傭兵・強化犬 VS 人間擬態植物
戦乱続きの世界から平和な日本にたどり着いたショウ・ザンマと強化犬ヘル。元の世界に戻るという共通の目的でバディとなった彼らを襲うのは、プラントヒューマノイド(PH、人間擬態植物)という存在である。彼らは人間に擬態しているが、戦闘になると植物本来の姿を現す。手足をつるのように伸ばして攻撃してくるものや、硬質な黒檀でできており武器を通さないものなど、元になった植物に応じてさまざまな特殊能力を持っている。また、多くは強い再生能力を持つことから切り刻んだり燃やしたりしても、息の根を止めることは難しい。そんな彼らの弱点は体内の「種」であり、これが破壊されると体が爆ぜる。「種」は体内での移動も可能だが、ヘルは匂いでその位置を特定できる。
人間の姿を捨てて現代日本にやって来たPH
蓮神様を信仰する「宗教法人蓮華神友会」を本拠地とするPHたちは、元の世界を「戦乱界」、現在の平和な世界を「治平界」と呼んでいる。バケモノのような本体を持つPHだが、もともとはショウと同じ世界からやって来た人間である。彼らはある目的を持って、古代人が残した文献を研究し、2つの世界をつなぐ巨大な蓮「浮世の峡(はざま)」を人工的に作り上げたのである。しかし、「治平界」に元の世界の姿で来ることはできない。「浮世の峡」を通過した魂が「種」として生成され、それをコアとして新たな体を得るのだ。PHたちは、元の世界の姿のまま現れたショウとヘルを、「戦乱界」から送られた刺客だと考え、彼らを排除するために次々と襲いかかってくる。
「戦乱界」と「治平界」の相関関係
PHの中には、自分たちの行動をよく思わない者たちがいた。そんな、組織の反逆者・香月發美により、世界の真実が明らかになっていく。彼女によると、「戦乱界」と「治平界」は次元は違うが同じ座標で交差する、相関関係にある世界であり、鏡のような真逆の存在だという。そしてPHの目的は、2つの世界で起こることを意図的に変えることだった。そのために彼らは、日本の中枢に多数の擬態したPHを送り込んでいたのだ。その事実を知ったショウとヘル、そして「治平界」で仲間になった大学生の北崎、西崎、警察の白石たちは、PHの企みを阻止すべく、彼らの本拠地「宗教法人蓮華神友会大聖堂」に乗り込んでいく。
登場人物・キャラクター
ショウ・ザンマ
戦乱界の住人の男性。貧困にあえぐ幼い兄弟のために傭兵に志願した若者で、傭兵部隊「地獄の番犬(ヘルハウンド)」に所属。第七地区(セクターセブン)防衛の任務を遂行中、最強の強化犬ヘルに追われて、地下にあった大きな蓮の花の中に落下。気がついた時には、2022年の東京の蓮池に浮かんでいた。怪物じみた謎の人間に襲われた際、強化犬ヘルが現れ、共闘して敵を倒す。以来、元の世界に帰るという共通の目的を持つヘルとコンビを組むことになる。ヘルとは精神呼応術で会話が可能。また、戦乱界から蓮の花を通ってきた時に、ヘルの能力が少し分配され、動体視力の強化と的確な反撃モードが発動するスキルを手に入れた。
ヘル
戦乱界で兵器として戦っていた犬。額に「H」の模様がある。強化(ブースト)手術を施され、武装した最強の兵士。「悪魔」と恐れられる「猟犬(ハウンド)部隊」に所属。第七地区(セクターセブン)で戦闘中、ショウ・ザンマを追いかけて、一緒に蓮の花の中に落ち、2022年の東京に転移する。敵同士だったが、元の世界に帰るという共通の目的を持つショウとコンビを組んで行動することになる。「ヘル」という名は便宜上ショウにつけられたもの。正式名称は「H・E・L(ハウンドエレクトリックラボラトリー)製1179番」である。プライドが異常に高く、ショウを常に下に見ている。
書誌情報
ヘルハウンド 5巻 講談社〈アフタヌーンKC〉
第1巻
(2022-11-22発行、 978-4065295908)
第2巻
(2023-04-21発行、 978-4065311127)
第3巻
(2023-09-22発行、 978-4065328286)
第4巻
(2024-02-22発行、 978-4065344439)
第5巻
(2024-08-22発行、 978-4065363669)