戦乱の世を描く歴史改変フィクション
本作は、1615年に起こった「大坂夏の陣」以降の日本史をモチーフにした歴史改変フィクションで、「大坂夏の陣で徳川家康が死んだらその後の歴史は変わっていた」という歴史上の「if」の要素をもとに、実際の歴史とは異なる世界が描かれる。本来は家康に滅ぼされるはずだった豊臣家に仕える真田幸村の嫡男である大助と、彼の親友で雑賀衆の子孫、鏡風太が歴史を変えながら繰り広げる壮大な戦国記が、バトルアクションを交えて展開される。
主人公は豊臣家に仕える少年たち
1615年5月7日、大坂夏の陣。豊臣家滅亡を狙う徳川勢と豊臣勢の戦力差は歴然で、既に豊臣勢の敗北は決まったように思われていたが、稀代の名将、幸村が家康の本陣を急襲する。そして運命を大きく変えたのが、戦に初参戦した鉄砲傭兵集団の子孫にして軍師の才を持つ風太と、幸村の嫡男にして将の器と天性の明るさを持つ大助の二人の少年だった。風太と大助の活躍で家康は命を落とし、大坂夏の陣は豊臣方の勝利に終わる。実は風太には、頭上に雷鳴が轟(とどろ)くたびに歴史を変えるほどの奇策や軍略が思い浮かぶという、不思議な力を持っていた。この力を駆使しながら風太たちは、家康を討ち取ったことで歴史が激変した影響で、再び戦乱に突入した日ノ本の未来を切り拓(ひら)いていく。
二人に次々と降りかかる試練
厳しい戦いを乗り越えた風太と大助を襲った最初の試練は、大助の父親である幸村の死という残酷なものだった。父親を亡くした大助は未熟ながらも家中の統制を図るが、幸村を殺害した黒幕である井伊直孝が真田領に侵入し、大助たちに襲いかかる。そんな中、危機に陥る風太たちのもとに、大助の妹にして天才政略家のアグリという心強い味方が現れる。幸村という後ろ盾を失ったことで勇猛果敢な武将たちから狙われるようになり、内紛にも悩まされることになった風太と大助が、次々と降りかかる試練と苦難をどう乗り越えていくかも、見どころとなっている。また、本作は風太たちの活躍を受けて現代日本で歴史が変わっている描写があり、戦乱の世と現代日本を行き来しながら、歴史が変わっていく過程を楽しむことができる。
登場人物・キャラクター
鏡 風太 (かがみ ふうた)
大助の幼なじみで親友の少年。黒の長髪を首後ろでまとめている。面倒くさがり屋で運動音痴ながら、軍略や鉄砲の扱いに長(た)けている。鉄砲傭兵集団、雑賀衆の子孫だが、風太自身は雑賀衆を嫌っている。1615年の大坂夏の陣では、幸村のあとを追う形で大助と共に徳川本陣に切り込み、家康を掌中銃で討ち取った。自覚はないものの、雷に打たれると天からの啓示を受けたように卓越した発想力や、勘が鋭くなるなどの不思議な力を発揮する。初陣での大活躍を目の当たりにした幸村からは、戦の神「摩利支天」の生まれ変わりと評され、彼から士分が与えられ真田家に仕える武士となる。
真田 大助 (さなだ だいすけ)
幸村の嫡男で、風太の幼なじみで親友の少年。赤みがかった茶髪をポニーテールにしている。実直な性格の熱血漢で父親譲りの優れた武術を持ち、武勇にも秀でている。大坂夏の陣では、父親の幸村のあとを追う形で風太と共に徳川本陣に切り込み、家康を討ち取った。幸村の死後は真田家当主となり、混乱する家中を統制するため奔走するが、紛争を誘発しようとする敵将の謀略や、豊臣秀頼の生母、淀殿をはじめとする内なる苦難にも悩まされることになる。天才政略家のアグリという妹がいる。
書誌情報
冥銭のドラグーン 全4巻 講談社〈講談社コミックス月刊マガジン〉
第1巻
(2016-11-17発行、978-4063925555)
第4巻
(2017-11-17発行、978-4065104828)
冥銭のドラグーン 3巻 講談社〈講談社コミックス〉
第2巻
(2017-03-01発行、978-4063925739)
第3巻
(2017-07-01発行、978-4063925951)







