作りたい女と食べたい女

作りたい女と食べたい女

料理好きな派遣社員の野本ユキは、思うままに大量の料理を作ってみたいという願いを抱いていた。そんなある日、二つ隣の部屋に住む春日十々子がすさまじい大食漢であることを知る。作りたい女と食べたい女が、ごはんを通して交流する姿を描いた、グルメ×GL漫画。2020年3月、SNSで発表した作品が好評を得て、KADOKAWA「ComicWalker」で2021年1月8日より配信。コミックス刊行にあたり、描き下ろしのエピソードも収録されている。「pixivコミックランキング2021」ふたりごはん部門第1位、「このマンガがすごい!2022」オンナ編第2位にランクイン。NHK総合テレビジョンにて実写ドラマ化。シーズン1は、2022年11月29日から12月14日まで。シーズン2は、2024年1月29日より放送。

正式名称
作りたい女と食べたい女
ふりがな
つくりたいおんなとたべたいおんな
作者
ジャンル
料理
 
友情
レーベル
it COMICS(KADOKAWA)
巻数
既刊5巻
関連商品
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「作りたい」と「食べたい」が出会った日

同じマンションの二つ隣に住む二人の女性、野本ユキと春日十々子の交流を描いたごはん漫画。一人暮らしの野本はデカ盛り料理を思う存分作りたいという欲求で、日々モヤモヤしていた。そんなある日、エレベーターで、大量のファストフードを抱えた春日と出会う。春日はそれを一人で食べるという。後日、料理を作りすぎてしまった野本は、思い切って春日を誘う。野本の部屋にやって来た春日は、目の前の大量の料理を豪快にかっ食らう。それを見た野本は、ふわふわの大きなカステラを、集まってきた動物たちに振る舞うという幼い頃の夢を思い出す。そして一緒におなべを空っぽにしてくれる人をずっと探していたことに気がついた。こうして「作りたい」「食べたい」という二人の女が運命の出会いを果たした。

シスターフッド×ごはん×GLストーリー

野本と春日は、ごはんを通じてどんどん仲よくなり、クリスマスとお正月を二人で過ごす約束をする。春日への感情の正体がよくわからないままネットを検索していた野本は、「性的指向診断テスト」というサイトで「レズビアン」と診断される。周りの女子たちと異なり、彼氏をつくることもなかった野本は、春日の出現で本当の自分をようやく知ることができた。一方、春日は、祖母の介護のために実家に戻れという父に反発する。家父長制が色濃い家に育った春日は、二度と実家に戻らないと告げて電話を切る。そしてラジオから聞こえてきた「選ばれた家族」というキーワードから、「野本と家族になりたい、彼女が好きだ」という自分の気持ちに気がつく。野本のSNS友達で恋愛相談にも乗ってくれるレズビアンの矢子可菜芽、野本と春日の間の部屋に引っ越してきた、食べたくない女・南雲世奈も加わり、女性4人の絆が深まっていく。

女性を取り巻く生きづらさを描く

本作は、野本と春日の交流を描きながら、日常における女性の生きづらさや違和感を描いている。例えば、会社に弁当を持っていった野本は、同僚の男性に「いいお母さんになる」「彼女には弁当を作って欲しい」といった言葉をかけられる。自分が好きでやっているだけなのに、全部男のためのように言われることに、野本はモヤモヤする。春日は外食のとき、女性だからといって勝手にごはんを少なくされたり、知らない中年男性から「餃子にライスは邪道だ」と、唐突に説教されたりする。また、春日の実家は、家父長制が色濃く残る保守的な家で、小さい頃から、弟と食事の量に差をつけられていた。家族には明確に序列があり、女性の仕事は軽視され、家事を強制するような家風であった。このような、現実社会に根強く残るジェンダーバイアスへの問題提起がなされている点も本作の特徴である。

登場人物・キャラクター

野本 ユキ (のもと ゆき)

春日十々子と同じマンションで暮らす若い女性。春日の部屋と空室を一つ挟んだ二つ隣に住んでいる。明るい色の髪をセミロングのボブヘアにしている。東北出身で、現在は一人暮らしをしながら派遣社員として働いている。SNSで自作料理をアップするアカウントを作るほどの料理好き。料理家の土井善晴をリスペクトしており、彼が説く「食事は一汁一菜」を信条としているうえ、野本ユキ自身が少食なこともあって、一度に作る料理は量が少なく、上品なものが多い。だが一方で、ゲームやアニメの再現料理や、デカ盛り料理を心置きなく作ってみたいという欲求をつねに抱えている。何か悩み事があると無意識のうちにそれが表面化してしまい、いつの間にか大量の料理を作っているということがしばしばある。ある日、春日が大量のフライドチキンを手に帰宅する場面に遭遇して、彼女が驚くべき大食漢であることを知り、以来、何かと彼女と食事を共にして料理を作る欲求を満たすようになる。ちなみに酒好きで、春日の惚(ほ)れ惚(ぼ)れするほど豪快な食べっぷりを肴に酒を飲むこともある。また、感情をあまり表に出さないながらも落ち着いた春日と接するうちに心癒され、彼女に対してふつうの友達とはまた違う、どこかキュンキュンした不思議な感情を抱くようになっていく。

春日 十々子 (かすが ととこ)

野本ユキと同じマンションで暮らす若い女性。野本の部屋と空室を一つ挟んだ二つ隣に住んでいる。非常に背が高くガッシリした体型で、黒髪のロングヘアをひっつめて一つに束ねている。スーパーに勤務していることもあり、力持ちで重い荷物も苦にしない。クールで口数が少なく非常にマイペースで、春日十々子自身が意図的に避けているわけではないが、特に踏み込んだ人付き合いはしないタイプ。生活時間帯があまり合わないため、野本とはあまり面識がなかったが、廊下を歩く大きな足音から、野本にはその存在を認知されていた。ある日、まるでパーティでもするかのごとく大量にフライドチキンを買い込んで帰宅したところで、たまたま野本と遭遇。この量を一人で食べると野本に告げたことで、大量の料理を作りたいという彼女の欲求に火をつけ、以来、何かと食事を共にするようになる。どこか達観したところがあり、春日が意図せず発した言葉が、日々何かと悩み事の多い野本の心に響き、彼女を癒すことも多い。実はひそかに卵好きで、野本が卵を使った料理を作ると、いつもと反応が少し異なる。酒は飲めないわけではないがあまり好まず、どちらかといえば食べる方を専門とする。

書誌情報

作りたい女と食べたい女 5巻 KADOKAWA〈it COMICS〉

第1巻

(2021-06-15発行、 978-4049136517)

第2巻

(2021-12-15発行、 978-4049140248)

第3巻

(2022-11-15発行、 978-4049144246)

第4巻

(2023-06-15発行、 978-4049149500)

第5巻

(2024-02-15発行、 978-4049153378)

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