恋する母たち

恋する母たち

エリート男子校に通う息子を持つ石渡杏をはじめとする母親たちの複雑な恋愛模様と、傷つきながらもたくましく生き抜く姿を描くラブストーリー。「女性セブン」2017年1月5日発売号から掲載の作品。

正式名称
恋する母たち
ふりがな
こいするははたち
作者
ジャンル
不倫
レーベル
ビッグ コミックス(小学館)
巻数
既刊8巻
関連商品
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あらすじ

第1巻

主婦の石渡杏は、夫の石渡慎吾と一人息子の石渡研と共に何不自由ない生活を送っていたが、ある日突然、慎吾が行方不明になってしまう。シングルマザーとなった杏はパート主婦として懸命に研のことを育て、義母に勧められるまま有名進学校の麻蔵学園に入学させる。本来は都立高校に通わせるつもりだった杏は、慣れない私立校の雰囲気とほかの母親たちに気おされながらも、初めての保護者会に出席する。高級な服をまとう保護者たちの中で孤立する杏は、息子の蒲原繁秋を麻蔵学園に通わせている蒲原まりと出会う。まりからほかの保護者の不倫の噂を聞いた杏は、慎吾が失踪したあとに起こった、ある出来事を思い出す。慎吾が突然いなくなったことに疑問を持つ杏は、慎吾のことを知る謎の男性、斉木巧と知り合う。巧は、慎吾と共に駆け落ちした斉木由香の夫だと名乗り、慎吾が家族を置いて駆け落ちしたのを信じられない杏は困惑する。それでも研のことを守らなければならないと決意した杏は、改めて巧と連絡を取って彼の家に向かい、慎吾と由香が交わしていたメールを見せてもらう。怒りと悲しみに震える杏は、慎吾が由香と駆け落ちしたのは事実だと知り、絶望に陥る。慎吾が家族を捨てて失踪した現実を受け止めるしかなかった杏は、彼を待つのをやめて仕事と子育てに専念する。だが、慎吾を失った杏の心にできた隙間は広がるばかりで、彼女はそれを埋めるかのように、巧と特別な関係を築いていく。

第2巻

麻蔵学園に息子を通わせている石渡杏蒲原まり林優子の三人は、三者三様の家庭で一見幸せそうな生活を送りながらも、それぞれが誰にも話せない悩みと秘密を抱えていた。杏は駆け落ちで失踪した夫の石渡慎吾の行方に、まりは夫の蒲原繁樹の不倫に気づきながら何も言えないことに、優子は職場の後輩と引きこもりの林大介のことで悩んでいた。そんなある日、三人はそれぞれ息子の成績のことで教師に呼び出され、次の試験の結果次第では自主退学してもらうことになると告げられる。息子の落第のピンチに杏は、まりと優子と互いに協力するために連絡先を交換し、学業向上のための情報を交換し合うことになる。その夜、次の試験について研と相談していた杏は、慎吾の居場所がわかったことを告げるが、研はいまさら父親とは会いたくないと返答する。斉木巧にそのことをメールで報告した杏は、時折くだけた態度になる彼に少しずつ惹かれていることに気づく。それでも幸せだった頃の思い出を捨て切れない杏は、慎吾に会いに行くにはもうしばらく心の整理が必要だと判断し、「まだ慎吾には会いに行けない」と巧に告げるのだった。一方、繁樹の不倫に悩みながらも見て見ぬふりをしていたまりのもとに、彼の不倫相手である山下のり子が訪ねてくる。のり子とは短い会話をしただけで終わったが、まりはポストに入っていた差出人不明の不審な手紙を見て、繁樹への不安と不満を募らせていく。

第3巻

息子の落第の危機をきっかけに知り合った石渡杏たちは、互いの心中を少しずつさらけ出すうちに、それぞれの人生を交錯させていく。母であり妻であると同時に、人生半ばにある杏たちは、それぞれの岐路に立つたびに新しい出会いと思いを芽生えさせていく。斉木巧と複雑な関係を持つようになった杏は、彼と会うたびに安らぎを覚え、距離が縮まっていくのを嬉しく思うようになっていた。一方、今昔亭丸太郎の強引な魅力に惹かれる蒲原まりは、家族を偽って彼との温泉旅行に出かける。大企業のエリート社員として働く林優子は、新規プロジェクトで後輩の赤坂剛のサポート役を任され、彼を生意気に思いながらも順調にプロジェクトを進めていた。それぞれの生活が複雑に変動する中、石渡研たちの進級を左右する試験が始まるのだった。息子たちのがんばりを見守りながら、杏は失踪したままの石渡慎吾と今後の人生に向き合う覚悟を決め、石渡綾子に慎吾の居場所がわかったことを報告する。試験終了後、まりは丸太郎への思いにゆれていたが、子供たちを傷つけるわけにもいかず、家族と恋心のあいだで葛藤に苛まれる。そんな中、試験の結果は蒲原繁秋のみが不合格であったことがわかり、彼は落第が確定してしまう。さらに新たな問題が起こって蒲原繁樹との関係が悪化したことから、まりは丸太郎に事情を話し、もう会えないと別れを告げる。繁樹は知り合いのコネクションを使って繁秋の落第を取り消そうとするが、そこまでして麻蔵学園に残るべきではないと考えたまりは、繁秋に自主退学を勧める。

第4巻

ギリギリで平穏を保ちながらも、悩みや不安から満たされない思いを抱えた石渡杏たちを待ち受けていたのは、妻でも母でもない「一人の女性としての自分」との対面であった。子育てや家事に悩む中で葛藤した杏たちは、出会いや今までにない体験の中で新しい恋に落ち、心の隙間を埋めていく。そんな中、部下の赤坂剛から熱いアプローチを受けるようになった林優子は、彼と京都出張の途中で同室になったことで関係を持ってしまう。優子は単なるアクシデントだと関係を終わらせようとするものの、剛は「一夜だけの恋」で終わらせることができず、彼女に強引にせまる。結局、その後も剛との極秘社内不倫を続ける優子は、いつか酷い目に遭うと怯えながらも、誰にも言えない隠し事を抱えるのだった。一方、夫の愛人である山下のり子からの嫌がらせを受けながらも家族を守るために立ち上がった蒲原まりは、今昔亭丸太郎の助言を受け、のり子と蒲原繁樹の三人で直接会って話し合いをすることになる。のり子に次々と挑発されて怒りがこみ上げたまりだったが、丸太郎の言葉を思い出して逆上するのをこらえ、冷静に子供たちへの思いを語り出す。それを見た繁樹はまりに謝罪してのり子に別れを告げ、二人の不倫問題は解決したかのように思えたが、まりは納得がいかず繁樹への不信感とわだかまりを消せないままだった。一方、与論島に渡って石渡慎吾と正式に離婚した杏は、曖昧な関係を続けていた斉木巧との恋に一歩踏み出す。そして、巧の友人が開いたパーティーに誘われた杏は、その帰り道に巧から結婚を前提とした交際を申し込まれる。

第5巻

一夜限りの恋で終わらせることができなかった林優子は、赤坂剛との欲情に溺れ、社内不倫を繰り返していた。良心の呵責に耐えかねた優子は、夫の林シゲオと息子の林大介に向き合うため、剛から距離を取ろうと試みるが、彼の情熱的な思いに流され、いつまでたっても別れを告げられずにいた。そんな中、優子は上司から別の部署への異動を打診され、さらにシゲオからは与論島への移住を提案され、優子の離婚を望む剛への気持ちがますますゆれ動いていく。一方、石渡慎吾と離婚して斉木巧との交際を始めた石渡杏だったが、関係を清算したはずの慎吾が彼女のもとを訪ねてきた。杏は慎吾の実家を教えて追い返すが、過去に追いかけられたような気持ちになった杏は激しく動揺する。一方、蒲原繁樹との不倫問題が解決し、彼の提案で蒲原繁秋をハワイに留学させることになった蒲原まりは、繁樹の態度に納得がいかず、わだかまりを抱えていた。それでも今昔亭丸太郎への思いで折り合いをつけながら繁樹への不満に耐えるまりは、丸太郎と久々に連絡を取る。丸太郎はネットで落語ラッパーとして活躍する繁秋のことを報告し、まりは丸太郎の言葉と繁秋の姿に励まされる。繁秋の元気そうな姿を見て安心したまりは繁樹に報告するが、彼は繁秋の活躍を認めることはなかった。繁樹の態度にショックを受けたまりは、我慢の限界に近づいていた。

第6巻

お互いの距離を少しずつ縮めながら絡み合う石渡杏たちの三者三様の人生は、それぞれの今後を左右するほどの新たな変化とピンチを迎えたことで複雑に交錯し、次のステージに進もうとしていた。石渡慎吾を忘れて新たな恋に踏み切ろうとしていた杏は、与論島から戻ってきた慎吾の実家で、しばらく彼と石渡綾子の世話になることが決まる。石渡研を連れて慎吾の実家で息苦しい時間を過ごすうちに、研はよく知らないはずの慎吾と自然に交流を深めていった。慎吾の記憶は相変わらず戻らないままだったが、杏は複雑な思いを抱えながら研と慎吾の様子を見守る。一方、山下のり子の復讐によって蒲原繁樹が職を失い、高級タワーマンションでのセレブ生活が崩壊してしまった蒲原まりは、優雅な生活から一転した一家の家計を支えるために仕事を探していた。なんとか弁当屋でのパートが決まったまりだったが、些細なミスから上司の反感を買ってすぐにクビになってしまい、早くもピンチに陥る。一方、赤坂剛との不倫現場を林シゲオに目撃された林優子は夫の怒りを買ってしまい、シゲオは林大介を連れて与論島に引っ越すことが決まる。大介から離婚を言い渡された優子は家族と離れて一人で千葉へと引っ越し、慣れない営業畑の仕事に飛び込むこととなる。恋も家族も失った優子は必死に仕事に邁進しようとするが、彼女は家族と離れてできた心の隙間を埋められず、新しい仕事の中で生じた問題の数々にも悩まされていた。

メディアミックス

実写ドラマ

本作『恋する母たち』の実写ドラマ版が、2020年10月からTBS系「金曜ドラマ」で放送された。内容は本作と同じく、石渡杏をはじめとする母親たちの複雑な恋愛模様や友情を描いている。キャストは石渡杏を木村佳乃、蒲原まりを仲里依紗、林優子を吉田羊が演じている。

登場人物・キャラクター

石渡 杏 (いしわたり あん)

駅前の不動産屋でパート勤務をしている主婦。年齢は42歳。黒のロングヘアの優しげな女性で、温厚な家族思いの性格をしている。学生時代に知り合った夫の石渡慎吾、一人息子の石渡研と三人で不自由なく幸せな生活を送っていた。しかし、研が小学校に入学する前に慎吾が謎の失踪を遂げたことで、それまでの生活が一変。のちに斉木巧を通して、慎吾が不倫相手の斉木由香と駆け落ちしたことを知り、慎吾の帰りを待つのをあきらめ、シングルマザーとして研と二人暮らしを始める。慎吾への怒りや悲しみが沸き上がる中、勢いで行為に及んでしまった巧とは複雑な関係を築き、やがて彼に恋心を抱くようになる。パート勤務と家事をこなしながら苦労の絶えない生活を送る中、義母の石渡綾子からさまざまな経済的援助を受けている。このため、綾子の強引な言葉にもなかなか逆らえず、都立高校ではなく彼女が勧める私立の名門校である麻蔵学園に研を入学させる。初めての保護者説明会の時に蒲原まりと出会い、研の道場着のことで助けられたのをきっかけに、彼女と友人になった。しかし、研の成績が少しずつ落ちていき、落第問題で教師に呼び出された際に、いっしょに呼び出されていた林優子と出会う。これをきっかけに、それぞれの息子の落第のピンチを乗り越えるために協力し合う目的でまり、優子とSNSや電話で連絡を取るようになった。二人と協力し合う中で、それぞれの家庭の事情や恋愛話などを打ち明けるようになり、何かあれば相談するなど、互いに友情を深めていく。家族を捨てて駆け落ちした慎吾への未練や思いは捨て切れておらず、巧に心ゆさぶられながら、家族と恋心のあいだで複雑な葛藤や悩みを抱えている。

蒲原 まり (かんばら まり)

専業主婦で、石渡杏の友人。街中を見下ろせるほどの高級タワーマンションで、夫の蒲原繁樹、息子の蒲原繁秋、娘の蒲原奈々、華奈と五人暮らしをしている。ウエーブのかかったロングヘアで、ファッションやメイクのセンスに優れている。明るく前向きな性格でマイペースなところもあるが、母親としての責任感が非常に強い。かわいいものとおしゃれが大好きで、ルックスも経済力もある夫と名門校に通う子供たちと共に、キラキラしたセレブ生活を送っている。しかし、奔放過ぎる繁秋の振る舞いや成績の悪さとともに、繁樹の不倫に悩んでいる。携帯電話の履歴などから繁樹が山下のり子と不倫していると気づいているが、直接問い詰めることができず、今は子育てに集中すべきだと割り切り、見て見ぬふりをして我慢している。そんな中、チャリティーコンサートをきっかけに今昔亭丸太郎と知り合い、彼に気に入られてアプローチを受けるようになる。当初は丸太郎のことは相手にしていなかったが、見かけによらず優しく誠実な彼に少しずつ惹かれるようになる。林優子とは繁秋が中等部の頃からの知り合いだが、彼が高等部に上がった頃に開かれた保護者会で知り合った杏とは、半ば強引に友人になった。マイペースな言動から、当初は杏からあまりいい印象を持たれていなかったが、石渡研の柔道着のことで彼女を助け、次第に互いの身の上話や悩み事を打ち明けるほどの関係を築いていく。繁秋の成績の悪化をきっかけに杏、優子と協力関係を結び、情報交換をする中で友情を深めていく。ふだんは能天気に見えるが子供のことをつねに真剣に考えており、まじめな母親らしい姿を見せる場面も多い。

林 優子 (はやし ゆうこ)

大企業「コジカビール」に勤務するキャリアウーマンの女性で、宣伝部課長を務めている。売れない小説家である夫の林シゲオと、不登校となっている長男の林大介の三人で暮らしている。クールな性格で、ショートヘアに眼鏡を掛けている。つねに物事を落ち着いて考えるために、トラブルに遭ったときは答えを出すまでに15秒数える癖がある。家事の大半は主夫のシゲオに任せ、二人を養っている。同僚や上司からの人望も厚く、仕事も順調で充実した毎日を送っているように見えるが、大介が長らく不登校で引きこもり生活をしていることに悩んでいる。家族のことは大切に思っているが、仕事で家にいない時間が多いために大介と話す機会が少なく、彼が引きこもっている理由もよく理解していない。蒲原まりとは、大介が中等部だった頃に知り合った。不登校気味の大介が落第寸前の危機に陥った際に、同じく息子が落第寸前の石渡杏と知り合い、彼女やまりと連絡先を交換し、互いに協力しながら大介の試験対策に励むようになる。恋愛経験が豊富で、杏やまりの恋愛相談に乗ることが多い。部下からも尊敬される優秀なキャリアウーマンという立場上、職場では男性社員からの嫉妬を買うことが多い。コジカビールの新規プロジェクトの中で、後輩の赤坂剛のサポート役を任され、彼と同じチームでプロジェクトを進めている。有能な剛からは生意気な態度を取られることが多いが、彼の優秀さは認めているために信頼している。剛からは熱烈な恋心を抱かれており、当初はクールにあしらっていたものの、彼の若さと強引なアプローチに少しずつ惹かれ、京都出張をきっかけに関係を持つようになる。社内不倫が問題にならないように、剛とのあいだでいくつかのルールを設け、同僚にも家族にも不倫を隠し続けている。のちに千葉支店の営業部長となる。

石渡 研 (いしわたり けん)

麻蔵学園に通う男子高校生で、石渡杏の息子。女手一つで育ててくれた杏のことをつねに思いやる、優しい性格の持ち主。小学校入学前に父親の石渡慎吾が失踪したため、彼のことはあまり覚えておらず、失踪した理由も知らないままでいる。杏から居場所がわかったことを告げられるが、いまさら会いたくないという理由で、慎吾と再会するのを拒否している。都立高校に通う予定だったため、麻蔵学園の学業レベルには追いつけずに落第の危機に陥る。この際に杏が蒲原まり、林優子と協力し合うようになったのをきっかけに、蒲原繁秋、林大介と友人になり、いっしょに勉強したりノートを貸し借りしたりするなど、試験対策で協力し合っている。試験終了後は無事に落第の危機を乗り越える。

石渡 慎吾 (いしわたり しんご)

旅行代理店に勤務する石渡杏の夫で、10年前に謎の失踪を遂げたまま行方不明になっている。眼鏡を掛けた穏やかな優しい性格で、失踪前は学生時代に知り合った杏と結婚し、彼女と一人息子の石渡研と共に、幸せな日々を送っていた。杏からは何かの事件に巻き込まれたと思われていたが、実は不倫相手の斉木由香と駆け落ちしていた。失踪直前に詐欺行為を働いて懲戒免職となっていたが、母親の石渡綾子に300万円借りて返済したことで刑事告訴は免れている。のちに斉木巧の調査によって与論島にいることがわかり、仕事で訪れていた巧とも出会うが、崖から落ちて重傷を負ったことで記憶を失い、自分の本当の名前すら思い出せずにいる。記憶を失ってからは港の近くにあった病院から「港洋一」と名乗り、与論で観光アドバイザーの仕事をしている。記憶喪失になったことで由香とはすでに別れており、与論で出会った女性と再婚して、新しい家族と共に平和に暮らしている。のちに与論を訪れた杏と再会するが記憶は戻らないままで、彼女の要求どおり離婚届に判を押した。この際に、杏との会話内容が島の住民を通して再婚相手に伝わってしまい、再婚相手に別れを告げられて与論を離れ、離婚届に書かれていた住所を頼りに杏を訪ねる。その後は杏に教えられた実家に戻り、記憶が戻らないまま綾子と二人で暮らしている。独特な指の動きで杏の髪を撫でる癖があり、記憶喪失となったあとも無意識にその癖が残っている。天性の女たらしで杏と結婚する前からモテていたものの、優しく思いやりのある振る舞いとは裏腹に、無責任な一面を秘めている。

斉木 巧 (さいき たくみ)

出版社「週刊新潮」の記者をしている男性。妻の斉木由香が石渡慎吾と駆け落ちしたのをきっかけに、石渡杏と知り合う。まじめで誠実な性格をしている。愛称は「タクちゃん」。由香の浮気癖は知っていたが、仕事で彼女のことを放置しがちだった負い目もあって、見て見ぬフリをすることが多かった。慎吾が失踪してから間もない頃に杏に事情を話し、彼女に代わって慎吾の行方を調べるようになる。由香とはすでに離婚しているが、杏と交流を重ねるうちに葛藤に苦しみながらも前に進もうとする彼女の姿に惹かれ、関係を持つようになる。しかし、お互いに気の迷いからやってしまったということにして、杏とは10年ほど連絡を取らないままだった。高校生になった石渡研が落第の危機に陥った頃、慎吾の行方を捜す中で彼が与論島にいることをつき止め、再び杏と連絡を取り合うようになる。その中で杏への恋心がさらに強まっていき、彼女と新たな人生を歩むことを真剣に考えていることを告白し、結婚を前提とした交際を始める。現在は訳あって新聞記者をしているが、もともとは建築家志望だった。再び建築家を志すようになってからは資格を取得し、2年後には必ず帰ってくるという約束を杏と交わしたうえで、金沢に渡った。

石渡 綾子 (いしわたり あやこ)

石渡慎吾の母親で、石渡杏の義母。他界した夫が経営していた「石渡産業」をはじめ、複数の会社を引き継いだ女社長で、現在は豪邸で一人暮らしをしている。慎吾の失踪後は杏と石渡研を経済的に援助しており、学費や生活費なども代わりに支払っている。息子の慎吾と孫の研をかわいがっているが、かなり強引なところがあり、杏にとっては逆らうことのできない厄介な相手といえる。石渡家の男性が代々麻蔵学園出身であることから、都立高校に通う予定だった研にも麻蔵学園への入学を勧めた。記憶喪失の慎吾が与論島から帰ってきてからは彼と二人暮らしをしており、杏が足を骨折したのをきっかけに、慎吾と杏をやり直させようとしている。のちに、石渡産業の化粧品を愛用している蒲原まりの明るさとかわいらしさから彼女の才能を見いだし、仕事に困っていた彼女を広告塔としてスカウトする。

蒲原 繁樹 (かんばら しげき)

蒲原まりの夫で、弁護士事務所を営んでいる。麻蔵学園から東京大学に進学したエリートで、非常にプライドが高く、他者を見下すところがある。妻のまりとの夫婦仲は若干冷め気味で、弁護士事務所の部下である山下のり子と不倫をしている。子供のことはまりに任せっぱなしで、息子の蒲原繁秋を自らがかつて通っていた麻蔵学園に通わせるが、成績が悪く奔放な彼のことはほとんど相手にせずに、失敗作扱いしている。一方で娘の蒲原奈々と華奈のことは大切にしており、かわいがっている。結婚から17年たった現在はまりへの愛情が冷めているが、彼女が昔から持っている天性の明るさとバイタリティは高く評価している。特に弁護士事務所を開業したばかりで経営難だった頃は、まりのパワーに何度も救われていた。まりに不倫のことを問い詰められたのをきっかけにのり子には別れを告げたが、そのことでのり子に激しい復讐心を抱かれてしまい、スキャンダルをリークされて弁護士の職を失ってしまう。復職できるまではまりが代わりに働くことになり、家事や子育てなどを手伝っているものの、酒に溺れる日が多い。

蒲原 繁秋 (かんばら しげあき)

麻蔵学園に通う男子高校生で、蒲原まりと蒲原繁樹の息子。明るく奔放なところはまりによく似ているが、好奇心旺盛でかなり飽きっぽい性格をしており、興味の対象がコロコロ変わる。両親と二人の妹と共に、何不自由ない生活を送りながらも、反抗的な態度を繰り返している。繁樹の意思に反して進学するつもりはなく、ラッパーを目指している。塾に通っているが勉強にはあまりまじめに取り組んでいないため、成績はよくない。成績不振で落第の危機に陥ったのをきっかけに、同じく落第寸前だった石渡研、林大介と友人になった。しかし研たちと違って、まじめに試験対策をしていなかったために合格ラインに届かず、落第が確定した。繁樹の計らいで落第を取り消されることになったが、まりの勧めでそのまま自主退学することになった。退学後は今昔亭丸太郎の落語に強い興味を抱き、まりを通して弟子入りを志願するものの断られる。その後は繁樹に厄介払いされるようにハワイに留学するが、ラップと落語を組み合わせた斬新なラッパーとしてインターネットを中心に活躍するようになり、丸太郎からも一目置かれるようになった。

今昔亭 丸太郎 (こんじゃくてい まるたろう)

落語家の男性で、チャリティーコンサートの会場で蒲原まりと知り合った。明るくおちゃめな性格をしているが、非常にまじめで責任感の強い一面がある。小粋なジョークで人を楽しませるのを得意としている。まりに好意を抱き、強引にアプローチを繰り返してデートに誘ったりしている。当初はまりから嫌がられていたが、交流を続けるうちに温かい人柄と誠実な態度が伝わり、夫の不倫で傷ついている彼女の心を癒していく。次第にまりから頼られたり相談をされたりすることが増えて両思いになり、時折彼女とデートや旅行に出かけている。実はバツ3で、結婚と再婚を繰り返している。最初の妻とのあいだに子供が二人いるが、離れて暮らしている。一度好きになった女性はたとえ離婚したあとでも責任を持って支えることを信条としており、重病を患う元妻とはたびたび連絡を取り、経済的な援助も行っている。それでも現在はまりのことを一番大切に思っており、彼女をさまざまな形で支えつつ、時には厳しい言葉を投げかけて励ましている。まりを通して蒲原繁秋から弟子入りを志願されるが、弟子を取らない主義という理由で断った。ハワイに渡った繁秋が落語ラッパーとして活躍しているのを知ったあとは、斬新なアイデアで人気を得た彼に一目置いている。

赤坂 剛 (あかさか ごう)

大企業「コジカビール」に勤務する男性で、林優子の後輩にあたる。2年前に営業部から宣伝部に異動し、優子と同じプロジェクトを担当するようになった。優子よりも12歳年下ながら仕事もコミュニケーション力もある優秀な人物で、上司の優子に対して生意気な態度を取ることもある。恋愛はそれなりに経験しているが、女性と付き合ってもあまり長続きしないタイプ。実は入社当時から優子に強いあこがれを抱いており、彼女と同じチームになった際はその思いを隠すために、わざと生意気な態度を取っていた。しかし、本音を打ち明けて優子に告白してからは彼女に強引にせまり、京都出張でいっしょになったのをきっかけに、関係を持つようになる。優子からは一夜限りのアクシデントとして流されるもののあきらめられず、周囲に関係を隠しながら優子と社内不倫を繰り返すようになる。家族と向き合おうとする優子からは何度か別れを切り出されているが、情熱的な態度でせまり続け、ついには彼女が林シゲオと離婚することを望むようになる。のちに優子との不倫行為をシゲオに目撃されてしまったことで、彼女との関係は終わった。その後は営業部だった経験を生かし、慣れない営業の仕事に苦労する優子にメールを送り、助言する形で支えている。

林 大介 (はやし だいすけ)

麻蔵学園に通う男子高校生で、林優子の息子。中学2年生の頃から学校に通っておらず、引きこもり生活を送っている。おとなしい性格で、眼鏡を掛けている。仕事で家に不在のときが多い優子とは話す機会が少なく、父親の林シゲオとは仲がいい。不登校が続いたことで落第の危機に陥り、試験対策をするために石渡研、蒲原繁秋と知り合う。特にいっしょに勉強することが多かった研とは親しくなり、試験後も交流を続けている。進級を左右する試験に合格して研と共に落第は免れ、不登校は続いているものの以前よりも積極的に行動している。実は同性愛者で、引きこもりになったのも、そのことが一部のクラスメートに知られてからかわれたのが原因だった。この事情はシゲオのみに話していたが、研に思いを寄せるようになったのをきっかけに、優子にも正直な気持ちを打ち明けた。

林 シゲオ (はやし しげお)

林優子の夫で、売れない小説家。キャリアウーマンの優子に代わって、主夫として家事全般を担当している。眼鏡を掛け、まじめな性格で息子の林大介と仲がよく、優子からの信頼も厚い。与論島出身。実は大介の本当の父親ではなく、大介は婚約前の優子が別の男性と不倫した際にできた子供である。優子と結婚してからは大介を実の息子のように愛し、彼女の子育てを助けるために当時勤めていた新聞社を退社して、自ら主夫となって家族を支え続けていた。これらの過去は優子にとって非常に大きな負い目となり、林シゲオは彼女にとって頭の上がらない存在となっている。また、結婚前に優子が不倫したのを知った際に「優子が美人過ぎるのがいけない」という理由で、ほかの男性の前では眼鏡を外さないという約束を彼女と交わしていた。しかし優子がその約束を破り、赤坂剛と不倫しているのを目撃したことで、優子と離婚して大介を連れて故郷の与論島に引っ越した。

山下 のり子 (やました のりこ)

蒲原繁樹の弁護士事務所に所属する新人の女性弁護士。繁樹に熱烈な思いを寄せ、妻子持ちと知りながらも彼と不倫を続けている。自ら繁樹の妻である蒲原まりに接触しては時折嫌がらせをしており、彼女への嫉妬心から思いもよらない行動を繰り返し、繁樹との仲を引き裂こうとしている。のちに繁樹から別れを告げられたうえに別の弁護士事務所に転勤となるが、繁樹とまりに激しい復讐心を抱き、彼らを貶めるために彼のスキャンダルを週刊誌にリークした。

斉木 由香 (さいき ゆか)

斉木巧の妻で、不倫関係にあった石渡慎吾と駆け落ちした女性。昔から浮気癖があったが、仕事で家をあける時間が多かった巧からは見て見ぬふりをされることが多かった。駆け落ち後は慎吾と共に与論島に渡るが、口論になって崖から落ちた彼が記憶喪失となったため、別れたあとは名古屋に向かった。その後は、すぐに別の男性と付き合うが借金を肩代わりすることになり、キャバクラ嬢として借金の返済のために働いている。

蒲原 奈々 (かんばら なな)

蒲原まりと蒲原繁樹の娘で、名門私立校に通っている小学生。非常に甘えん坊ながら、妹の華奈の面倒をよく見ているしっかり者。思慮深い性格で、まりのわずかな変化に気づいては心配し、繁樹との夫婦仲が不安定なことも気にしている。将来は繁樹のような弁護士を目指しており、塾にも通いながら熱心に勉強を続けている。

有馬 ひとみ (ありま ひとみ)

コジカビールに勤務する女性で、赤坂剛の元彼女。別れたあとも剛への思いをあきらめ切れずにいたが、彼と林優子の不倫関係を偶然知り、不倫を口外しない代わりに剛と別れてほしいと彼女に要求する。優子と剛が別れたあとは彼とよりを戻そうとするが、罪悪感から本当のことを剛に打ち明けた。

熊田 学 (くまだ まなぶ)

コジカビールに勤務する男性で、千葉支店に勤めている。万年課長代理のベテラン社員で、千葉支店の営業部長となった林優子のサポート役を担う。中国出身の妻と大勢の子供たちと共に暮らしている。数年後に定年退職することが決まっているため、仕事にはあまり熱心ではなく、遅刻やサボりも多い。慣れない仕事に前向きに挑み続ける優子のがんばりを間近で見るうちに、仕事への熱意を取り戻していく。のちに優子の提案で昇級試験を受けることになり、彼女のサポートもあって課長に昇進した。

場所

麻蔵学園 (あさくらがくえん)

進学校として有名な私立学園で、男子校。中等部と高等部に分かれている。石渡慎吾の実家である石渡家をはじめ、名家に生まれたエリート男子が代々通っている名門校でもある。

書誌情報

恋する母たち 8巻 小学館〈ビッグ コミックス〉

第1巻

(2018-05-30発行、 978-4098600304)

第2巻

(2018-05-30発行、 978-4098600311)

第3巻

(2018-09-28発行、 978-4098601097)

第4巻

(2019-03-29発行、 978-4098602735)

第5巻

(2019-09-30発行、 978-4098604302)

第6巻

(2020-04-27発行、 978-4098606658)

第7巻

(2020-10-23発行、 978-4098608195)

第8巻

(2021-04-30発行、 978-4098610907)

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