リンドバーグ

四方を「ボーダー」と呼ばれる絶壁に囲まれ、世界から隔絶された天空の国「エルドゥラ」から物語は始まる。エルドゥラでは、鳥のように空を飛ぼうとする行為は禁じられていた。それは、オルニソス王家の紋章である鳥の翼は神聖なもので、それを模するのは王への不敬にあたるという理由からであった。主人公の少年・ニットは、エルドゥラを外敵から守る「ボーダー守り」の家系に生まれるが、一年前、父のメリウスが空を飛ぼうとしてボーダーから落ちて死亡。「飛翔罪」犯の息子として肩身の狭い思いをしながら、不思議な生物プラモと共に暮らしていた。そんなある日、外の世界から飛行生物に乗った謎の男シャークが、エルドゥラに不時着する。プラモが「リンドバーグ」と呼ばれる飛行生物であること、外の世界では「リンドバーグ」に乗ってみんなが大空を飛び回っていることを聞かされたニットは、空を飛ぶ夢を抱いて冒険に出ることを決意。父が残した翼をプラモに装着し、シャークと共にエルドゥラを後にする。

リンドバーグは、後ろ足で「空気」をとらえることができる、恐竜に似た不思議な生物。「空気を蹴る」ことで長距離を「ジャンプ」できるのだが、それをさらに「飛行」に変えるためには、風に乗る「翼」が必要となる。エルドゥラの外の世界では、リンドバーグの存在は一般的であり、人間は、翼を装着した複葉機のようなリンドバーグで、自在に大空を飛び回っている。形状や大きさはさまざまで、凪級、疾風級、強風級、突風級、嵐級、大嵐級という具合に、脚力別に階級分けされており、大きなリンドバーグは、飛空船を牽引するのに用いられる。また、大国においては、リンドバーグによる空軍は軍事の要となっており、品種改良を重ねて脚力を強化するなどの研究が行われている。

エルドゥラを離れたニットは、自分の生まれ故郷が「空に浮かぶ宝島」という伝説だったことを知る。シャークはお宝を求めてエルドゥラを探していた、空賊団の船長だったのだ。強奪行為を行う空賊団に対して反感を抱くニットだったが、シャークの目的が、違法に売買されている人間とリンドバーグを解放することだと知り、彼のもとで働くことになる。そんなニットとシャークの前に現れたのが「グラナロッサ王国」の女王エスペランサである。彼女は、先代女王の時代までに奪われた広大な領土の奪還を目的に、リンドバーグ空軍の強化と軍事力増強を図っている。かつて、グラナロッサ王国の空軍隊長だったシャークは、リンドバーグを戦争の道具として扱う女王と敵対していた。そんな中、エスペランサが「エルドゥラから落ちてきた技術者」を雇っていることを聞いたニットは、それが死んだはずの父ではないかと思い始める。