ハツカネズミの時間

ハツカネズミの時間

主人公の高野槙が通う蒼崚学園は、外部から完全に隔離された環境でエリートを育成する学校。何の疑問もなく過ごしていた槙だったが、ある日学園内でひとりの女性を見かけたことで日常が大きく揺らぎ始める。知らないはずの女性の顔に、なぜか見覚えがあるような気がしたのだ。後日、同じクラスに通うようになった氷夏桐子という名の女性に、自分の疑問をぶつける槙。そんな彼に桐子が返した言葉は、「ここは学校の名を借りた実験施設よ」という謎めいた言葉だった。

正式名称
ハツカネズミの時間
作者
ジャンル
ファンタジー
レーベル
アフタヌーンKC(講談社)
巻数
全4巻
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概要・あらすじ

エリートを育成するため、幼いころから世俗から離れた環境で一貫教育を行う蒼崚学園。生徒たちは自分たちが通う学校に疑うことなく学生生活を過ごしていた。主人公の高野槙もそのひとり。しかしの日常は、氷夏桐子というひとりの女子生徒の登場によって大きく変貌することになる。知らない相手のはずだが、なぜか桐子の顔を見たときに記憶の片隅が刺激された

「彼女と以前会ったことがある」と考えたは桐子に話しかけ、蒼崚学園に居たことがあるのではないかと問い質す。対する桐子からの返答は、「ここは学校の名を借りた実験施設よ」という謎めいた言葉。その言葉に疑問を覚えたは後日改めて桐子と接触、かつてと桐子は蒼崚学園での友人だったこと、蒼崚学園鳴沢製薬という企業が生徒に試薬を投与するための施設であること、それを知った桐子は5歳のころに学園を脱走したこと、学園は生徒に記憶操作を行っていることを告げられる。

それと同時にもう一度脱走するので手を貸してほしいと依頼される。それ以降、自分たちの与えられた環境から脱したいと思い始めたは、友人の園倉茗新山椋、室木棗に桐子から明かされた秘密を伝え、皆で学園から逃れる方法を探り始めるのだった。

登場人物・キャラクター

高野 槙 (たかの まき)

園倉茗、新山椋、室樹棗らとともに子供のころから蒼崚学園で育つ。蒼崚学園で投与されている試薬の影響で、色盲になってしまった。5歳のころ、氷夏桐子が蒼崚学園を脱出する際、桐子からともに来るよう誘われるがこれを拒否。その後、記憶操作が行われ桐子のことを忘れ、12年間疑問を持つことなく蒼崚学園で生活を続ける。 しかし桐子が捕らえられ蒼崚学園に連れ戻されたことで状況が一変。桐子から蒼崚学園が実験施設であることを知らされ、茗、椋、棗とともに脱出しようと計画しはじめる。棗が実母に引き取られたのちも計画を続け、桐子を救出しにきた梛とともに脱出の機会を獲得。 直前になって脱出を拒んだ茗と茗のために留まった椋を残し、梛と桐子が住む新宿の部屋で居候に。外の世界に当初は戸惑うものの、桐子の紹介で金井陽一郎の父親が営む酒屋でアルバイトをするなど、徐々に馴染んでいった。アルバイトで配達の仕事をしていた折、蒼崚学園の不都合な記憶を忘れさせられた棗と偶然再会。 棗の方は過去の記憶を刺激され、自分たちは知り合いなのではないかと槙に接触してくるが、槙は棗の新しい人生を慮り、これを否定する。その後、鳴沢檀と取引した茗が現れ、桐子、梛とともに蒼崚学園へと戻ることに。桐子が梛に惹かれていることを知りながら、桐子に想いを寄せている。

氷夏 桐子 (ひなつ きりこ)

もともとは蒼崚学園の生徒で、5歳のときに脱出。このとき高野槙に一緒に来るよう誘うものの、槙がこれを拒否したため一人で逃れていった。その後、梛に拾われ、以降はともに生きていくようになる。梛とは喧嘩が絶えないが、それは梛のことを想っているが自分が妹としてしか扱われないため。 珍しく長く滞在した新宿での生活に馴染んでいたところ、友人が万引きで捕まったせいで素性がバレ、12年ぶりに蒼崚学園に連れ戻された。うかうかしていると危険を冒してまで梛が自分を救出しにきてしまうと考え、いち早く再び脱出しようと画策。当初は再会した槙を利用しようとしていたが、次第にそうした考えを持つ自分が嫌になり一人でどうにかしようと考える。 だが、それが成功する前に梛が現れ、ともに脱出。その際、槙たちを一緒に連れて行こうとする。園倉茗と新山椋がギリギリで留まった結果、梛と槙とともに新宿に舞い戻った。外の世界に慣れない槙のため、バイト先を斡旋するなど世話を焼くように。鳴沢檀と取引した茗が槙のもとに現れた結果、梛が蒼崚学園に赴くことを決意したため、桐子も同道する。 なお、新宿ではバーでアルバイトをしていた。

園倉 茗 (そのくら めい)

高野槙、新山椋、室樹棗らとともに子供のころから蒼崚学園で育つ。蒼崚学園で投与されている試薬の影響で、病弱でかつ極度の色白になってしまった。何の疑問もなく蒼崚学園で過ごしていたが、12年ぶりに連れ戻された氷夏桐子と触れ合った槙によって学園の秘密を知らされ、槙たちとともに脱出しようと計画。 しかし槙が桐子に惹かれている様子に気付き、思い悩むように。桐子を救いに来た梛とともに脱出する機会を得るがギリギリのところで翻意し、自分を心配して残った椋と学園に留まった。その後、脱走しようとしていたことが学園側に発覚するが、校長の鳴沢檀と「梛を連れ戻す協力をする代わりに、槙も学園に連れ戻してほしい」という取引をする。 ただ、檀は梛に戻ってきてほしくないと考えていたため茗に毒薬を渡し、梛に飲ませるよう指示。しかし、茗はその毒を桐子に飲ませようとする。毒に気付いた梛によって、誰も飲むことはなかったが、そこまでさせた檀に会うため梛が蒼崚学園に戻ることを決意すると、茗もそれに同道する。

新山 椋 (あらやま りょう)

高野槙、園倉茗、室樹棗らとともに子供のころから蒼崚学園で育つ。非常に鋭い勘の持ち主で、それは蒼崚学園で投与されている試薬の影響である可能性が仄めかされている。特に疑問を持つことなく蒼崚学園で過ごしていたが、12年ぶりに連れ戻された氷夏桐子と触れ合った槙によって学園の秘密を知らされ、槙たちとともに脱出しようと計画。 桐子を救出に来た梛とともにその機会を得るが、すんでのところで茗が脱出を拒否したため、彼女を心配して椋も脱出を断念。その後、秘密を知りながらあえて蒼崚学園にとどまっている女子生徒からの接触を受け、「外の世界に明るい未来なんかない。 学園の何が不満なのか」との言葉を向けられる。それに対し「偽物の人生だ」と答えるが、「本物とは何か? そういったことを言うだけの自分はあるのか」と重ねて尋ねられると返す言葉を持たなかった。その後、鳴沢檀との取引によって、茗が連れ戻した梛、桐子とともに戻ってきた槙と再会を果たす。槙に対し、自分には蒼崚学園を出るリスクに代わって得るものが外の世界にないと吐露。

室樹 棗 (むろき なつめ)

高野槙、園倉茗、新山椋らとともに子供のころから蒼崚学園で育つ。外の世界への興味が強く、あるとき一人で脱走を図り失敗。またそれ以前から学園内を散策して秘密の部屋を発見するなどしていた。12年ぶりに連れ戻された氷夏桐子と触れ合った槙によって学園の秘密を知らされ、改めて槙たちとともに脱出しようと計画。 だがそんな折、幼いころに棗を捨てた実母が政治家と結婚し、棗を引き取りたいと申し出る。結果、都合の悪い記憶を消された上で外の世界へ。転校して普通の高校生として生活を始めるが、自分の記憶に違和感を覚える。その後、梛と桐子とともに蒼崚学園を脱出した槙と偶然再会。 記憶を刺激され、槙に対して「自分と知り合いだったのではないか」と問い質すが、新しい人生を歩んでいる棗の幸せを思う槙はこれを否定する。違和感が大きくなった棗はリストカットで自分の現実を確認するように。しかしあるとき深くリストカットしすぎてしまい、病院に担ぎ込まれる。

(なぎ)

幼いころに蒼崚学園に入れられるが、12歳で脱走に成功する。それ以降、独力で生き抜く。のちに同じく蒼崚学園から脱出した氷夏桐子と出会い、保護者のように面倒をみるように。大衆薬と生薬をブレンドしたオリジナルのドラッグ・キリコ(ただし依存性はない)の販売を生業としており、現地でトラブルの芽が生じると別の場所に移転するという格好で各地を転々としていた。 新宿に移り住んでからは珍しく長く滞在し、約3年という月日を過ごす。しかし桐子が蒼崚学園へ連れ戻されると、彼女を救出するため自らも蒼崚学園へ潜入し、桐子を連れ出すと同時に、高野槙も伴った。その正体は鳴沢製薬会長の実子であり、鳴沢製薬社長兼蒼崚学園校長である鳴沢檀の弟。 梛は鳴沢製薬や父親を嫌悪していたが、父親の方は檀よりも梛を評価しており、その行方を捜していた。槙を連れ戻すため、檀と取引した園倉茗が毒物を使用したことで、そこまでする檀に会うために蒼崚学園に赴くことに。暗示を得意とし、住処を転々とするときには恋仲になった女性に暗示をかけ、桐子を姉の子と思わせるなどしていた。 なお、末期の癌に冒されている。

鳴沢 檀 (なるさわ まゆみ)

鳴沢製薬社長と同時に蒼崚学園の校長を務める。梛の兄であり、梛と同じく幼いころに自身も蒼崚学園に入れられた。しかし梛とは異なり、蒼崚学園での生活を全うしている。優秀だが型破りなところはなく、そんな自分よりも父親である鳴沢製薬会長は梛を評価していることを知り、自分の地位を脅かす可能性があると考えている。 そのため元々梛の消息は知っていたが放置したままにし、氷夏桐子を救うため蒼崚学園に侵入してきた梛をあえて見逃しもした。だが、それによって父親からの評価がさらに下がってしまう。梛に伴われた桐子とともに脱出しようとして踏みとどまった園倉茗と取引し、茗に毒物を持たせ梛を亡き者にしようと画策。 ただしこの計画は、梛によって看破されるであろうと予測していた。異母妹である大滝木綿子を信頼し、自身の偽らざる心情を吐露することしばしば。

鳴沢製薬会長 (なるさわせいやくかいちょう)

鳴沢檀、梛、大滝木綿子の父親だが、作中で名前は明示されていない。実の子である檀と梛を実験施設である蒼崚学園に入れた。優秀で従順だが型にはまった檀よりも、破天荒な梛を買っている。しかし梛が蒼崚学園から脱走したため、鳴沢製薬社長の座を檀に譲り、自身は会長職に。 老境に達し、やはり頼りないと思える檀ではなく梛を後継者にしようと考え、梛を探すよう檀に命じた。しかしようやく会いに来た梛が癌に冒されていることを知るや見切りをつけ、桐子を人質に梛に汚い仕事を押し付けようとする。経営で辣腕をふるった実力者だが、傲慢で自分の都合しか考えない性格。 心臓病を患っており、薬を服用している。

大滝木 綿子 (おおたき ゆうこ)

蒼崚学園で保健医を務めている。鳴沢製薬会長の娘で、鳴沢檀と梛の異母妹。ただし母親が亡くなるときまで父親のことは聞かされておらず、作中では鳴沢家で暮らしているが、梛が蒼崚学園を脱走したのちにやってきたため、梛と面識はない。鳴沢家に入ってからも母親の姓を変えないなど、父親のことを嫌悪。 同時に、保健室に来る生徒の症状のほとんどが、投与された試薬の副作用であることから、蒼崚学園についても違和感を覚えている。一方で兄の檀のことを深く心配しており、檀に対して自分と一緒に蒼崚学園から離れようと提案したことも。

三夜 (みや)

梛と氷夏桐子が新宿に流れ着いた際、桐子と友人になる。妹の三菜が万引きで補導された結果、一緒にいた桐子が帰ってこなくなったことを気に病み、梛のもとを訪れた。梛から詳細を聞くことはできなかったが、何らかの事情があることを察知。梛によって救出された桐子が戻ってくると素直に喜ぶ。 一方、梛に寄せる桐子の思い、しかしそれに応えようとしない梛の思い、これらのことからふたりの関係をあまりよく思っていない。梛との距離を置かせる意味もあり、桐子に同居を申し出た。金井陽一郎とは友人関係で、同じ大学に通っている。

金井 陽一郎 (かない よういちろう)

酒屋の息子で大学生。梛の製造するドラッグ・キリコの愛用者で、キリコ提供の対価として父親の所有する部屋を梛に貸している。梛と氷夏桐子には何らかの事情があることは勘づきつつも、あえて詮索しない。蒼崚学園から脱出してきた高野槙を桐子に紹介され、バイトとして雇うよう親にとりなした。 当初はあまりに世間知らずな槙を訝しんでいたが、その人柄や働きぶりに、すぐに信頼を寄せるようになる。三夜とは同じ大学に通う友人関係。

三軒田 (みのきだ)

鳴沢製薬系列の病院で院長で、鳴沢製薬会長の主治医も務める。また、蒼崚学園でも働いており、室木棗が実母に引き取られる際の記憶操作や、捕らえられ蒼崚学園へ連れ戻された氷夏桐子への尋問などを担当。蒼崚学園から脱走する前の梛とも面識があり、桐子とともに戻ってきた彼に鳴沢檀を悪く思わないようにとの思いを伝えた。

集団・組織

蒼崚学園 (そうりょうがくえん)

『ハツカネズミの時間』に登場する学校。生徒たちにはエリート養成のための一貫校と説明されているが、その実態は鳴沢製薬によって身寄りのない子供たちが集められ、さまざまな試薬を投与するための実験施設である。外部からは完全に遮断され、生徒たちは学園の中の世界しか知らない。また生徒たちは蒼崚学園に入る際、死亡したとして処理され戸籍はない。 まれに学園に違和感を抱き、脱走する生徒がいるが残された生徒たちには記憶操作が施され、脱走した生徒のことは忘れさせられてしまう。なお、エリート養成校としても機能している面もあり、生徒は非常に優秀。卒業生は鳴沢製薬で社会人として働くようになる。このため学園内には、その実情に気付きつつもあえてそのまま留まっている生徒もごく一部存在。 元々は日本国が米軍施設内に設立した施設で、優秀な学者や研究者を育てる目的があった。その一環として試薬の投与があったが次第にその比重が大きくなっていった結果、作品世界の20年前に鳴沢製薬に払い下げられる。その後も実験データを提供することでアメリカとの関係は保持。しかし近年、環境の変化により現体制の維持が難しくなりつつある。

鳴沢製薬 (なるさわせいやく)

『ハツカネズミの時間』に登場する企業。日本有数の大手製薬会社で、蒼崚学園を実験施設として生み出された製品を数多く市場に送り出している。また無事に蒼崚学園を卒業した生徒を従業員として採用。鳴沢檀が社長を務めるが、その父親が会長として実権を握っている。

書誌情報

ハツカネズミの時間 全4巻 講談社〈アフタヌーンKC〉 完結

第1巻

(2005年5月発行、 978-4063143799)

第2巻

(2006年4月発行、 978-4063144109)

第3巻

(2007年6月発行、 978-4063144567)

第4巻

(2008年4月発行、 978-4063145014)

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