フリンジマン

フリンジマン

愛人をつくりたいと願う田斉治、満島由紀夫、坂田安吾のモテない男性三人が、「愛人教授」の異名を持つ愛人づくりのプロフェッショナル、井伏真澄に教えを乞う。愛人同盟を結成し、愛人づくりに奔走する四人の姿をコミカルに描いた不倫コメディ。「ヤングマガジン」2013年第34号から掲載の作品。2017年TVドラマ化。

正式名称
フリンジマン
ふりがな
ふりんじまん
作者
ジャンル
不倫
関連商品
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あらすじ

愛人同盟の発足

田斉治満島由紀夫坂田安吾井伏真澄の四人は場末の雀荘で卓を囲んでいた。高校からの友達である田斉、満島、安吾のモテない三人は、愛人をつくりたいという切実な願いを抱えていた。そこで教えを乞うべく満島が連れてきたのが、彼の同僚で愛人づくりのベテランである井伏だった。井伏は21歳で結婚して、22歳の時には最初の愛人をつくり、一時は五人の愛人と付き合っており、人呼んで「愛人教授(ラ・マンプロフェッサー)」。田斉たち三人は井伏を「教授」と呼び、愛人づくりのノウハウを教えてもらうことになる。井伏が掲げた掟は、四人のあいだに秘密を作らないこと、四人の愛人づくりを互いに全力でサポートすること、そして四人の情報を決して外部に漏らさないこと。こうして四人は「愛人同盟」を結成するのだった。

田斉と山口詠美

あいさつのあとに名前を呼ぶ女性は相手の男性のことを意識している、すなわち「愛人の原石」であると、井伏真澄の言葉を聞いた田斉治は、会社でその愛人の原石を見つける。それは彼の部下で、キレイ系の新人OLの山口詠美であった。井伏のアドバイスを受けて田斉はなんとか詠美と親しくなり、飲み会の帰りに家まで送り届けることに成功する。だが、詠美の家の前には強面の元カレが待ち受けており、びびった田斉は逃げ出してしまう。詠美の前でカッコ悪いところを見せたことで、もう終わったと落ち込む田斉だったが、後日再会した詠美からは、しつこい元カレをあきらめさせるため、田斉に彼氏のふりをしてほしいと頼まれる。こうしてかりそめのカップルとなった田斉と詠美だったが、デートを重ねるうちにお互いに惹かれ合っていく。だが、「愛人同盟」の坂田安吾が、詠美が元AV嬢であることに気づく。その事実が田斉にバレたと思った詠美は、自分の体と引き換えに田斉に口外しないように要求する。全裸の詠美を目の前にしてゆらぐ田斉だったが、これでは愛人とは呼べないと思いとどまり、元カレとの復縁を勧めて詠美と別れるのだった。

満島と川上ミエ

田斉治の愛人づくりは失敗したものの、井伏真澄の的確なアドバイスのおかげであと一歩のところまできたことに満足していた。満島由紀夫は次こそ俺もと焦り出し、最近飲み会で知り合った川上ミエを愛人にするための協力を「愛人同盟」の仲間に頼み込む。ミエは、百貨店で店舗案内の受付嬢をしていた。井伏によれば、店案(店舗案内)は不倫ネットワークのあいだでは、最も手ごわい職種の一つとのことだった。しかし、満島はみごとにミエを食事に誘うことに成功する。そのデート中、井伏は自らが妻帯者であることをミエに伝えるよう、満島に指示を出す。井伏にとって、自らが妻帯者であることを隠して交際するのは愛人とはいえず、井伏の流儀に反する姑息で許せない行為だったのだ。だが満島は井伏の指示を無視し、妻帯者であることを隠したままデートを終える。さらに満島は井伏の制止も聞かずに、後日ミエの会社帰りを待ち伏せするというストーカーまがいの暴挙に出てしまう。そんな満島に、ミエも自分がバツイチで子供がいることを告げるのだった。洞察力に長けた井伏は、ミエが子持ちのバツイチであることも見抜いていたのだ。気落ちする満島に井伏は、満島にはバツイチで子持ちの女性を愛人として受け入れるだけの覚悟がなかったのだと真実を突く。井伏の指示に従わなかったことで満島は愛人同盟の脱退を申し出るが、井伏は愛人づくりの研究において満島はまだ興味深い被検体だと、彼を引き留めるのだった。

安吾と与謝野アキ

坂田安吾は、11歳年下の幼なじみの女子高校生である与謝野アキを「愛人同盟」の場に連れてくる。井伏真澄にアキの恋愛相談に乗ってほしいというのだ。井伏は専門外であることを理由にその申し出を断るが、アキの純粋な熱意に押され、話を聞くこととなる。アキが恋する相手は大学生の鳳幹夫で、彼女がいるかどうかもわからないという。すると井伏と安吾は大学へと忍び込み、幹夫には綿貫りさという恋人がいる情報をつかむ。しかし、アキの真っすぐな恋心を知る安吾は、幹夫に彼女がいることを伝えられなかった。それならば幹夫とりさを別れさせればいいと、井伏の提案で愛人同盟が動き出す。井伏が業界プロデューサーに扮してりさに近づき、りさとSEX中の浮気現場に幹夫を呼び出すという計画を立てる。そして井伏は愛人づくりのテクニックを駆使して、あっという間にりさを口説き落とす。しかし、愛人同盟の作戦内容をたまたま聞き、幹夫に彼女がいることを知ったアキは、安吾から作戦の全容を聞き出し、幹夫に事実を知らせようと彼のもとへと向かう。純粋なアキに浮気現場の修羅場を見せることを阻止しようとする安吾たちと、あくまで作戦を遂行しようとする井伏との攻防が始まる。

新たな同盟参加希望者

井伏真澄が欠席し、田斉治満島由紀夫坂田安吾の三人で雀卓を囲む「愛人同盟」のもとに志賀直樹と名乗る大柄な男性がやって来る。プロレス好きの志賀は、彼らの愛人づくりの活動にプロレスに通じる漢の美学を感じて感銘を受けたとして、自分も愛人同盟に入れてほしいというのだ。三人は井伏の許可を得ないうちに志賀の参加を認め、井伏のまねをして愛人づくりのアドバイスを始める。料理教室に通う志賀は、同じ教室に通う阿川久利栖となかよくなり、プロレス観戦に誘うことに成功する。しかし後日、志賀のもとに阿川との不倫現場の写真が送られてくる。困り果てた志賀は、井伏に助けを求めるが、「四人の情報を決して外部に漏らさぬこと」という愛人同盟の掟を破った三人を井伏は許さず、志賀の愛人同盟への参加も認めなかった。しかし、料理教室の写真に写ったメンバーの中に不倫現場写真を送り付けた犯人を見つけた井伏は、志賀への助けを申し出る。その写真を送り付けた犯人は、愛人づくりのためならどんなに汚い手段を使ってでもライバルの心を折りにくる毒蜂のような男、江戸川雷人だった。過去の井伏の不倫仲間の中には、江戸川に心を折られ、愛人づくりを引退して健全なマイホームパパになっている者もいる。井伏は江戸川を打ち倒すため、強力な助っ人の森尾凱を呼び寄せ、料理教室へと送り込む。こうして愛人同盟は江戸川との戦いに挑むのだった。

メディアミックス

TVドラマ

2017年10月から、本作『フリンジマン』のTVドラマ版『フリンジマン ~愛人の作り方教えます~』が、テレビ東京系列で放送された。監督を久万真路と二宮崇、脚本を根本ノンジと守口悠介が担当している。キャストは、田斉治を大東駿介、井伏真澄を板尾創路、満島由紀夫を淵上泰史、坂田安吾を森田甘路、山口詠美を筧美和子、川上ミエを佐津川愛美、阿川久利栖を板野友美、江戸川雷人を東幹久、綿貫りさを小倉優香が演じている。

登場人物・キャラクター

田斉 治 (たさい おさむ)

海豹商事で主任を務める小心者のサラリーマン。美知子という妻がいるが、愛人をつくりたいという切なる願いを持っており、満島由紀夫、坂田安吾、井伏真澄の四人で「愛人同盟」を結成した。人から悪く思われるのが何よりも嫌いで、冤罪を極端に恐れている。痴漢の冤罪に巻き込まれることに恐怖し、それほど満員でもない電車でも車内でバンザイをし続けるほどの小心者。井伏との出会いによって不倫へ踏み出す勇気を得て、部下で美人の新人OLである山口詠美を口説きにかかる。満島、安吾とは高校時代からの友人。

満島 由紀夫 (みつしま ゆきお)

「愛人同盟」の一員の男性。生粋の野球バカで、やたらと野球に例えて物事を話そうとする。田斉治と同様に妻帯者だが、愛人づくりのベテランである同僚の井伏真澄のアドバイスを受け、愛人づくりに奮闘する。明るい性格ながら残念なほどに空気が読めず、合コンの場を気まずくする発言が多い。飲み会で出会った百貨店受付嬢の川上ミエを口説きにかかる。田斉、坂田安吾とは高校時代からの友人。

坂田 安吾 (さかた あんご)

「愛人同盟」の一員の男性で、レンタルDVD店でアルバイトをしている。大の映画好きで、やたらと映画に例えて物事を話そうとする。メンバー唯一の独身者で、親といっしょに実家で暮らしている。11歳年下で幼なじみの女子高校生の与謝野アキから恋愛相談を受け、愛人同盟に協力を頼んだ。田斉治、満島由紀夫とは高校時代からの友人。

井伏 真澄 (いぶせ ますみ)

「愛人同盟」の一員の男性で、満島由紀夫とは会社の同僚でもある。21歳で結婚し、22歳の時には初の愛人をつくり、一時は五人の愛人と付き合っていた愛人づくりのベテランで、「愛人教授(ラ・マンプロフェッサー)」の異名を持つ。愛人同盟の仲間からは、「教授」と呼ばれて尊敬されている。パッと見は冷たい印象の冴えない容姿だが、愛人づくりのテクニックに長け、鋭い洞察力を誇る。ただし、愛人づくり以外には興味がなく、仕事にはまったくやる気を見せない。綿貫りさを口説き落とす際には業界プロデューサーに扮し、「伊東聖」の偽名を使った。

山口 詠美 (やまぐち えいみ)

海豹商事に勤める、入社2年目の美人OL。田斉治の部下でもある。あいさつのあとに「田斉主任」と名前を呼んだことから、田斉から「愛人の原石」と目を付けられ、口説かれることとなる。別れたあとも復縁をせまる元カレのナガザイルをあきらめさせるため、田斉に彼氏のフリをしてもらうことを頼み、デートを重ねるうちに親密になっていく。

ナガザイル

山口詠美の元カレで、強面の男性。本名は「タツヤ」だが、オールバックで顎ひげあご髭を生やしたマッチョな肉体から、「愛人同盟」のメンバーからは「EXILE+長渕剛」を意味する「ナガザイル」と呼ばれている。六本木の雑貨屋に勤めていたが、すでに退職している。別れた詠美に復縁をせまっており、詠美の部屋の前で田斉治と出くわす。

宮部 ゆき (みやべ ゆき)

井伏真澄の愛人の一人。大人の雰囲気を漂わせた黒髪の巨乳美人。田斉治、満島由紀夫、坂田安吾の三人を女性に慣れさせるため、「模擬愛人」として井伏が連れてきた。満島からの、女性は胸の谷間を男性から見られていることに気づいているのかという質問に対して、100%気づいていると答えた。田斉が山口詠美から彼氏のフリをしてほしいと頼まれた件を聞き、詠美は田斉に気があると進言する。

矢村 美紗 (やむら みさ)

井伏真澄の愛人の一人。ショートヘアで明るい性格の美人。田斉治に山口詠美との関係に対して助言を与えるために井伏から呼び出された。井伏の愛人ではあるが、肉体関係はない。看護師をしているために周囲に女性が多く、井伏から頼まれてよく合コンや飲み会をセッティングしている。満島由紀夫からの、女性は男性が勃起していることに気づいているのかという質問に対して、100%気づいていると答えた。

川上 ミエ (かわかみ みえ)

百貨店で店舗案内の受付嬢を務める女性。飲み会で知り合った満島由紀夫から食事に誘われる。デートはいい雰囲気になるが、満島が行動を焦りすぎたために交際に発展することはなかった。実は子持ちのバツイチ。

与謝野 アキ (よさの あき)

坂田安吾と幼なじみの女子高校生。人の言うことを素直に聞く、純粋で真っすぐな性格の持ち主。安吾より11歳年下で、幼い頃はよくいっしょに遊んでいた。母親との三人家族で、CDショップでアルバイトをして家計を助けている。アルバイト先に客としてやって来る大学生の鳳幹夫に恋しており、安吾を通じて井伏真澄に恋愛相談にやって来る。

鳳 幹夫 (おおとり みきお)

江古大学の軽音楽部に所属する男子大学生で、顎ひげを生やしたイケメン。綿貫りさと交際している。利用しているCDショップのアルバイト店員の与謝野アキから好意を持たれているが、そのことには気づいていない。

綿貫 りさ (わたぬき りさ)

江古大学の軽音楽部に所属する女子大学生。派手な容姿でナンパ慣れしている。アナウンサー志望。鳳幹夫と交際しているが、幹夫との破局をもくろむ井伏真澄から口説かれる。

市川 マサオ (いちかわ まさお)

井伏真澄が持つ不倫ネットワークの協力者の中年男性。寿司屋「市ノ字」で働く寿司職人で、頭がはげている。井伏とは不倫相手を探すためにお互い協力し合っている。

志賀 直樹 (しが なおき)

「愛人同盟」に入れてほしいと依頼してきた公務員の男性。プロレス好きが高じてやみくもに体を鍛えているため、体格が非常にいい。某プロレス団体の練習メニューを一日3セットこなすほど鍛えている。雀荘でたまたま耳にした愛人同盟の活動に、プロレスに通じる漢の美学を感じて同盟への参加を申し込んだ。同じ料理教室に通う阿川久利栖を愛人にしようと画策している。

阿川 久利栖 (あがわ くりす)

志賀直樹と同じ料理教室に通う女性。資産家の娘でもある。乾杯をする際に、杯が当たるまでグラスを追い掛ける行為が「愛人の原石」と目をつけられ、志賀から口説かれる。志賀と同じプロレス好きで、プロレス観戦デートに同行する。

森尾 凱 (もりお がい)

愛人づくりのスペシャリストの男性で、黒いソンブレロをかぶって黒のギターケースを手にしている。「ドクター・ストレンジ・ラブ」の異名を持つ。井伏真澄から助っ人を依頼され、志賀直樹が通う料理教室で潜入調査を行った。職業が医者ということで料理教室の女性たちの人気を集める。

江戸川 雷人 (えどがわ らいと)

志賀直樹と同じ料理教室に通う男性。一見おとなしそうに見えるが、非情な性格で愛人づくりのためには手段を選ばない。「バズ・コック」「毒蜂料理人」の異名を持つ。愛人にしようとした女性を狙うライバルがいると、その男性を脅して屈服させ、さらに自らの愛人づくりに協力させる作戦を駆使する。井伏真澄の不倫仲間の三人を罠にはめ、愛人づくりを引退させてマイホームパパにさせた過去を持ち、井伏からも恐れられている。

集団・組織

愛人同盟 (あいじんどうめい)

田斉治、満島由紀夫、坂田安吾、井伏真澄の四人の男性が、愛人をつくるために結成したチーム。愛人づくりのベテランである井伏が、ほかの三人に愛人づくりのノウハウを教える形で活動している。「愛人同盟」の名前は井伏が命名した。四人のあいだに秘密をつくらないこと、四人の愛人づくりを互いに全力でサポートすること、そして四人の情報を決して外部に漏らさないこと、の三つが井伏が定めた掟でもある。会合場所は、場末の雀荘やファミリーレストランで行われる。

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