あらすじ
ジュンとメッツァペウラの出会い
ある大雪の夜、フィンランドのラップランド地方にある小さなホテル「メッツァペウラ」の経営者の一人、アードルフは、ホテルの軒下に若い男性が立っているのを発見する。アードルフはもう一人の経営者のクスタに声をかけると、クスタは男性を室内に招き入れる。その男性は日本のパスポートを所持するジュン・シノミヤという少年で、全身にはみごとな和彫りの入れ墨を入れており、血の付いたオオカミの人形以外には何も所持していない、身元不詳の怪しい人物だった。しかし、そんなジュンに対してアードルフとクスタは、何か深い事情があるのだろうと温かい食事とサウナでもてなす。そして次の日、ジュンが児童養護施設育ちで身寄りがなく、行く場所もないことを知った二人は、ホテルマンとして働かないかとジュンをスカウトする。
メッツァペウラの結婚パーティー
ふだんは数人の宿泊客が訪れる程度の小さなホテル「メッツァペウラ」では、近々数十人が集まる結婚パーティーが催されることが決まる。初めての大仕事にここ数日間、ジュン・シノミヤは大いに緊張していた。そんな中、夜遅くにメッツァペウラの倉庫内に人の気配を感じたジュンは、泥棒と思(おぼ)しき人物に飛び掛かる。しかし、その人物は明日の結婚パーティーに参加する予定のクスタの娘のファビーだった。これをきっかけにジュンとファビーは親しくなり、結婚パーティーでもジュンは彼女のサポートを受けながら、さまざまなピンチを切り抜けていく。
登場人物・キャラクター
ジュン・シノミヤ
日本人の父親とフィンランド人の母親を持つ少年。年齢は17歳。ある雪の日、お金も泊まる場所もなくフィンランドのラップランド地方にある小さなホテル「メッツァペウラ」の軒下に立ち尽くしていたところを、アードルフとクスタに助けられる。その後、ホテルマンとしてメッツァペウラで働くことになる。幼い頃から児童養護施設で暮らしており、両親の記憶はほとんどないものの、母親が作ってくれたフィンランド料理だけはかすかに覚えている。外見は年相応の優男という風貌ながら、全身にみごとな和彫りの入れ墨が入っている。喜怒哀楽を表に出すことが苦手で、失敗をすると過剰に謝罪をしたり、自虐的になったりと情緒不安定なところがある。しかしアードルフとクスタ、そして宿泊客との交流を通して、少しずつ穏やかな心を取り戻していく。血の付いた小さなオオカミのぬいぐるみが唯一の宝物。好物はフィンランド製のチョコレート菓子。
アードルフ
フィンランドのラップランド地方にある小さなホテル「メッツァペウラ」をクスタといっしょに経営している高齢の男性。丸メガネをかけて口ひげを蓄えている。雪の夜にホテルの軒下に立ち尽くしていたジュン・シノミヤを受け入れ、従業員として雇う。人当たりのよい優しい雰囲気を漂わせており、主に接客を担当している。柔和そうに見えて接客に関しては非常に厳格で、ジュンを一人前のホテルマンにするために熱心に指導している。ふだんは隠しているが、元国防軍の軍人で身体能力が非常に高い。
クスタ
フィンランドのラップランド地方にある小さなホテル「メッツァペウラ」をアードルフといっしょに経営している強面(こわもて)で高齢の男性。雪の夜にホテルの軒下に立ち尽くしていたジュン・シノミヤを受け入れ、従業員として雇う。ホテルでは主に調理を担当している。自己鍛錬を欠かさず、高齢とは思えないほどの筋肉質な体型をしている。ぶっきらぼうな言動で、愛想は決していいとは言えないものの、情に厚く優しい性格の持ち主。妻はすでに亡くなり、独立した娘のファビーがいる。ファビーに対して心配のあまり干渉しすぎてしまい、彼女から避けられている。
エンマ
警察官を務める女性。夫とは死別している。フィンランドのラップランド地方にある小さなホテル「メッツァペウラ」の常連客。ホテルマンのジュン・シノミヤの接客を受けて親しくなる。生前は夫とホテルに定期的に宿泊していたため、夫との思い出が忘れられずに1年に1度訪れている。ジュンに生前の夫の姿を重ねて涙する。
テム・パーナネン
フィンランドのラップランド地方にある小さなホテル「メッツァペウラ」に予約なしで訪れた男性。ジュン・シノミヤと言葉を交わすようになり、すっかりお気に入りとなる。おとなしく控えめな性格で、落ち着いた雰囲気を漂わせている。自殺するためにメッツァペウラを訪れたことをアードルフには見抜かれたため、滞在中はひそかにジュンによって監視されている。以前も自殺を図ったことがあり、その際には弟のアキ・パーナネンによって阻止されたものの、その際に彼に傷を負わせてしまう。
アキ・パーナネン
テム・パーナネンの弟。フィンランドのラップランド地方にある小さなホテル「メッツァペウラ」でテムがお世話になっていると知り、お礼を伝えるためにやって来た青年。おとなしく控えめなテムとは違い、怖いもの知らずの性格をしている。喜怒哀楽の感情もすべてあらわにし、ジュン・シノミヤを翻弄して楽しんでいる。ジュンの母親がフィンランド人だと知り、会いに行こうと提案した。
ファビー
クスタの一人娘。大工を生業としている。ただしクスタとは血がつながっておらず、8歳の時に児童養護施設から養女として引き取られている。親友がホテル「メッツァペウラ」で結婚パーティーをすることになり、ジュン・シノミヤと知り合いになる。明るくサバサバとした性格の持ち主。母親が亡くなってから、ファビー自身に過干渉過ぎるクスタとは折り合いが悪い。ただし、それがクスタなりの愛情の裏返しだということにも気づいている。
先生 (せんせい)
ヤクザを生業にする高齢の男性。行く場所もなく、タバコ屋の前で喫煙していた当時中学生のジュン・シノミヤに声をかけ、知り合いになる。以降、自分の住居に出入りを許すようになり、親が不在で十分な教育もされていないジュンに一般常識や家事を教えた。ジュンが先生自身にあこがれていることには気づいているものの、ヤクザにだけはなってほしくないと思っている。ジュンにとっては親同然の存在だったが、ある日銃撃されて帰らぬ人となる。
書誌情報
ホテル・メッツァペウラへようこそ 5巻 KADOKAWA〈ハルタコミックス〉
第1巻
(2022-01-15発行、 978-4047367678)
第2巻
(2022-03-15発行、 978-4047367661)
第3巻
(2022-10-15発行、 978-4047371835)
第4巻
(2023-09-15発行、 978-4047376441)
第5巻
(2024-06-14発行、 978-4047379572)