フルーツ宅配便

フルーツ宅配便

とある地方都市を舞台にデリヘルで働くデリヘル嬢やお客、それを取り巻く人々の人間模様を描いたヒューマンドラマ。コミカルな画風とは裏腹に借金や暴力、裏切りなど重いテーマを扱っている。「ビッグコミックオリジナル」で2015年24号から2021年11号にかけて掲載された作品で、2021年3号から2021年11号にかけてはデジタル版のみとなっている。2019年1月にテレビドラマ化。

正式名称
フルーツ宅配便
ふりがな
ふるーつたくはいびん
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
レーベル
ビッグ コミックス(小学館)
巻数
既刊14巻
関連商品
Amazon 楽天 小学館eコミックストア

あらすじ

勤めていた会社が倒産してしまい、失意のまま故郷の田舎に戻った咲田は、学生時代によく通っていた「ラーメンまつばら」に立ち寄り、そこで以前から顔見知りだった常連客のミスジと再会する。咲田が田舎に帰って来た経緯を話すや否や、ミスジは自らが経営するデリヘル「フルーツ宅配便」の店長をやらないかと咲田に提案する。職のあてもなく、特にやりたいことも決まっていない咲田はその申し出を了承し、まったく経験のない風俗業界に身を投じることとなった。転職初日、咲田はマサカネみず子に顔合わせを済ませると、ミスジはデリヘル嬢の面接をするために咲田を連れてファミレスへ向かう。その道中、ミスジは車の中で咲田に田舎のデリヘルがどういうものかを語り、かわいい子は滅多にいないと説明するのだった。その後、面接のためファミレスに現れた子連れの女性を見た咲田は、その美しさに驚くものの、彼女が顔の半分を隠すようにしていた前髪を上げると、そこには大きなアザがあった。そのアザは、元旦那と口論した際にアイロンを押し当てられてできたものだった。しかも離婚後、元旦那がその女性の名義で借金をしていたことが発覚。その借金により、彼女は風俗で働かなければならないところまで追い詰められていたのである。かなりの美人なのでアザさえ隠せればいけると踏んだミスジは、さっそく彼女に「ゆず」という源氏名を付けてシフトを組む。だがゆずは、初めて付いた客にいきなりチェンジを食らってしまう。(エピソード「ゆず」)

アニメオタクの男性が、付き合っている女性に自宅で二人きりの鍋パーティーに誘われた。外泊の準備をしてきてもOKだという彼女の言葉を受けて、アニメオタクの男性は人生で初めてのセックスを意識する。しかし女性経験がまったくない彼は、セックスのやり方がわからずに自信が持てないでいた。そこでデリヘル嬢で経験を積んでから彼女とのセックスに臨もうと考え、アニメオタクの男性は近所のデリヘル「フルーツ宅配便」に電話をかける。HPには写真と年齢は掲載されていないが、「テクは当店だんとつナンバーワン」という紹介文に惹かれてドラゴンフルーツを指名する。ホテルの一室で緊張して待っていると、ドラゴンフルーツが到着。アニメオタクの男性はデリヘル嬢らしからぬ容姿のお婆ちゃんが部屋に入ってきたことに驚き、清掃の人かと確認するものの、そのお婆ちゃんが指名したドラゴンフルーツ本人だった。お彼岸が近いということで、ドラゴンフルーツが持ってきた手作りのおはぎとタクアンを二人で無言で食べながら謎の時間が過ぎていく。(エピソード「ドラゴンフルーツ」)

内縁の夫に勧められるまま、女性は都内のアパートで覚せい剤を使用して懲役2年(執行猶予3年)の判決を受け、子供を連れて田舎の実家に帰って来た。今回の逮捕で、裁判費用などで、母親をはじめ親戚に多額の借金を作ってしまったその女性は、内縁の夫と別れてまじめに働き借金を返していた。運送業で働く彼女だったが、子供が成長するにつれてお金がどんどん必要となっていく。昼間の仕事だけでは生活が苦しくなり、彼女は「ブルーベリー」という源氏名で、デリヘル「フルーツ宅配便」に入店することを決める。ブルーベリーは常連客もつかみ、忙しいながらも充実した日々を送っていたが、毎日の疲労は確実に蓄積され、送迎中や家では寝て過ごすことが多くなっていた。そんなある日、呼ばれたホテルで客の男から「疲れている自分へのご褒美」として覚せい剤を勧められる。ブルーベリーは執行猶予中の身でありながら、ドラッグの魔力に逆らえず覚せい剤を受け取ってしまう。(エピソード「ブルーベリー」)

声優になることを夢見て、専門学校に通う傍らコンビニでバイトをする女の子がいた。その女の子の父親が営む居酒屋に突然借金取りが押しかけてくる。開店資金を貸してくれた親戚が債権を売ったらしく、その日から毎日のように借金取りが店に押しかけるようになる。借金取りは娘のバイト先のコンビニにまで押しかけ、娘に父親の死亡保険金で借金の清算を仄(ほの)めかす。女の子は父親を助けるために学校を辞め、風俗で働くことを決意。デリヘル「フルーツ宅配便」に入店し、「プルーン」の源氏名で働き始める。しかし借金取りは、父親に娘がデリヘルで働き始めたことを告げ、自らの死亡保険金で娘を救えと言葉巧みにうながす。ショックを受けた父親は、事故死に見せかけるために車で電柱に突っ込んで重傷を負ってしまう。その事実を知ったプルーンは、ミスジと咲田に一刻も早く父親の借金を返すためにもっと稼げるソープランドへ移ろうと考えていることを打ち明ける。そこでミスジは、父親の借金の返済義務は娘にはないことを説明し、弁護士を紹介するということで一旦話が落ち着き、咲田がプルーンを自宅に送っていくと、プルーンの家には借金取りがやって来ていた。父親を騙(だま)し重症を負わせた借金取りを目の前に怒りが爆発したプルーンは包丁を持ち出し、借金取りを刺そうとする。しかし借金取りに返り討ちにされ、止めに入った咲田と共にボコボコにされてしまう。事務所に戻った咲田を見たミスジは、マサカネと共に借金取りのもとへ向かう。(エピソード「プルーン」)

工場の総務課に務める女子社員の岡本はある日、同期の男性社員の辻から母親が病気で入院したと相談を受ける。二人は共に高卒で入社して2年目で、辻はまだ20歳になっていないため借金ができない。早生まれの岡本は既に20歳になっており、毎月の給料から返済するので代わりにお金を借りてくれと、辻に土下座で懇願される。岡本は地元を離れて就職した会社で、唯一の同期の頼みを断れず借金したお金を渡してしまう。しかし翌日、岡本は辻が突然退社したことを知らされる。さらに辻の母親は入院などしておらず、岡本のほかにも会社の従業員たちに借金を申し込んで断られていたことが発覚する。騙されたことを自覚した岡本は、借金返済のためにデリヘル「フルーツ宅配便」に入店し、「マルメロ」の源氏名で働き始める。月日が流れ、マルメロは借金完済を目前にデリヘルを辞めるか続けるかを迷っていた。そんな中、マルメロは現在の住まいであるアパートのとなりの部屋で、子供が虐待されている音がうるさいため、家を買って引っ越そうと考えていた。マルメロがデリヘルの仕事から帰ると、出勤時からずっと部屋を締め出されていたとなりの子供が未だに部屋に入れてもらえず、立ちすくんでいる光景を目にする。可哀想(かわいそう)に思ったマルメロは、自らの部屋に子供を招き入れて話を聞き、ご飯を食べさせて朝まで預かることにする。子供は「あみ」という名の8歳の女の子だった。マルメロが父親にあみが自分の家にいることを説明しようとするも、結局父親はその晩は帰って来ず、伝えそびれてしまう。過去に父親から虐待を受けていたマルメロはあみと自分を重ね、なんとかしたいと考えるようになる。マルメロの場合は祖母に助けを求める手紙を送り、父親から決別することができたが、あみは祖父母に会ったことすらないという。あみの希望もあり、しばらくマルメロは自宅であみを預かることにし、あみの家のポストに父親宛に手紙を入れるも、まったく音沙汰がなかった。咲田やミスジにも相談するものの解決に至らず、モヤモヤした日々を過ごす中、あみの父親からあみがマルメロに監禁されているという通報を受けたとして、警察がマルメロの家を訪れる。(エピソード「マルメロ」)

ユウタの妊娠中の妻が、出産準備のため実家に帰ることとなった。久しぶりの独身気分を満喫するユウタは、会社の同僚と居酒屋へ飲みに行って楽しい時間を過ごす。そこで同僚から、女房が実家に帰っているあいだは羽を伸ばしていた経験を聞き、同僚が家にデリヘルを呼んだエピソードに興味を持つ。「ホテルでなく家に呼ぶのが妙に興奮する」という同僚の話を聞き、すっかりその気になったユウタは早速、デリヘル「フルーツ宅配便」に電話をかける。そしてユウタは「ポンカン」という名のデリヘル嬢にハマり、度々指名して家に呼ぶようになる。妻が不在なのをいいことにポンカンには、ちょっと前に離婚したと説明していた。いつものようにポンカンを自宅に呼び楽しんでいると、タイミング悪く荷物を取りに戻って来た妻と鉢合わせになってしまう。怒って実家に帰った妻から離婚届が送られてきたため、ユウタはあわてて妻の実家へ向かう。(エピソード「ポンカン」)

ホストにハマっているマナミは、父親と暮らす家に帰らず友人のさよ子の家に泊まっていた。母親が亡くなった寂しさを埋めるためにホストクラブに通い始めたマナミは、タツヤに騙されてツケが溜まっていく。ある日、タツヤから家に来ないかと誘われ、マナミはタツヤと暮らすようになる。ホストのツケを回収しなくてはいけないタツヤは、マナミと組んでネットで騙したオヤジ相手に美人局(つつもたせ)を仕掛けて因縁をつけ、金銭を脅し取っていた。そんな中、心臓が弱いと言うオヤジに美人局に及んだ二人だったが、揉めてマナミがオヤジを突き飛ばしたことで、オヤジは心臓が止まってしまう。咄嗟(とっさ)にタツヤはマナミに逃げるよう指示し、マナミを逃す。しかしオヤジとタツヤはグルで、殺人の罪を押しつけてマナミを思いどおりにするための策略だった。タツヤに助けられたと思い込んでいるマナミは、タツヤに言われるがまま、デリヘル「フルーツ宅配便」に入店し、「ラズベリー」の源氏名で働き始める。そしてホストクラブの借金を返済するため、毎日の稼ぎをタツヤに渡していた。だが、次第にタツヤはマナミに暴力を振るうようになり、顔が腫れていることをマサカネに突っ込まれるがマナミはごまかす。事情を知ったさよ子はマナミの父親に連絡し、マナミがタツヤからDVを受けながらデリヘル嬢をしていることを伝える。父親はマナミを救いたい一心で、タツヤの家を訪れる。すると顔の腫れたマナミを見るや否や激昂し、タツヤの胸ぐらをつかみ詰め寄るも、逆に殴られてしまう。タツヤは殺人をネタにマナミを脅し、その脅しに屈したマナミはタツヤを好きだから家には戻らないと、父親に告げて追い返すのだった。(エピソード「ラズベリー」)

工場で働く気弱な青年、あたるは仕事帰りの電車で好みの女性を見かけ、つい家まで尾行してしまう。次第に行動がエスカレートし、その女性のゴミを漁(あさ)るまでになっていた。ゴミから女性の名前が「安藤まどか」と知り、ゴミから得た携帯番号に間違い電話を装い電話をかける。まどかの声を聞き、さらにあたるは彼女への思いを募らせる。そんなある日、まどかはカゼを引き会社を4日休んでしまう。それがきっかけで上司から仕事を回してもらえなくなり、まどかは職場で孤立していき、1か月後には上司から自主退職をうながされ、不本意ながらも会社を辞めてしまう。無職となったまどかはデリヘル「フルーツ宅配便」の面接を受け、「タマリロ」の源氏名で働き始める。そんな中、相変わらずまどかのストーキングを続けていたあたるは、最近まどかが会社に出勤しないことを心配していたが、ゴミからまどかがフルーツ宅配便に勤務していることを突き止める。一方で、まどかは久保という常連客をつかみ、プライベートで食事をするまでの関係になっていた。久保は学生時代にあたるをイジメていた同級生で、まどかをストーキングしていたあたるからも認識されていた。まどかと久保は、デート後にまどかの自宅でセックスする関係になり、あたるは歯痒(はがゆ)い思いを募らせる。まどかは奨学金を返すために働いていることを久保に打ち明けると、久保から、フルーツ宅配便からバンス(給料の前借り)をして逃げ、高級ソープで働けば返済が短縮できると提案される。いっしょに逃げるという久保の言葉を信じて、まどかは咲田にバンスを申し入れて30万円を借りることに成功する。しかし久保はまどかのスキを突き、そのお金を持って姿をくらます。すると久保の人間性を知っていたあたるは、まどかのために動き出す。(エピソード「タマリロ」)

キャバクラに通う手塚サトルは、毎回ツケで飲んでいた。ツケが溜まり、黒服に返済をせまられるも無職の手塚には支払い能力はなかった。そこで黒服はスカウト業で稼いでツケを返済するように提案し、手塚はソープの悪徳スカウトマンに転身する。ゆいなはネイルサロンを開業するものの、経営が軌道に乗るまでは営業時間外にバイトをしようと考え、親友のミクに相談する。そしてゆいなは、デリヘル「フルーツ宅配便」に入店し、「あまなつ」の源氏名で働き始める。一方のミクは、夜道で手塚に芸能界を餌に声をかけられ、興味を持ったミクは手塚の話を聞くことにする。手塚は一見(いちげん)を装いグルになっているバーに誘い、ミクの酒に睡眠薬を盛って眠らせる。目が覚めたミクの目の前には高額なボトルの空瓶が多数並んでおり、店員からそのほとんどをミクが飲んだと説明される。酒代として300万円を請求されるが、払わないとごねる手塚を店員は別室へ連れて行き、衝撃音と共に手塚は血を流し戻って来る。ボロボロの手塚を見て完全にビビってしまったミクは、スマホを取り上げられて店員に言われるままソープで働く契約を交わされてしまう。ミクがソープで働き始めてしばらく経った頃、ゆいなはフルーツ宅配便で働きながらも、最近連絡が取れないミクを心配していた。その容姿のためにソープでなかなか指名が取れないミクに、見た目がいい女友達を紹介させようと手塚が画策する。未だにミクは手塚が芸能事務所のスカウトマンだと信じており、よかれと思ってゆいなを手塚に紹介する。(エピソード「あまなつ」)

小学生の頃のマサカネはアイスやジュースを奢(おご)ってくれることから、近所でたむろする暴走族のツガに懐いていた。ある日、いつものようにツガにお菓子をもらうために会いに行くと、ツガが敵対しているチームと喧嘩(けんか)になる。いつも奢ってもらっているヅガに恩を感じていたマサカネは、喧嘩に加わり敵対チームを退ける。この時からツガはマサカネの強さを認め、年齢は離れているものの付き合いが始まる。時は流れ、ツガはヤクザになって部屋住みを卒業し、自らのシノギとしてデリヘルを開業していた。間もなくして暴対法改正で組が解散しカタギになったため、ツガは組の名前を使えず、思うように売上が伸びずに思い悩んでいた。そこでマサカネに連絡を取り、ミスジに風俗経営のノウハウを教わる。ミスジのアドバイスを受け、ツガの店「でりぃ倶楽部」は順調に売上を伸ばしていく。そんな中、半グレが経営するライバル店「デリヘルクィーン」が、でりぃ倶楽部のデリヘル嬢を引き抜く。やられたままでは収まらないツガはデリヘルクィーンのデリヘル嬢を引き抜き、壮絶な引き抜き合戦が始まる。店の資金を消耗するだけの戦いが続く中、ツガはマサカネとミスジと飲んだ帰り道でデリヘルクィーンの半グレたちに襲撃を受ける。ピンチに陥るツガだったが、そこへマサカネが駆けつけて半グレたちを撃退する。後日、ツガは半グレのリーダーから、慰謝料を払う形で手打ちを提案される。しかし、この手打ちの提案は罠(わな)で、半グレはツガを殺すつもりで呼び出していた。一方、ラーメンを食べていたマサカネのもとに半グレが現れ、フルーツ宅配便の3倍の給料を提示し、デリヘルクィーンへ移籍しないかと誘う。(エピソード「ツガ」)

昼は会社に勤め、夜はデリヘル「フルーツ宅配便」で働くサンプルーンは、マンションを買うためお金を貯めていた。母子家庭で体の弱い母親を働かせることはできないと、自分が稼ぐという強い意思を持っていた。そのためお金に対する執着はかなりのもので、自らの指名客にも「お金のために働いている」ときっぱり言うスタイルを貫いていた。そんな彼女の母親が振り込め詐欺に騙され、今まで必死で貯めた350万円を騙し取られてしまう。咲田やミスジにも相談するがどうしようもなく、黙っていてもお金は貯まらないと、気持ちを新たにデリヘルで稼ぐことにする。サンプルーンの指名客であるニムラに貯金がなくなったことをぼやくと、ニムラからもっと楽で効率よく稼ぐ方法があると、ぼったくりバーを紹介される。会社とデリヘル、ぼったくりバーのトリプルワークをこなすサンプルーンに、ぼったくりバーの店長から、さらに稼げる仕事があると言われ、サンプルーンはさらに怪しい仕事を始める。公園にいるホームレスをある病院に連れて行き治療を受けさせ、病院から報酬をもらうという仕事だった。後日、サンプルーンは紹介したホームレスが二人亡くなったことを、ニムラから聞かされる。(エピソード「サンプルーン」)

会計事務所で事務を務めるコトミは、ある日いっしょに暮らす母親が彼氏を連れて帰って来た。コトミは母親から、彼氏と結婚することを考えていると聞かされ、共に暮らすこととなる。コトミは最初は祝福するものの、男は無職で働きもせず、コトミの母親にお金をせびり遊び歩いていた。母親に別れた方がいいと伝えるも、独り身の寂しさに耐えられなくなっていた母親は彼氏を擁護する。コトミはその言葉から母親に不信感を抱き、仕事以外は自室から出てこなくなる。彼氏はせっかくつかんだ金ヅルと住処(すみか)を失うかもしれない危険を感じ、母親にコトミは引きこもりのニートになる可能性があると誑(たぶら)かし、無理矢理モグリの自立支援センターにコトミを預ける。コトミは、自立支援センターで暮らすための高額な費用を、コトミ自身が返済しなければならないと説明され、訳もわからずに借金返済のためにキャバクラに入店させられ、稼ぎをすべてピンハネされてしまう。そこで偶然キャバクラに客として来ていたアキに、コトミ自身の身の上を話したところ、アキはコトミを自立支援センターから逃がしてやると誘い、送り出しの際にタクシーにコトミを乗せ、アキの家で暮らすこととなる。しかし自立支援センターから逃げられたものの、コトミの状況は根本的な問題の解決にはなっていなかった。そしてコトミは、弁護士を使い法的に対応する、というアキからの言葉を信じるしかなかったが、実質無職のアキに弁護士を雇う余裕はなかった。そこで、アキは同級生である咲田が店長を務めるデリヘル「フルーツ宅配便」のことをコトミに話し、風俗で働くように勧める。アキの思惑どおりコトミはフルーツ宅配便に入店し、「ライム」の源氏名で働き始める。弁護士費用を貯めるために毎日の稼ぎをアキに渡す日々が続くが、アキはそのお金でキャバクラに入り浸り、その店のキャバクラ嬢を引き抜き、自分のキャバクラを出店することを目論んでいた。そんな中、アキは開店資金として300万円を闇金から借りて踏み倒すことを計画していた。一方のコトミは、弁護士が一向に動く気配がないことに不安を抱き、咲田に相談を持ちかける。(エピソード「ライム」)

高校を卒業して印刷会社で働き始めたユウトは、生来の弱気な性格と要領の悪さで職場でイジメに遭っていた。仕事のミスを理由に先輩から殴られ、同僚の女の子に食事に誘われるも待ちぼうけばかりで、事あるごとに「会社を辞めろ」と言われ続けていた。しかし、母親が亡くなってから男手一つで育ててくれた父親のカマタに心配させまいと家では平静を装っていた。そんな中、会社の女の子に待ちぼうけを食らい、深夜になっても帰って来ないユウトを心配したカマタが「ラーメンまつばら」を覗(のぞ)くと、仕事帰りのミスジや咲田、マサカネの三人と遭遇する。カマタは釣り仲間であるミスジに、帰って来ないユウトを探していると説明すると、ちょうど店の前をユウトが通りかかる。ラーメン屋に招き入れ、ユウトの話を聞いたミスジは、イジメからは戦うか逃げるかの二択しかないが、戦うのは時間の無駄だと説明し、逃げて次の道へ進む方が有意義であると諭す。カマタの息子ということもあり、ミスジはデリヘル「フルーツ宅配便」で働いてみないかとユウトを誘う。ユウトは今の会社以外に自分が働ける場所はないと考えていたため、驚きながらもミスジの誘いを受ける。ユウトが初出勤の日、咲田は在籍するデリヘル嬢「マンゴー」とファミレスで話していた。マンゴーに、オプション料金や延長料金の着服、店を通さずに客と会っていた直引きを咎(とが)め、クビを言い渡す。その後、ユウトに丁寧にデリヘルの業務内容を教えていく。初めてのことばかりで戸惑うユウトだったが、送迎の際にデリヘル嬢から身の上話を聞き、さまざまな境遇の人間がいることを知る。ユウトは拙いながらも一生懸命に仕事をこなし、デリヘル嬢から感謝の言葉をもらい、やりがいを感じるようになる。一方、フルーツ宅配便をクビになり、無職となったマンゴーことエイミは、デリヘル時代の客からお金をもらいながら細々と生活していたが、家賃を滞納して住む家がなくなる危機に陥っていた。そんな折、離婚した元旦那が娘のチサを連れてエイミのもとへ現れる。元旦那は再婚することになったため、チサを育てられないからエイミに引き取ってくれと語る。最初は拒否していたが、元旦那が引き取ってくれたらお金を払うと言い出し、目の前の現金に目が眩(くら)んだエイミは、20万円でチサを引き取る。エイミはとにかくお金を稼がないと生活ができないため、20歳だと年齢をごまかして高級風俗店の面接を受けるが、当然採用されることはなかった。その帰り道、駅で体調が悪くなってうずくまっているカマタに声をかける。快復するまで傍(そば)についていたことで親しくなり、次にまた会う約束を取り付ける。後日、カマタとエイミは食事をしたあとにホテルへ向かう。そしてホテルで眠ったカマタの財布を漁(あさ)り、お金を奪って逃げようと考えるが、カマタのあまりの人のよさに、ほかに利用できると考えを巡らす。翌朝、目が覚めたカマタに、エイミは「自分は結婚を考えている男性としか一夜を過ごさない」ともっともらしい言葉を口にし、強引に結婚を前提とした付き合いを始める。翌日、カマタ家を訪れたエイミはカマタからユウトを紹介され、自分の結婚の意思を伝え、チサの写真を見せる。ユウトはカマタの意思を尊重して、結婚に肯定的な態度を示すと、今がチャンスとばかりにエイミは、持参した婚姻届をカマタに記入させカマタ家へチサを連れて来る。(エピソード「ユウト」)

幼い頃、ミノダアカリは市役所勤務をしていた父親が交通事故で亡くなり、父親の弟である叔父に育てられた。実はアカリの父親は市長の与田の汚職を内部告発しようとしたところ、事故に見せかけられ殺されたのだった。その事実を知る叔父は、兄の仇(かたき)を討つために裏ルートで拳銃を入手し、ジョギング中の市長の命を狙う。しかし銃が不発に終わり、叔父は逮捕されてしまう。天涯孤独の身となったアカリは施設に預けられ、月日は流れた。グレもせずに素直に育ったアカリは18歳となり、施設の決まりでアパートを借りてレストランに就職する。アカリは同僚ともなかよくなり、ふつうの女の子として過ごしていた。ある日、レストランにやって来たタチの悪い男二人にアカリはナンパされるが、同期の同僚のハセミナトに助けられる。複雑な過去を持つアカリは人を好きになったことがなく、自分のハセに対する感情が恋だとは気づかなかったものの、大切な人であると認識する。そんな中、ハセが思いを寄せるリリコがレストランに客として現れ、ハセにお金をせびる。ハセから、リリコと付き合いたいと思っていることを聞かされたアカリは複雑な心境になる。それからもリリコは度々ハセのもとに現れ、いとこが病気で手術のためにお金が必要だと、何かと理由をつけてはお金をせびっていた。金銭的に厳しくなったハセは、もっと稼ぎのいい仕事への転職を考えている、とアカリに相談する。ハセと離れたくないアカリは、お金があればハセが今のレストランでずっと働けいてくれるとの思いから、ハセに「カンパ」と称して自らの貯金を渡す。遠慮するハセに、アカリは自分の家が金持ちであるため、このくらいのお金はなんでもないとウソをつく。お金がなくなってしまったアカリは、レストランと掛け持ちできる割のいい仕事を探しており、男性経験がないにもかかわらず、デリヘル「フルーツ宅配便」に入店し、「チェリー」の源氏名で働き始める。一方、ハセはリリコのデートで、ついにホテルまで行くことになるが、突然リリコの夫と名乗る男が部屋に乱入し、ハセは不倫の慰謝料として300万円を請求され、金融屋で借りることになってしまう。その金融屋は悪徳業者で、利息を払ったにもかかわらずハセの職場のレストランに押しかけ、さらに追加で利息を払えと騒ぎ立てる。その光景を目にしたアカリは、ハセを助けたい一心で咲田とミズジにソープランドの紹介を申し出る。未だ処女であるアカリを心配し、ミスジはソープランドは接客に本番が含まれることを説明するが、アカリの決意は固く、それでもいいと意見を変えない。一方のハセは取り立ての嫌がらせに屈し、レストランを辞めて悪徳金融屋で雑用としてこき使われていた。失意と無力感に苛(さいな)まれるアカリであったが、ハセは心配するアカリに電話して、ある仕事をこなせば自分の借金がチャラになると言う条件を提示されていることを伝える。その仕事の内容は、現市長である与田の自宅の塀に拳銃を一発撃ち込むというものだった。父親を殺され、叔父が逮捕されるに至った与田の名前をハセの口から聞き、アカリは自分のやるべきことを考える。(エピソード「チェリー」)

メディアミックス

テレビドラマ

2019年1月から、本作『フルーツ宅配便』のテレビドラマ版『フルーツ宅配便』が、テレビ東京系で放送された。全12話。脚本を根本ノンジ、監督を白石和彌、沖田修一、是安祐が務めている。キャストは、咲田を濱田岳、ミスジを松尾スズキ、マサカネを荒川良々が演じている。

登場人物・キャラクター

咲田 (さきた)

デリヘル「フルーツ宅配便」の店長を務める男性。風俗業で働いていながら穏やかな性格で、容貌もごくふつうというところが、店のヘルス嬢たちから高評価を得ている。もともとは東京でサラリーマンをしていたが、会社が倒産して故郷に帰って来た。学生時代によく通っていた「ラーメンまつばら」に立ち寄った際に、以前から顔見知りだったミスジにスカウトされ、デリヘルの店長をやることになった。好きなラーメンはネギミソラーメン。社会的地位に敏感で、学生時代の同級生や初対面の人間には、咲田自身の職業を明らかにしないことが多い。当初はデリヘルの業務形態をまったく知らなかったが、ミスジの指導により成長を遂げ、デリヘル嬢たちにも慕われるようになっていく。

ミスジ

デリヘル「フルーツ宅配便」のオーナーを務める男性。大柄な体型をしている。オールバックの強面(こわもて)でストライプのスーツを好んで着ている。「ラーメンまつばら」の常連で、久しぶりに咲田と再会して自らのデリヘル店に誘った。風俗業界では顔が広く、議員やヤクザ、金融屋ともつながりがある。荒事に慣れており、暴力がらみの案件にはマサカネと共に対処することが多い。揉め事が起こらない限りは、その見た目に反して紳士的で物腰も柔らかい。従業員やデリヘル嬢からの信頼も厚く、ほかの地域のデリヘル店のオーナーが経営を教わりにくるほど商売が上手(うま)い。趣味は釣り。

マサカネ

デリヘル「フルーツ宅配便」の送迎ドライバーを務める青年。ぽっちゃり体型をしている。刈り上げで頭頂部のみパーマをかけた髪型で、鼻の穴が大きい。小卒で学歴はほぼないに等しく、将来の夢は外科医になることだが、勉強をしている様子はまったくない。のんびりしたマイペースな性格で、つねに何か食べている。睡眠薬を盛られても全然平気な特殊な体質をしている。トイレの鍵をよくかけ忘れ、ミスジから度々注意を受けている。運転していない時は事務所で居眠りしていることが多く、寝言で会話することができる。小学生の頃から一人で暴走族と渡り合うほど喧嘩(けんか)が強く、デリヘル嬢が客とトラブルになった際は敏速に駆けつける。フルーツ宅配便で働く従業員やデリヘル嬢が大好きで、決して仲間を裏切らないことから、ミスジに信頼されている。

みず子 (みずこ)

デリヘル「フルーツ宅配便」のデリヘル嬢と雑用を兼任している女性。ちょいブスな外見をしている。通常、デリヘル嬢は自宅で待機し、仕事が入ったら現場のホテルや客の自宅に向かうシステムだが、雑用があるため事務所に出勤している。風俗経験のない女の子が入店すると、デリヘルの仕事内容を教えている。

ドラゴンフルーツ

風俗業界では「伝説」とされている超ベテランのデリヘル嬢。現在はデリヘル「フルーツ宅配便」に在籍している。初登場時は孫が高校2年生だったことから、周囲にはドラゴンフルーツ本人の年齢は70代と推測された。デリヘル嬢の技術講師を務めるほど、接客やプレイ技術に長(た)けている。スタッフから絶大な信頼を寄せられているため、難しそうな客の対応を求められることが多い。ホテルの部屋をノックして顔を見せると、その外見から客に清掃のオバチャンと間違われることが多いが、プレイ後はすべての客が満足している。ただし、うっかり料金をもらい忘れることもある。

ユウト

父親のカマタと共に釣りをしていた際に、ミスジと知り合った青年。年齢は18歳で、母親はすでに亡くなり、父親と二人暮らしをしている。緊張すると言葉をよく嚙み、「はい」を「はいぃぃ」としゃべったり、いかにも頼りなさげな様子を見せる。印刷会社で働いていたが、職場の先輩からの激しいイジメで退職を余儀なくされた。のちにミスジから誘われてデリヘル「フルーツ宅配便」で、送迎ドライバーを務めるようになる。気弱ながら優しい性格で、父親のカマタに心配をかけまいと、印刷会社で受けているイジメを隠し通した。また、エイミがカマタ家に置き去りにした娘、チサには、母親不在で不安な状態のため愛情持って接するなど、父親ゆずりの人の好さを持つ。何も知らずにデリヘル業界に入ったが、デリヘル嬢から「ありがとう」と言われ、社会に出て初めて仕事のやりがいを感じるようになる。

カマタ

ユウトの父親。ミスジの釣り仲間の中年男性で、胃腸が非常に弱い。妻が亡くなってからユウトと二人暮らしで、エイミと出会って結婚を視野に入れた付き合いを始める。しかし、娘のチサを連れてカマタ家に同居していたエイミが次第に家に帰って来なくなっても、ユウトと二人でチサに愛情を持って接していた。エイミに娘を押しつけられただけという状況にもかかわらず、エイミを恨むことなくチサの同居を歓迎するなど、お人好しな性格の持ち主。学生時代は不良からイジメられていた過去がある。

エイミ

デリヘル「フルーツ宅配便」に在籍していた女性。フルーツ宅配便在籍時の源氏名は「マンゴー」。「チサ」という名前の娘が一人おり、離婚した元旦那から最近親権を取り戻した。美人なことから客から人気があるが、客からオプション料金を取って着服したり、店を通さずに客と直引きしたりことで解雇された。解雇されてからもフルーツ宅配便の元指名客に連絡してお金をもらっていたが、金持ちと思っていた客が実はネカフェ難民だったりと、男運が非常に悪い。のちにカマタと出会い、チサと共にカマタ家に転がり込むこととなる。しかし次第に家に帰ってこなくなり、チサの世話をカマタやユウトに押し付け、悪徳スナックに勤務するようになる。

コトミ

母子家庭で育った容姿端麗な女性。会計事務所で事務を務めていた。母親が無職の彼氏を家に連れて来たことで、関係がギクシャクするようになる。その後、追い討ちをかけるように、母親は彼氏に言いくるめられ、コトミはモグリの自立支援センターに売り飛ばされてしまう。自立支援センターから斡旋(あっせん)されたキャバクラで働くようになり、アキと出会って自立支援センターを脱走する。アキの家で同居するようになるものの、アキに勧められてデリヘル「フルーツ宅配便」で働き始めた。源氏名は「ライム」。男運の悪さは母親譲りで、のちに裏表なく優しく接してくれる咲田に思いを寄せるようになる。

小田 (おだ)

地元で咲田と同級生だった男性。老けた容姿で、小学生の頃から遠足では引率の先生に間違われていた。彼女がいない咲田を合コンに誘ったりと、何かと面倒見がいい。初登場時は会社員だったが、のちに脱サラして焼き鳥屋を開業する。現在は咲田をはじめ同級生のアキや、小学生時代の通学見守りのおじいちゃんなど、地元の人たちが集まる人気店となる。デリヘル「フルーツ宅配便」の従業員やデリヘル嬢もよく利用している。一見店は平和そうだが、客同士の距離が近いため度々トラブルが起こる。

アキ

地元で咲田と同級生だった男性。小学校卒業と同時に転校したが、最近故郷に帰って来た。イケメンだが生活はかなり破綻しており、その日暮らしを続けている。同級生の小田が経営する焼き鳥屋の常連でもある。子供の頃、交通見守りのおじいちゃんに、車に轢(ひ)かれそうなところを救われた過去がある。愛情のない家庭で育ったたため、ふつうの家庭で育った咲田や小田と昔から距離を感じていた。中学生の頃、アキをイジメていた父親をボコボコに殴り倒して親の呪縛から解放されたが、暴力に目覚めて10代の頃の生活は荒れていた。悩みを抱えた女性に近づき、言葉巧みに騙(だま)して稼ぎを奪い取ったり、街金から借りたお金を踏み倒したりしている。倫理に反する言動が目立つが、咲田と小田のことを現在でも親友だと思っており、小学生の頃に咲田にもらったグローブを未だに大切に持っている。

ゆず

咲田がデリヘル「フルーツ宅配便」で、初めて面接をしたシングルマザーの女性。ミスジから「ゆず」という源氏名を付けられた。容姿端麗ながら顔の右半分に醜いアザがある。そのアザは離婚した元夫と口論した際に、就寝中にアイロンを押し当てられてできたものである。元夫はその蛮行が原因で逮捕され、離婚が成立した。前髪を顔の右半分に垂らしてアザを隠している。客からの反応はドアを開けた瞬間はいいものの、髪を上げるとアザが気持ち悪いと言われてチェンジされることが続く。チェンジされない場合は、顔のアザをタオルで隠して接客している。腫れ物のように扱われることに悔し涙を流し、突然連絡を絶ってフルーツ宅配便を辞める。

アニメオタクの男性

アニメが大好きな童貞男性。彼女がいるが未だセックスには至っていない。年齢は22歳。彼女からお泊まり前提の鍋パーティーに誘われ、人生で初めてセックスを意識する。童貞のためセックスの仕方がわからないので、風俗で練習しようとデリヘル「フルーツ宅配便」でドラゴンフルーツを指名した。基本的に性に対して恥ずかしさと恐怖心があるため、なるべく風俗店っぽくない名前のフルーツ宅配便を選んだ。

ブルーベリー

黒髪のミドルヘアの女性。もともとは都内で内縁の夫であるナオヒトと5歳の娘、アカネと暮らしていた。しかし、ナオヒトが覚せい剤にハマり逮捕され、実刑となったことで別れた。ブルーベリー自身もナオヒトに勧められて、覚せい剤を少量とはいえ使用したことで逮捕され、懲役2年の判決を受ける。だが執行猶予3年をもらえたことで、刑務所に入ることなくアカネと共に実家に帰って来た。母親や親戚から裁判費用を用立ててもらっていたため、運送屋で働きお金を返していた。アカネが小学校に上がる際に、ランドセルをはじめ色々とお金がかかることを考え、デリヘル「フルーツ宅配便」で働き始める。源氏名は「ブルーベリー」。若い頃から体力に自信があったため、昼は運送屋、夜はデリヘルというダブルワークをこなしている。マサカネから「体力がつくから」という理由でよくシーチキンおにぎりを貰(もら)っている。常連客も増えて借金も順調に返済していたが疲労は確実に蓄積され、家や送迎中の車で眠っていることが多くなる。さらに常連客から覚せい剤を勧められ、執行猶予中にもかかわらず使用してしまい、どんどん痩せていく。

プルーン

ショートヘアのかわいらしい顔立ちの女性。父子家庭で育った。父親は居酒屋を経営しているが、客があまり来ないために経営は火の車状態にある。高校卒業後、声優になることを夢見て声優の専門学校に通っていた。男手ひとつでプルーン自身を育ててくれた父親に感謝している。父親は居酒屋の開店資金を親戚から借りていたが、返済が滞る父親に痺(しび)れを切らした親戚が、金融屋に債権を売ったことで、自宅はもちろんプルーンのバイト先のコンビニにまで借金取りが押しかけるようになる。のちに借金取りから「死亡保険金での借金の精算」と、父親の命をチラつかされ、親の借金を返すためにデリヘル「フルーツ宅配便」で働き始める。源氏名は「プルーン」。その際に、声優の専門学校とコンビニのアルバイトは辞めている。

マルメロ

黒髪ショートヘアの女性。初登場時の年齢は20歳。18歳の時、就職のため祖母と暮らす実家から離れ一人暮らしを始めた。本名は「岡本」。入社した会社で唯一の同期である男性社員の辻に騙され、借金を負ってしまう。その借金の返済のため、デリヘル「フルーツ宅配便」で働き始めた。源氏名は「マルメロ」。昼の会社はそのまま働き続け、ダブルワークをしながら借金を完済したしっかり者。お人好しな性格で、「人生は何回でも挽回(ばんかい)できる」という持論を持っており、状況が悪くなっても解決する努力を惜しまない。借金を完済したあとも、マンションを買うためにデリヘルを続けている。父親から虐待されていた過去があり、その時は祖母に助けを求める手紙を出し、父親と決別することに成功した。現在住んでいるアパートのとなりの部屋の女の子が、父親から虐待されていることを知り、なんとかしたいと考えている。

ユウタ

サラリーマンの男性。妊娠中の妻を気遣い、上司に飲みに誘われても真っ直ぐ帰るほどの愛妻家。妻が出産準備のため実家へ帰っているあいだに、同僚に勧められてデリヘル「フルーツ宅配便」の「ポンカン」を自宅に呼んだ際に、荷物を取りに帰って来た妻と鉢合わせとなり、離婚の危機へと発展してしまう。義父から気に入られており、嫁の実家での話し合いではかばってもらっている。嫁からは「ユウちゃん」と呼ばれている。

マナミ

母親が亡くなり、現在は父親と二人暮らしをしている女性。あまり家に帰ることなく、親友のさよ子の家によく泊まっている。父親からはそんな生活を心配されているが、マナミ自身は父親を煙たがっている。その寂しさからホストクラブにハマり、ツケで飲みまくって店に多額の借金を負ってしまう。のちに担当ホストのタツヤと暮らすようになるが、ホストクラブの借金を返済するためにタツヤと組んで、ネットで騙したオヤジに美人局を行なってお金を稼ぐようになる。美人局中にタツヤの策略にハマって人を殺してしまったと思いこみ、以後タツヤの言いなりとなり、デリヘル「フルーツ宅配便」で働き始めた。源氏名は「ラズベリー」。弱みを握られているタツヤから暴力を振るわれても受け入れることしかできず、生活は困窮している。フルーツ宅配便に出勤した際に、仕事終わりにマサカネとよくラーメンを食べに行っている。以前は男性を顔で選んでいたが、マサカネのように優しい男性を好きになればよかったと反省していた。

タツヤ

ホストの青年。客には優しく接しているが、実際はDV気質のクズ。茶髪でいかにもチャラい外見をしている。相手が自分より弱いと知ると強気な態度を取り、暴力を振るっていいなりにしている。マナミの孤独につけ込んで、自らのホストクラブに多額の借金を負わせた。のちにマナミといっしょに暮らすも、店の借金返済のため美人局を装って金を騙し取っていた。そんな中、タツヤが雇ったオヤジに死んだふりをさせて、マナミが殺人を犯したように見せかけたうえで、マナミを逃して恩を売り、完全に支配下に置いた。その後はマナミをデリヘル「フルーツ宅配便」で働かせ、その稼ぎをすべて奪っている。

あたる

工場に勤務する青年。内気な性格をしている。高校時代に久保という名の同級生からイジメられていた過去を持つ。実家の経済的な理由もあり、大学に進学せずに就職した。ストーカー気質で、電車内でたまたま見かけた好みの女性、安藤まどかを尾行して家を突き止めた。そんな中、ゴミを漁り電話番号を突き止め、間違い電話を装って電話をかけるなど、その行動がエスカレートしていく。まどかへのストーキング行為が日課となった頃、まどかがデリヘル「フルーツ宅配便」で働き始めたことを知り、同時にあたる自身をイジメていた久保とまどかのデートを目撃してしまう。

安藤 まどか (あんどう まどか)

デリヘル「フルーツ宅配便」に在籍する女性。店のプロフィールでは年齢が22歳となっている。母子家庭で育ち、奨学金で大学に進学した。そこそこの企業に就職するも、新入社員時代にカゼで4日間休んだことをきっかけに上司から嫌味を言われ、仕事を振ってもらえずに窓際社員となる。入社から1か月が過ぎる頃に、自主退職をうながされ会社を辞めてしまう。奨学金を返さないといけないため、フルーツ宅配便で働き始めた。源氏名は「タマリロ」。生真面目な性格なため、咲田からも信頼され、指名客も順調に増えていく。安藤まどか自身の指名客の中にはあたるを高校時代にイジメていた久保がおり、久保に口説かれデートをするうちに信用するようになり、まどかの自宅でセックスをする関係となる。ちなみに会社員時代からあたるにストーキングされているが、まどか自身はまったく気づいていなかった。

手塚 サトル (てづか さとる)

キャバクラが大好きな青年。イケメンながらキャバ嬢からは相手にされていない。ツケで飲んでいたが無職だったため、支払いができずにキャバクラの黒服に言われるまま、ソープのスカウトマンとなった。タレントや女優のスカウトのふりをして女性に声をかけ、手塚サトルとグルになっているバーに連れていき、睡眠薬を盛り女性を眠らせたのち、高額な酒を大量に飲んだことにして多額の金額を請求した。その借金を返すために、ソープに落とすという方法で女性を罠にはめている。強引な方法ながら、サトルも被害者を演じることで女性からの恨みの矛先を回避していた。また意外と女性のケアをしっかりやっているようで、騙してソープで働かせていたミクからも信頼され、親友であるゆいなを紹介された。

ゆいな

最近ネイルサロンを開業した女性。しかしまだ常連客が付いておらず、経営は完全に赤字状態。ネイルサロンの営業時間外で稼げる副業として、デリヘル「フルーツ宅配便」で働き始めた。源氏名は「あまなつ」。基本的に他人を信用していないが、小学校からの親友であるミクだけは信頼している。容姿端麗なことから、フルーツ宅配便に入ってすぐに人気となり、ミスジや咲田にも大事にされている。

ミク

ゆいなと親友の女性。小学校からの友達のゆいなを非常に大事に思っており、ゆいなが開業したネイルサロンが軌道に乗っていない時は、ミク自身の貯金を渡そうとしたほど。ごくごくふつうの外見のため、男性からチヤホヤされた経験はまったくない。手塚サトルにタレントとしてスカウトされたことで舞い上がり、ぼったくりバーで高額な飲み代を請求され、ソープで働くこととなる。手塚の色仕掛けにハマって恋心を抱くようになり、ゆいなを紹介してしまう。

ツガ

パンチパーマでヤクザ然とした風貌をした男性。かつて暴走族として暴れ回っていた。小学生のマサカネと出会い、敵対チームとの喧嘩に巻き込んでしまった過去がある。その際にマサカネの強さを認め、年齢は離れていながらも親しくしている。暴走族卒業後はヤクザとなるが、現在は暴対法により組が解散し、カタギとなっている。ヤクザ時代からのシノギとして、デリヘル「でりぃ倶楽部」という名の店を隣市で経営している。店の売上が思うように伸びず悩んでいた際にマサカネに連絡を取り、デリヘル「フルーツ宅配便」のオーナーを務めるミスジを紹介してもらい、風俗店のノウハウを学ぶ。「やられたらやり返す」を基本理念としており、半グレが母体のライバル店「デリヘルクィーン」にデリヘル嬢を引き抜かれたことをきっかけにトラブルに発展していく。

サンプルーン

茶髪でかわいらしい顔立ちの女性。昼は会社員として働き、夜はデリヘル「フルーツ宅配便」で働いている。源氏名は「サンプルーン」で、本名は「なな子」。雨漏りがするような狭くてボロいアパートに、母親と二人暮らしをしている。自他共に認める守銭奴で、デリヘルで貯めた350万円の貯金を大切にしている。母親の体が弱いため、サンプルーン自身が稼がなければいけないという意識が強い。もともとはマンションを買うために始めた貯金だったが、頭金が溜まった現在も、もったいないからと、未だにボロアパートで暮らしている。指名客も数人おり、特にニムラからの本指名が多い。母親が振り込め詐欺に遭い、必死で貯めた350万円を騙し取られてしまい、再び一からマンションの費用を貯め直すことになる。そんな中、ニムラから「効率のいい仕事」としてぼったくりバーを紹介され、三つの仕事を掛け持ちすることになる。

ニムラ

デリヘル「フルーツ宅配便」の常連客の男性。サンプルーンを指名している。一見気弱そうな優男という印象だが、実はかなりの曲者(くせもの)である。子供の頃に、事業で失敗した父親が借金を清算するために自殺してしまう。母親からは「父親は金のために死んだ」と聞かされていたため、本当に金のために命を捨てる人間がいるのかという疑問をずっと抱き続けている。そんな中、会うたびに金の話をするサンプルーンに興味を持ち、彼女が金のためにどこまでやれるのかを確かめる実験を始める。サンプルーンの母親を振り込め詐欺で騙した黒幕がニムラであり、彼女に次から次へと怪しい仕事を紹介しては、最終的には保険金のために自殺するよう誘導する。

ミノダ アカリ

地味な雰囲気ながら、かわいらしい顔立ちの女性。年齢は18歳。施設育ちで、施設を出てからはレストランで働いて同僚ともうまくやっている。しかし複雑な過去を持ち、市役所に勤めていた父親は、市長の与田の汚職を告発しようとして事故に見せかけられ殺害された。のちに自分を引き取ってくれた叔父は、父親の仇を討つために与田を拳銃で襲撃するが、銃が不発で逮捕され、ミノダアカリ自身は施設に入ることになった。壮絶な生活を強いられていたので、人を好きになる余裕もなく恋愛どころではなかったため未だ処女である。同期の同僚のハセミナトに次第に惹(ひ)かれていくも、その感情が恋だと自覚するのにも相当な時間を要した。お金に困っているハセが、今働いているレストランより給料のいい職場への転職を考えていることを知ると、純粋な性格のため「お金があればハセと働き続けられる」と考え、デリヘル「フルーツ宅配便」で働き始める。源氏名は「チェリー」。

ハセ ミナト

ミノダアカリと同じレストランで働いている青年。年齢は20歳。一見気弱そうな見えるが、アカリがタチの悪い男性客からナンパされているのを助けるなど、実直な性格の持ち主。高校時代から思いを寄せるリリコという名の女性から、会うたびに何かと理由をつけてはお金をせびられている。アカリを同僚として大切に思っているが、アカリから思いを寄せられていることには気づいていない。リリコとのデートでホテルに行くが、そこにリリコの夫を名乗る男が乱入し、慰謝料として300万円を請求された。悪徳金融で借金をさせられ、利息を支払い続けているにもかかわらず、悪徳金融は職場のレストランまで取り立てに来るため、働きづらくなったハセミナトはレストランを辞め、利息の棒引きを条件に悪徳金融で雑用として働くこととなる。そんな中、現市長の与田の自宅を銃で発砲しろと命じられる。

場所

フルーツ宅配便 (ふるーつたくはいびん)

とある地方都市にあるデリヘル。ミスジがオーナー、咲田が店長、マサカネが送迎ドライバーを務めている。風俗営業許可を取得し、税金も支払っているために一般の会社として登記されている。事務所はふつうのマンションの一室にある。在籍するデリヘル嬢はフルーツにちなんだ源氏名が付けられている。ミスジの意向により、「女の子を大切に扱う」という理念で運営され、ほかの地域にも知られる優良店となっている。また、子供がいるデリヘル嬢のために、接客中は事務所で子供を預かることもある。店の規則が厳しく、その規則を破ったデリヘル嬢は直ちに除籍となる。しかし事情がある場合は、ミスジからそのデリヘル嬢に適した風俗店を紹介されることもある。

書誌情報

フルーツ宅配便 14巻 小学館〈ビッグ コミックス〉

第1巻

(2016-07-29発行、 978-4091877277)

第2巻

(2016-11-30発行、 978-4091892560)

第3巻

(2017-05-30発行、 978-4091895257)

第4巻

(2017-08-30発行、 978-4091896292)

第5巻

(2017-12-27発行、 978-4091897138)

第6巻

(2018-06-29発行、 978-4091898999)

第7巻

(2018-12-27発行、 978-4098601615)

第8巻

(2019-03-29発行、 978-4098602506)

第9巻

(2019-07-30発行、 978-4098603718)

第10巻

(2019-12-26発行、 978-4098604746)

第11巻

(2020-06-30発行、 978-4098606467)

第12巻

(2020-10-30発行、 978-4098607563)

第13巻

(2021-04-30発行、 978-4098610341)

第14巻

(2021-08-30発行、 978-4098611409)

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