入った箱をボルカンが持ち出した事で解き放たれた話を聞く。そして幽霊の正体が、人体実験でクリーチャーに改造されたヒリエッタの恩人のサミイである事を知ったオーフェンは、クリーチャーたちの悲しき運命に終止符を打つ事を決心するのだった。

メディアミックス

小説

本作『魔術士オーフェンはぐれ旅』は、秋田禎信の小説『魔術士オーフェンはぐれ旅』が原作となっている。原作小説版は1995年5月から2003年9月にかけて、全20巻が富士見ファンタジア文庫より発行された。株式会社TOブックスの協力のもと、往年の名作小説をWEBコミックとして発信する事を目指す「the ORIGIN Project」の第二弾として、2016年8月から「ファミ通コミッククリア」でコミカライズされた。また2019年に「魔術士オーフェン」シリーズが生誕25周年を迎える記念として、本作のTVアニメ化が決定した事が2018年3月に発表された。

登場人物・キャラクター

オーフェン

金貸しを営む黒髪の青年。黒ずくめの格好で、赤いバンダナをトレードマークにしている。牙の塔の「チャイルドマン教室」に所属していた黒魔術士で、過去を知る者からは「鋼の後継」の異名で呼ばれる。本来の名前は「キリランシェロ」で、かつては最強の黒魔術士のチャイルドマン・パウダーフィールドから戦闘技術を受け継いだ、才気あふれる若者として将来を有望視されていたが、姉のように慕っていたアザリー・ケットシーの失踪で牙の塔とチャイルドマンに失望。塔を出奔し、名を捨てて「孤児」を意味する「オーフェン」と名乗るようになる。出奔から5年後、トトカンタで金貸しを営みながら暮らしていたところ、ボルカンが持ち込んだ儲󠄀(もう)け話をきっかけにして、アザリーと再会。そして彼女を巡る陰謀に巻き込まれる。チャイルドマンから戦闘技術と暗殺技術を受け継いでいるため、魔術士としての技術は大陸屈指の実力を誇る。ただし人殺しの経験は少ないため、命の取り合いをする戦いでは精神が不安定になりやすいという欠点がある。使える黒魔術の種類は、熱衝撃波を放つものから空中を浮遊するものまで多彩で、「我は放つ光の白刃」など「我は」から始まる呪文を愛用する。

クリーオウ・エバーラスティン

トトカンタ市の名士であるエバーラスティン家の令嬢。金色の髪を長く伸ばした少女で、活発で好奇心旺盛な性格をしている。オーフェンとは、彼がボルカンに騙されて結婚詐欺の片棒を担いだのをきっかけにして知り合う。その後、屋敷が賊に襲われそうになったため、オーフェンを雇って行動を共にする。負けん気と好奇心の強さから、戦いにも率先してかかわろうとする。剣の腕は立つが、オーフェンからは戦いにかかわらせたくない思いから、置いていかれる事が多い。また、かんしゃく持ちで、ストレスを溜め込むと周囲のものに当たる悪癖を持つ。特にマジクは同年代で同じ学校に通っていた事から、よく被害に遭っていた。バルトアンデルスの剣を巡る事件の解決後は、旅に出るオーフェンの馬車に忍び込み、彼の旅に押しかける。オーフェンに認められたい一心から無謀な行動に取る事が多いが、殺人人形との戦いでは持ち前の負けん気の強さを発揮し、勝利に大きく貢献した。

マジク

トトカンタ市で、宿屋を営んでいる主人の息子。金髪碧眼の紅顔の美少年で、まじめでおとなしい性格をしている。典型的な振り回されるタイプで、オーフェンやクリーオウ・エバーラスティンからよくむちゃ振りをされており、気苦労が絶えない。魔術士の才能があるため、オーフェンに弟子入りし、彼の旅に同行する。魔術士としての才能はオーフェンですら驚愕するもので、通常は魔術を発動させるだけで数年以上かかるところを、わずか2週間で黒魔術を発動させるに至っている。殺人人形との戦いでは初めて攻撃魔術を発動し、勝負の決め手となる。ただし、魔術の威力はあるものの制御に不慣れで、初めて攻撃魔術を撃った際も反動で手にケガを負っていた。人畜無害な容姿と性格をしているが、妙に女性慣れしており、オーフェンがステファニーの人物評を聞いてきた際には、細やかで的確な評価をしてオーフェンを驚かせた。

アザリー・ケットシー

5年前まで牙の塔に所属していた女性。大陸最強の黒魔術士のチャイルドマン・パウダーフィールドに師事を受け、若年ながら「天魔の魔女」の二つ名で呼ばれるようになる。天人の遺産を研究しており、バルトアンデルスの剣を使った実験をしていたところ、剣の魔術を誤って発動させてしまう。剣の魔力で、その体は羽と尻尾の生えた巨大な怪物のような姿となり、アザリー・ケットシーはそのまま姿を消した。当時のキリランシェロにとって姉代わりともいえる存在で、彼女の失踪がキリランシェロがオーフェンと名乗り始めるきっかけになっている。元の姿に戻るため、バルトアンデルスの剣を求めて各地を放浪し、剣が保管されているとされるトトカンタ市のエバーラスティン家を襲撃する。実は黒魔術と白魔術の両方の素質を持つ、魔術士の中でも非常に稀有な存在。正気を失いつつある状況の中で、白魔術を使ってチャイルドマンと精神を入れ替え、以降は「チャイルドマン・パウダーフィールド」として振る舞っていた。チャイルドマンが隠したバルトアンデルスの剣の在りかを探しており、精神が入れ替わったチャイルドマンの行方を追って、剣の在りかをつき止める。その後は用済みとなったチャイルドマンをアザリーとして殺し、剣の力で元の姿に戻ろうとする。『魔術士オーフェンはぐれ旅 プレ編』にも登場している。

チャイルドマン・パウダーフィールド

牙の塔に所属する中年の男性魔術士。キエサルヒマ大陸最強の黒魔術士と謳われる人物で、感情を表に出さない冷静沈着な性格をしている。厳つい顔立ちで、長く伸ばした黒い髪を後ろで結んでまとめている。かつて「チャイルドマン教室」で教鞭を取り、キリランシェロやアザリー・ケットシーを指導した。アザリーの実験失敗を牙の塔の失態と考え、彼女を抹殺する事で証拠を隠滅しようとしている。大陸魔術士同盟の力を使い、エバーラスティン家を襲撃したアザリーを補足する。そしてアザリーに対抗するために白魔術士を招聘した討伐隊を結成し、オーフェンの目の前でアザリーを殺した。実はアザリーの白魔術士で精神が入れ替わっており、オーフェンが5年ぶりに再会した「チャイルドマン・パウダーフィールド」はアザリーその人。本物のチャイルドマンはバルトアンデルスの剣で化け物となったアザリーの体に入り込んでおり、バルトアンデルスの剣を求めて行動していた。今際の際に、オーフェンに自身がチャイルドマンである事と、本心ではアザリーを助けるつもりだった事を伝え、息絶えた。『魔術士オーフェンはぐれ旅 プレ編』にも登場している。

ハーティア

トトカンタ市の大陸魔術士同盟支部に勤める男性魔術士。赤毛の髪を長く伸ばした青年で、オーフェンとは、かつて共に牙の塔の「チャイルドマン教室」で学んだ竹馬の友。チャイルドマン・パウダーフィールドから指示を受けており、アザリー・ケットシー抹殺のために動く。アザリーの抹殺に思うところはあるが、正気を失ったアザリーが魔術士たちの風聞にも影響を与えているため、苦渋の決断で抹殺に参加する。エバーラスティン家には「ブラックタイガー」という怪人の姿に変装して襲撃。その名前からオーフェンたちに「海老男」と呼ばれて不本意な思いをした。アザリーとの戦いでは、長年の友であるコミクロンがアザリーに殺された事を悔やんだ。『魔術士オーフェンはぐれ旅 プレ編』にもコミクロンと共に登場している。

ボルカン

地人種族の男性で、ドーチンの兄。ボサボサ頭の少年のような姿をしているが、大人になっても背が低い地人種族であるため、年齢は不詳。「ボルカノ・ボルカン」という名を名乗るが、地人には苗字を名乗る習慣がないために自称しているだけ。また「マスマテュリアの闘犬」などの異名を勝手に自称している。性格は傍若無人でかなり身勝手な性格をしており、オーフェンから借りた金を踏み倒そうと、行く先々であの手この手のトラブルを巻き起こす。非常に頑強な体で、トラブルのたびにオーフェンに魔術で吹き飛ばされるがケロっとしている。またお調子者で強い者にはこびへつらい、逆に弱い者には強気に出る。ピンチに陥った際はふだん散々けなしているオーフェンを「心の友」と呼んで媚びている。バルトアンデルスの剣を巡る事件の解決後、こっそりバルトアンデルスの剣を盗み出し、ほかの町で売りさばこうとする。そして弟のドーチンと共に行く先々でトラブルを巻き起こす事となる。『魔術士オーフェン 無謀編』にもドーチンと共に登場し、さまざまなトラブルを巻き起こしている。

ドーチン

ボルカンの弟。ぼっちゃん頭に刈り上げ、丸眼鏡をかけた少年のような姿をしている。大人になっても背が低い知人種族であるため、年齢は不詳。まじめでおとなしい性格をした常識人だが押しに弱く、傍若無人な兄に振り回される事が多い。ボルカンが故郷を追い出された際も、兄に無理やり連れ去られて行動を共にする事となる。ボルカンの行動を止められず、よく悪事の片棒を担ぎ、兄と共にトラブルを巻き起こす。そして、そのたびにオーフェンにボルカンと共に魔術で吹き飛ばされるのがパターンと化している。頭がいいため、バルトアンデルスの剣の騒動の際には、剣の詳細を調べるのを手伝った。『魔術士オーフェン 無謀編』にもボルカンと共に登場し、数々のトラブルを巻き起こしている。

ステファニー

アレンハタムの大陸魔術士同盟支部に所属する女性魔術士。黒い髪を長く伸ばし、眼鏡をかけた知的美人。「ステフ」の愛称で呼ばれる。牙の塔を出奔したばかりのオーフェンと友人となった。アレンハタムでは町の人間に魔術士が迫害されているため、かなり悲惨な扱いを受けている。なんとか手柄を上げて、ほかの町に移り住みたいと考えており、現在はアレンハタム地下に存在する遺跡、バジリコック砦の調査をしている。しかしその最中、殺人人形を発掘して目覚めさせてしまう。オーフェンの来訪をきっかけに、殺人人形によって支部は吹き飛ばされてしまうが、その中で唯一生き残る。オーフェンに問い詰められて事情を話したあとは、彼をバジリコック砦に案内した。事件解決後は実家に帰る事を決意し、オーフェンと別れた。実は女性として振る舞っているが、れっきとした男。数年前、魔術士が迫害されているアレンハタムの地であったため、食い詰めて他人の財布を盗んだが、それで集団リンチに遭い、原型をとどめないレベルの大ケガを負う。その後、医者がまちがえて女顔に治療、整形したのをきっかけに女性として生きる事を決意。全身を女性の体形に整形し、本来の名前である「ステフェン」を「ステファニー」と改名した。

ヒリエッタ

「魔術士殺し」「愚犬」の異名を持つ凄腕の暗殺者の女性。妖しい雰囲気を漂わせた黒髪の美女で、体にぴったりとフィットした黒いボディースーツを身をまとっている。トトカンタ市の悪名高い高利貸しのオストワルドに雇われ、オーフェンを襲う。しかし本当は別に依頼者がおり、襲ったのはオーフェンの腕を見極めるためだった。オーフェンの腕を認めてからは、キンクホールの村に彼を導き、オーフェンをキエフ・フォノゴロスに引き合わせた。15歳の頃、家出同然に故郷の村を出るが、早々に行き倒れてしまう。サミイに拾われた事で九死に一生を得て、彼と温かな日々を過ごすが、サミイと出会って1年後、キエフにクリーチャーの実験材料にされそうになる。サミイが身代わりとなった事でクリーチャーとならずに済んだが、クリーチャーに変貌して正気を失う寸前のサミイに、自身を殺してほしいと頼まれる。以降、彼の望みを叶えるために強い魔術士を探していた。ヒリエッタがふだん着ているボディスーツも、人間をクリーチャーに変換するための材料の一つで、見た目からは考えられないほどの防御性能を持つ。

殺人人形 (きりんぐどーる)

天人の遺産の一つ。凹凸のない人型の人形で、天人が対魔術士用に生み出した兵器。体中に魔術文字が刻まれており、その能力は多彩で強力。アレンハタムの地下にいた個体は人形にもかかわらず多弁で、残虐な性格をしており、殺人人形自身の主であるシスター・イスターシバに対しても皮肉交じりな言葉を吐いている。200年前に魔術士の殲滅(せんめつ)を命令されたまま、アレンハタムの地下遺跡に保管されていたが、ステファニーたち、遺跡の調査隊に運び出されたのをきっかけに活動を始める。アレンハタムの魔術士同盟支部を魔術で乗っ取り、ボルカンたちからオーフェンの情報を聞き出し、彼の抹殺を行おうとする。その後、アレンハタムの魔術士同盟支部を魔術で吹き飛ばし、ボルカンやクリーオウ・エバーラスティンたちを言葉巧みに丸め込んで、彼らを無自覚なままオーフェンを誘き寄せる人質にする。心を読む魔術や人間の声を封じる魔術でオーフェンの魔術を無効化するが、クリーオウに不意打ちを受けて半壊。オーフェンにトドメを刺される。破壊された状態でも、自分の同型が遺跡に数百体存在し、次々と稼働し出すと負け惜しみを言うが、それが仇となり、殺人人形の体に内蔵された魔術文字をオーフェンに利用され、保管されていたほかの殺人人形ごと吹き飛ばされた。

キエフ・フォノゴロス

かつて牙の塔に所属していた魔術士。「ドラゴン種族に勝る戦闘生物」を生み出す事を命題にしており、クリーチャーを生み出す研究をしていた。しかしその研究を牙の塔の上層部に危険視され、50年前に特級の禁忌の烙印を押されて塔から追放される。以降、ひそかに研究を続け、クリーチャーを生み出していた。キエフの息子「ラモン・フォノゴロス」と名乗り、オーフェンの前に姿を隠し、声のみで接触する。キエフは生きていたら100歳を超えるとされていたが、実はキエフ・フォノゴロス自身の体もクリーチャーに改造し、巨大な魚の腹部分に自身の肉体を埋め込む異様な姿となって生き延びていた。オーフェンに逃げ出したクリーチャーの危険性を伝え、戦闘用に作られたクリーチャーと、戦闘訓練を受けた牙の塔の黒魔術士は本質的には同じだと語るが、直後に襲撃してきたサミイたちに体を刻まれて死亡した。

サミイ

キエフ・フォノゴロスの助手だった男性。家出し、行き倒れたヒリエッタを拾い、彼女と交友を育んだ。キエフがヒリエッタをクリーチャーの材料にする事を察知し、サミイ自身が身代わりとなる。現在は肉体が気体状の生命体に改造されており、見た目はさながら人型の幽霊のような姿となっている。クリーチャーへと改造された副作用から現在は正気を失い、自身を改造したキエフへの恨みと復讐のみを行動原理としている。魔術士であればすべてキエフと認識するほど見境がない存在となっており、キエフとまったく関係のない魔術士にも襲い掛かっている。気体である事から物理攻撃が通用せず、あらゆる場所に忍び込める。他者の体の内側に入り込み、その肉体をあやつる事も可能など、幅広い能力を持つ。ただし気体であるために火が弱点で、火にさらされるとサミイを構成する気体が減少し、最終的には消滅する。また体内に入り込んであやつる能力は、制御不能とされたほかのクリーチャーにも有効だが、サミイが制御不能な存在と成り果てているため、結局は失敗作の烙印を押されている。

コーゼン

魔術士の青年。無精ひげを生やし、厳つい顔つきをしている。トトカンタ市の悪名高い高利貸しのオストワルドに雇われ、ほかの暗殺者たちと共にオーフェンを襲おうとする。実戦経験が多く、オーフェンが牙の塔出身の優秀な魔術士ながら実戦経験が少ないのを見抜いたが、サミイに襲われ、仲間を皆殺しにされる。サミイのクリーチャーたちの攻撃から命からがら逃げ出すが、オーフェンとサミイの戦いに巻き込まれ、クリーオウ・エバーラスティンに捕まる。その後はクリーオウにアゴで使われ、サミイを倒すのを手伝った。

場所

牙の塔 (きばのとう)

キエサルヒマ大陸最高峰の黒魔術士養成施設。タフレム市郊外に存在する。素質のある幼い子供を集め、黒魔術士としての教育を施すが、魔術士としての訓練は厳しい戦闘訓練の積み重ねであるため、生きて卒業できる者は1割にも満たないとされる。このため牙の塔を卒業した黒魔術士はエリート中のエリートとされ、卒業後は士官の道が拓かれる。剣に絡みついたドラゴンを紋章にしており、牙の塔出身の黒魔術士はこの紋章を銀のペンダントにして所持している。牙の塔の紋章になっているドラゴンは、キエサルヒマ大陸に実在するドラゴン種族とは別物で、空想上のドラゴンを力の象徴として掲げている。

アレンハタム

町の中央部に運河が流れる水の都。流通の要所として発展した町で、「歴史の邂逅点」と呼ばれるほど古い歴史を持つ。ドラゴン信仰の盛んな町で、アレンハタムでは魔術士は現在も迫害の対象となっており、まともに仕事にも就けず、ささいなきっかけで集団暴行される事がある。町の起源は古く、1000年前、天人がバジリコックと戦うために築き上げたバジリコック砦が元になっている。バジリコックを討伐して数百年後、人々が現れたのを天人が受け入れたのが街の興りとなっている。天人と人間が関係を育んでから破局するまでの舞台となった町であるため、町の人間には今もその名残として魔術士への敵意が根付いている。現在、バジリコック砦は運河の下に隠されており、天人の魔術文字を研究するため、大陸魔術士同盟のアレンハタム支部の魔術士たちに調査されている。バジリコック砦は運河の下にありながら魔術文字で酸素が送られ、水が遮断されているため、状態のよい遺物が多く残されている。

その他キーワード

黒魔術 (くろまじゅつ)

人間種族の使う魔術の一種。音声を媒体とする「音声魔術」で、物理エネルギーや重力を任意に操作する事ができる。術を発動する際に必要となる音声「呪文」はなんでもいいが、体の中の魔力をきちんと制御しなければ、反動で術者が傷つく事がある。また、魔術を発動させるためには魔力と高い集中力が必要なため、熟練の魔術士でも魔術を一度に連発する事は多大な消耗を強いられる。

白魔術 (しろまじゅつ)

人間種族の使う魔術の一種。物理現象をあやつる黒魔術に対し、白魔術は「時間」と「精神」をあやつる魔術とされている。そのため一見地味だが、チャイルドマン・パウダーフィールドは、白魔術に比べれば黒魔術は子供だましと表現するほど、その力を警戒している。白魔術を行使する素質は黒魔術を行使する素質以上にまれであり、白魔術と黒魔術、両方の素質を持つアザリー・ケットシーの存在はその中でもとくに珍しい。

バルトアンデルスの剣 (ばるとあんでるすのけん)

天人の残した遺産の一つ。「バルトアンデルス」は「いつでも・ほかの・なにか」という意味が込められた言葉で、月の紋章と呼ばれる魔術印章が込められているため「月の紋章の剣」の名でも呼ばれる。その能力は切った者を石でも、動物でも好きな物に変身させるもので、アザリー・ケットシーはわざわざ剣に変身魔術を付与した事から、バルトアンデルスの剣は兵器として作られた物だと推測している。アザリーは自分自身をバルトアンデルスの剣で切る事で、変身魔術を自在にあやつろうとするが、切った際に痛みで集中力が途切れた事で不完全な変身をしてしまい、化け物のような姿となってしまう。

クリーオウの指輪 (くりーおうのゆびわ)

クリーオウ・エバーラスティンの持っている指輪。正式名称は不明。天人の残した遺産の一つで、「武器よ落とせ」という護りの魔術文字が込められている。5年前、アザリー・ケットシーが同じ物を所有しており、アザリーとオーフェンは指輪の小ささから子供のための護身用装身具だと推測し、子供でも使えるように危機を察知すると自動的に発動するのではないかと考えた。本来は牙の塔に厳重に保管されていたが、チャイルドマン・パウダーフィールドによってバルトアンデルスの剣などといっしょに持ち出され、エバーラスティン家に預けられていた。

ドラゴン

キエサルヒマ大陸に生息する、魔術をあやつる六つの種族の総称。神々が使う奇跡の技「魔法」を盗み出し、自分たちにも使える「魔術」にした六種族の獣たちで、天人もその一つ。人間種族の魔術士は天人と人間の混血によって生まれた存在で、ドラゴン種族には数えられない。牙の塔がシンボルにしているドラゴンは空想上の生物で完全な別物とされており、実在はしないとされる。

天人 (のるにる)

キエサルヒマ大陸にかつて存在したドラゴン種族の一つ。女性しか存在しない種族で、数百年を生きる長い寿命を持ち、その姿は見目麗しい美女の姿をしていたと伝えられる。「魔術文字」と呼ばれる文字を使った「沈黙魔術」を使い、人間の音声魔術では再現不可能な数々の魔術の道具を生み出した。現代では、1000年前に凶悪な魔獣のバジリコックと戦い、勝利した彼女たちの偉業を称える伝説が伝わっているが、実はバジリコックとの戦いで受けた毒が原因で、種族自体が子供を残す能力を失ってしまう。そして数百年前、人間と混血する事で人間の魔術士を生み出し、血を残そうと試みるが、バジリコックの毒が人間にも感染し、多くの不審死を巻き起こす。これがきっかけとなり、天人は死をもたらす不吉な「魔女」という流説がはびこり、迫害の対象となる。また天人も人間の裏切りに激怒し、対魔術士用の兵器を生み出して戦争状態となる。しかし、バジリコックの毒で衰弱した天人は次第に劣勢となり、200年前、最後に残った天人のシスター・イスターシバが死亡した事で天人種族は滅亡した。

魔術文字 (うぃるどぐらふ)

天人の使う魔術。文字を媒介とした魔術で、その性質から「沈黙魔術」とも呼ばれる。人間の黒魔術を遙かに超える強力な力を持ち、また文字という性質上、道具に刻み込む事でその力を半永久的に発動させる事が可能となっている。天人の残した道具のほかに建造物にも魔術文字は多く使われており、アレンハタムの地下にあった天人の遺跡は地下に存在するにもかかわらず、魔術文字で酸素が生み出され、地上と遜色なく活動できるようになっていた。また、天人が作り出した数々の魔術道具は、使用方法さえわかっていれば、人間でも発動が可能。ただし天人が滅び、魔術文字の全貌を知る者がいなくなったため、道具に使われている魔術文字の理解が不足すると、正しく発動できないリスクが存在する。現在、牙の塔で魔術文字の解読は進んでいるが、未だにすべては解読されていない。

バジリコック

「砂の獣王」の異名を持つ伝説の魔獣。「その視線で民を殺し、その存在は毒である」と伝えられる毒の獣で、1000年前、天人たちと戦い、現アレンハタムの地にかつて存在した砦で討伐された。強大無比の力を持つとされるが、真の恐怖はその身に宿る毒にあり、天人種族は戦いの最中にバジリコックから受けた毒で子孫を残す力が失われ、滅亡するきっかけとなった。またバジリコックの毒は天人との混血によって人間種族にも感染し、人間と天人の対立を引き起こす原因となった。

クリーチャー

キエフ・フォノゴロスが人工的に生み出した戦闘生物。「ドラゴン種族に勝る戦闘生物」を目指して生み出されたが、人知を超えるドラゴンの力には届かず、また生み出したクリーチャーは例外なく制御不能だったため、キエフはすべて失敗だったという結論に達した。現在は「クリーチャーズ・パンドラ」と呼ばれる特別な仕掛けをした木箱に封印されており、木箱が開封されるのと同時に中のクリーチャーは活性化する。ボルカンがクリーチャーズ・パンドラを知らずに開封した事で、クリーチャーが世に飛び出る。その姿はさまざまで、大きなトカゲや全身鎧、そして幽霊の姿をした者が存在した。実はクリーチャーは「人間」を材料にして生み出されており、幽霊のような姿をしたクリーチャーはヒリエッタのかつての恩人、サミイの変わり果てた姿だった。

クレジット

原作

秋田 禎信

キャラクター原案

草河 遊也

脚本

小沢 パンダ

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