概要・あらすじ
泥に埋まっているところを遊牧民に救われた幼児は、バッコス(芽ばえるもの)と名づけられる。しかし、遊牧民は事故死してしまい、今度は部落を追われた悪党のゼウスに拾われてしまう。奇しき因縁に結ばれた二人は別離と再会をくり返しつつ、天変地異、飢餓、部族間抗争、虐殺などの激動を乗り越え逞しく生き抜く。バッコスは人間社会と野性の世界を彷徨いながら、呪術的な教祖となり、ゼウスは他人の犠牲も省みず部族社会で成り上がっていく。
登場人物・キャラクター
バッコス
1800年代のアフリカ東部で生まれた孤児。生き埋めになっていた彼を拾った旅人によって、「芽ばえるもの」を意味するバッコスと名付けられた。ゼウスに拾われ、家畜の糞にまみれながらも美しい少年に育つ。熱病に罹って捨てられるが、土ブタに助けられて復活。糞尿の臭いを好み、野性と人間の間を往復する。 後に雨乞師キロンから学んだ幻覚性のある植物を使って教祖的存在になり、身体の半分を白く塗るようになる。快楽を追い求め、他人を犠牲にすることも厭わない。
ゼウス
オルピ族。同じ部落の金持ち、タンタの妻を寝取って部族を追放されるが、岩の下敷きになった旅人の牛の群れとバッコスを手に帰参。父親の死後、遺産相続により財産を増やし、村の有力者となる。徹底した利己主義者で、権力者から奴隷まで浮き沈みが激しい人生を送るが、バッコスとは不思議な縁で結ばれている。
タンタ
オルピ族。妻を三人持つ村一番の財産家だったが、かつて妻を寝取ったゼウスに資産で追い抜かれ、嫉妬と憎悪の虜になる。ゼウスに呪術を掛けているところを見つかり、神判としてシンバ(ライオン)に挑戦することとなる。
マーゴ
オルピ族。知的障害を持つ少女。バッコスと肛門性交で結ばれ、共に放浪する。
キロン
雨乞師。ゼウスからバッコスを買い取る。怪力の持ち主でマゾヒスト。
ゼガ
遊牧民ヘラ族の長老。
ポロ
ポロ族のリーダー格の戦士。小柄だが機敏に戦う。傭兵化したウガペ族残党の大男グワムを一騎打ちで倒す。
グワム
戦に負けて、生き延びるために人の心を捨て、傭兵となったウガベ族の巨漢戦士。
ロン
オナ族。若者組の勇者。ゼウスに恋人を奪われ、部族から抜け、バッコスと出会う。後にバッコスの精霊である土ブタの仮面をかぶった幻の将軍として戦う。
ヤーゴ
オナ族、トロ族連合軍の敗残兵が野盗化した集団ハイエナ党のリーダー。殺人、強姦、略奪など無軌道な犯罪に走るが、バッコスと出会い、洗脳され、忠実な信徒となる。バッコスの反乱では親衛隊長として活躍する。
アタナ
ヘラ族の巫女で族長。祖霊はトカゲ。オナ族、トロ族連合軍を撃滅し、広大な地域を支配するが、バッコス信徒の急拡大に危機感を抱く。
ポト
トロ族の勇者。勇猛だったが、夢に出てくる多数の生首に悩まされている。この悩みがバッコスによって解消され、勇者として再生し、ヘラ族の首を狩り始める。バッコスの反乱では将軍として活躍。
土ブタ (つちぶた)
『バッコス』に登場する象徴的な動物。土に潜ることを得意とする。熱病に罹ったバッコスを母性本能から救う。バッコスの精霊。
集団・組織
オルピ族 (おるぴぞく)
『バッコス』に登場するゼウスをリーダーとする遊牧部族。居住地であるアフリカ東部のオナの地が野火とリュカオンの襲撃で荒廃し、流浪の民となる。
ウガベ族 (うがべぞく)
『バッコス』に登場する好戦的な遊牧部族。オルペ族を奴隷化する。
ポロ族 (ぽろぞく)
『バッコス』に登場する漁撈部族。小柄。ポロ川の住民だったが火山の爆発によって難民化し、放浪中のゼウスの配下となる。
トロ族 (とろぞく)
『バッコス』に登場する遊牧部族。雨乞いに失敗したキロンを殺害する。飛蝗の被害から逃れるオナ族の行く手を阻み、戦争となるが、後に結束してヘラ族(農耕民)と戦う。
オナ族 (おなぞく)
『バッコス』に登場するオナランドで支族を多く持つ遊牧部族。ゼウスが指導者となる。
バッコス信女 (ばっこすしんじょ)
『バッコス』に登場する教祖化したバッコスの信者の中核となる女性信者の一群。幻覚物質を含む酒やバッコスの聖水(尿)に酔い、怪力で人や獣を集団で引き裂く。
ヘラ族<遊牧民> (へらぞくゆうぼくみん)
『バッコス』に登場する、ポロ族を率いるゼウスと同盟を結ぶ遊牧部族。同名の強大な農耕民族については「ヘラ族<農耕民>」を参照。
ヘラ族<農耕民> (へらぞくのうこうみん)
『バッコス』に登場する農耕部族。土地に定住し、食料備蓄が可能で、多くの人口を養える農業の強味で強大化。トカゲ神を崇拝している。
場所
オナ
『バッコス』に登場するアフリカ東部地域。本書ではオナランドとも表記されている。この地域にはオナ族とその支族を中心に諸部族が居住しており、ヘラ族と同盟を結んだゼウスがオナを名乗っていることから、地域全体の部族を総称してこう呼ぶと考えられる。