概要・あらすじ
両親が離婚して、母さんに引き取られていた小学6年生のケンジは、家庭教師のたけし先生の影響でカヌーが大好き。学校から帰ると兄さんと呼ぶ僕が迎える。月に一度父さんと会う「面会日」に、父さんと付き合っているというカオルを紹介される。ケンジはカオルに反発するが、「僕」はカオルに興味を持ち、会いに行くようになる。
ある日、ケンジはカオルの部屋で父とケンカして飛び出した。強引についてくる「僕」と一緒に、ケンジはボートで神田川に漕ぎ出す。
登場人物・キャラクター
僕 (ぼく)
背の高い少年。ケンジは「兄さん」と呼ぶ。本編は、10年間「彼女」の部屋の電話番号を押し続けているという彼のモノローグから始まる。カオルから渡されたメモを元に、1人下高井戸にあるカオルのアパートを訪ねた。彼女に対して次第に好意を持つが、この事でケンジと仲違いしてしまう。その後、カオルの部屋で父とケンカしたケンジの前に現れ、一緒にボートで神田川を下る。 川を下りながら携帯電話で父さん、母さん、カオルと話すケンジに寄り添う。
ケンジ
キャップ型の帽子を被った小学校6年生の少年。イラストレーターの母さんと暮らす。家庭教師のたけし先生の影響でカヌーに乗りたいと願っているが、母さんからは中学生になるまで禁止されている。童話作家の父さんは、母さんと離婚して1人暮らしをしており、月に1度面会するが、この時だけボートに乗ることができる。 たけし先生からもらったパドルが宝物。兄さんとは仲がよい。父さんがカオルと結婚しようとしていることを知り、激しく反発し、カオルに好意を持つ兄さんとも仲違いする。その後、カオルの部屋で父とケンカし、強引についてきた兄さんと一緒にボートで神田川を下る。川を下りながら携帯電話で父さん、母さん、カオルと話す。
カオル
ロングヘアの女性。出版社に勤務する。離婚して一人暮らしをするケンジの父(父さん)の担当だったが、彼に恋をして付き合うようになった。月に1度の面会日で父さんを訪ねて来たケンジと出会うが反発され、何とか彼と話そうと住所と電話番号を書いたメモを渡した。その後何度か僕の訪問を受け親しく話すようになった。一方ケンジの反発は変わらず、彼は飛び出してボートで神田川に漕ぎ出てしまう。 川を下る彼が持つ携帯電話に、ある言葉を告げる。
父さん (とうさん)
ケンジの父。童話作家を職業としている。ケンジの母(母さん)とは、絵本の制作を通じて知り合い結婚したが、現在は離婚して吉祥寺のマンションで一人暮らしをしている。ケンジを溺愛し、月に一度の面会日には愛情いっぱいに彼を迎え、ボートに乗せたり携帯電話をあげたりしている。出版社の担当・カオルから告白され付き合うようになったが、ケンジが承知しなければ結婚はしないという。
母さん (かあさん)
ケンジの母。イラストレーター。ケンジの父(父さん)とは、絵本の制作を通じて知り合い結婚したが、現在は離婚している。以前は童話の絵も描いていたが、現在は雑誌のイラストを専門にしている。成績に厳しく、家庭教師のたけし先生をケンジにつけている。また、カヌーに興味を持ったケンジに対し、中学生になるまでボートもカヌーも禁止している。
たけし先生 (たけしせんせい)
ケンジの家庭教師。ワセダ大学の3年生。国語と算数を教えるよう、ケンジの母から依頼されたが、カヌーのことばかり教えている。そのためケンジはカヌーが大好きになってしまった。
ハックルベリー・フィン (はっくるべりーふぃん)
カヌーに乗ってミシシッピー川へ漕ぎ出すシーンが描かれている。以後、本編では彼の小説の中での行動とケンジの行動が対比的にモノローグで示されている。
場所
神田川 (かんだがわ)
カオルの部屋で父さんと言い争いをした後、僕と共にボートに乗り込み下った川。2人は東中野から高田馬場、お茶の水などを通過し、晴海埠頭が見える所まで抜けながら、携帯電話で父さん、母さん、カオルと話す。
その他キーワード
カヌー
ケンジが大好きなスポーツ。家庭教師のたけし先生から教わるうちに自分もカヌーに乗りたいと願うようになったが、母さんからは中学生になるまで禁止されている。
パドル
カヌーを漕ぐ道具で、ケンジが6年生になった時、家庭教師のたけし先生から贈られた。それ以来、外出する時には必ず持って出るようになった。カオルの部屋で父さんと言い争いをした後、神田川にボートで漕ぎ出た際もこのパドルを使った。
ボート
カヌーに乗りたがっているケンジが、代わりに母さんから許されている乗り物。ただし、父さんに面会に行った際、一緒に乗ることが条件。本編後半では、カオルの部屋で父さんと言い争いをした後、僕と共に乗り込んで神田川に漕ぎ出た。
帽子 (ぼうし)
ケンジがいつも被っているキャップ型の帽子。ケンジの少年らしさの象徴。本編のクライマックスで、ある言葉と共に僕に渡される。
携帯電話 (けいたいでんわ)
僕は10年間この携帯電話で「彼女」の部屋の電話番号を押し続けているという。
マメタロウくんと花子ちゃん (まめたろうくんとはなこちゃん)
ケンジの父さんと母さんがかつて一緒に作った絵本のタイトル。この制作をきっかけに2人は結婚した。僕は、カオルからこの絵本を見せられる。
クレジット
- 原作
-
成井豊