リブラブ livelove

リブラブ livelove

水上素直は自分を取り巻く環境に絶望して自ら命を絶つ。しかしなぜか成仏できずに、幽体となってこの世をさまよい続け、生前はかかわり合いのなかった人達と交流を持つ事になる。不器用ながらも素直は「人の力になる事」を成し遂げ、本来の自分がなりたかった自分へと成長していく姿を描く。「officeYOU」で2017年2月から連載の作品。

正式名称
リブラブ livelove
ふりがな
りぶらぶ
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
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あらすじ

第1巻

水上素直は同僚のいじめや、上司からのパワーハラスメントを受けていた。そして素直は、外食委託チェーンの内勤から地方都市のゴルフ場、ありたカントリークラブ併設のレストランでの接客業務に左遷を命じられる。そこで素直は、高い接客スキルを持った大河内伊佐子にあこがれを抱いたり、健康的な円山実代をうらやましいと感じつつも、人とのかかわり合いが苦手なため、周囲とはコミュニケーションが取れずにいた。ある日、素直は伊佐子に扱いづらい存在と思われていた事を知ってショックを受け、さらに火の不始末によってボヤ騒ぎを起こして完全に孤立してしまう。そして生きる事に絶望した素直は自ら命を絶つ。そんな中、伊佐子と実代は素直が生前に綴っていた日記を偶然発見し、その不器用な生き方に涙する。すると伊佐子と実代の目の前に幽体の素直が現れ、以降二人にだけ素直の姿が見えるようになる。そんなある日、ありたカントリークラブで常連客の姉小路が突然死した事をきっかけに、五条環も幽体の素直を認識できるようになり、生前は言葉もろくに交わさなかった素直と伊佐子達は接点を持つようになる。

第2巻

水上素直五条環からの依頼を受け、2年間の浪人生活を経て荒れている五条環の息子、五条一志を奮起させる事になる。大河内伊佐子の仲介によって一志は素直を認識できるようになり、一志は素直をふつうの人間だと勘違いしながら話し合いを行うが、素直は一志にきつい言葉を投げかけてしまう。しかし、その厳しい言葉が一志の心に響き、受験に前向きになっただけではなく、環や家族への態度も軟化していった。一連の出来事から素直は幽体の身体を利用して、「人の力になる事」への喜びを実感する。そして素直は伊佐子と円山実代に対し、「幽体の自分ならば恨みや憎しみを抱く相手に罰を与えられる」と告げるが、二人からはそういった事に力を使うべきではないと諫められる。しかし不妊治療がうまくいかずに周囲の家庭にネガティブな感情を抱いていた実代と、夫の不倫に憤りを覚えている伊佐子は内心、素直からの誘いに心惹かれてしまうのだった。そんな中、伊佐子と実代は本社で研修を受ける事になり、素直にいやがらせをしていた皆川えりと対面。休憩中に大声で素直の悪口を言うえりの前に、恨みに満ちた表情の素直が現れる。

第3巻

人前で堂々と水上素直をこき下ろす皆川えりに怒りを覚えた素直は、初めて恨みの感情を利用して攻撃を仕掛けようとする。しかし直前で窪田道孝がえりに注意した事で、その場は一旦収まる。その後、素直は窪田が同僚を相手に「素直の恋心も知らず悪い事をした」と後悔の念を打ち明けている場面を目撃する。その日の夜、素直は窪田の自宅へと向かい、ずっと好きだった事とこれまでの礼を伝える。一方、円山実代は素直がいつも傍にいる事で、なかなか妊娠しない焦りや周囲への嫉妬心が和らぎ、笑顔が増えるようになった。また、大河内伊佐子も素直のおかげで大河内新太が成長し、自分のもとから離れていく寂しさを受け止められるようになっていた。平和な毎日が続く中、伊佐子の自宅に単身赴任中の伊佐子の夫が突然立ち寄り、そのまま宿泊する事になる。伊佐子はナミと不倫をしている夫とどう向き合えばいいのか悩み、素直に相談する。すると素直は不倫はよくないと憤り、自分の力を使って伊佐子のために復讐をすると言い出す。

第4巻

伊佐子の夫と不倫相手のナミに罰を与えようとした水上素直だったが、大河内伊佐子は必死に素直を宥めて事なきを得る。伊佐子は夫が不倫をしているのかはっきりと問い質そうと、話し合いの場がもたれる。結果、二人の勘違いだったと判明し、長らく一人悩んでいた伊佐子は安堵する。そんな中、夫を見送りに行った伊佐子は、夫が乗車している新幹線のグリーン席に、素直がファンだと言っていたバンド、リブラブ相島弾の姿を発見。伊佐子は素直に恩返しがしたいと考え、自分を介して弾に素直を認識させる事に成功。素直は自分が幽体である事を隠してあこがれの弾と会話をするが、ファンだった気持ちを弾に伝えようとするものの、不器用な性格からバンド活動について毒舌を吐いてしまう。ストレスの溜まっていた弾は憤り、素直と言い争いを始める。気分を害する弾だったが、図星を突かれた事もあり、素直の事が頭から離れなくなる。そんな中、素直は弾と交際している藤枝マリカのゴシップ記事を狙っている、週刊誌記者とカメラマンの存在に気づく。

第5巻

週刊誌記者とカメラマンに狙われていた相島弾を助けた水上素直だったが、最初に会った時から時間が経過していたため、弾に姿と声を認識される事はなかった。もう一度、素直に弾と話をさせてあげたい大河内伊佐子は、次回催されるリブラブのライブチケットを手に入れようとするが、プラチナチケットになっているために入手できない。そんな中、地方都市のゴルフ場、ありたカントリークラブに元プロゴルファーの今野美波が撮影のために訪れ、以前知り合いだった伊佐子にお茶をしないかと声をかけて来る。伊佐子は印象のよくない美波と必要以上にかかわりたくなかったが、五条環円山実代からリブラブのライブチケットが手に入るチャンスだと言われ、伊佐子はしぶしぶ美波と話す事になる。美波はリブラブのライブチケットを手配する事を約束するものの、プロゴルファーにはなれなかったが、幸せそうな家庭を築いている伊佐子に嫉妬。そこで美波は伊佐子にゴルフ対決を持ちかけ、勝ったらリブラブのライブチケットを譲ると宣言。伊佐子は勝負を受けて立ち、久しぶりに自主トレーニングを開始する。

第6巻

大河内伊佐子今野美波とのゴルフ勝負に勝利して、見事リブラブのライブチケットを入手する。しかし再び、相島弾水上素直を認識させるためには伊佐子が弾に触れる必要があり、どうすべきか頭を悩ませていた。そんな中、伊佐子は雑誌に掲載されていたリブラブのインタビューの中で、弾が素直に会いたがっていると思われる文章を発見。伊佐子はその記事を利用してマネージャーの石黒大志を呼び出すが、余計な小細工をしすぎた事によって石黒を怒らせてしまう。そしてライブ当日、会場の入り待ちをして弾に触れる作戦を思いついた伊佐子だったが、興奮したファンに背中を押されて失敗し、足を負傷してしまう。見かねた石黒によって伊佐子は、救護室に入り込む事に成功し、さらにスタッフに成りすまして弾との接触を図る。そして伊佐子は弾に触れる事に成功し、弾は再び幽体の素直を認識できるようになる。しかし同時に石黒もまた、素直の姿を認識できるようになってしまうのだった。

登場人物・キャラクター

水上 素直 (みなかみ すなお)

元外食委託チェーンの内勤として働いていた独身女性。地方都市のゴルフ場、ありたカントリークラブのレストランで接客をしていた。年齢は25歳。しかしゴルフ場は自ら志願したのではなく、同僚からの陰湿ないじめと上司からのパワーハラスメントにより、「勉強のため」と理由をつけられて左遷させられた結果だった。まじめで融通の利かない性格の持ち主で、気難しさからこれまで親しい友達がいなかった。大河内伊佐子を尊敬していたがうまく気持ちを伝えられず、円山実代ら職場の仲間とも親しくなりたいと思いながら、打ち解けられずにいた。さらに自分の不始末によってボヤ騒ぎを起こし、職場内で完全に孤立してしまう。生きる事に絶望して自殺を試みて成功するが、成仏できずにそのまま幽体として浮遊する存在になった。ふつうの人には姿を認識できないが、伊佐子と実代、五条環とは一時的に心がシンクロした事で認識されるようになった。以降、幽体のまま、生前したかった「人の力になる事」を成し遂げていく。自分をはじめ周囲の人間の恨みや憎しみを、黒い塊にして投げる事で物理的な攻撃を与える能力を持つ。バンド、リブラブのボーカルを担当している相島弾の大ファン。

大河内 伊佐子 (おおこうち いさこ)

水上素直と同じ地方都市のゴルフ場、ありたカントリークラブに併設されたレストランで働く女性。明るく細やかな気遣いができるタイプで、同僚からの評判も非常にいい。常連客の好みを完璧に把握し、その人にあったメニューを提案するなど接客スキルが高い。素直に対しては扱いにくい女性だとは感じているものの、職場の輪を乱さないように好意的な態度で接している。一方で、素直からあこがれられていた事にはまったく気づいていなかった。素直の死後に生前に書いていた日記を円山実代といっしょに読み、涙した事で素直と心がシンクロして彼女の姿を認識できるようになった。以降、幽体の素直と深くかかわりあっていく。ゴルフ好きで若い頃はプロを目指していた。単身赴任中の伊佐子の夫が、ナミと不倫をしていると思い、苦悩している。

円山 実代 (まるやま みよ)

水上素直と同じ地方都市のゴルフ場、ありたカントリークラブに併設されたレストランで働くぽっちゃりとした女性。大河内伊佐子と親しく、その接客スキルだけでなく人間としても尊敬している。周囲と打ち解けようとせず、愛想のない生前の素直を快く思っていなかった。しかし素直の死後、伊佐子と共に素直が綴っていた日記を読み、涙した事で素直と心がシンクロし、彼女の姿を認識できるようになった。素直からは「みよねーさん」と呼ばれて慕われている。既婚者で現在不妊治療を行っている。

五条 環 (ごじょう たまき)

水上素直と同じ地方都市のゴルフ場、ありたカントリークラブに併設されたレストランで働く女性。浪人生でデリケートになっている息子の五条一志と娘の五条清花がいる。裕福な家庭で自宅も広い。仕事面だけでなく、プライベートでも気を遣ってくれる大河内伊佐子を慕っている。自分をかわいがってくれた常連客、姉小路の突然の死去で、一時は仕事を辞めようと考えていたものの、幽体の素直が姉小路から預かったメッセージを伝えた事で再びやる気を出す。素直の幽体が見えるという伊佐子と円山実代に対し、最初はからかわないでほしいと憤りを感じていたものの、のちに自分も認識できるようになり、以降素直とかかわりを持つようになる。

弘次 (こうじ)

水上素直と同じ地方都市のゴルフ場、ありたカントリークラブに併設されたレストランで働く若い男性。キッチンを担当している。愛想がなく人とかかわろうとしない素直が気に入らず、本人に聞こえるように、わざと嫌味を言うなど攻撃的な態度を取っていた。素直が自殺してからも後悔の念などまったくなく、むしろ最期まで大河内伊佐子に迷惑をかけた事にいら立ちを覚えている。ただし冷徹な人物というわけではなく、生前の素直の人柄や本心を知らなかったためである。職場の仲間からは「コーちゃん」と呼ばれている。

姉小路 (あねこうじ)

地方都市のゴルフ場、ありたカントリークラブの常連客で、高齢の男性。ゴルフ場の社長と支配人とも知り合いで、毎回、水上素直が勤務していたレストランで、持ち込んだヨーグルトを食べてからスタートするのが習慣。ある日突然、ゴルフのプレイ中に倒れてしまう。死の間際に幽体の素直と会話を交わしており、素直は蘇生させようと必死になっていたが、姉小路自身は大好きなゴルフをしながら死ねたと満足そうにこの世をあとにした。しかし、その後も幽体となってゴルフ場に姿を現し、素直と会話をしている。

伊佐子の夫 (いさこのおっと)

大河内伊佐子の夫。現在は単身赴任中で、多忙な日々を過ごしており、なかなか自宅へ帰れずにいる。言葉数は少ないものの、まじめで大らかな性格の持ち主。掃除洗濯が苦手な事もあり、一人暮らしのアパートはまるでゴミ屋敷のようになっていた。スナックで泥酔した際、家まで送り届けてもらったナミの申し出を受け、週1回ハウスキーパーとして契約している。ただし部屋を綺麗にしたいというよりも、前夫との借金返済のために苦労し、懸命に働いているシングルマザーのナミを応援したい気持ちの方が強い。ナミとの関係を伊佐子に「不倫している」と誤解されている事にはまったく気づいておらず、ナミから受けていたアプローチにも最後まで気づかなかった。

大河内 新太 (おおこうち あらた)

大河内伊佐子の息子。男子高校生で野球部に所属しており、レギュラーを維持すべく熱心に練習している。大食漢でよく食べる。高校生ながら落ち着いた雰囲気を醸し出しており、妙に達観している言動が多い。伊佐子が幽体の水上素直と会話をしている姿を何度も目撃しており、伊佐子に詰め寄った事で素直を認識できるようになる。素直が見えるようになっても、死んだ人間は色々な場所にいるもんだと、あまり気にしていない。

五条 一志 (ごじょう かずし)

五条環の息子。2年間浪人生活を送っており、妹に五条清花がいる。成績に関して非常にデリケートになっているため、気に入らない事があると自宅で暴れ、壁に穴を開けたり、食事を投げつけたりする。大河内伊佐子を介して水上素直を認識できるようになり、幽体とは知らずに進路のアドバイスをもらった。以降、荒れ気味だった環への態度も軟化し、以前より勉強にも身が入るようになる。バンド・リブラブの大ファン。

五条 清花 (ごじょう きよか)

五条環の娘の女子高校生。いわゆるギャルと呼ばれる派手な服装を身につけ、幽体の水上素直からはいじめられていた暗い学生時代を思い出すからと避けられている。自宅で暴れる兄の五条一志に対しては、特に何の感情も抱いていない。

窪田 道孝 (くぼた みちたか)

以前、水上素直と外食委託チェーンの内勤としていっしょに働いていた会社員の男性。見た目も整っており、仕事も非常にできる事で女子社員から人気が高い。素直からも密かに好意を寄せられていたが、気づかずに終わっている。喫煙所でよく会う素直に対して、同僚として好意的に接していたため、皆川えりをはじめとした取り巻きの女性から素直が陰湿ないじめを受ける原因を作ってしまった。のちに一途なアプローチをして来たえりと交際をスタートしている。しかし、素直に対するえりの行き過ぎた言動は注意するなど、えりのすべてを好意的に感じているわけではない。

皆川 えり (みながわ えり)

以前、水上素直と外食委託チェーンの内勤としていっしょに働いていた女性。家柄がよく、エスカレーター式の学校を卒業して、コネ入社した。美しく整った顔立ちをしているが性格は悪く、会社の喫煙所で窪田道孝と親しそうに話していた素直を目撃し、以降陰湿ないじめを繰り返していた。素直が地方都市のゴルフ場、ありたカントリークラブに左遷された事もおもしろおかしく同僚と話しており、自殺した事も遠慮なく話しのネタにしている。一方、窪田に対する恋心は本物で、熱烈なアプローチの末に見事交際にこぎつけた。

ナミ

スナックで働くシングルマザーの女性。伊佐子の夫が以前知り合いに連れられて来店し、泥酔した際に自宅まで送り届け、あまりの部屋の汚さに絶句する。その事がきっかけで伊佐子の夫と知り合い、週に1回ハウスキーパーとして雇われている。家を出入りしているところを突然訪問した大河内伊佐子に目撃され、以降不倫相手だと勘違いされてしまう。バツイチで、前の夫が作った借金を返済している苦労人。伊佐子の夫の前では気のないふりをしていたものの、実は伊佐子から略奪しようと画策していた。だが、結局伊佐子の夫から相手にされずに終わる。

相島 弾 (あいしま だん)

バンド、リブラブのボーカルを務める男性。バンドとして人気が出たものの、自分が本当にやりたい音楽と、ファンや周囲が望んでいる音楽とのギャップに悩んでいる。ストレスが溜まっている事もあり、プライベートでは非常に口が悪い。大河内伊佐子を介して水上素直の存在を認識できるようになる。ただし、時間の経過と共に声と姿は見えなくなってしまうため、定期的に伊佐子を介す必要がある。初対面にもかかわらず遠慮なくズケズケとものを言う素直に対し、一時は敵対心を抱いていたものの、次第に気になる存在へと変わっていく。当初は幽体の素直をふつうの人間だと思い込んでいたが、徐々に死んだ人間だと理解していく。人気モデルの藤枝マリカと交際している。

石黒 大志 (いしぐろ たいし)

バンド、リブラブのマネージャーを務める男性。基本的にまじめな性格で仕事熱心だが、やや抜けている一面がある。相島弾が幽霊らしき不思議な存在とかかわりを持っている事には気づいており、正体を知りたいと思っていた。のちに大河内伊佐子を介し、水上素直を認識できるようになる。

藤枝 マリカ (ふじえだ まりか)

モデルを生業とする女性。相島弾と交際している。抜群のスタイルと長く美しい黒髪を持つ。気が強い性格で、堂々とした振る舞いから、ファンには「マリカ様」と呼ばれている。弾の事を本気で愛しており、ライブ会場に変装をして乗り込もうとするなど、よく問題行動を起こす。

今野 美波 (こんの みなみ)

40代の元女子プロゴルファー。現在は主にテレビタレントとして活動している。プロになる前は、同じ夢を持つ大河内伊佐子と親しくしていた。実力や周囲からの人気は伊佐子の方が上だったが、華やかな容姿だったために優遇され、いち早くプロになった。しかし、今でも伊佐子に対しての敗北感が消えていない。地方都市のゴルフ場、ありたカントリークラブでテレビ番組の撮影をしていた時、偶然再会した伊佐子にバンド、リブラブのライブチケットを賭け、勝負をしようと持ち掛けた。

集団・組織

リブラブ

四人組の男性バンド。相島弾がボーカルを担当している。若者を中心に人気があり、生前の水上素直、五条一志もファンだった。メンバーは多忙なスケジュールや仕事内容に不満を抱いており、バンド内の人間関係も悪化している。マネージャーは石黒大志が務めており、インディーズ時代からの長い付き合い。

場所

ありたカントリークラブ

地方都市にあるゴルフ場。水上素直いわく、中途半端な田舎にある。常連客は高齢者が中心で、若者はほとんどやって来ない。

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