ヨナカの小さな贅沢

ヨナカの小さな贅沢

ブラック企業に勤務する奥村ヨナカは、疲弊する毎日で家事代行サービスを頼んだところ、まだ高校生の近侍まひると出会う。頼れる身寄りもなく、今後の生活の目処も立たないまひるに救いの手を差し伸べたヨナカに対し、まひるは家事全般を引き受けることで恩返しをしようと考え、ちょっとした工夫で少しずつヨナカの生活を豊かにしていく。サラリーマンと女子高校生の奥ゆかしい恋愛模様を描く、ほっこりラブコメディ。ドワンゴが運営するWebサイト「ⅡⅤ」に掲載された作品。各巻末にはコミックス刊行にあたり、描き下ろしのエピソードが収録されている。

正式名称
ヨナカの小さな贅沢
ふりがな
よなかのちいさなぜいたく
作者
ジャンル
サラリーマン
 
ラブコメ
関連商品
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あらすじ

家事代行

奥村ヨナカは、亡き両親から受け継いだ広い戸建てで一人暮らししている。勤めている会社はいわゆるブラック企業で、連日深夜に及ぶ残業に疲れ果て、帰宅しても食べ物を無理やり胃に入れて眠りに就くだけの日々を送っていた。食事は九割がコンビニ弁当で、掃除をする時間も気力もなく、せっかくの立派な家も持て余している状態だった。だがある日、現状に危機感を抱いたヨナカは、こんな環境で死にたくないという思いから、家事代行サービスを頼むことを決める。そして家事代行サービスから派遣されてきたのは、自称20歳の近侍まひるだった。ヨナカにはどう見ても未成年にしか見えなかったが、会社からの連絡で急遽出社することになったため、まひるに家のことを一任して会社へと向かった。仕事がようやく片付き、22時に帰宅したヨナカを待っていたのは、明かりのついた家とエプロン姿のまひるだった。鍵を受け取り忘れて帰るに帰れなかったまひるは、ヨナカから帰宅をうながされるが、おもむろにキッチンに立つと、疲労回復に効果があるとマシュマロの乗ったホットココアを作ってヨナカに差し出す。牛乳と生姜まで入れられ、丁寧に作られたココアに心が満たされたヨナカは、思わず笑顔になる。しかし次の瞬間、ヨナカはまひるからいっしょに住ませてくれないかと思いがけない頼み事をされる。実はまひるは17歳の高校生で、早くに両親を亡くして育ててくれた祖母も半年前に他界し、頼れる身内もないままに貯金を切り崩しながら生活していた。しかしそれもすぐに限界を迎え、ガスや電気が止められる事態となったため、年齢を20歳と偽って家事代行サービスで働き始めたのである。だが、会社に年齢を偽っていることが知られてクビになってしまい、今後の生活の目処が立たなくなったことに危機感を覚えていた。そのため、家事や家の管理に困っている様子のヨナカに、家事全般を無償で引き受ける代わりにいっしょに住まわせてほしいと打診したのだ。事情を聞いて戸惑うヨナカは、一日考えた末、改めてまひるの丁寧に作る食事の温かさを実感し、まひるを受け入れることを決める。

幸せ

奥村ヨナカ近侍まひるの姉・近侍ゆう子の出現で、まひると離れることとなり、元の生活に戻ってしまう。ヨナカは、まひると暮らしたいという自分勝手な気持ちを封印し、まひるのことを第一に考えて出した結論のはずだった。しかし、まひるを失った代償は思っていたよりも大きく、喪失感と虚無感に襲われる。そして、うまく回り始めていた仕事も失敗続きで怒られてばかり。帰宅しても誰もいない家で、一人でとる食事、どれもこれも元に戻っただけなのに、いつもまひるがいてくれたことがどれだけヨナカの支えになっていたのかを実感する。まひるが作った食事や温かい言葉、まひるの笑顔が生み出す小さな贅沢が、いつの間にか自分にとって幸せな日常になっていたことを思い知る。そして、まひるが「私にとって家族はヨナカだった」と言い残した言葉が、ヨナカの中で何度も繰り返される。一方まひるは、ゆう子と生活を共にしながら海外へ渡る準備をしていたが、姉から思ったように喜んでもらえなかったり、ちょっとしたすれ違いに落ち込んだりして、今後の生活への不安を抱き始める。そんな中、学校で以前世話になった朝岡とゆっくり話す時間を得ることとなり、ゆう子と暮らすことへの不安を吐露し、自分の願望と正しい選択とのズレに思い悩んでいることを明かす。話を聞いた朝岡は、まひるがそばにいて喜んでくれる方はどちらかを考えるように提案する。そして翌日、まひるからメッセージをもらったヨナカは、今日の10時にまひるが外国へ向かう飛行機に乗ることを知る。そして「私がいて幸せでしたか」という言葉に、何かを決意したヨナカは、会社を休む連絡をして空港へと向かう。

登場人物・キャラクター

奥村 ヨナカ (おくむら よなか)

ブラック企業に勤める男性。年齢は25歳。おっとりした性格で、頼まれると断れない人のいい一面がある。亡き両親から受け継いだ立派な戸建てに、一人で暮らしている。だが、ブラック企業で社畜として過酷な労働を強いられているため、家に帰ってきても食事をして寝るだけの日々を送っている。掃除をする時間も気力もなくゴミも溜まっており、荒んでいくだけの大きな家を持て余していた。こんな環境で死にたくないとの思いから、家事代行サービス「暮らそうズ」に申し込んだ。やって来た近侍まひるに家事の一切を頼むが、その後ひょんなことからまひるが未成年であると発覚。まひるが仕事をクビになり、頼れる身寄りもなく生活に困っている事実を知り、家事全般を無償で引き受けてもらうことを条件に同じ家で暮らし始める。それ以来、休日も出勤を求められ、まともに体を休めることもできないまま疲弊していた日々が、少しずつ変化していく。コンビニ弁当が九割だった食生活も、まひる手作りの温かい食事へと変わり、まひるの心遣いによって豊かな暮らしを手に入れた。まひるに対しては、妹や姪っ子のような気持ちで接している。そんな中、まひるの実姉・近侍ゆう子の出現により、二人の共同生活にピリオドが打たれることとなり、初めてまひるが自分にとってかけがえのない、とても大きな存在になっていたことに気づく。5月5日生まれで、血液型はO型。好きな食べ物は煮物系で、脂っこいものは苦手。仕事の関係上タイピングが得意。あまりにも非道で忙しすぎる日々を送っているため、明日一日ただ眠りたいという願望がある。

奥村ヨナカのもとにやって来た女子高校生。両親はすでに他界し、育ててくれた祖母も半年前にこの世を去っている。年齢は17歳。つねに自分よりも他人を優先する優しい性格で、礼儀正しくて気遣いもできる。両親が遺... 関連ページ:近侍 まひる

朝岡 (あさおか)

高校で教師を務める老齢な男性。現在は生徒指導を担当しており、ある日、近侍まひるからスーツの手入れ方法について助言を求められた。妻を亡くして以来一人暮らしで、家事のすべてを自分でこなす日々を送っているが、スーツはクリーニング店に任せっぱなしの状態だったため、スーツの手入れに関する助言はできなかった。しかし、世話になっている人のためにと語るまひるに、革靴の磨き方を教えた。また、「いい靴はあなたを素敵なところに連れて行ってくれる」という外国のことわざがあることを語って聞かせた。その後、まひるが実姉・近侍ゆう子と海外で暮らすことを決めた際、心の中にある迷いに気づき、まひるの話に耳を傾けた。そして、自分がそばにいて喜んでくれる方はどちらかを考えるようにうながし、まひるの気持ちを正解に導いた。

近侍 ゆう子 (きんじ ゆうこ)

近侍まひるの姉。両親に勘当されて海外で起業した。明るい性格で、思ったことはなんでも口に出してしまうが、行動力と決断力がある。現在は海外に生活の拠点を置いているため、両親や半年前に他界した祖母の葬儀にも参列できなかった。その後、10年ぶりに帰国して実家に戻ってみると家が売りに出され、近所をうろうろしていた際に、偶然にもまひると遭遇。まひるが奥村ヨナカと生活を共にしていることを知り、ヨナカのもとを訪れた。しかし恐縮するヨナカに対し、まひるが見ず知らずの男性と暮らしていることについてはまったく問題視することなく、まひるも年齢的に自分の身は自分で守れるだろうと語り、あっけらかんと笑みを浮かべた。つねに自己中心的で、まひるを海外の自宅へ引き取ることを決めようとした。しかし、まひるの意思などまるで無関係なような発言や、終始まひるをぞんざいに扱っていることをヨナカに問い詰められ、これまでの行いを含め、まひるに謝罪を要求されることとなった。その後、一度はまひるを海外に連れて帰ろうとしたが、ヨナカとまひるが互いを必要としている事実を知り、家族公認でまひるを預かってもらう形で、まひるをヨナカのもとに返すことを決めた。二人の思い合う気持ちに気づいており、ヨナカに対しては、未成年のうちはダメと牽制しつつも、二人の今後を応援している。8月8日生まれ、血液型はA型。海外生活が長いため、好きな食べ物はハンバーガーで、ししゃもが苦手。忙しい日々を送っていたため、どこでも爆睡できるのが特技。今は自分が立ち上げた会社をもっと大きくしたいと思っている。

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