DIOの死から10年。第3部と第4部の狭間で起きるドラマ
ベースとなっている「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズは、1986年発表の第1部から、2023年現在の第9部まで続く大人気作品である。本作の時代設定は、第3部の10年後で、第4部が始まる直前の1999年3月。物語の発端は、エジプトのカイロでDIOの元部下ホル・ホースが、知り合いの老婆から消えたオウムの捜索を頼まれたこと。相棒ボインゴの予知で手がかりを得たホル・ホースは、日本のM県S市杜王町を訪れ、ジョースター家の血を引く東方仗助と出会う。迷い鳥のオウムは、第3部に登場したスタンド使いのハヤブサ「ペット・ショップ」同様、老婆の息子に調教された鳥。過去を再現するスタンド能力を持っていたことから、ホル・ホースと仗助は、オウムの力を利用する敵と戦うことになる。
DIOの呪縛から逃れようとする者たちの戦いを描く
本作は第3部のエピローグという要素が強い。かつてホル・ホースは、ボスのDIOを裏切り、殺そうとしたが、DIOの圧倒的な力に屈服して敗北を認めてしまった。誰よりも自由を重んじていたホル・ホースは、DIOに負けた時から自由を失っていた。死後10年経ってもなお、DIOへの恐怖はホル・ホースを支配しており、オウムのスタンド能力でDIOの声を聞いた途端、立ちすくんでしまうほどである。DIOの呪縛にとらわれているのは、ホル・ホースだけではない。一緒に杜王町にやって来たボインゴや、従兄の花京院典明の死を通じて関節的に関わりを持つ、花京院涼子も同様である。本作はそんなDIOの呪いから自由になろうとする者たちの闘いを描いた物語である。
ファンにはおなじみのセリフと、初めて描かれるシーンが魅力
迷い鳥のオウムのスタンド能力は、過去を再現して見せるというもの。ゆえに、かつてDIOが発した「歩道が広いではないか」というセリフや、ホル・ホースがDIOを殺そうとした場面など、ファンにはおなじみのシーンが多く登場する。逆に、第3部登場のスタンド使いダニエル・J・ダービーとDIOの初めての出会い、典明がDIOに肉の芽を埋められて洗脳される様子といった、これまで描かれていない場面も登場。また、物語の冒頭では、DIO配下のスタンド使いだったマライアとケニーGが結婚して酒場を経営している様子も描かれている。ちなみに第4部からの主な登場人物は、仗助とその祖父・東方良平。良平の人物像や仗助に対する思いが丁寧に描かれている。
罪悪感に苛まれ、従兄の死の真相を追う花京院涼子
本作のオリジナルキャラクターである花京院涼子は、典明の従妹。10年前、家族でエジプト旅行に行った時に、道に迷った彼女を捜しに来た典明がDIOと遭遇。肉の芽を埋められて洗脳されるという悲劇が起こってしまった。その後姿を消した典明が、亡くなったことを聞いた涼子は、従兄の死が自分のせいかも知れないと思い悩む。杜王町にある従兄の墓参りに来た涼子は、ボインゴが落としたトト神の漫画本を拾う。そこに「DIO」の文字を発見し、漫画が未来を予知することを知った涼子は、典明の死の真相を追い始める。
登場人物・キャラクター
東方 仗助 (ひがしかた じょうすけ)
S市杜王町に住む少年。愛称は「ジョジョ」。翌月に高校入学を控えている。ジョースター家の血筋を引いており、破壊されたものを修復するスタンド能力を持つ。後に空条承太郎により「クレイジー・ダイヤモンド」というスタンド名を付けられるが、本作ではまだ名前はない。時代遅れのリーゼント頭を馬鹿にされると、怒りで我を忘れて逆上する。自分と同じ特殊な能力を持つホル・ホースと出会い、行動を共にするようになる。
ホル・ホース
DIOの元配下のスタンド使い。カウボーイ風のスタイルと無精髭が特徴の中年男性。銃のスタンド「エンペラー(皇帝)」を操る。プレイボーイで、女性に優しい。エジプトのカイロで、老婆から突然姿を消したオウムの捜索依頼を受け、同じくスタンド使いのボインゴと共に、日本のS市杜王町にやって来る。破壊と修復能力を持つスタンド使い・東方仗助と出会い、一緒に行動することになる。
花京院 涼子 (かきょういん りょうこ)
花京院典明の従妹。高校を卒業し、京都の大学への進学を控えた女性。典明を慕っており、彼と同じような前髪をしている。10年前、家族旅行で訪れたエジプトで迷子になったことがある。その時に自分を捜しに来た典明がDIOと出会い、その後亡くなったという話を聞き、責任を感じている。ボインゴが落としたトト神の漫画本を拾ったことをきっかけに、典明の死の真相を追い始める。トト神の漫画本では「リョンリョン」という名前で登場する。
ボインゴ
DIOの元配下のスタンド使い。小柄でボサボサ頭の男性。極端に内気な性格をしている。同じくスタンド使いの兄・オインゴがいる。ごく近い未来を予知するスタンド「トト神」の漫画本を常に持ち歩く。漫画本に予言されたため、仕方なくホル・ホースの相棒としてオウム捜索に同行する。
クレジット
- 原作
-
上遠野 浩平
- 原案
ベース
ジョジョの奇妙な冒険シリーズ (じょじょのきみょうなぼうけんしりーず)
荒木飛呂彦の代表作。最初は「週刊少年ジャンプ」、Part7『スティール・ボール・ラン』の途中から「ウルトラジャンプ」に舞台を移して長期にわたって連載。「日本のメディア芸術100選」(2006年)のマン... 関連ページ:ジョジョの奇妙な冒険シリーズ
書誌情報
ジョジョの奇妙な冒険 クレイジー・Dの悪霊的失恋 3巻 集英社〈ジャンプコミックス〉
第1巻
(2022-06-17発行、 978-4088831572)
第2巻
(2022-12-19発行、 978-4088833545)
第3巻
(2023-06-19発行、 978-4088835433)