概要・あらすじ
ぶ厚い雲が日光を遮り、100年がたった。冬と夜ばかりが続き、植物が枯れ果ててしまった遠い未来。人類は「転花」という技術に希望を託した。「転花」とは、死期の近い人間に「種」を植え込み、約2年の時をかけて、人間を「霊花」と呼ばれる植物にする技術である。酸欠状態になった地球で、人々は霊花が生み出すわずかな酸素で生き延びていたのだ。心を病んだ母と二人暮らしの神谷十四郎(トーシロー)は、わずかばかりの賃金労働で生活を支えていたが、ついに母の薬代が払えなくなるまで困窮してしまう。薬がないと、母は手がつけられないほど暴れてしまう。包丁を持って襲いかかる母から逃げながら、トーシローは、転花施術を受けることを決意する。転花する者には、国から1000万円の支援金が支払われる。完全に霊花になるまでの2年間は、そのお金で好きに生きることができるのだ。トーシローは、末期の小腸がんと偽り、国立転花院を訪れる。トーシローを迎えたのは、偶然にも幼なじみの蓬莱ヨミコであった。簡易検査を行ったヨミコは、トーシローの病気がウソであることを見抜き、彼と口論になる。しかし、トーシローの事情を知り、自分が担当からはずれることで、最終的には見て見ぬ振りをした。それから5日後、ヨミコは街の路地で血を流して倒れているトーシローに再会する。転花施術を受けて手に入れた1000万円を、全部取られてしまったという。トーシローの不幸に驚くヨミコだったが、もっと驚いたのは、彼が霊花の言葉がわかるようになっていることだった。そんな事例は初めてである。ヨミコは、「探してほしい霊花がある」とトーシローに協力を求めた。トーシローは国立転花院に連れられ、霊花と話す力を生かして特別臨時職員として働くことになった。
登場人物・キャラクター
神谷 十四郎 (かみや とーしろー)
精神を病んだ母親と二人暮らしをしていた青年。子供の頃はミュージシャンになる夢を持っていた。国立転花院に勤務する蓬莱ヨミコとは幼なじみ。生活に困窮し、2年後に「霊花」という植物になることを選び、国立転花院で転花施術を受ける。術後、霊花の声や感情がわかるようになり、その特技を買われて、国立転花院の臨時職員になる。
蓬莱 ヨミコ (ほうらい よみこ)
国立転花院に勤務する女性。転花施術から窓口対応までなんでもやる(所属)無し課に所属している。神谷十四郎(トーシロー)とは幼なじみで、転花申請にやって来たトーシローの仮病を見抜くが、生きることに絶望しているトーシローの様子に、見て見ぬ振りをする。転花施術後、霊花の声や感情がわかるようになったトーシローを国立転花院にスカウト。霊花捜索業務にあたらせる。
その他キーワード
転花 (てんか)
ほとんど絶滅してしまった植物の代わりに、人を植物に変える技術。国立転花院で行われる。人間の体に「種」を埋め込み、その人間の魂を糧に植物を成長させる。転花施術を受けた人間は、約2年の時を経て、完全に植物(霊花)となる。倫理的な理由から、転花施術の対象は、死期が近い人間に限られ、施術を受けるかどうかは個人の意思が尊重される。転花施術を受けた者には、国から支援金1000万円が本人に支払われる。
霊花 (れいか)
国立転花院における転花施術により、人間が、樹木や観葉植物、花などの植物に変化したもの。ほとんどの植物が枯れた酸欠状態の地球において、微弱な光で酸素を生み出す貴重な存在であり、原則的に国が所有する資源とされる。何かしらの音を発しており、神谷十四郎(トーシロー)には、その言葉や感情が読み取れることがある。
書誌情報
フールナイト 9巻 小学館〈ビッグ コミックス〉
第1巻
(2021-03-30発行、 978-4098608669)
第2巻
(2021-08-30発行、 978-4098611324)
第3巻
(2022-01-28発行、 978-4098612390)
第4巻
(2022-06-30発行、 978-4098613199)
第5巻
(2022-11-30発行、 978-4098614738)
第6巻
(2023-04-28発行、 978-4098616961)
第7巻
(2023-09-28発行、 978-4098625277)
第8巻
(2024-03-29発行、 978-4098626939)
第9巻
(2024-09-30発行、 978-4098630363)