ブランクスペース

ブランクスペース

目に見えないものを作り出す不思議な力を持っている女子高校生の片桐スイと、彼女の同級生で親友の狛江ショーコ。二人の出会いをきっかけに始まる、一つの街を巻き込んだ「空白」の物語。「ふらっとヒーローズ」で2020年8月から配信の作品。「このマンガがすごい!2022」オンナ編で第6位を獲得。

正式名称
ブランクスペース
ふりがな
ぶらんくすぺーす
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
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あらすじ

都立空代高校に通う女子高校生の狛江ショーコは、ひょんなことから同級生で親友の片桐スイが、目に見えないが実体のあるものを作り出せる不思議な力の持ち主だと知る。内気な性格ゆえにクラス内でも孤立していたスイは、自分だけの秘密だった能力をショーコに教えたことを後悔し、ショーコと距離を置こうとする。しかし、スイに強い興味を抱いたショーコは愚直なアプローチを続けてスイの心を開き、友達になることに成功する。夏休み中に目に見えないトースターを作るなど、共同作業を通じて距離を縮めたことから二人は親友になる。しかし、新学期からショーコと別のクラスになったスイは、再びクラス内で孤立したうえに、同級生から陰湿ないじめを受けるようになってしまう。ショーコにも相談できず、つらい日々に心が荒(すさ)んだスイは、全校生徒が集まっている体育館のガラスに見えない弾丸を撃ち込むなど、徐々におかしな行動を取るようになっていく。スイの様子がおかしいことを心配したショーコは、図書館で熱心に調べ物をしていたスイに話し掛けると、スイが見えない巨大な斧(おの)を校舎に落とす計画を立てていることを知ってしまう。犠牲者が出かねない最悪な計画を止めようとしたショーコは、見えない彼氏を作り出すことをスイに提案。その提案を受け入れたスイは、彼氏を作り出すために人体について勉強を始める。体育の授業中に生物について最後のピースがひらめいたスイは、無意識の中で見えない彼氏、テツヤを作り出すことに成功する。テツヤといっしょにいることで、前よりも明るくなったスイの姿に安堵(あんど)したショーコは、自分も彼氏を作ろうと奮戦する日々を送る。しかし時を同じくして、彼女たちが暮らす街では、道端のゴミが切り裂かれたり、学校で飼っている鶏が惨殺されるといった、不可解な事件が頻発するようになる。

登場人物・キャラクター

片桐 スイ (かたぎり すい)

都立空代高校に通う高校生の女子。前髪をペアピンで止め、後ろ髪を一つに束ねた地味な風貌の少女。非情に内気で、おとなしい性格をしている。目に見えない物体を作り出せる不思議な能力の持ち主。学校からの帰宅中、自らが作り出した見えない傘をさしている姿を同級生の狛江ショーコに見られ、片桐スイ自身の秘密を話した。親にも秘密にしていたことをショーコに話したことを後悔し、一度はショーコとを距離を置こうとするも、自分に興味を抱いたショーコの一本気なアプローチに負け、友達となった。その後は、見えないトースターを共同で研究して作ったり、他愛もない日常会話をするうちにショーコの親友となる。近くに大きな図書館があるという理由だけで、今の高校を選んだほどの熱心な読書家で、ヒマさえあれば図書室や街の古本屋に足を運んでいる。文学のジャンルにも造詣が深い。本気で人を好きになった経験がなく、恋愛全般にほとんど興味がない。明るく能天気で惚(ほ)れっぽいショーコとは真逆の人生を歩んできたが、それが逆に不思議なほど馬が合う結果になっている。知識に裏打ちされたビジョンが脳内にあれば大抵のものは能力で作り出せるため、出したいものがあれば、その都度図書館などに足を運んでみっちり勉強していた。作り出したものはスイ自身の作った時の記憶が曖昧になると、少しづつ消えていく。精神的に不安定になると、見えない風船を作り出し、それを割ることでストレスを解消している。夏休み明けの新学期にショーコと別クラスになってしまい、新しいクラスメイトから陰湿ないじめを受けるようになる。そのため、すっかり心が荒んでしまい、無意識に見えない鋭いナイフを作り出したり、見えない弾丸で体育館のガラスを割ったりするようになる。奇行は徐々にエスカレートしていき、狂暴な飢えた狼を作りつつ、自分たちが通う学校の校舎に、見えない巨大な斧を落とす計画を立てていた。しかし、スイの様子がおかしいことに気づいたショーコにその計画が露見。ショーコの彼氏を作ろうという提案を受け入れ、破滅的な計画を放棄する。その後は、人体について徹底的に勉強した末、ついにテツヤという見えない彼氏を作り出すことに成功し、理想の彼氏と日々を過ごすようになる。街の古本屋「古書すずしろ」で見かけた「わが空白」という私小説が気になり、翌日購入しようとするも、先に時田に買われてしまう。

狛江 ショーコ (こまえ しょーこ)

都立空代高校に通う高校生の女子。黒髪をショートヘアにしている。明るい性格ながら天然気味で、能天気なところがある。惚れっぽい性質で、好みのイケメンがいるとすぐに好意を抱いてしまう。最近は心から彼氏を欲しがっており、片思いしている男子に対し積極的に告白しては、毎回断られて落ち込んでいる。学校からの帰宅中、見えない傘をさしている同級生の片桐スイを目撃する。スイの能力と彼女自身に興味を持ち、共同作業で見えないトースターを作ったことで、スイと親友となる。狛江ショーコ自身の天然なキャラクターが、精神的にこもりがちなスイの心の支えになっていた。しかし、夏休み明けにスイとクラスが別になり、いっしょにいる機会が減ってしまう。その後、スイの様子が明らかにおかしいことに気づき、スイが学校の校舎に見えない巨大な斧を落とす計画を立てていることを知る。スイの暴走を止めるため、彼女に見えない彼氏を作ることを提案し、学園崩壊の計画を放棄させることに成功した。スイが作った初めての人間で彼氏であるテツヤの存在に当初は恐怖を覚えていたが、三人で遊ぶことでその偏見を解消していく。しかし、根本的にテツヤの存在を未(いま)だに不安視している。

テツヤ

姿が見えない透明人間。性別は男性。片桐スイが自らの特殊能力で作り出した理想の彼氏。命名は鉄をもじって「テツヤ」と名づけられた。スイの話をしっかり聞いてくれる、優しくて包容力がある性格をしている。いじめを受けて精神が不安定になったスイを心配した狛江ショーコから、彼氏を作ればいいという提案に乘ったスイが、試行錯誤の末に作り上げた初めての人間。人体の構造を徹底的に勉強して試行錯誤を重ねたスイが、さらに体育の授業でインスピレーションを得たことでようやく完成した。彼氏として多くの時間をスイと過ごし、他愛もない会話をしたり、いっしょに買い物をしたりしているが、たまに思い出したように一人でどこかに出かけてしまう。そのあいだにテツヤが何をしているかはスイも知らない。当初はショーコに怖がられていたが、スイを含めた三人で遊ぶことで、ショーコからも徐々に信頼されるにようになる。

時田 (ときた)

映像関係の仕事をしている男性。眼鏡をかけており、柔和な雰囲気を漂わせている優男。とある古本屋で見つけた「わが空白」という不思議な私小説に魅せられ、仕事の合間に世間的には無名な作者の中道ゴロウについて調べていた。通いつめているファミレス「ゴメタ珈琲店」で「わが空白」の調査をしている際に、偶然ゴロウの遠い親戚である若い店員の中道と出会い、それ以来ゴロウの過去や素性、そして「わが空白」について熱心に語り合うようになる。

中道 ゴロウ (なかみち ごろう)

仕事をしながら小説家を志望している男性で、故人。小説を書き続けているが、応募した賞にはすべて落選している。実家とは絶縁状態であり、恋人や友人もいない孤独な日々を送っていた。孤独に耐え兼ね、想像上の恋人、イチコと暮らしていたが、ある日イチコが実体を持ったことに気づく。写真には残らない二人の思い出を残すため、「わが空白」というこの世に一冊しかない私小説を上梓する。数十年前に40代で病死し、その孤独な生き様が親戚筋では悪い意味で語り草となっている。

中道 (なかみち)

小説家志望の男性。地味な風貌をした目立たない青年で、引っ込み思案でおとなしい性格をしている。小説が大好きで、ファミレス「ゴメタ珈琲店」で働きながら小説を書いている。自分と同じ小説家志望で、若くして病死した遠い親戚の中道ゴロウのことが昔から気になっており、彼が住んでいた空代市に引っ越して来た過去を持つ。店に客としてやって来た時田が、偶然ゴロウの著作である「わが空白」を読んでいたことがきっかけで、時田とゴロウや「わが空白」について語り合う仲になる。

鈴白 アキラ (すずしろ あきら)

高校生の男子。黒髪で細身の体型をしている。年齢は15歳。心優しい性格で、感受性が非常に豊か。祖父が古書すずしろを経営しており、時間が空いた時に店を手伝っている。とある漫画雑誌で新人賞を獲得した読み切り作品「遺失物粉砕所」をいたく気に入り、会ったこともない作者、今給黎モモの素性に思いを馳(は)せていた。読書中に寝落ちしてしまう癖があり、そのたびに「遺失物粉砕所」の舞台である謎の砂漠でモモと会い、取り留めのない会話をする奇妙な夢を見ることになる。

今給黎 モモ (いまきいれ もも)

漫画家志望の女性。年齢は15歳。名古屋在住で、とある漫画雑誌に「遺失物粉砕所」という作品を応募し、新人賞を獲得した。中道ゴロウの私小説「わが空白」に強い影響を受けた一人。なぜか鈴白アキラの夢の中にたびたび登場し、アキラと取り留めない会話をしていた。のちに高速道路でバス炎上事故に逢い、命を落とす。死亡後もアキラの夢の中に現れていた。

イチコ

中道ゴロウの私小説「わが空白」に登場する女性。孤独に耐え兼ねたゴロウが脳内に生み出した想像上の人物だが、ある日突如として実体化した。「イチコ」の名前は苺(いちご)をもじったもの。実体はあるが、その姿を見ることはできず、声も聞こえない。ゴロウはイチコと喫茶店に入り、三人分のコーヒーを注文して店員に怪訝(けげん)な顔をされるのが日課となっていた。のちに「わが空白」に興味を抱いた時田と中道の前にも姿を見せる。

その他キーワード

わが空白 (わがくうはく)

中道ゴロウが上梓(じょうし)した、この世に一冊しか存在しない私小説。ゴロウとゴロウが生み出した想像上の女性、イチコが、共に暮らした日々の様子が描かれている。文章の中にイチコをイメージした人型の空白が設けられているなど、独特の趣向が凝らされている。一冊しか製本されていない稀少(きしょう)本で、人々の手を転々としてきた過去を持つ。

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