概要・あらすじ
及川直樹は、なにわ拘置所の死刑囚舎房に新人刑務官として勤務を始めた。様々な死刑囚と関わる中で、死刑囚の内面や被害者や家族との問題に接するうちに死刑制度に疑問を持つようになる。そして両親を殺害した男に復讐殺人をして死刑囚となった同世代の渡瀬満と出会い、自分自身の問題と向き合うことになる。
登場人物・キャラクター
及川 直樹
なにわ拘置所に配属された新人男性刑務官。検察庁キャリア組の元拘置所所長である父の及川正道の配慮で、新人ながら死刑囚舎房に配属となる。繊細で心優しく、数々の死刑囚と接し死刑制度の是非について悩む。1981年8月10日生まれ。同世代の渡瀬満の復讐殺人に対してヒーローのようにあこがれを感じ、渡瀬満を理解しようと接する過程で自分自身の問題と向き合うことになる。
渡瀬 満
及川直樹が配属されたなにわ拘置所にやってきた死刑囚290号。12才の時に田尻勝男に両親を殺され、同時に右腕を切られて野球への夢を絶たれ、妹と共に親戚に保護されるが、中学卒業と同時に失踪する。2003年12月に仮出所した両親の殺害犯、田尻勝男をその娘共々日本刀で斬り殺し、1年間逃亡してから出頭する。 1981年8月15日生まれで同世代の及川直樹と徐々に交流するようになる。
沢崎 麻美
『モリのアサガオ』の主人、及川直樹の大学の同級生で恋人。大阪毎毎新聞社の新聞記者として様々な事件を追いかける。記事への記名は「沢崎麻」。
世古 利一
『モリのアサガオ』の及川直樹が配属されたなにわ拘置所の死刑囚舎房の最古参の死刑囚490号。窃盗の常習犯で過去に3回刑務所に入ったこともあり、窃盗に入った家で一家4人を殺害して捕まり死刑判決が下る。貼り絵で阿修羅、弥勒菩薩、広目天、阿弥陀如来の仏画を作成している。
深堀 圭造
『モリのアサガオ』の及川直樹が配属されたなにわ拘置所の死刑囚舎房の死刑囚380号。最古参の世古利一に次いで死刑が確定した牢名主的な存在で改心しない態度をとり続ける。幼なじみの山本憲人と職場の同僚女性を守るために殺人を犯した「なにわ谷事件」で懲役12年の刑を受けるが、出所後に家族との面会を断られた苛立ちから通行人3人を殺害して、死刑判決を受ける。
石峰 明
『モリのアサガオ』の及川直樹が配属されたなにわ拘置所の死刑囚舎房の死刑囚520号。7年前に女性7人を強姦、殺人した。反省の態度を見せない不敵な態度をとり、怒った及川直樹に好物の大福餅を食べられてしまい泣いて悲しんだ翌朝に死刑が執行され、及川直樹に大きな後悔を与える。
香西 忠信
『モリのアサガオ』の及川直樹が配属されたなにわ拘置所の死刑囚舎房の死刑囚150号。16才の時から不良グループのリーダーで恐喝、強盗、集団暴行を繰り返し、4年間で3人を殺害し、20歳の時の3人目の殺害が発覚して主犯格であるとして死刑判が下る。入所3年目からほぼ毎日のように殺害した3人の遺族にお詫びの手紙を書き続けるようになる。
星山 克博
『モリのアサガオ』の及川直樹が配属されたなにわ拘置所の死刑囚舎房の死刑囚780号。7年前にドヤ街を根城にしているときに入ったあさひ食堂で勘定が足りず、食堂を経営する夫婦とその老母を殺害し捕まり、その2年後に死刑判決となる。世話になった養護施設の恩人からの差し入れの菓子を毎日食べている。
倉持 多恵子
及川直樹が配属されたなにわ拘置所の死刑囚舎房の死刑囚780号星山克博に殺された両親が経営していたあさひ食堂を一人引き継いだが、スキルス胃癌で余命幾ばくもなくなり、自分が死ぬ前に家族を殺した星山克博がどう考えて生きているのかを知りたがる。
迫 仁志
『モリのアサガオ』の及川直樹が配属されたなにわ拘置所の死刑囚舎房の死刑囚770号。両親を交通事故で無くし親類に引き取られるも折り合いが悪く、職を転々とし32歳で28度目の職を失くした時に、近所の中学校の野球部部室の生徒8人を焼き殺した罪で死刑囚となる。文通していた西田夕子と獄中結婚する。
西田 夕子
印刷会社の事務OLの32歳。及川直樹が配属されたなにわ拘置所の死刑囚舎房の死刑囚770号迫仁志の、放火で中学生の野球部員8人を殺した事件を知り、過去に自分を庇ってくれた同級生に対する自らの贖罪のために迫仁志を助けようと文通を始めて獄中結婚し、亡くなった野球部員の被害者遺族の詩集を差し入れる。
若林 勇三
『モリのアサガオ』の及川直樹が配属されたなにわ拘置所の死刑囚舎房で多くの死刑執行に立ち会ったベテラン刑務官。新人で未熟な及川直樹を心配し、時にはアドバイスをする。
藤間 貴子
及川直樹が幼少時から検察庁キャリア組みの父及川正道に連れて行ってもらい、大学時代からの恋人、沢崎麻美とのデートでも通う、喫茶・パパゲーナのママさん。
村雨 久郎
両親の殺害犯・田尻勝男をその娘共々日本刀で斬り殺し、1年間逃亡してから出頭した渡瀬満の指名で弁護を引き受ける。人権派弁護士。実は渡瀬満が12才の時の両親を殺した田尻勝男の弁護をしていた。
場所
なにわ拘置所
『モリのアサガオ』の及川直樹が配属された拘置所。大阪市根古田区にある。死刑確定囚21人がG棟に収容されている。