デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション

突如侵略者の攻撃を受けて甚大な被害を出しながらも、やがてその恐怖や戦慄も日常の一部と化した「終わらなかった世界」。そこで思春期を過ごす女子高生を中心に、不安定で不確実な世界を綴る。「8.31」と呼ばれる最初の大規模な攻撃や、侵略の脅威が間近にありながら、それを見ぬふりするように日常生活を送る人々など、2010年代の日本の状況に対する暗喩が色濃い作品。小学館「ビッグコミックスピリッツ」2014年22・23合併号から2022年13号まで連載。連載終了直後の2022年3月にアニメ化が発表。劇場アニメとして、前章が2024年3月22日、後章が2024年5月24日に公開。第66回「小学館漫画賞」一般向け部門受賞。第25回「文化庁メディア芸術祭」マンガ部門優秀賞受賞。

正式名称
デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション
ふりがな
でっどでっどでーもんずででででですとらくしょん
作者
ジャンル
その他SF・ファンタジー
レーベル
ビッグ コミックス(小学館)
巻数
全12巻完結
関連商品
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日常系からSFサスペンス展開へ

約3年前の8月31日、東京湾上空に超巨大な円盤(母艦)が現れ、ゆっくりと北西に移動し始めた。その後、母艦から発艦した小型船による、建物の倒壊や火災が広範囲で発生。政府から非常事態宣言が発令されるに至った。翌9月1日正午、米軍による新型爆弾「A」の投下で、母艦は渋谷区上空で停止。東京全域でごく微量の「A線」が観測されるが、人体への影響はないとされた。死者・行方不明者を大量に出した、侵略者による未曾有の大災害は、後に「8.31」と呼ばれる。本作の舞台は「8.31」の3年後。東京上空に巨大な母艦が浮かぶ中、女子高生の小山門出と中川凰蘭(おんたん)たちの青春を描く日常系漫画。しかし、作中で半年後に人類が終了することが予告され、物語中盤以降は本格的なSFやサスペンスの要素も加わっていく。

侵略者の実態が次第に明らかに

「8.31」から3年2か月後、小型船は都下の各地に姿を見せていたが、武器を搭載しておらず、一方的に自衛隊に撃墜されていた。そんな中、日本は対侵略者兵器として新たなレーザー兵器「歩仁」シリーズを開発。やがて兵器産業バブルを招き、国防力を高めていく。また、侵略者たちと自衛隊の戦闘が、日々報じられていたが、じつは自衛隊の一方的な虐殺であった。侵略者は武器を持たず、何より小人のように小さかったのだ。ただし、侵略者が減りすぎると「歩仁」シリーズの使い道がなくなるため、政府の命令により、適度に侵略者を間引いているというのが実態であった。そんな中、大学に進学した門出とおんたんは、人間と融合した侵略者と出会う。3年間、一般市民に紛れていたという侵略者の出現で、さまざまな真実が明らかになり、物語が大きく展開していく。

作中の漫画『イソべやん』が持つ意味

単行本の冒頭と巻末には作中に登場する国民的漫画『イソべやん』が掲載されている。未来の「内緒道具」をカバンから出す磯辺焼き好きのイソべやんは、『ドラえもん』のパロディである。宝島社「このマンガがすごい! WEB」で、作者・浅野いにおは、本作を「昭和の古典的なマンガのパロディ的な構造」と明かしている。その言葉どおり、侵略者の実態が明らかになるにつれ、本作が『ドラえもん』『オバケのQ太郎』など、いわゆる「居候モノ」の一面を持つことがわかる。また『イソべやん』は作中に登場する漫画というだけではなく、じつは本作の内容に大きな関わりを持つことも判明する。

登場人物・キャラクター

小山 門出 (こやま かどで)

高校3年生。メガネを愛用。また、作中で国民的な漫画となっている『イソベやん』を愛読し、そのグッズも身に着けている。中川凰蘭とは小学校以来の親友で、ゲーム仲間でもある。小学生の頃、名前を「でもん」とよく読み間違えられたことから「デーモン」とあだ名を付けられていじめられていたのを、中川凰蘭に助けられた。 両親ともに漫画編集者だが、父親は3年前の8.31のときに神保町の会社の様子を見に行ったきり消息不明。現在は市民活動に傾倒する母親との距離を感じている。担任教師の渡良瀬に思いを寄せ、たびたび接近を試みるが、「卒業したらセフレに」などと冗談でかわされ続けている。 また、中川凰蘭の兄とは小学生の頃に結婚の約束をしたが、現在は「デブは無理」とあっさり拒否しつつも、友情は続いている。

中川 凰蘭 (なかがわ おうらん)

高校3年生。あだ名はおんたん。小山門出とは小学校以来の親友。女子高生ゲーマーで、毎晩のようにオンラインのFPSゲームに興じ、そのため日常的に寝不足。会話にもネットスラングが多い。小山門出と違い、恋愛にはまったく興味を示さず、「将来の夢は独裁者になって人類に恐怖を与える」と宣言するなど、現実逃避気味の傾向が強い。 また、墜落した小型円盤を見物に行った現場で拾った部品で通信を試みるが、はからずも市民に紛れた侵略者と幾度か遭遇している。日々、ネットを監視する兄の中川ひろしとの仲は良好。また、父が中川自動車を営んでいるため、在学中だがすでに車の運転をしている。

栗原 キホ (くりはら きほ)

高校3年生。小山門出と中川凰蘭を含む仲良し5人グループのひとり。その中で自分だけが高校からの付き合いなので、やや疎外感を覚えており、彼氏を作って一歩抜きん出るはずが、同級生の小比類巻と付き合ったことによってかえって浮いた存在となってしまう。そして失恋後はふたたび5人で仲良く日常生活を送っていたが、ある日戦闘によって墜落した中型船に巻き込まれ、あっけなく死亡してしまう。

出元 亜衣

高校3年生。小山門出と中川凰蘭を含む仲良し5人グループのひとり。平間凛とは幼稚園の頃からの友人。メガネと三つ編みというルックスで、5人の中では最も背が低い。実家は8.31の際にA線に汚染された大田区にあり、両親は国からの補助金を目当てに今も仮設住宅で生活中。 自身と5人の弟だけが現在通う学校に近い親類の家に預けられている。その両親の生き方に後ろめたさを感じており、卒業間近に告白された門司谷のことは一度デートしたあと「いい人すぎてつらい」という理由で交際を断っている。

平間 凛

高校3年生。小山門出と中川凰蘭を含む仲良し5人グループのひとり。5人の中では身長が突出して高い。いわゆる腐女子趣味で、口数は少なめ。同じクラスの美形男子の友情に、つい妄想してしまう。出元亜衣とは幼稚園の頃からの友人。彼女がやむを得ず引越したのに合わせて、わざわざ遠くから現在の高校に通うことを決めたほど仲が良い。

中川 ひろし (なかがわ ひろし)

中川凰蘭の兄。いわゆる引きこもりニートで、日々ネットを監視しながら「意識高い」者たちを攻撃する一方で、孤独なティーンには救いの言葉をかけている。中央に寄った顔のパーツだけが無駄に美形で、全体としてはデブ。小学生のときに結婚の約束をした小山門出には、「デブは無理」とあっさりその約束を反故にされる。

渡良瀬 (わたらせ)

高校教師。小山門出と中川凰蘭たちのクラス担任。生徒たちに友人感覚で交じることもあるざっくばらんな性格だが、時折シニカルな一面を覗かせる。生徒たちの前でクリスマスのことを「セックスする日」と言い放つなど、教師らしからぬ言動も多い。小山門出に好意を抱かれていることもはっきり自覚しつつも、大人の対応で適当にいなしている。 大学時代から、現在はS.E.S社に勤務する須丸光と交際しているが、すでに惰性ともいえる関係になっている。

須丸 光 (すまる ひかり)

S.E.S社(サンティリ・エレメンツ・ソリューション)が開発する国産戦闘兵器「歩仁」開発センターの広報を担当。渡良瀬とは学生の時より交際しているが、すでに形だけの付き合いに近く、さりげなく提案された結婚にもまったく心が動かない。S.E.S社が国家と共謀し、密かに侵略者の技術を利用しようとしているのではないかと疑うジャーナリストの三浦とも大学の同期で、彼が社に取材に訪れた際に10年ぶりに再会する。

大葉 圭太 (おおば けいた)

小山門出が中学生の頃に追っかけをしていた男性アイドル。右目の下にある2つのホクロが特徴。中川凰蘭の言によれば、「中途半端な三流アイドル」。8.31に巻き込まれ死亡したとされているが、彼の姿を借りた侵略者が、密かに一般市民の中に紛れて生活している。

小比類巻 (こひるいまき)

高校3年生の男子。栗原キホと一時的に交際していた相手。マッシュルームカットで、かつては日本の音楽シーンが興味の中心だったが、現在は東京の危機的状況を憂い、ネガティブな思考にとらわれている。中川凰蘭には「サブカルヘルメット」と陰口を叩かれる。ネットの言説に流されやすく、発言のほとんどが誰かの影響。 栗原キホとは次第に話が噛み合わなくなり、別れることとなる。A線の影響が少ない関西への移住を考えたり、東京の大学の推薦を取り消して名古屋に行くことになっていたりと迷走しながら、結局は「やることがある」と東京に残る。

書誌情報

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 全12巻 小学館〈ビッグ コミックス〉

第1巻

(2014-09-30発行、 978-4091865007)

第2巻

(2015-02-27発行、 978-4091868572)

第3巻

(2015-08-28発行、 978-4091872609)

第4巻

(2016-02-29発行、 978-4091875631)

第5巻

(2016-09-30発行、 978-4091878298)

第6巻

(2017-05-30発行、 978-4091895677)

第7巻

(2018-08-30発行、 978-4098601004)

第8巻

(2019-06-28発行、 978-4098603541)

第9巻

(2019-12-26発行、 978-4098605200)

第10巻

(2020-12-25発行、 978-4098608348)

第11巻

(2021-07-30発行、 978-4098611577)

第12巻

(2022-03-30発行、 978-4098612932)

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