ベルリン飛行指令

ベルリン飛行指令

太平洋戦争間近の1940年、英国との航空戦に苦戦していた同盟国ナチス・ドイツのアドルフ・ヒットラー総統からの密命により、大日本帝国海軍のパイロット安藤啓一大尉と乾恭平一等空曹が、航続距離に優れた零戦を輸送するため、横須賀ベルリン間の16,000キロにわたる極秘飛行を行う冒険戦記漫画。佐々木譲の同名冒険小説を望月三起也がコミカライズ。

正式名称
ベルリン飛行指令
ふりがな
べるりんひこうしれい
作画
原作
ジャンル
アドベンチャー
 
第二次世界大戦
 
歴史IFもの
レーベル
ホームミステリーコミックス(ホーム社)
巻数
全1巻完結
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概要・あらすじ

第二次世界大戦の火蓋が切って落とされた1940年のヨーロッパでは、ナチス・ドイツによるロンドンへの猛爆が繰り返されていた。しかし、ドイツは自国のメッサーシュミットよりも性能の優れた英国空軍の戦闘機スピットファイアに苦しめられていた。アドルフ・ヒットラー総統はこれに代わる航続距離を誇る高性能の戦闘機、零式艦上戦闘機が日本で開発された事を聞き、密かにベルリンへの空輸を計画する。

作戦実行は困難を極め、海軍省の大貫少佐と山脇は空輸ルートの選定と英国植民地での給油地を確保しながら、任務遂行には欠かせない優秀なパイロットを選び出さなければならなかった。そんな候補の中に、腕は確かだが軍人として問題のある安藤啓一大尉と、その部下の整備士乾恭平一等空曹がいた。

かくして多くの不安要素を抱えながら、11月27日に横須賀基地から16,000キロ先のベルリンを目指して2機の零戦が飛び立っていった。

登場人物・キャラクター

安藤 啓一 (あんどう けいいち)

海軍大尉。戦闘機のパイロットとしてドイツ空軍飛行学校への留学経験がある。南京航空戦では撃墜数15機という記録を持つ優秀な腕前ながら、落下傘で降下中の敵兵を理由を付けて撃たなかったり、南京市内での低空攻撃で一人だけ機銃の故障を理由に市民への攻撃を行わないなど反抗的な面があり、上官達からは使いにくい男とされ、大貫少佐のもとに厄介払い風の推薦文が送られた。 また国際義勇飛行隊フライング・タイガーの敵指揮官機と一騎打ちをしたり、3機で敵基地へ強行着陸して敵機を爆破するなどの問題行動も多く、憲兵隊の取り調べを受け、横須賀で待機を命じられていた。操縦には自信があり海軍一を自負している生粋の飛行機乗りで、大貫は無礼な振る舞いに怒りを覚えつつも、零戦空輸作戦任務を命じる事にした。 乾恭平一等空曹と一緒である事と出発までに長距離飛行に習熟するための準備を条件に引き受ける。実際に零戦に乗り、無線以外は文句なしの名馬と評している。ジャズが得意なトランペット吹き。

乾 恭平 (いぬい きょうへい)

安藤啓一大尉と同じ元第12航空隊所属で、戦闘機の発動機整備を手掛ける。階級は一等空曹。撃墜機数は8機。安藤啓一と共に3機で敵基地へ強行着陸して敵機を爆破した事により憲兵隊の取り調べを受け、横須賀で待機を命じられていた。危険なベルリン行きの任務も、安藤啓一と一緒だという事で喜んで引き受ける。 飛行中の機体の状態を正確に把握し、その力量は安藤啓一から絶大な信頼を置かれている。イラクで整備兵が自分達の機に細工をするところを目撃し、乱闘の末に相手を殺してしまったため、安藤啓一はフセイン大佐と取引をし、予定通り出発する代わりに、途中イラク軍の指定した英国軍基地を攻撃しなくてはいけなくなった。

大貫 (おおぬき)

海軍省副将として零戦空輸作戦の指揮を取り、山脇と共に計画を進めていく。作戦は及川海相からの指示で、反対派による海軍内部の分裂を避けるため、ドイツからの申し入れは大貫と山脇だけに伝えられ、零戦の直接監督責任者である井上中将にもドイツからの正式契約があるまでは知らせない事になっていた。 情勢を考え、インドとイラクを強行突破する南回りの飛行ルートを選ぶ。パイロット候補の遠田大尉からは端から無理だと断られ失望したが、その後安藤啓一と会い、無礼な態度に立腹するものの、実力は認め任務を下す事にした。来るべき対米戦での大殺戮を見据えて、やがて安藤啓一のような時代錯誤の飛行機乗りの事をうらやむだろうと山脇に告げる。 横須賀基地を飛び立った零戦を見送った後、連合艦隊司令部の参謀として異動になる。

山脇 (やまわき)

海軍省書記官。大貫少佐の命で零戦の開発元である三菱との細やかな交渉、空路の選定と確保、各国政府との交渉全般、飛行士の選定といった案件を任される。当初は時勢的にも能力的にも空輸は不可能と感じつつも、大貫と共に飛行ルートとパイロット選びに奔走する。調書を読んでパイロット候補の安藤啓一大尉が反抗的な人間なのではないかと渋る大貫に、必要なのは人柄よりも零戦に慣れている事であり確かめるべきと背中を押し、会いに行く決心をさせた。 作戦につけられたトキという暗号名を安藤啓一に告げる。

グラーフ

ベルリンで零戦の引き渡しを待つドイツ空軍少佐。騎士十字章を与えられた、数々の軍功を立てた戦闘機乗り。かつてブルンズヴィッグの飛行学校でハインケルHe51戦闘機を使って訓練に励んでいた時に、日本人留学生で背後の敵をかわすために急上昇から背面宙返りをし、きりもみ状態で相手機の真上から一撃するインメルマン・ターンをこなす男と出会う。 その男、安藤啓一のことを、どこか孤高の影のある士官だったとしている。ガトウの飛行場で零戦を迎え、歓迎の空戦を挑み、その性能の高さに驚くと共に、インメルマン・ターンを決めるパイロットこそ4年前の飛行学校で一緒だった安藤啓一だと気付き喜ぶ。

上松 (うえまつ)

仏印のジアラム飛行場で、安藤啓一大尉と乾恭平一等空曹を迎える士官。階級は大佐。極秘任務を聞かされていなかったため、着任後ただちにわざわざ回り道をさせて漢口に向かわせる新たな異動が発令された事に疑問に感じながら命令を下したが、安藤啓一はすべてを承知した上で驚いた演技で応対した。 安藤啓一達が出発した後に、横須賀基地から計画漏洩の恐れがあるため英国空軍に厳重警戒せよとの、向かった方面とは関係のない電文を受けとり不可解に思う。

若い兵士 (わかいへいし)

仏印のジアラムに立ち寄った安藤啓一大尉に、食堂で声を掛けてきた若い兵士。国際義勇飛行隊の戦闘機カーチスとの一騎打ちの噂を聞きつけ、撃墜王として高名な安藤啓一に帝国軍人として敵空軍の撃破に粉骨砕身するための助言をして欲しいと頼む。憧れの安藤啓一からは「生き延びたいなら臆病になれと」夢を打ち砕くアドバイスをされ、失望しながらその場を去っていった。 安藤啓一は、上官からは敢闘精神にかける軍人と思われ、このようなひよっこには英雄視され、どちらも本当の自分を理解していないと嘆く。

チャンドラ・ボース (ちゃんどらぼーす)

インドの独立運動家。本人は英国からの独立運動のために捕えられ獄中で断食に入った状態だが、部下達が東ベンガルの田園の中に日本国旗と矢印の形に刈り取った目印を作り、給油のための代用飛行場を用意して安藤啓一大尉と乾恭平一等空曹を迎えた。英国軍の偵察機から見られないように馬囲いの中で給油や整備を行い、言葉が通じない事から乾恭平一等空曹は不満を漏らしたが、日本への協力は惜しまなかった。

ガジュ・シン (がじゅしん)

インド西部に位置するカマニプル藩王国第37代マハラジャ。反英運動のスポンサーとして活動し、作戦の協力依頼にも好意的な反応を示す。インドを横断してきた安藤啓一大尉達を食事に招き、酒の席で他言無用と言いながらあからさまに極秘事項の零戦の話題を持ち出し、内部に潜り込んでいる諜報部員をあぶり出そうとした。

カマルジット・シン (かまるじっとしん)

インド・カマニプル藩王国の王国軍大佐。カマニプルの飛行場で、給油に立ち寄った安藤啓一大尉と乾恭平一等空曹を迎える。作戦はごく一部の人間だけに知らされた極秘事項であり、兵達も英国を憎む者ばかりで外部に漏れる心配はないとしながらも、基地の周りに偵察機が増え、ドイツと手を結んだ日本軍機の動向を英国は強く警戒していると注意を促す。 安藤啓一達を宮殿に招待し、宴の席で高性能の零戦に興味を持ち、自分達の軍への導入を持ちかける。

ヘイウッド

インド・カマニプル藩王国のマハラジャ、ガジュ・シンに仕える英国人家庭教師。ケンブリッジ大学卒業、王室地誌学会会員という肩書で、ガジュ・シンの親族や友人達が集まる食事の席にも同席する。自分達英国人が時代遅れのマハラジャ達に分不相応な特権を与えて文明を教えてきたにも関わらず、野蛮人達は軍隊を作り謀反を起こそうとしているという考えで、王国を危険視している。

マハッド・フセイン (まはっどふせいん)

イラク陸軍大佐。バグダッド北東の駐屯地で、給油に立ち寄った安藤啓一大尉と乾恭平一等空曹を迎える。初めて見た日本の戦闘機・零戦の高い性能と装備に強い関心を持つ。徳川幕府や松尾芭蕉の句を知るほどの日本通。ドイツは密かにイラク独立運動の支援を約束しているため、後は慎重なイラク将校たちを決意させるための火種があればいいと、安藤啓一達に英国軍基地を零戦で攻撃して欲しいと懇願するが、断られると整備を遅らせ出発の妨害を図る。

オウス

トルコ共和国陸軍中佐。アンカラ北東の陸軍飛行場で安藤啓一大尉を迎える。途中、被弾したため敵を引き付けて引き返すはずだった乾恭平一等空曹が、イラクに到着しなかったというドイツ大使館経由の連絡を、安藤啓一に知らせる。部屋でロウソクを灯し、安藤啓一がトランペットで奏でた鎮魂歌を悲しい音色だと弔った。

遠田 哲朗 (えんだ てつろう)

大貫少佐と山脇が最初にパイロット候補として会った、敵機を10機も落とし撃墜王と呼ばれる人物。階級は大尉。作戦を説明すると、ベルリンまでの飛行は、敵機を振り切って逃げながら飛ぶ場合の燃料の問題、単座で日中地形を見ながら飛ぶ地文航法になる事、さらに3機一個小隊の編成で最低9機一個中隊が必要である事など、次々に問題点を挙げ不可能だと笑い飛ばす。 さらに南京での活躍は市民に向けた一斉掃射だったと得意気に話したため、失望していた大貫を激怒させる事になる。

アドルフ・ヒットラー (あどるふひっとらー)

ナチス・ドイツ総統。苦戦を強いられる空軍の打開策として、ウーデット上級大将が薦める航続距離に優れた日本の戦闘機・零戦を取り寄せて、国内で製造する計画を命じる。作戦の鍵を握るパイロットとして撃墜王ガーランドの名も挙がったが、国民的英雄を割くわけにはいかないと、日本から選ぶように指示した。 零戦が2機ドイツに飛来すれば、それを元に何百機もの同型機を造り、ヨーロッパの空を埋め尽くして帝国の領土にできると宣言する。

書誌情報

ベルリン飛行指令 全1巻 ホーム社〈ホームミステリーコミックス〉 完結

第1巻

(1993年9月発行、 978-4834230550)

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