あらすじ
ヴィオレットのタイムリープ
ヴィオレット・レム・ヴァーハンは両親から愛されておらず、さらにヴィオレットの父が実母のベルローズ・レム・ヴァーハンが病死してからすぐに再婚したことを受け、義理妹のメアリージュン・レム・ヴァーハンと一つ屋根の下で暮らすことになる。自分とは違って愛されて育ち、天真爛漫(らんまん)な性格のメアリージュンの存在が面白くないヴィオレットは彼女に冷たくあたり、そのことが原因でずっとあこがれていたクローディア・アクルシスは、メアリージュンと恋仲になってしまう。メアリージュンへの嫉妬に狂ったヴィオレットは、彼女の殺害計画を企てるが未遂に終わる。そして、ヴィオレットには一度死刑判決が下されるものの、メアリージュンの証言によって命は救われるが、暗い地下牢に閉じ込められたまま生活することになる。ヴィオレットが孤独と疲労感で気を失って目を覚ますと、そこはメアリージュンと初めて顔を合わせたばかりの時間軸であり、自らがタイムリープしたことに気づく。そこでヴィオレットは今度は地味に目立たずに生き、学校を卒業したあとは修道女になって穏やかな暮らしをすることを目標にする。
クローディアに興味を抱かれるヴィオレット
修道女になって穏やかな暮らしを実現させるためにヴィオレット・レム・ヴァーハンは、なるべく目立たないように過ごしていた。しかし、ヴィオレットは王家主催のお茶会で、メアリージュン・レム・ヴァーハンが嫌がらせを受けているところを助けてしまう。そのことからヴィオレットはクローディア・アクルシスと急接近し、彼から興味を抱かれるようになる。以前はあこがれていたとはいえ、国でも一番目立つ存在のクローディアとは距離を置きたいヴィオレットは、タイムリープ前に恋仲になっていたメアリージュンと彼をくっつけようと画策する。そんな中、学園では芸術祭が催されることになり、ヴィオレットはメアリージュンをヴァイオリンのクラス代表者として選出させ、クローディアとメアリージュンを急接近させる計画を思いつく。こうしてヴィオレットは、メアリージュンにヴァイオリンの個人レッスンを行う。そして芸術祭当日、メアリージュンの演奏はヴィオレットの教えと本人の才能もあり、大成功する。一方、クローディアがステージに上がろうとしたところ、衣装が破れるトラブルが発生してしまう。
予想外の勉強会
ヴィオレット・レム・ヴァーハンはタイムリープ前の世界のように、メアリージュン・レム・ヴァーハンとクローディア・アクルシスを恋仲にしようと画策するがうまくいかず、なぜか自身がメアリージュンと親しくなる出来事ばかりが続いていた。そんな中、ヴィオレットはユアン・クグルスから頼まれ、二人で勉強会をすることになる。その場に偶然メアリージュンも現れ、勉強会に参加する。さらにクローディア・アクルシスとミラニア・デオールも加わり、ヴィオレットはタイムリープ前では考えられなかったメンバーと交流することになる。その場でもヴィオレットは、メアリージュンとクローディアをくっつけようとするがうまくいかず、空回りしてばかりの状況に陥る。
ユアンのヴィオレットへの思い
ヴィオレット・レム・ヴァーハンはユアン・クグルスと幼なじみであり、彼女はこれまで彼を異性として意識したことはなかった。その一方で、ユアンはヴィオレットと出会った頃から一人の女性として好意を抱いていたが、タイムリープ前の世界では彼女がクローディア・アクルシスに夢中であったため、何もできずに終わっていた。タイムリープ後の世界でヴィオレットの立ち振る舞いが変わったことから、彼女とユアンは急接近していく。そんなある日、ヴィオレットとユアンはいっしょに街に出かけ、お互いにプレゼントをし合うことになる。
クローディアの妃候補が集う避暑会へ
貴族や裕福な家柄の子息が通う「タンザナイト学園」では、毎年「避暑会」と呼ばれる催し物があり、選ばれた一部の貴族だけがジュラリア王国から招待を受け、王家の保養地にあるマナーハウスで夏を過ごす習わしがある。今回はクローディア・アクルシスの妃候補探しの一環でもあることから、ヴィオレット・レム・ヴァーハンは招待されるものの断るが、それならばメアリージュン・レム・ヴァーハンも行かないと言い出し、ヴィオレットはしぶしぶ参加することになる。避暑会でもクローディアではなく自身を慕ってくるメアリージュンに対して、ヴィオレットは思いどおりにいかない苛立(いらだ)ちもあり、つい厳しい言葉を口にしてしまう。ヴィオレットは自己嫌悪に陥り、一人で庭を散歩していたところ、その姿を見かけたクローディアが声をかけてくる。こうしてヴィオレットとクローディアは、久しぶりに二人きりで話をすることになる。そしてヴィオレットは、タイムリープ後の世界のクローディアは、メアリージュンにいっさい興味がないという衝撃的な事実を知ってしまう。
登場人物・キャラクター
ヴィオレット・レム・ヴァーハン
ジュラリア王国の名門貴族であるヴァーハン家に生まれた一人娘の令嬢。貴族や裕福な家柄の子息が通う「タンザナイト学園」の2年生。メアリージュン・レム・ヴァーハンとは腹違いの姉妹で、義理姉にあたる。裕福な出生ではあるもののヴィオレットの父は、メアリージュンの母親を妾(めかけ)にして自宅に帰って来ず、実母のベルローズ・レム・ヴァーハンは父親に執着して娘にはまったく興味を示すことなく、孤独を抱えながら育った。ベルローズが死去してすぐにヴィオレットの父が、妾だったメアリージュンの母親と再婚し、いっしょに住むことになる。メアリージュンの明るく朗らかな性格をうっとうしく感じ、さらにひそかに思いを寄せていたクローディア・アクルシスと恋仲になったことに嫉妬し、彼女の殺害を計画。だが、実行に移したところでメアリージュンに抵抗されて失敗し、いっさいの自由を奪われて投獄されてしまう。その後、孤独と疲労感で気を失ってしまうと、メアリージュンと出会ったばかりの時間軸にタイムリープしていることに気づく。そしてタイムリープ後の人生では誰の干渉もせず、最終的には修道女になって穏やかな暮らしをすることを目標としている。
メアリージュン・レム・ヴァーハン
ジュラリア王国の名門貴族であるヴァーハン家の令嬢。ヴィオレット・レム・ヴァーハンとは腹違いの姉妹で、義理妹にあたる。貴族や裕福な家柄の子息が通う「タンザナイト学園」の1年生。ヴィオレットの父とメアリージュン・レム・ヴァーハンの母親が恋仲であり、妾の子として育つ。その後、ヴィオレットの実母のベルローズ・レム・ヴァーハンが病死したことで母親が再婚し、ヴァーハン家で暮らすようになる。妾の子ではあるもののヴィオレットの父と実母から愛情を受けて育っており、素直で優しい無邪気な性格の持ち主。その無邪気な性格をクローディア・アクルシスに見染められ、ヴィオレットがタイムリープする前の世界では彼と恋仲になっている。両親の愛情を受けて育ったことや、クローディアと両思いになったことをヴィオレットから嫉妬され、一度は殺害されそうになるが難を逃れている。ヴィオレットがタイムリープしたあとの世界では彼女に懐いており、姉として大いに慕っている。周囲からは「メアリー」と呼ばれている。
クローディア・アクルシス
ジュラリア王国の第一王子。王位継承者で、貴族や裕福な家柄の子息が通う「タンザナイト学園」の3年生。ヴィオレット・レム・ヴァーハンがタイムリープする前の世界では、彼女からひそかにあこがれられていた。しかし、メアリージュン・レム・ヴァーハンと恋仲になり、ヴィオレットがメアリージュンを殺害する動機の一つを作ってしまった。タイムリープ後はメアリージュンではなく、ヴィオレットに興味を抱くようになる。美しく整った顔立ちをした美男子で、王位継承者に相応(ふさわ)しい堂々とした振る舞いを見せる気品あふれる人物。ただし思い込みが激しく、何事も白黒はっきりつけないと気が済まないところがあり、クローディア・アクルシス自身でも克服したいと努力している。国内では絶対的な権力を持っており、クローディアの意見に逆らう者はいないが、例外としてユアン・クグルスからは意見されることが多い。
ユアン・クグルス
ジュラリア王国の貴族の出身の男子。ヴィオレット・レム・ヴァーハンの一つ年下の幼なじみ。貴族や裕福な家柄の子息が通う「タンザナイト学園」の1年生。ヴィオレットの実母のベルローズ・レム・ヴァーハンが死去したあとに、すぐヴィオレットの父が再婚したことを気にしており、ショックを受けていないかと何かと気にかけている。出会った頃からヴィオレットに恋心を寄せているため、タイムリープ前も何かとヴィオレットを気遣っていたが、精神的に追い込まれていた彼女には届かず、殺人未遂事件へと発展してしまう。タイムリープ後はヴィオレットがクローディア・アクルシスに好意を抱かなくなったこともあり、彼なりのアプローチをするようになる。生まれてから家族に恵まれていなかったヴィオレットにとって、唯一の心許せる存在。王家の分家筋にあたり、父親は宰相として王と国を支えている。そのため、絶対的な権力を握っているクローディアにも対しても、唯一意見できる立場でもある。
ギア・フォルト
ジュラリア王国の隣国にあるシーナ国の王子。貴族や裕福な家柄の子息が通う「タンザナイト学園」の2年生の男子。ジュラリア王国には勉強のために留学している。クラスメイトのユアン・クグルスを通じて、ヴィオレット・レム・ヴァーハンとも知り合いになる。褐色の肌を持つ美男子で、細身のスタイルではあるが大食い。勝気かつ大胆な性格で、言いたいことははっきり口にするため、空気が読めない一面もある。ユアンのことを気に入り、何かとちょっかいを出して楽しんでいる。また、ユアンがヴィオレットに好意を抱いていることを見抜いており、応援している。
ミラニア・デオール
ジュラリア王国の貴族の出身の男子。貴族や裕福な家柄の子息が通う「タンザナイト学園」の3年生の男子。生徒会の副会長を務め、学園内ではクローディア・アクルシスの側近的な役割を担う。タイムリープ前の世界では、ヴィオレット・レム・ヴァーハンとかかわることはほとんどなかった。タイムリープ後の世界ではクローディアが、ヴィオレットに興味を抱いていることに気づいており、何かと彼に協力している。端正な顔立ちと、物腰の柔らかい話し方をする頭脳派で、女子生徒から非常に人気が高い。周囲からは「ミラ」と呼ばれている。
ロゼット・メーガン
ジュラリア王国の隣国にあるリトス国の王女。貴族や裕福な家柄の子息が通う「タンザナイト学園」に所属している。ジュラリア王国には勉強のために留学している。タンザナイト学園の恒例行事である避暑会で、ヴィオレット・レム・ヴァーハンと顔見知りになり、以降親しくしている。身分は高いものの鼻に掛けるような言動はせず、おっとりとした穏やかで優しい性格の持ち主。
マリン
ジュラリア王国の名門貴族であるヴァーハン家に仕えるメイドの女性。主にヴィオレット・レム・ヴァーハンの身の回りの世話をしており、彼女からも信頼されている。ヴァーハン家に忠実なメイドのように振る舞っているが、ベルローズ・レム・ヴァーハンがありながら外部に妾を作って子供まで設けたヴィオレットの父が許せず、再婚後に屋敷で堂々と暮らしているメアリージュン・レム・ヴァーハンと、その母親を受け入れられずにいる。
ヴィオレットの父 (ゔぃおれっとのちち)
ジュラリア王国の名門貴族であるヴァーハン家の当主の男性。ヴィオレット・レム・ヴァーハンとメアリージュン・レム・ヴァーハンの父親。ヴィオレットの実母のベルローズ・レム・ヴァーハンとは政略結婚であり、最初から愛情はまったくなかった。ベルローズから向けられる愛情をうっとおしいと感じていたところ、メアリージュンの母親と出会って恋に落ちる。その後、メアリージュンが誕生し、ヴィオレット以上に愛情を注いで育て上げる。ベルローズが病死してからは、すぐにメアリージュンの実母と再婚している。ベルローズに愛情がないことから、娘のヴィオレットにも興味がなく、接点があっても冷たくあたる。その一方で、メアリージュンには変わらず愛情を注いでおり、ヴィオレットがタイムリープ前に彼女の殺害を企てる動機の一つを作っている。
ベルローズ・レム・ヴァーハン
ジュラリア王国の名門貴族であるヴァーハン家の当主、ヴィオレットの父と結婚した女性。ヴィオレット・レム・ヴァーハンの実母で故人。ヴィオレットの父とは政略結婚ではあったものの、本当に彼を愛しており、自分に愛情を向けて欲しいとしつこく追い回していた。その一方で、ヴィオレットの父は自分の方を向いてくれないどころか、外部に妾を作り、二人のあいだにメアリージュン・レム・ヴァーハンを設けたことに嫉妬し、体調を壊してしまう。そのことが原因で病死しているが、メアリージュンは誰からも一連の流れを知らされていない。ヴィオレットの父からの愛情だけを欲しており、娘のヴィオレットにも無関心だった。
クレジット
- 原作
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空谷 玲奈
書誌情報
今度は絶対に邪魔しませんっ! 5巻 幻冬舎コミックス〈バーズコミックス〉
第4巻
(2022-06-23発行、 978-4344850552)
第5巻
(2024-02-24発行、 978-4344853706)