世界観
現代社会を背景にした、とある中学校の学園ストーリーだが、大きな身体的変化を伴ったキャラクターが数多く登場する。この漫画の世界では、第二次性徴の際に、単眼化したり、腕が増えたり、翼が生えたりする。
あらすじ
周囲の友達よりも早くに第二次性徴が表れ、小学生で単眼化した主人公の真中一美ことヒトミ先生は、「人と違う」ことに悩み、ふさぎがちであった。しかし、幼馴染の多々良拳四郎の励ましもあり、自信を取り戻したヒトミ先生は、持ち前の穏やかな性格を損なうことなく成長していく。母親の失踪を経験し、母親代わりとして家族を支え続けたヒトミ先生。母校の中学校の保健室でも、保健の先生として母親のように愛すべき生徒の悩みに向き合い、問題を解決していく。
作風
作風の特徴の一つとして擬音の用い方がある。擬音を多用し、コミカルなものやぬるぬるした感じなどを詳細なタッチで描く。また擬音の太枠内にも一文を入れることで、画面の情報量を増している。さらに、哲学的な要素も随所にちりばめられている。代表的なものに、メタ的な視点からのマンガ表現論などがある。
登場人物・キャラクター
真中 一美 (まなか ひとみ)
中学校の保健室の女性教諭。単眼系養護教員。目が1つで、顔面の半分を占める程の大きさ。推定Gカップの巨乳。天真爛漫な性格をしているが、幼い頃は人見知りで、大人しい子供だった。母親が蒸発してからは、家族の母親代わりに勤しむ。ドジゆえに優秀な妹にフォローされがち。生徒の悩みはすぐに見抜けるが、男を見る目がなく、3~4回は失恋しており、恋愛は苦手。
多々良 拳四郎 (たたら けんしろう)
とある中学校の2年A組担任の男性。生徒会顧問。多腕系理科教諭で、4本の腕を持つ。4本の腕はどれも利き手であり、手先が器用。手持ち無沙汰なため、空いている手はタバコをはさんでいる。貧乳派。淡々としていて、真面目な性格。ヒトミ先生の幼馴染で、真中家とは小学生の頃からの付き合い。
門司 勇輝 (もじ ゆうき)
とある中学校の2年B組担任の男性。多毛系体育教諭で、全身を長く太い体毛に覆われている。さながら雪男。ほがらかな性格で、かつ熱血漢。生徒や他の教諭に親しまれている。体毛を刈ると、キャラデザが変わった、と生徒に突っ込まれるほどの美男子。
神永 乙女 (かみなが おとめ)
とある中学校の2年D組担任の女性。触髪系国語教諭。足元まで伸びる頭髪には神経が通っていて、触手のように自在に動く。女の子が大好きで、ヒトミ先生の身体を自慢の髪で弄り回し、成年誌のような淫らな声をあげさせている。このような女好きでスケベという本性は周りに隠しているため、生徒からは、持ち前の女子力の高さや凛々しさで尊敬されている。
樹 翠 (いつき みどり)
とある中学校の保健室の教諭。性別不詳の植物系養護助教諭。葉緑素を多く含む、緑色の髪や目で光合成をし、周囲に酸素を供給して、癒しを与えているらしい。おもにヒトミ先生の業務を補助しつつ弄り倒している。植物系ということもあり、性別的には男でも女でもないが、深刻にとらえてはおらず、ドライな性格をしている。ヒトミ先生と多々良先生とキャラが被らないように、ナース服を着ている。
ピカール先生 (ぴかーるせんせい)
とある中学校の頭がつるぴか系英語教諭の男性。頭がピカピカなほど見事に禿げ上がっている。中学生時代のヒトミ先生や多々良先生を教えていた。10年以上前の彼らのこともしっかり覚えており、生徒のことをよく見ている先生。登場回数は少ないが、とある中学校の温かみの象徴である人物。
多々良 るり (たたら るり)
多々良先生のお母さん。美魔女系ママ。成長が幼い頃から止まったまま、という特性がある。アラフォーなのに、当時小学生の多々良先生の妹と間違われるほど見た目が幼い。息子とは違い、天真爛漫で、どこかちゃらんぽらんな面がある。息子とヒトミ先生がくっつけばいいのにと思っているため、あの手この手で揺さぶりをかけるシーンもある。
真中 二美夫 (まなか ふみお)
ヒトミ先生の弟。二尾系男子。頭から腰までの長さの2本の尻尾が生えている。さながらポニーテール。尻尾は自在に操れるため、武器としても使える。その出で立ちから、女の子に間違われることをコンプレックスに思っている。一方でひょんなことから始まった、男の娘メイド喫茶でのバイトを、居心地よく感じている。姉のヒトミ先生が過保護なため、実家を出てからはあまり連絡を取っていない。 多々良先生を昔から実の兄のように慕っていて、今でも頻繁に交流している。
九郎明川 サキ (くろめがわ さき)
ヒトミ先生の中学生時代の友人。黒目系女子。白目の部分が黒く、頭部に短い角が2生えている。中学生の頃、多々良先生のことが気になっていた。当時、ヒトミ先生と多々良先生の複雑で特別な関係性に気付いていたが、多々良先生への憧れを止められず、告白する。その後、うやむやなまま転校してしまい、ヒトミ先生は2人が付き合っていたものと勘違いしていた。 大人になって懐かしの母校を訪れ、ヒトミ先生と昔話に花を咲かせた際に、2人の誤解は解消される。
徹子 (てつこ)
ヒトミ先生の中学生時代の友人。鉄腕系女子で、左腕が鉄腕になっている。中学生時代、ヒトミ先生と多々良先生と九郎明川サキは微妙な三角関係だった。ヒトミ先生は、自分が九郎明川サキに嫉妬してるとも気づかず、差を付けられたという負の感情で、泣いてしまう。徹子はそんなヒトミ先生を慰める良い友人だった。 現在、鉄腕は立派に肥大化している。
真中 三美 (まなか みつみ)
とある中学校の女子。ヒトミ先生の妹。生徒会執行部で生徒会長。多眼系女子で、額に第3の目を持つ。頭脳明晰で文武両道。視界の切り替わりで人格が交代する。1眼時人格は天眼(てんがん)と呼ばれ、高圧的で手が出やすい。多々良先生を目の敵にしている。3眼時人格はみぃと呼ばれ、幼く可愛らしい、三美の素の部分が凝縮されたような性格。 どの人格でも、姉であるヒトミ先生が大好き。
桐生院 花園 (きりゅういん かえん)
とある中学校の女子。生徒会執行部で副会長。火竜系女子。頭部に角を2本持ち、口から火を噴ける体質。桐生院グループの社長令嬢。語尾は「~ですわ」。真中三美にただならぬ感情を抱いている。生徒会執行部の戸浦大賀とは犬猿の仲。
松代 奈幸 (まつしろ なゆき)
とある中学校の女子。2年B組所属。生徒会執行役員で書記を務める。雪白系女子で、体が雪のように真っ白で、触れたものも白くなる体質。普段は体温もテンションも低く、冷淡な印象を受ける。ふかふかしたものや、可愛いものが好きで、みぃちゃんや門司先生を慕っている。門司先生とよくスキンシップを図るため、門司先生を気にしている鳶田陽菜とも交流が生まれている。
戸浦 大賀 (とうら たいが)
とある中学校の男子。生徒会執行部で庶務を務める。虎態系男子で、虎のような頭と、がっちりした体をもつ。血の気が多く喧嘩っぱやいが、天眼に忠誠を誓っている。頭部にかかと落としをもらって跪かせられるのを喜ぶなど、マゾヒストな一面もある。生徒会の桐生院花園とは犬猿の仲。
根津 宙太 (ねず ちゅうた)
とある中学校の男子。生徒会執行部で会計を務める。鼠態系男子で、ネズミのような耳と尾を持つ。性格は臆病。父親が桐生院家で仕事をしている関係で、桐生院花園とは幼少の頃から親しく、姉弟のような関係。桐生院花園のことを「お嬢様」と呼ぶ。
設楽 伸子 (したら のぶこ)
とある中学校の女子。2年A組所属。長舌系女子で、舌の長さは約320cm。元々は明るく饒舌だったが、長い舌を気にして暗い性格になってしまう。ヒトミ先生に相談した後、ショートカットにして、イメージチェンジした。初登場以降のストーリーでは、樹翠に教わったベロテクで、意中の男の子にアピールしている。
留居 静流 (とめい しずる)
とある中学校の女子。2年A組所属。透明系女子で、身体の透明度が変化する体質。元から影の薄いタイプだったが、透明になる体質になってからは、それが加速。制御が効かずに、からも気づかれなくなる恐怖にかられ、ヒトミ先生に助けを求めた。透明化のコントロールは依然下手なまま。衣服のみ透明化してしまい、露出狂さながらになったりもするが、変態という心根に気づける、いい機会でもあった。
埴生 大助 (はにゅう だいすけ)
とある中学校の男子。2年A組所属。女乳系男子。性ホルモンのバランスの変化によって、胸だけが急激に膨らむ。おっぱいが大好きな気持ちが先行し、同級生にはセクハラばかりしていた。ところが、いざ自分に豊満なおっぱいができて、友人らに欲情の目を向けられて、女性の気持ちを知る。ヒトミ先生への相談で目覚め、気分次第で女装を嗜むようになった。
田部 つくし (たべ つくし)
とある中学校の女子。2年A組所属。総食系女子で、何でも食べられる口と消化器官を持つ。口は硬質化しているものの、甘嚙みから鉄を食いちぎるまでの調節が可能。何よりも食べることが大好きで、ほおばる際にとても幸せそうな表情をうかべる。食欲が収まらず、恋愛にかまける間もない。友達との会話にもついて行けない淋しさから、断食した結果、空腹で暴走してしまう。 二林景人のおかげで、食欲に折り合いをつけることができるようになった。
二林 景人 (ふたばやし かげと)
とある中学校の男子。2年A組所属。再生系男子で、トカゲの尻尾のように、体の一部を自切・再生できる体質。田部つくしの幸せそうな食べっぷりに惚れている。ひょんなことから田部つくしに急接近したが、それ以降の田部つくしとのスキンシップ方法には、少なからずためらいを覚えている。
鳶田 陽菜 (とびた ひな)
とある中学校の女子。2年B組所属。鳥翼系女子で、滑空のみならず、自力で飛び立つこともできる。初登場時は非行少女であり、持っていたタバコを門司先生に見とがめられた。空を飛び回る自由を得たが、クラスで浮いた存在となり、身を挺してまでまともに向き合ってくれた門司先生のことを、意識しだしている。
奥藤 八純 (おくとう はすみ)
とある中学校の女子。2年B組所属。蛸脚系女子。脚の付け根から4本、腰から4本、頭足類のような吸盤や、強い筋力を備えた脚が生えている。緊張すると、瞳孔がタコの目のように変わる。大久保杏奈のミステリアスな雰囲気が気になっており、ある出来事をきっかけに、名前で呼び合う仲になる。
大久保 杏奈 (おおくぼ あんな)
とある中学校の女子。2年B組所属。顔孔系女子。顔の中心に大きな孔があいているため、目や鼻や口の機能は全てその孔が担っている。元々は美少女だったそうだが、顔に孔があいて以来、表情が分からない、怖いなどと敬遠され、クラスでは浮くようになってしまった。ひょんなことから奥藤八純と仲良くなる。首から下は、中学生とは思えないダイナマイトボディ。
安蒜 里知 (あびる りち)
とある中学校の女子。2年B組所属。新聞部に所属する。蛭口系女子で、吸血に適した尖った歯や体の末端の吸盤など、ヒルの生態に似た体質を持つ。月に一度、数日間、他人の血液を吸いたいという衝動に駆られる。同じ新聞部の先輩・小森稀喜という血液提供者のおかげで安定した。
富士見 ヨミ (ふじみ よみ)
とある中学校の女子。2年D組所属。不死身系女子で、超生命力・超治癒力を併せ持つ、滅多に死なない体質。天真爛漫な性格。かつて事故で切断した部位の癒着が不完全なため、頻繁に外れる。それをいいことに、頭だけ学校の門から教室に投げ入れ、遅刻を免れたり、腕を投げてロケットパンチなどをしている。そのためヒトミ先生には自分を大事にするようにと言われ、心配されている。
大木 京子 (おおき きょうこ)
とある中学校の女子。2年D組所属。巨躯系女子。最近は毎日1cmずつ身長が伸びており、3mの大台も間近。体格に見合わず大人しい性格。小山内千沙とは親友で、昔は守られる立場であった。しかし、身長差が2人の精神的距離も離してしまい、ギクシャクした関係になってしまう。その関係の改善を、ヒトミ先生に手助けしてもらった。
小山内 千沙 (おさない ちさ)
とある中学校の女子。2年D組所属。短躯系女子で、第1巻での身長は104.5cmと、5歳児女子の平均身長より低い。性格は物おじしないタイプだが、年々体格が小さくなり、身体が心に追いつけていない。親友である大木京子に引け目を感じ、自己嫌悪している。そんなある日、大木京子に八つ当たりしてしまった小山内千沙は、関係の修復にヒトミ先生を頼る。
日蔭 暗魅 (ひかげ あやみ)
とある中学校の女子。2年D組所属。暗影系女子。影と同化する体質で、影に潜り、気配を断つことができる。大人しくまた暗い性格をしている。普段は気配を消して、漫画や小説を読んでいる。現実の男性が苦手で、女性同士の恋愛に淡い憧れを持ち、百合作品を読み始めている。時々心の暗部が、身体の表面から文字の形でにじみ出てしまう。
宇吹 紙織 (うすい しおり)
とある中学校の女子。2年D組所属。平面系女子で、体の一部または存在自体が、ほぼ完全な平面に変化する体質。おちゃらけた性格だが、日蔭暗魅とは凸凹コンビとして仲が良い。完全な平面は「紙」、言い換えれば「神」の視点を持つということで、彼女は自身を含めた周囲を『ヒトミ先生の保健室』という漫画の世界だと認識しており、たまにメタ的な発言をする。
間尻 煌姫 (まじり きらめき)
とある中学校の女子。2年D組所属。合成系女子で、触れた動物などの特徴を取り込んで、自らに合成する体質。自分の身体とどのように混ぜ合わせて形成するかは、調整が効く。しかし、どことなく抜けている性格なので、へんちくりんな生命体に変貌してしまうこともしばしば。
若月 成貴 (わかつき なるき)
とある中学校の男子。2年D組所属。自己愛系男子。校内一のイケメンだが、自分を愛しているため、告白されても断り続けていた。人の顔のように見える大きな隆起物(人面瘡)が、お腹にあらわれ、ヒトミ先生に相談した。その人面瘡は日々成長し、生きていることが判明する。顔立ちの整っていく人面瘡は、自分の顔に似ており、自己愛のある彼は、人面瘡にカオリと名づけて愛でるどころか淡い恋心を抱く。 成長しきったカオリは、若月成貴の右肩に頭部と首を生やす形で落ち着いた。カオリ自身は若月成貴とは独立した人格を有した美少女。
福良 真理男 (ふくら まりお)
とある中学校の男子。2年D組所属。膨化系男子で、自身の髪や周囲の生物を膨らませることができる。ふっくらとした、マリモのようなアフロヘアが特徴。ストレスで自身の膨化能力をコントロールできなくなり、ヒトミ先生に相談しに行く。元々は柔らかい性格をしている。
小森 稀喜 (こもり きき)
とある中学校の女子。3年D組所属。新聞部に所属する。蝙耳系女子で、コウモリのような、大きな耳を持つ。学校新聞にもかかわらず、人気のある人物のゴシップネタを耳聡く聞きつけ、記事の反響を楽しんでいる。どんな人間にもゴシップはある、との信条を抱き、ヒトミ先生に関して、生徒や先生にインタビューして回る。後輩の面倒見がよい。
その他キーワード
第二次性徴 (だいにじせいちょう)
第二次性徴の際に伴う大きな身体的変化のこと。身体的変化の内容は、単眼化したり、体が透明化したり、腕が増えたり、翼が生えたりとさまざま。作者のあとがきによれば、「第二次性徴」の「性」は本作においては性別だけでなく「性質」も指しているとのこと。女の子は第二次性徴が早く表れる傾向にあり、ヒトミ先生は小学生の頃には単眼であった。
書誌情報
ヒトミ先生の保健室 18巻 徳間書店〈リュウコミックス〉
第16巻
(2022-10-13発行、 978-4199507953)
第17巻
(2023-05-12発行、 978-4199508158)
第18巻
(2024-03-13発行、 978-4199508493)