ファントムバスターズ

本作の舞台は、鎌倉市の柳桜高校。入学式の日に、英国人クォーターの是岸遊人（コレシキ）と宍喰野虎落（モガリ）という新入生が出会ったことから物語は始まる。コレシキは非科学的なものは信じない超優等生。一方モガリは、代々霊媒家業の家系に生まれた、修行中の除霊師である。正反対の二人だったが、ハチャメチャながら一本気なモガリに、コレシキは惹(ひ)かれる。また、大好きだった祖母の「頭ではなく心で体験する、未知で刺激的なものがある」という言葉を思い出し、霊はともかくモガリのことは信じるようになった。そんな二人は、幼少時から幽霊が視(み)えることに悩んでいた観崎薫（ザキ）、生身の人間とは話せないが、霊とは安心して話せるという多聞康太郎（タモン）を勧誘し、超常現象研究会「ファントムバスターズ」を結成する。本作は、悪霊退治のスリリングなバトルが見どころだが、ベースとなっているのは、青春真っ只中の男子学生四人の部活動と友情を描いたコメディである。

モガリの実家は、秋田県・宍喰野霊山に山門を構える宍喰野一門である。彼らは、死霊を喰らい、喰らった死霊を使役して人の呪殺を請け負う者たちで、源頼朝もその力を借りたというほど長い歴史を持つ。モガリは宍喰野の純血を引く、唯一の後継者だが、未熟であり霊を喰らうことができても、自力で霊を視ることができない。そのため、宍喰野霊山で10年の修行を積むはずだったが、モガリの望みは高校で青春することだった。そこで、1年で1000体の除霊を行うという条件で鎌倉にやってきたのだが、そんなモガリの様子を見にやってくるのが、分家の息子である斂である。父からモガリ暗殺の命令を受けているが、少し抜けたところがあり、「ファントムバスターズ」と交流するうちに迷いを生じた。その後、モガリの隣に住むことになり、暗殺の機会を窺(うかが)いながらもモガリを助けるという複雑な立ち位置になった。

「ファントムバスターズ」の除霊方法は、ザキとタモンに触れることで霊視能力を得たモガリが、悪霊を喰らうというもの。しかし、この世に留まる幽霊は悪霊ばかりではない。そんな相手には、なるべく平和的な除霊を行うのが「ファントムバスターズ」の流儀である。例えば、誰にも使われなくなった部室にいた、乙姫という約800年前の霊の望みは、ギャルのような制服を着て鎌倉見物することだった。そこでモガリたちは、乙姫をザキに憑依(ひょうい)させて街に繰り出し、彼女を成仏させた。また、カラオケボックスの地縛霊は、「ファントムバスターズ」との出会いで、誰かと歌う楽しさを知り、穏やかに成仏していった。様々な事情を抱えた霊たちと交流し、成仏させるという人間ドラマ的要素も本作の魅力の一つである。