草迷宮・草空間

草迷宮・草空間

魂を持った市松人形を拾ってしまった青年が、共に暮らしながら互いを理解し、それぞれに成長していく日々を描く現代のおとぎ話。繊細な線で描かれる人物と緻密な背景、衒学的ネームが特徴。本作『草迷宮・草空間』は「草迷宮」と「草空間」の2つのエピソードで構成されていて、前者は「ぶ~け」1981年8月号、後者は「ぶ~けセレクション」1984年1月20日号に掲載された。現在、作者の内田善美は断筆しており、本作が雑誌に掲載された最後の作品となっている。

正式名称
草迷宮・草空間
ふりがな
そうめいきゅう そうくうかん
作者
ジャンル
その他
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概要・あらすじ

帰宅途中に猫の鳴き声を聞いたは、「ねこ」と名乗る振り袖姿の少女に出会う。交番に連れて行こうとした草だったが、ねこはそれをかたくなに拒む。途方に暮れた草は、やむなくねこを自分の下宿に連れ帰ることとなる。そこでねこは本当は人間の子供ではなく、ふとしたことで魂を宿した人形であることが発覚。追い出すこともできず、なしくずし的に居ついたねこと草の、奇妙な共同生活が始まるのだった。

登場人物・キャラクター

(そう)

子供の頃に自分を猫だと思い込んでいた過去を持つ青年。ある夜、魂を宿した市松人形の「ねこ」を迷子だと勘違いして保護し、人形だと分かってからも一緒に暮らしている。淡白な性格で人にも物にも執着が薄く、時雨からは「なにもかもがおまえの中におんなじ比重で存在するなんてことは、女には生理的に理解不能だぜ」と忠告されていた。 ねことの交流を通じ、魂の無い人形にまで命を生じさせる「心」について思いを馳せるようになり、次第に変化していく。あけみに魅かれながらも距離を縮めることをためらっていたが、彼女がねこのために振袖を仕立ててくれたのを機に、少しずつ接近する。

ねこ

人間のように動いたり話したりできる市松人形。捨てられて雨に濡れていた時に、猫のボスに声をかけられ、返事をしたことがきっかけで魂を持つに至る。寿命を悟ったボスが姿を消した後、草に拾われた。どうして自分に魂が宿ったのかを不思議に思っており、魂とは何か、生きているとはどういうことなのかを草に問いかける。産まれたばかりの赤ん坊のような状態のため、何もかもが珍しく、しばしば草を質問攻めにする。 金魚が好き。

あけみ

草が思いを寄せる女性。ねこと顔立ちが似ており、3歳の時に七五三の振袖を着ている写真は特にそっくり。草の下宿を時雨たちと共に訪ねた時に、ねこの着ている振袖がぼろぼろになっているのを見て、新しく一式を揃えて着せてあげた。草の好意には気づいており、自分の気持ちを押しつけてこない草とのあいまいな関係に、寂しさと心地良さを同時に感じている。

時雨 (ときふる)

草の友人で大学の同窓生。女の子が大好きで、いつも軟派な発言を繰り返しているが、友人想いで真面目な面もある。突然日本人形を拾ってきた草を心配して下宿に様子を見に来たり、あけみとの仲が上手くいくように気を配ったりしている。

小次郎 (こじろう)

草の先輩。漫画家のアシスタントをしており、時々草にアルバイトの働き口を紹介してくれる。草が和紙で作った人魚姫の絵をアニメーションにして、草を感動させた。下宿に電話をかけてねこが出た時には、話し相手になってあげている。

大家さん (おおやさん)

草の暮らす下宿の大家で、女優の岩下志麻ばりの美貌を持つ和装の未亡人。猫を毛嫌いしており「魔物」と主張している。草には、その過剰な猫嫌いさえなければ惚れてやってもいいと思われている。ねこの存在を知ってからは、紅葉をあげたり、一緒に掃除をしたりと可愛がっている。

ボス

草の前に、捨てられていたねこを拾った野良猫。子分が30匹以上いる大ボスだった。雨に濡れていたねこに「寒いだろ」と声をかけ、それにねこが反応したことが彼女が魂を持つきっかけ。ねこをなめて乾かし、体を丸めて温めた。高齢のため死期が近いのを悟り、ねこの前から姿を消した。

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