概要・あらすじ
小さい頃、姉の奈穂に絵本「てのひらのパン」を読んでもらった宮沢胡奈は、絵本に登場するパンがずっと気になっていた。同じパンを探し求めているうちにパン職人となり、自分の店を持つまでに成長していた。ある日、胡奈は開店しようとシャッターを上げると、黒川智実が店の目の前で、近所の人たちから責められているところを目撃する。
そんな騒ぎの中、黒川はパンの匂いにひかれて、店内のパンを無我夢中で食べ始める。騒ぎを聞いて駆けつけた警察官の言葉に黒川は我に返り、自分はお金と記憶がないことを胡奈に伝える。胡奈は戸惑うものの、黒川が絵本「てのひらのパン」を破いたことに激怒して黒川を店の外に追い出してしまう。翌日、大変なことをしてしまったと後悔する黒川は、工藤耕太のサポートもあって胡奈に謝罪し、自分を店においてほしいと願い出て、胡奈の弟子として店を手伝うようになる。
登場人物・キャラクター
宮沢 胡奈 (みやざわ こな)
商店街でパン屋を切り盛りする女性。小さい頃に姉の奈穂に読んでもらった絵本「てのひらのパン」に登場するパンを探しているうちにパン職人となり、自分の店を持つまでに腕を上げた。しかし、探しているパンは未だ見つからず、自分で作り出すこともできていない。店を出す時の自分のワガママが原因で、奈穂が死んでしまった、とずっと後悔しており、甥の工藤耕太を引き取って2人で暮らしている。 ある日、店の前で行き倒れていた黒川智実に、姉の形見である絵本「てのひらのパン」を破られてしまう。激怒して黒川を店から追い出したものの、謝罪のために戻って来た黒川を許し、自分の弟子として、一緒に暮らしながら店を手伝ってもらうようになる。耕太と黒川の3人で暮らすようになり、黒川が自分と同じく心を閉ざしていることに気付くが、黒川の一言により、心を取り戻せるよう努力するようになる。
黒川 智実 (くろかわ ともみ)
空腹のあまり宮沢胡奈の店の前で行き倒れ、近所の人たちに責められていた男性。胡奈の姉・奈穂の形見である絵本「てのひらのパン」を読んでいる最中にバラバラに破いてしまい、胡奈に店から追い出される。しかし、胡奈の甥・工藤耕太の手助けもあって胡奈に謝罪。その後、胡奈の弟子として一緒に暮らしながら店を手伝うようになる。 その正体はニューヨークを拠点に活躍する注目の画家「成田智実」で、絵本「てのひらのパン」の作者のなりたゆうこの息子。学生時代には、胡奈の義兄・工藤喜一と友達でもあった。描いては批評され、お金の大小で絵の評価が決められる現状に嫌気が差し、絵画に対する想いがなくなっていた。胡奈や耕太と一緒に暮らすうちに、純粋に絵を描いていた昔の気持ちを思い出す。 耕太からは「クロちゃん」、喜一からは「トモ」と呼ばれている。
工藤 耕太 (くどう こうた)
工藤喜一と奈穂の息子。宮沢胡奈の甥。奈穂は亡くなっており、喜一は遠方で仕事しているため、今は胡奈に引き取られて一緒に暮らしている。小学生ながら大人顔負けなしっかりとした性格。しかし、親が参加する行事に誰も来てくれないことに寂しさを感じるなど、年相応の一面も見せる。黒川智実が絵本「てのひらのパン」を破いてしまい、そのことを謝罪するきっかけがつかめないため、彼を店に連れて行き、謝罪の機会を作る。
なりた ゆうこ
黒川智実の母親。絵本「てのひらのパン」の作者として有名だが、既に亡くなっている。表向きは事故死とされているが、実際は、絵本がベストセラーになったので、もっと絵本を創作しようとした結果、自分の才能の枯渇に悩むことになって自殺した、というのが真相である。
工藤 喜一 (くどう きいち)
工藤耕太の父親。妻の奈穂とは死別しており、今は義妹の宮沢胡奈に耕太を預けて遠方で仕事をしている。黒川智実とは学生時代の友達だが、黒川が留学してからは疎遠となっている。再婚を考えている女性がいて、耕太を引き取りに戻って来る。
真子 (まこ)
黒川智実の叔母。姉のなりたゆうこが生きていた時は、マネージャーとして姉を支えていた。黒川が画家としてデビューした後は、黒川のマネージャーを務めていた。宮沢胡奈の店がある商店街を黒川の個展会場にして、商店街を盛り上げる計画を提案。真子はプロデューサーとスポンサーを兼任して、個展のPR活動や資金提供を行う。
奈穂 (なほ)
宮沢胡奈の姉。工藤喜一と結婚して工藤耕太を生む。胡奈の店に置くために絵本「てのひらのパン」を寄付先から返してもらい、その帰りに自動車の運転を誤って亡くなってしまう。