概要・あらすじ
藤田ももこは15歳の高校1年生。子供の頃から周りに心配されるほど抜けていて、自己主張が苦手な性格。小学生の頃は、親友の真昼が、何かと世話を焼いてくれており、ももこの心の支えであった。しかし、真昼は中学に上る前に、病気で亡くなってしまっていた。そんなももこが最近気になっているのは、クラスメイトの五十嵐律の事だった。
のんびり屋の五十嵐は、シャツのボタンをかけ間違えたり、スマホを机から落として画面を割ったりと、ももこ以上に抜けていた。ある日の事。次が教室移動である事に気づかず、五十嵐は机で突っ伏して寝ていた。ももこは意を決して彼の肩を叩き、そのまま逃げるように教室を走り去った。ももこのおかげで、五十嵐は遅れずに理科室に移動する事ができた。
そんな様子を見ていた、五十嵐の親友、九條は、昼休みにももこをテラスに呼び出した。九條の話は、ももこに五十嵐のお世話係を頼みたいという事だった。九條は毎朝、一人暮らしの五十嵐を起こして、一緒に登校しているのだという。しかし、明日から家族旅行で1週間学校を休むため、自分の代わりをももこにやってほしいというのだ。
自分の事すらままならないのに、五十嵐の世話ができるのだろうか。迷うももこだったが、誰かに背中を押された気がして、気づいたら「やります」と答えていた。翌日から、ももこは毎朝五十嵐を迎えに行き、一緒に登校した。五十嵐は相変わらずマイペースで、何度も遅刻しそうになるが、ももこの努力で何とか無事に1週間が過ぎた。五十嵐はももこの事を「しっかりしている」と言うが、そんな事を言われたのは初めてだった。
もしそう見えたなら、愛用のパスケースのおかげかもしれないと、ももこは五十嵐に言った。それは、真昼がくれたお揃いのパスケースだった。それを見ると、二度と会えなくなってしまった親友に、心配させないよう、しっかりしなきゃという気持ちになるのだ。
五十嵐のお世話も終わり、もとの生活に戻ったももこ。少し寂しい気持ちを抱きながら登校する途中、パスケースがなくなっているのに気づいた。あわてて踵を返したももこは、九條と五十嵐にばったりと出会う。何か言いかける五十嵐を振り切って、パスケースを探しに戻るももこ。必死で通った道を探すが、みつからずに途方に暮れるももこの腕を、グイと摑んだのは五十嵐だった。
五十嵐はももこにパスケースを渡した。拾ったので渡そうとしたが、ももこが走り去ってしまったのだという。パスケースを受け取ったももこは、ボロボロと涙をこぼしながら、自分が今も真昼に支えられていた事に気づく。立ち去る五十嵐の後ろ姿を見ながら、ももこは再び寂しい気持ちになった。自分はもう五十嵐と一緒に登校できないのだ。
そう思ったとき、「一緒に行こうと言えばいい」という声が聞こえる。驚いて振り返ると、そこには死んだはずの真昼が、すごく楽しそうにして立っていたのだ。
登場人物・キャラクター
藤田 ももこ (ふじた ももこ)
高校1年生の女子。15歳。赤みがかったボブカットが特徴。小さい頃からぼんやりしていて、どこか抜けた性格。引っ込み思案で、自己主張ができない欠点を持つが、責任感は強く真面目。いつも眠そうでぼんやりしている、同じクラスの五十嵐律に親近感を抱く。
真昼 (まひる)
藤田ももこの小学校時代の親友。女の子。ぼんやりして抜けているももこの世話を焼いていたしっかり者。中学生になる前に、病気で亡くなってしまうが、高校生になったももこの前に、幽霊として登場する。黒いロングヘアと、中学で着るはずだったセーラー服が特徴。
五十嵐 律 (いがらし りつ)
藤田ももこのクラスメイトの男子。ももこ以上にぼんやりしていて、いつも眠そうにしている。マンションで一人暮らしをしており、一人で登校できないほどの、のんびり屋。親友の九條といつも一緒で、何かにつけ、九條を頼りにしている。
九條 (くじょう)
藤田ももこと同じ高校に通う男子。五十嵐律の親友。女子に大人気のイケメン。家業は焼肉屋で、その2階に自宅がある。隣に住む五十嵐を、毎朝起こして、一緒に登校している。