概要・あらすじ
無名の日高まふゆはフィギュアの全日本選手権に参加し、ショートプログラムで2位の成績を収めたことから、一気に注目されることとなる。フリー演技では、実力者の鬼束れいにその滑りを認められたものの、衣装の紐が切れて胸が見えそうになって、失格になってしまう。しかしインストラクターの八木沢徹は、まゆふの滑りに魅せられ、自らコーチを買って出る。
スケートの強化選手として北海道から東京にやって来たまふゆは、世界へ向けての激しい戦いに身を投じながらも、徹に心惹かれていく。
登場人物・キャラクター
日高 まふゆ (ひだか まふゆ)
北海道出身の高校2年生の女子。新人フィギュアスケーター。年齢は17歳。明るい髪色をポニーテールにしていて、可憐で華奢な外見をしているが、気が強く、粗暴な性格の持ち主。専門のコーチやトレーナーについた経験はないが、北海道の自然の中で自由に滑ってきた。その上質な滑りと秘めた才能が、インストラクターの八木沢徹に認められ、彼に師事することとなる。 北海道出身の従兄・千春が、スケートリンクにジャガイモを送って来たので、ライバルの鬼束れいからは「イモ娘」と呼ばれている。
鬼束 れい (おにづか れい)
全日本チャンピオンで、世界トップレベルの実力を持つ女子フィギュアスケーター。年齢は19歳。168cmの長身とその美貌を活かした「火祭りの踊り」の演技は、圧倒的に力強く美しく、「炎の踊り」とまで評される。付き人の川端椛男からは「姫」と呼ばれているが、鬼束れいはその呼び方が好きではない。普段は黒い髪をポニーテールにしているが、全日本選手権では日高まふゆと髪型がかぶるため、エクステを使ってロングヘアにアレンジした。 八木沢徹と同じ横浜のリンク出身。
横田 早苗 (よこた さなえ)
将来を嘱望されている22歳の女子フィギュアスケーター。鬼束れいに次ぐ実力者だったが、プレッシャーに弱い。新人の日高まふゆに負けてからはヒステリックになり、過呼吸の発作を起こした。これにより、れいから「そんなにスケートが嫌ならさっさとやめて結婚でもしろ」と言われてしまう。
甲斐 蒼一郎 (かい そういちろう)
超新星と期待される15歳の男子フィギュアスケーター。生まれながらにチャンピオンの風格を持っているといわれている天才少年。欧州選手権3位の実績を持ち、母親の甲斐礼子がハーフで二重国籍のため、日本とヨーロッパどちらの大会にも出場することができる。メロンパンの外側の部分しか食べないなど、わがままで子供っぽい一面がある。 コーチは日高まふゆと同じ八木沢徹が務めている。
イゴール・プロシネツキ (いごーるぷろしねつき)
若きフィギュアの王と呼ばれる22歳の男子フィギュアスケーター。力強く美しい滑りに定評があるセルビア人。「ウィリアム・テル」序曲を使った演技では、リンゴを射る振付パフォーマンスがあり、観客は花束と一緒にプラスチック製のリンゴをリンクに投げ込むのが恒例となっている。
甲斐 礼子 (かい れいこ)
スケート連盟の特別理事をしているハーフの美女。甲斐蒼一郎の母親で、息子の実力に絶対の自信を持っている。日高まふゆの演技を見て、まふゆを特別強化選手として推薦した1人。まふゆの外見から「くるみ割り人形」のクララを滑るのはどうかと提案したりもする。八木沢徹が息子の蒼一郎より、まふゆに入れ込むことを快く思っていない。
川端 椛男 (かわばた かばお)
鬼束れいの付き人の若い男性。メイクやヘアメイクを担当している。オネエ口調でしゃべり、「KABA」と書かれたヘアバンドを身につけている。美しいものが大好きで、れいを「姫」と呼んでいるが、れいにはその呼び名を嫌がられている。日高まふゆをいつも気にかけており、自らのことも気軽に「カバちゃん」と呼ぶよう求めるなど気さくな性格。 横浜のリンク出身で、その頃かられい、八木沢徹、八木沢碧のことをよく知っている。
千春 (ちはる)
日高まふゆの従兄。北海道のアイスホッケーチーム「ベアーズ」の選手で、まふゆと一緒のリンクで練習をしていた。1人で頑張っているまふゆを応援しており、東京へ行くように勧めた人物でもある。強化選手としてまふゆが東京へ行ってからは、北海道産のジャガイモをスケートリンクに送ったりしていた。
八木沢 徹 (やぎさわ とおる)
フィギュアスケートのインストラクターを務める男性。年齢は28歳。落ち着いた雰囲気の持ち主で、背が高く、がっしりとした体格をしている。かつてはペアスケート選手として活躍していた経験があり、当時の相棒だった八木沢碧と結婚している。日高まふゆの滑りに魅せられて、まふゆを強化選手に推したうえで、自分がコーチを買って出た。 また甲斐蒼一郎のコーチも務めている。横浜のリンク出身で、幼い頃のれいや学生だった川端椛男とも、その頃からの知り合い。
リトビネンコ
ロシアのスポーツ誌の編集長を務める中年女性。誰よりもフィギュアスケートに詳しく、「彼女のジャッジは神より正しい」といわれている。かっちりとしたスーツにスカーフを身に着け、サングラスをかけた厳しい印象の人物。スケート選手全員からその存在を恐れられているが、同時に信頼もされている。国際大会の「東アジアフィギュア選手権」「スケートアメリカ」のジャッジを務める。
八木沢 碧 (やぎさわ みどり)
八木沢徹の妻で、小柄で美しい女性。かつてペアスケートの選手として徹とコンビを組んで活躍していたが、才能は徹ほどではない。練習中の事故でスケーターを止めざるを得なくなり、引退して徹と結婚した。「プリン」という名の犬を飼っており、神宮リンクで仕事中の徹をプリンと一緒に訪ねた際、日高まふゆと出会う。まふゆに入れ込む徹を心配し、まふゆに敵愾心を抱く。
アイリーン・ラブ (あいりーんらぶ)
アメリカ代表の女子フィギュアスケーター。全米チャンピオンの座に就いている。年齢は17歳。ふわふわの金髪をボブにしており、とにかく明るく笑顔で、元気に滑るスケートが魅力。国際大会「スケートアメリカ」の優勝候補で、地元の利を生かして絶大な声援を受ける。
ネリー・キム (ねりーきむ)
ベラルーシ代表の女子フィギュアスケーター。欧州チャンピオンの座に就いている。年齢は20歳。非常に正確なスケーティングで、決してミスをしない安定感のある滑りをする。落ち着いた大人びた風貌と正確無比な滑りで、国際大会「スケートアメリカ」での優勝を狙う。
イベント・出来事
全日本選手権 (ぜんにっぽんせんしゅけん)
日本の権威あるフィギュアスケート大会。当時無名だった15歳の甲斐蒼一郎と17歳の日高まふゆがともに出場して活躍し、大きな話題となった。この時、前年度チャンピオンの鬼束れいが、安定感ある滑りで優勝したものの右足を痛めてしまう。一方、横田早苗が新人のまふゆに成績を逆転され、過呼吸を起こして倒れるなど、大きな波乱を呼んだ。
東アジアフィギュア選手権 (ひがしあじあふぃぎゅあせんしゅけん)
ISU(国際スケート連盟)主催の国際大会。世界選手権に比べるとグレードが低い。そのため、世界選手権に選抜されなかった選手や、他の大会の調整を行う選手たちが参加する。日本からは横田早苗がエントリーされていたが、結婚が決まり辞退した。そのため、急遽日高まふゆにチャンスが回って来た。まふゆにとって、初参加の国際大会となった。
スケートアメリカ
フィギュアスケートのグランプリシリーズの1つ。各国の実績のある上位ランク選手が参加する国際大会。地元アメリカ代表のアイリーン・ラブ、ベラルーシ代表の欧州チャンピンであるネリー・キムなど強豪が集う。日本からは全日本チャンピオンの鬼束れいが参加し、東アジアフィギュア選手権での実績が評価された日高まふゆもエントリーすることとなった。