あらすじ
第1巻
女子高校生の五月美雨は、母親の五月美斗と2人きりの生活をしていた。そんなある日、美斗は借金のカタに美雨をレオン・ロサスに売り、自分は姿をくらませてしまう。街で偶然出会った時から美雨に惹かれていたレオンは、美雨を連れて自分の故郷、トルナディアに帰郷し、強引に自分の妻とするのだった。最初は嫌がっていた美雨も、自分を本気で求めてくるレオンに、次第に惹かれていく。だが、そんな中、クーデターが発生し、トルナディアの権力者だったレオンの一家はテロリストによって次々に惨殺されていく。逃避行の末、美雨とレオンもテロリストに捕まってしまうが、美雨は単身脱出。バーの女性オーナーであるマレーナと知り合い、彼女にかくまわれることとなる。
第2巻
トルナディアを手中に収めようと目論むシルバ将軍は、五月美雨を追ってマレーナの店を襲撃。銃弾が飛び交う中、美雨はかつて自分とレオン捕らえたテロリストのファン・オルティスに命を救われる。美雨に心惹かれていたファンは、レオン・ロサスが生きていることを伝えるが、逃避行のさなか美雨を庇って大怪我を負ってしまう。そしてファンは最期の力を振り絞り、美雨をレオンのもとに送り届けるのだった。 こうして、美雨はようやくレオンと再会するが、レオンの命を狙うシルバ将軍の追跡は激しさを増していく。そこで美雨とレオンは別行動し、ニューヨークで落ち合おうと約束する。だが、ニューヨークに着いた美雨は、マフィアの麻薬取引に巻き込まれてしまい、レオンが差し向けた迎えの相手と会えず、見も知らない場所に連れ去られてしまう。レオンに連絡する手段もない美雨は、仕方なくマフィアのボス、ディエゴにタンゴを教えているアイザック・プリンスに雇われ、ダンサーとして舞台に立つことになる。アイザックとのタンゴは情熱的であり、そんなアイザックの勢いに押され、美雨は彼に身体を許してしまう。その後、ようやく再会したレオンは、美雨の心が自分から離れたと感じ、彼女から身を引くのだった。
第3巻
アイザック・プリンスと別れる決意をした五月美雨は、彼のもとを出て行こうとする。しかし、シルバ将軍にレオン・ロサスを殺すよう依頼されたディエゴによって、美雨とアイザックは捉えられ、拷問を受ける。レオンの居場所を知らない美雨は、アイザックを庇って死ぬことを決意するが、そこへ危機一髪でレオンが現れ、2人を救出。レオンと美雨は日本へ向かい、そこで2人の母親が、実は幼なじみの親友であったことを知る。日本で美雨は久しぶりに母親、五月美斗や血の繋がらない弟の弓弦と再会する。一方のレオンは、自分の故郷と地位を取り返すために、危険を承知で再びトルナディアへと戻るのだった。 そんな中、シルバ将軍が再び美雨の前に現れる。わざとシルバ将軍に囚われ、トルナディアに向かった美雨は、彼を油断させてベッドの中で殺そうとするが失敗。さらに、レオンも捕まってしまう。シルバ将軍はパーティを開き、そこで美雨を自分の花嫁とし、さらに見せしめのためにレオンを処刑しようとするが、そこに死んだと思われていたファン・オルティスが姿を現し、シルバ将軍を追い詰めていく。この戦いに勝利を収めたファンとレオンは、シルバ将軍をその場で殺さずに、法に照らして裁くことにより、トルナディアを再び法治国家として立て直していくことを決意するのだった。
登場人物・キャラクター
五月 美雨 (さつき みう)
タンゴを踊るのが得意な女子高校生。母親の五月美斗に、借金のカタとしてレオン・ロサスに売られてしまい、数奇な運命をたどることになる。外見はまだ幼い少女のようでありながら、ひとたびタンゴを踊ると娼婦のような妖艶さをかもし出し、男性たちを次々と虜にしていく魅力の持ち主。運命に翻弄されながらも強い意志を持ち続け、とっさの判断で窮地を切り抜ける機転も持ち合わせる。
レオン・ロサス (れおんろさす)
トルナディア人の父親と、日本人の母親を持つ男性。母親同士が親友だった五月美雨のことを知っており、五月美斗から借金のカタに美雨を買い取り、故郷に連れて行って花嫁にしようと試みた。美雨のことは大切に想っており、最初は力ずくながら愛しているという気持ちを伝え、想いを通じ合わせる。故郷であるトルナディアでクーデターが勃発して命を狙われるようになるが、トルナディアをもとの法治国家に戻すために尽力する。
ファン・オルティス (ふぁんおるてぃす)
トルナディアでテロリストのリーダーを務めている男性。シルバ将軍にそそのかされてクーデターを起こしたが、のちにシルバ将軍から利用されていたことを知り、反旗を翻す。当初は命を狙うターゲットであった五月美雨に惹かれてしまい、本気で美雨を守ろうとしたため、自らの命を危うくすることとなる。閉鎖的な村に生まれ、部族以外の男性と関係を持った母親とともに、迫害されて育ったという過去を持つ。
五月 美斗 (さつき みと)
五月美雨の母親。スナックを経営している。金にだらしがなく、借金を重ねており、そのカタとして美雨をレオン・ロサスに売った張本人。ただし、これには借金取りに危険な目に遭わせられないよう、美雨をレオンに預けたという側面もあり、レオンに対しては、美雨を妻にして大事にするよう条件を出していた。だらしないところもあるが、美雨のことは母親として愛している。
弓弦 (ゆづる)
五月美雨の血の繋がりのない弟。弓弦の父親と五月美斗が再婚したので、五月美雨とは数年だけ家族としてともに暮らしたことがある。美雨のことを女性として本気で愛しているが、美雨からは受け入れてもらえず、自暴自棄になっている。美少年で、学校では女子人気が高いが、弓弦自身は美雨にしか興味がない。
アリシア・アレクサンドリ (ありしああれくさんどり)
トルナディアで有名なマフィアの娘。レオン・ロサスの婚約者だったが、五月美雨に惹かれたレオンによって一方的に婚約を解消された。レオンを想うあまり、父親の権力を使って強引に婚約したという経緯があり、レオンの心を手に入れた美雨に対してライバル心をむき出しにする。
シルバ将軍
トルナディアでクーデターを起こした首謀者の男性。トルナディアを軍事国家にして、自分の思い通りに操ろうと目論んでいる。ロサス家を滅ぼし、生き残りであるレオン・ロサスを亡き者にして、その妻である五月美雨を自分のものにしようと執念を燃やしている。
アイザック・プリンス (あいざっくぷりんす)
ニューヨークでタンゴダンサーをしている男性。薬物中毒者だが、ダンサーとしては一流。五月美雨に心惹かれ、レオン・ロサスと離れて淋しい思いをしている美雨を何度も口説いていた。美雨とは何度かベッドをともにするが、最終的には振られてしまう。シルバ将軍の依頼を受けたディエゴによって、美雨が殺されそうになった時には、身体を張って彼女を助けた。
ナタリア
アイザック・プリンスと付き合っていたダンサーの女性。現在は別れたものの、アイザックの心は自分に向いていると思っている。アイザックの愛を勝ち得るのも、ダンサーとして舞台に立つのも、自分の方が相応しいと、五月美雨にライバル心を燃やす。
ディエゴ
ニューヨークのマフィアに所属する男性。タンゴが大好きで、アイザック・プリンスの大ファン。アイザックにタンゴを師事しながら、彼に麻薬を売り続けている。シルバ将軍に依頼され、レオン・ロサスを捉えるために、アイザックと五月美雨を拷問する。
風子 (ふうこ)
レオン・ロサスの母親で、故人。五月美斗とは幼なじみの仲だったが、中学生の時に両親を亡くしてトルナディアの叔父に引き取られていた。妻子持ちにも関わらず、若い女性が好きなヨアキム・ロサスの愛人にさせられ、彼との間にレオンを生んだ。金に不自由しない生活はしていたものの、愛人という立場に苦しみ、若くして亡くなった。
ヨアキム・ロサス (よあきむろさす)
レオン・ロサスの父親で、故人。大富豪で、トルナディアの影の支配者と評される人物。妻子がありながら若い女性が好きで、レオンの母親である風子を愛人にし、風子の友達である五月美斗にも手を出そうとした。トルナディアで発生したクーデターによって殺されてしまう。
江井 (えい)
弓弦と同じ高校に通う3年生の男子。弓弦にとっては先輩にあたる。不良グループを束ねており、仲間うちに麻薬を売っている。弓弦のことを気に入り、無料で麻薬を渡していたが、それでも自分に懐こうとしない弓弦に不快感を覚えている。
ピオ
アルゼンチン出身の男性。五月美斗の新しい恋人。実はシルバ将軍のスパイであり、レオン・ロサスを捉えるために美斗に近づき、五月美雨の行動を監視しようとした。ヤクザ相手に麻薬を取引する商売もしており、江井に命令して弓弦に麻薬をやらせようとした黒幕でもある。
タチート
トルナディアで牧師をしている男性。娘のマグダレナを、レオン・ロサスの兄の愛人として連れていかれている。その後マグダレナが捨てられ、失意のまま死んでしまったと勘違いしており、ロサス家を憎んでいた。のちにマグダレナが本当に愛されていたという事実を知り、ロサス家への誤解と憎しみを解消する。テロリストに命を狙われていたレオンと五月美雨の結婚式のため力を尽くす。
マグダレナ
タチートの娘。妻子あるレオン・ロサスの兄に、愛人として囲われていた。美しくて優しい性格で、幼くして母親を亡くしたレオンに対し、母親のように温かく接していた。若くして亡くなってしまい、これがタチートがロサス家に憎しみを抱く原因となった。
マレーナ
トルナディアでタンゴの踊れるバーを経営している女主人。マレーナ自身もタンゴの名手。実はかつて風子にタンゴを教えた先生でもあり、風子のもとに遊びに来た五月美斗にもタンゴを教えた。レオン・ロサスと引き離されて途方に暮れていた五月美雨を助け、食事をさせて家に泊まらせた恩人。若い頃にシルバ将軍に言い寄られて拒絶したことがある。 クーデターによって店を壊され、殺されてしまう。
アスール
ファン・オルティスが飼っている黒い犬。賢くて従順な性格をしている。ファンが逃げた五月美雨を追っていた際、匂いから彼女の場所を突き止めた。その後は、シルバ将軍によって牢に閉じ込められたファンと美雨を助けるために尽力する。ファンが殺されてからは美雨を忠実に守り、レオン・ロサスと離れ離れになっていた美雨のニューヨークでの淋しい生活を慰めた。
場所
トルナディア
南米にある国。その昔、スペインからの移植者たちが国の基礎を作った。語源はスペイン語で竜巻を表す「トルナード」からきており、その名が表す通り、平原に大風が吹く土地柄。山岳部ではダイヤと銀が取れるため、南米の中では豊かな国の部類に入るが、それだけに貧富の差が激しい。
その他キーワード
トルナディア・ブルーローズ (とるなでぃあぶるーろーず)
トルナディアで開発された青い薔薇。薔薇に青色を出すのは非常に困難とされており、今現在世界中で最も青い薔薇として、トルナディアで栽培されている。まだ数が少なく、希少価値なため、トルナディア・ブルーローズを使った香水を使っているのはレオン・ロサスしかいない。