ヒラエスは旅路の果て

ヒラエスは旅路の果て

親友の死にショックを受け、自らも命を絶とうとした少女、ミカを救ったのは、不老不死の肉体を持つ日々野と、神を自称する謎の青年だった。成り行きで彼らの旅に同行し、黄泉(よみ)の国へと行くことになったミカの心象風景と、旅先で出会った人々との交流を丁寧に描いたロードムービー的なヒューマンドラマ。「月刊モーニングtwo」2020年12号から掲載の作品。

正式名称
ヒラエスは旅路の果て
ふりがな
ひらえすはたびじのはて
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
レーベル
モーニング KC(講談社)
巻数
既刊3巻
関連商品
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あらすじ

を自称する青年と旅をしていた男、日々野はある日、街中で死ぬことを考えていた少女を発見する。いったんは放置を決め込めこむものの、走るトラックに躊躇(ちゅうちょ)なく飛び込んだ少女を見た日々野は、反射的に少女を救出してしまう。少女の代わりにトラックに衝突したにもかかわらず、平気な様子の日々野の姿を見て恐れおののく少女に対し、「神」と呼ばれる青年は日々野が不死身であることを告げる。ミカと名乗ったその少女は、得体の知れない二人組に警戒心を抱きつつも、お礼を言ってその場を立ち去る。亡くなった親友のミツハの後追い自殺を考えていたミカは当てもなく街をさまよい、とある神社で生前のミツハとの思い出に浸っていると、先ほどの神を名乗る青年に遭遇する。そしてミカは、青年の正体が人々の信仰を失った神であり、死を迎える前に全国の神々のもとを巡り、神気を少しづつ手放して最後に黄泉比良坂(よもつひらさか)から黄泉へと下ることを聞かされる。その話を聞いたミカは亡き親友に会うため、神と日々野と共に、黄泉の国へ死出の旅に出ることを決意するのだった。(第1話)

登場人物・キャラクター

ミカ

ボーイッシュな雰囲気を漂わせた女子高校生。ショートボブの髪型をしている。明るく元気いっぱいで物怖(ものお)じしない性格の持ち主。走るのが大好きで、学校では陸上部に所属している。非常に仲がよかった親友のミツハが亡くなったことで精神的に不安定になってしまい、ここ最近はずっとミツハのあとを追って自殺することばかりを考えている。街中でトラックに飛び込んで自殺を図るが、彼女の動きを察知していた日々野によって間一髪のところで救われる。不死身の肉体を持つ日々野、そして彼といっしょにいた神を自称する青年のうさん臭さを警戒し、一度は彼らのもとを離れるも、神を自称する青年が黄泉の国で死を迎えようとしていることを知り、死んだミツハに会うために彼らと共に黄泉の国に行くことを決意する。旅の最中に長い年月を生きている日々野や、神との感覚の違いに戸惑いを覚えつつも、死出の旅をそれなりに満喫していた。しかし、日中は明るく振る舞っているものの、内心では今もミツハの死に責任を感じており、夜になると言い知れぬ不安に押しつぶされそうになる。半ば自暴自棄な精神状態になっていたが、日々野や神、そして旅先で出会った人々との交流を通じ、ミカ自身の内面と向き合うことになる。

日々野 (ひびの)

不死身の肉体を持つライダーの男性。革ジャンを身にまとっている。ファンキーな性格で、おしゃれな眼鏡をかけている。アンニュイで無頼な雰囲気を漂わせており、言動もぶっきらぼうながら、知らない人とすぐに打ち解けるなど気さくな一面もある。外見はふつうの人間だが、肉体が致命的な損傷を受けても、ごくわずかな時間で完全に治癒してしまう。さらに老いることもないため、想像もつかないほど長い年月を生きている。あまりにも長く生きすぎたため生きることに飽きており、死ぬ方法を探すために日本橋で出会った神といっしょに黄泉の国へと向かう旅に出た。他人と深くかかわるのを避けている節はあるが、本質的には寂しがり屋で面倒見もいい。旅の途中で見かけた少女のミカがトラックに飛び込んだ際、自らの体を投げ打って反射的に彼女を助けた。それがきっかけとなり、ミカも日々野たちの旅路に同行するようになる。バイクが大好きで、サイドカー付きの大型バイクを乗り回している。ただし、サイドカーに乗せるのは「運命の人」のみと決めており、例え相手が神や仏であっても決して乗せないと吹聴していた。これまでに数百人の恋人がいたが、すべて期間を定めたうえで付き合っており、期限が切れた恋人とは後腐れなくきっぱり別れることを繰り返している。その行為については命とヒマを持て余した清らかな営みであると、ミカに語っていた。これまでの人生で出会った人々と死に別れた記録を手帳に書き記している。

(かみ)

神を自称している青年。美しい瞳の持ち主で、中性的で端正な顔立ちをした細身の体型をしている。柔和な性格で、誰からも好かれる高いカリスマ性を持つ。ただし、言動は若干浮世離れしており、時に無自覚に辛辣な言葉を発して人々を戸惑わせる。その正体は実際に神で、長らくとある北の地の土地神だった。しかし、長い年月を経て人々の信仰を失ったため、自らの寿命が尽きる前に全国各地にいる神を訪ね、神気を手放したうえで黄泉の国で最期の時を迎える旅路に出る。間もなく「埴土(はにつち)くれに還(かえ)る者」であると自覚しているために名前を名乗らず、名前そのものの必要性も感じていない。その後、日本橋で出会った不死身の肉体を持つ日々野、そして品川にある神社の近くで出会った少女のミカと共に旅をすることになった。また、見た目は男性だが、実際の性別は不明。人知を超えた能力を持ち、一目見て死を迎えそうな人間がわかったり、空を自在に飛ぶことができる。ただし、死をコントロールすることはできない。また、人間との対話は可能だが人間に共感することはなく、また人間を助けようとも考えていない。そのため、神をふつうの人間のように扱っていたミカに対し日々野は、神は人間とはわかり合えない、善悪を超えた存在であると釘を刺していた。旅先で出会った老女の道乃に、自分はいずれ「埴土くれに還る者」であると語ったことから「ハニ」というあだ名を付けられる。当初はこのあだ名を拒絶していたが、のちにミカから「ハニ」と呼ばれることを受け入れた。

ミツハ

ロングヘアのかわいらしい顔立ちの女子高校生。朗らかで優しい性格をしている。故人。ミカの親友で、ミカの学生生活の心の支えとなるかけがえのない存在だった。ミカの走る姿が大好きで、ミカが所属する陸上部まで足を運んでは見学をしていた。とある日の見学時に軽い体調不良になり、ミツハ自身はそれほど気にせずに帰宅したが、その翌日に突然亡くなってしまう。あの時に強引に病院に連れて行っていればミツハは助かったかもしれないという思いが、ミカを悔恨の連鎖と死への衝動に駆り立てている。

道乃 (みちの)

神奈川県の湯本周辺で暮らしている老女。とても穏やかな性格で、達観したかなような物静かな口調で話す。夫と娘に先立たれ、それ以来50年以上一人暮らしをしている。湖畔の祠(ほこら)に毎日お参りをして、近くの足湯で旅人の話を聞くのを日課にしている。そのため、地域の住民のみならず、多くの旅行者とも顔見知りで、全国各地のさまざまな人々に慕われている。湯本を訪れたミカたちと足湯で出会い、道乃自身の半生を語っていた。名前を持たない神の話を聞き、彼に「ハニ」というニックネームを付けていた。生まれ育った神奈川県から一度も県外に出たことがないが、心の奥底では自由に旅をしたいと思い続けている。

書誌情報

ヒラエスは旅路の果て 3巻 講談社〈モーニング KC〉

第1巻

(2021-04-23発行、 978-4065228272)

第2巻

(2021-11-22発行、 978-4065257449)

第3巻

(2022-08-23発行、 978-4065289655)

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