概要・あらすじ
海外エリート商社マンを父に持つ、16歳の高校生山田すくむは、ロサンゼルスで落第したのをきっかけに、一度も住んだことのない日本へ行くことに。叔父の持つローズメリーホテルで、個性あふれる住人たちと暮らしながら、いとこの小鳩と近くの高校へ通う。3年生に一目惚れしたり、ローズメリーホテルの天井をぶち破って雲の上の国から女の子が落ちてきたり、捨て子の面倒をみたりと、次々にいろいろなことを経験していく。
登場人物・キャラクター
山田 すくむ (やまだ すくむ)
アフリカに行きたいと思っている、16歳の高校生で、ローズメリーホテルのオーナーの甥。生まれてから、中国、ロシア、イラク、フランス、タイと移り住み、その後ロサンゼルスに来て3年経つ。アメリカの学校の進級テストに落第したため、1年間休学して日本へ行くことになり、ローズメリーホテルに住むことになる。 編入試験で、外国暮らしなのに英語が全然できなかったが、なんとか編入でき、約10年ぶりに会ったいとこの小鳩と一緒に、近くのT高校に通う。編入試験のときにテスト用紙を配った藤谷あおいに一目惚れするが、振られてしまう。世界を無一文で旅するかいと叔父さんに憧れており、手紙を度々書いている。 思うところがあり、高校を中退してヒッチハイクで旅に出ることを決意する。
白鬼 薫 (しらき かおる)
ローズメリーホテルの雇われ管理人だが、森永と一緒に探偵もやっている。女好きで、すぐナンパをするいい加減な男。メガネをかけていてハンサム。母である女優の江奈美ルイ子によく似ている。喫煙者。14年前、2歳児だった小鳩にお愛想を言ったら、それ以来小鳩は本気にしており、しょっちゅう結婚をせまられている。 薫の部屋は、江奈美ルイ子の肖像画が飾ってあり、一見片付いているように見えるが、カーテンの影にゴミを押し込めてあるだけである。江奈美ルイ子に親戚だと嘘をつかれていたが、小学四年生のときに、彼女が自分の親だと気づく。芸能界で成功したかった江奈美ルイ子に捨てられ、すくむの祖父、山田まいとに引き取ってもらい、大学まで出してもらったため、ヤクザ者にはならずにすんだ。 江奈美ルイ子により、息子だとマスコミに公表されて以来、江奈美ルイ子のことは憎んでいない。
小鳩 (こばと)
高校一年生の女の子で、すくむのいとこだが、すくむには約10年ぶりに会う。とても頭が良く、附属高校の一年生で、大学生よりもたくさん研究論文を書いているが、今の学校はローズメリーホテルから遠いため、すくむと一緒に近くの高校に通うことにする。2歳の時、薫に「きみは美人になるから16歳になったらお嫁にしてあげるよ」と言われたのを覚えており、その16歳の誕生日に薫のところにおしかけ、ローズメリーホテルに住むことにする。 スキがあれば薫に結婚をせまっているが、相手にされていない。世界的な詩人である星野原ひとみの詩を本人の前で「つまらん」と一笑に付して以降、星野原ひとみに崇拝され、奴隷にしている。
星野原 ひとみ (ほしのはら ひとみ)
世界的な詩人でノーベル文学賞候補とも目されている、日本の誇りとする文学者だが、小鳩の奴隷。代表作は『乙女水晶』『花占いと星の行方』『雪の宮殿にて…』。これらは教科書にも採用されている。イカツイ顔をした殺人犯のような大男だが、小鳩に呼ばれると、講演前でも講演を投げ出して駆けつける。 また、長いことフランス人のコックに料理を習っていたため、料理がとても上手い。小鳩の命令により、毎日ローズメリーホテルで食事を作ることに。とてもシャイで、小鳩の前に出ると何も言えなくなってしまうが、6個ほどいろいろな財団の会長をやっている実はとてもエライ人。自分の詩はこれでいいのかと悩んでいたときに出席したパーティーで、小鳩に「つまらん」と言われショックを受けるが、小鳩に「面白い」とほめてもらうためにはどうしたらいいのかと考え始めた時、新しい道が開け、それから小鳩を崇拝している。
森永 星佳 (もりなが せいか)
薫の古い友人で警視庁のおまわりさん。現職の警官だが、薫と探偵をやっている。武道全般合わせて三十二段だが、アルカミーラ皇女に投げ飛ばされる。薫の部屋に寝泊まりしており、小鳩をポポ子と呼ぶ。単車に乗っていて、昔は薫と共にかなりワルかった。
山田 かいと (やまだ かいと)
すくむの憧れの叔父。放浪癖があり、世界を無一文で旅している。以前はユジノサハリンスクに住んでいたが、今はどこにいるのかわからず、送られてきた手紙により、フランスにいて、ワイン飲みたさにワインの農場で住み込みで働いていることがわかった。すくむが5歳のときに、モスクワで偶然一度会ったきりだが、そのときに世界の冒険の話をたくさんすくむにした。 日本の登山仲間が山に誘ってくれているので、近々日本に寄る予定。すくむが出て行った3日後にローズメリーホテルにやってくる。
山田 まいと (やまだ まいと)
ローズメリーホテルの土地の持ち主で、すくむや小鳩の祖父。都内にわんさか土地とビルを持っている。昔は事業家だったが、今は隠居して不動産でのんびり暮らしており、若いおねえちゃんを家に呼んだりして、元気に過ごしている。山田まいとの戦友であった熊子の父親に熊子を託され、両親が亡くなってしまった熊子のためにローズメリーホテルを建て、贅沢をさせ、甘やかして育てた。 また、熊子の子供である薫も引き取って、大学まで行かせる。
江奈美 ルイ子 (えなみ るいこ)
若い頃から演技派といわれていた女優で、本名は井上熊子。16歳の清純派アイドル時代、脚本家との間に薫を産むが、芸能界で成功するために薫を捨て、本人には親戚だと嘘をついていた。両親が人の借金の保証人になり、首を吊ってしまったため、父親の戦友であった山田まいとに育ててもらう。 贅沢三昧で甘やかされて育つが、芸能界に入る。最初の夫も二番目の夫も地位も名誉もある人たちで、過剰なくらい熊子に尽くしてくれたが、そういう男たちを心から好きにはなれなかった。今はさえない映画監督と結婚をしており、その夫が作った目の玉が飛び出るほどの借金を返済するために、やりたくもない仕事をしている。また、借金返済のため山田まいとが熊子のために建てたローズメリーホテルを売ることになる。 隠し子がいることがバレて、ロサンゼルスに逃亡しようとしたが、結局マスコミに薫のことを公表する。
藤谷 あおい (ふじたに あおい)
すくむが編入した高校の陸上部の3年生。ショートカットの女の子。すくむの編入試験のときにテスト用紙を配り、すくむに一目惚れされる。家は弥生町で角地の一戸建て。家族構成は本人及び両親の三人暮らし。犬もいる。一人っ子だと本人は言っていたが、実は失踪した兄、隆志がいる。 一週間ほど前に、学校から帰ると郵便受けに兄からの手紙が入っており、それを見て涙を流しているところをすくむに見られた。一目でいいから兄に会いたいと思っており、すくむと薫らのおかげで12年ぶりに兄に会うことができた。
藤谷 隆志 (ふじたに たかし)
藤谷あおいの兄。頭の回転の速い利発な子供で、口数の少ないおとなしい子だったが、7歳のときに、弥生町の児童公園で見かけられたのを最後に失踪。長期間にわたって捜索したが、目撃証言も遺留品もほとんどないまま、捜索は打ち切られている。それから12年たち、一週間ほど前に藤谷家に届いた手紙により、海のそばで眺めがよく、静かで空気のきれいなところにいるらしいということがわかった。 薫らの働きにより、居場所が判明する。
神聖皇女アルカミーラ十四世 (しんせいこうじょあるかみーらじゅうよんせい)
神聖アルカミーラ皇国第一皇位継承者。強さを示さなければならない皇族のため、高圧的な物言いをする。雲の上の世界から馬車で来たが、トラブルでローズメリーホテルに落ちた。家の柱を簡単に折ってしまうほどの力の持ち主だが、国ではそんなに強いほうではなく、彼女の母にはかなわない。 一族は百年ほど前から男児が絶えており、お家のためにアルカミーラ皇女自ら次期皇王となるにふさわしい強い男を探しにやってきた。しばらくローズメリーホテルに住むことになる。鎧が国の正装で、常に鎧を着ているが、男探しには向かないため、小鳩から服を借りている。カツ丼8杯、親子丼8杯、カレー6杯、サラダ5人前、ピザ・スパゲティ3人前ずつ、トリ唐揚げ、オムレツ、コロッケ、炒飯、ギョーザをひとりで平らげる食欲を持つ。 酒にはめちゃめちゃ強いが、なぜかウーロン茶ですぐ酔う。自分に負けない腕力の持ち主に一目惚れしたが、その男は女癖が悪く、また、タチの悪いヤツだった。
シャンカール
アルカミーラ皇女の従者だが、元はアルカミーラ皇女に侵略された国の王の息子。アルカミーラ皇女に忠誠を誓っており、彼女に危害を加えようとする者には容赦がなく、姫の命令にしか従わない。元の国は、特に軍備もないのんきな国で、ある日突然侵攻してきたアルカミーラ皇女の国の軍隊にあっというまに征服された。 皆争いごとが嫌いで、日がな牛を追い、草の実を集め空を眺めて暮らしている国。国民は、最後までシャンカールたちをかくまってくれたが、目の前で自分の国の民が殺されるのを見て黙っているわけにはいかず、自分の首をはねるかわりに民を助けてくれるように自ら願い出る。それにより、アルカミーラ皇女はシャンカールの命を助け、民の安全も保証してくれた。 アルカミーラ皇女は、初めは恐ろしい人だと思っていたが、仕えているうちに、あの人はあの人なりに自分の役割を果たそうと懸命なのだということがわかり、自分が仕えることで、少しでもぼんやりした時間を作ってあげたいと思っている。アルカミーラ皇女のことが好きで、後に告白する。
野々村 (ののむら)
美人だが、化粧が濃い25歳。長いソバージュヘアをしている。ボスバーガーというハンバーガー屋さんで働いているが、他の従業員に嫌われているので、いつまで働けるかわからない。美人のため、昔から、同性から根拠もなくやっかまれ、居づらくなって何度も転職している。また、男性にはどうせ遊びだろうと、本気にされず、いつだって一番欲しい物が手に入らなかった。 自分より劣っていると思っていた女と、好きだった人が結婚してしまい、彼女さえいなければ、今頃彼と幸せになっていたのは自分だったのにと二人の赤ちゃんを連れ去り、ローズメリーホテルに置き去りにしてしまう。そして、やっぱり赤ちゃんを取り戻そうと、すくむのまわりをうろつく。
その他キーワード
ローズメリーホテル
『ローズメリーホテル空室有り』の登場する建物。すくむと小鳩の祖父である山田まいとが、熊子のために昔建てたもの。名義は小鳩の父だが、実質は山田まいとのもの。都会の中にあり、広い敷地をもち、昔は木造洋風建築でなかなかおしゃれな趣があったが、今はボロアパート。家賃は激安で月5000円。個人個人で自炊だったが、小鳩が住むようになり、奴隷の星野原ひとみが食事をつくるようになる。 住人はみんな怪しく、管理人はいいかげん男の薫、中国人の陳、イラン人のモハメド、東北出身の田中、そこにすくむと小鳩が加わり、キンカンという犬もいる。管理人室は結構広い。熊子の夫の借金を肩代わりするために、山田まいとが売ることにしたため、陳、モハメド、田中の3人が部屋に立てこもってしまう。
書誌情報
ローズメリーホテル空室有り 2巻 小学館〈コミック文庫(女性)〉
第1巻
(2013-01-12発行、 978-4091914569)
第2巻
(2013-02-15発行、 978-4091914576)