あらすじ
LV.1
オタクの青年の乙谷乙成は、20歳の誕生日を迎えてもなお、別の世界に転生して多種多様な美少女キャラクターと愛を育みつつ、世界を救うという中二病感あふれる設定にあこがれを抱いていた。ある日、ゲームをプレイしていたところ、誤って広告バナーをクリックしてしまい、そのまま意識を失ってしまう。目が覚めた乙成は、自身が乙女ゲーム「シロガネクルワ」の世界に転生したことを知る。乙成はすぐに攻略キャラクターの壱葛、花簪、梦と出会い、まるで女性のような扱いを受ける。とまどう乙成だったが、壱葛たちもまた、本来は女性であるはずのヒロイン役が男の乙成である事実に強い不満を抱いていた。(LV:1「これが俺の桃源郷!?」。ほか、4エピソード収録)
LV.2
乙谷乙成の前に、新キャラクターとして壱葛の兄の現來が現れた。そして現來は乙成に対し、乙女ゲームの攻略キャラクターとして模範的な立ち振る舞いをし、甘い言葉をささやき始める。乙成は現來のプロ意識の高さに圧倒されるが、一方の現來は勝手に定時を設定しており、一定の時間が経過するとダラダラと好き勝手に過ごし始める。そんなマイペースな現來に振り回される中、乙成はいつもより元気のない壱葛の姿に気づく。壱葛は過去に「かぐら」の攻撃に遭って負傷した右目が、満月の夜になると激しく痛むという苦しみを抱えていた。もうすぐ満月の夜がやって来ると憂鬱そうな表情を見せる壱葛に対して乙成は、その夜はいっしょに過ごそうと励ます。(LV:10「ワッショイは定時まで」。ほか、3エピソード収録)
登場人物・キャラクター
乙谷 乙成 (おとや おとなり)
20歳になったばかりの、ごくふつうの男子大学生。ゲームやアニメを好むいわゆるオタクで、中でも別の世界に転生し、多種多様な美少女キャラクターと愛を育みつつ、世界を救うという設定にあこがれを抱いている。ある日、スマートフォンに表示された広告バナーを誤ってクリックしてしまい、そのまま乙女ゲーム「シロガネクルワ」の世界に、男性のままヒロイン的な存在として転生する。大団円エンドを達成して元の世界に帰るため、心ならずも男性の攻略キャラクターたちの好感度を上げようと試行錯誤を繰り返すこととなる。シロガネクルワの世界では壱葛、花簪、梦といっしょに暮らしている。
壱葛 (さねかずら)
乙女ゲーム「シロガネクルワ」に登場する男性で、攻略キャラクターの一人。年齢は25歳で、兄に現來がいる。クールでミステリアスな雰囲気を漂わせた美男子で、口数は少ない。13歳の頃に「かぐら」との戦いの際に右目を負傷し、視力を失っている。ふだんは眼帯を身につけ、傷が見えないようにしている。満月の日の夜は右目の傷が痛むため、眠れずに過ごしている。プロ意識は低めだが、乙谷乙成が壱葛からの好感度が上がる服を一度だけ身につけたこともあり、花簪、梦の三人の中では一番乙成に優しく接する。
花簪 (はなかんざし)
乙女ゲーム「シロガネクルワ」に登場する男性で、攻略キャラクターの一人。年齢は27歳で、長い髪の毛をサイドテールにしている。中性的な雰囲気の美男子で、初対面の乙谷乙成が女性とまちがえたほど。ドSな性格の持ち主で、プロ意識は極めて低く、乙成に対して暴言や唾を吐くなど態度が悪い。本来は女性であるはずのヒロインが乙成である事実に、大いに不満を抱いていることを隠そうとしない。「ヒロインの泣き顔が好き」という設定により、男性ながらもヒロインの設定になっている乙成の泣き顔にも好感を抱いてしまう。
梦 (ゆめ)
乙女ゲーム「シロガネクルワ」に登場する男性で、攻略キャラクターの一人。年齢は17歳。隠密の家系のため、忍者を彷彿とさせる衣装を身につけており、「かぐら」への攻撃も苦無(くない)を用いる。背は低く、かわいらしい容姿の美少年。一見明るく社交的に見えるが、根は暗くネガティブな性格の持ち主。また、隠密としての才能に乏しいことから、自分はだめな人間だとコンプレックスを抱いている。壱葛、花簪の二人と比べるとプロ意識は高く、乙谷乙成を女性ヒロインだと思い込もうと必死になっている。一方で乙成がピンチに陥っている場面を前に、見て見ぬふりをすることもある。
現來 (うつら)
乙女ゲーム「シロガネクルワ」に登場する男性で、攻略キャラクターの一人。年齢は30歳。ワイルドな雰囲気を漂わせた美男子で、壱葛の兄。「かぐら」との戦いの際は薬師としてサポートをしている。ふだんはプロ意識が高いものの、勝手に定時を設定しており、時間を過ぎるとヒロインをまったく相手にしなくなる。
翅月 (しづく)
乙女ゲーム「シロガネクルワ」に登場する男性で、攻略キャラクターの一人。年齢は不明で、線の細い美少年。言動が幼く、死神を思わせる大きな鎌を持っている。かぐらと共に暮らしており、かぐらを「かかさま」と呼んで慕っている。プロ意識が非常に高く、乙谷乙成からは攻略キャラクターの鑑(かがみ)と評されている。シロガネクルワの世界にヒロインとしてやって来た人物は、性別関係なく全力で愛すると決めている。独占欲が非常に強く、乙成がほかの攻略キャラクターと親しくすることを許さない。
SHURI (しゅり)
乙女ゲーム「シロガネクルワ」内での案内役を務める人工知能。乙女のためのサポートコンテンツに搭載されており、スマートフォンを立ち上げることですぐに会話が可能になる。乙谷乙成のサポート役も担っているが、非常に軽いノリで会話をするため、乙成からは不快がられている。
かぐら
乙女ゲーム「シロガネクルワ」の世界に出現する魔物たち。着物姿で完全に白骨化した女性の姿をしており、元の人間の容姿を知ることはできない。言葉を口にすることはないが、敵か味方かを判断したり、人間の言葉を理解したりと最低限の知能を持つ。夜になると活動を始め、人間たちに危害を加えようと企む。殲滅を目的とする攻略キャラクターたちから戦いを挑まれているが、激しく抵抗している。いっしょに暮らす翅月からは「かかさま」と呼ばれている。
その他キーワード
乙女のためのサポートコンテンツ (おとめのためのさぽーとこんてんつ)
乙女ゲーム「シロガネクルワ」を攻略するためのサイト。この世界に転生してきた乙谷乙成のスマートフォンに、勝手にインストールされていた。現在の攻略キャラクターたちの乙成への好感度が、五つのハートを用いてリアルタイムで表示される。ほかにも用語や効率のいい好感度の上げ方や特殊イベントなど、シロガネクルワの情報が多数掲載されている。また、人工知能のSHURIも搭載されており、スマートフォンを立ち上げるだけで会話が可能。
シロガネクルワ
乙谷乙成が転生することになった乙女ゲーム。和風な世界観で、登場人物は着物を洋風にアレンジしたような衣類を身にまとっている。また、日本刀だけでなく銃など西洋の武器も流通している。昼間は平和ではあるものの、夜になると「かぐら」と呼ばれる魔物が暗躍しており、主に攻略キャラクターたちが魔物を退治している。ゲームのプレイヤーは女性が想定されており、人間とかぐらのあいだに起こった争いの終結を目指すアドベンチャーゲーム。戦いのあいだに、容姿端麗な攻略キャラクターたちとヒロインが特別な関係になっていき、最終的に一人と結ばれることになる。ただし、大団円エンドという特定の誰かを選ばないエンドも存在する。
大団円エンド (だいだんえんえんど)
乙女ゲーム「シロガネクルワ」に存在するエンドの一つ。登場人物の全員といい雰囲気になり、ヒロインが誰も選ばずに元の世界に帰るというハッピーエンドのストーリー。大団円エンドを達成するためには、攻略キャラクター全員の好感度を3以上5未満に保ち、物語を終結させる必要がある。特定の誰かと恋仲になる必要がないため、乙谷乙成が目標に設定しているエンドでもある。
攻略キャラクター (こうりゃくきゃらくたー)
乙女ゲーム「シロガネクルワ」に登場するキャラクターの中で、ヒロインと結ばれる可能性を持つ者たちで、全部で11人いる。タイプは異なるものの、全員が容姿端麗。攻略キャラクターは基本的に設定された人格を完璧に演じるが、男である乙谷乙成をヒロイン扱いしなくてはならない点については、翅月など一部を除いて不平不満をもらすことも多い。
プロ意識 (ぷろいしき)
乙女ゲーム「シロガネクルワ」に登場する攻略キャラクターの、役柄に対する意識の高さを乙谷乙成なりに分析したもの。トップはプロ意識が鑑(かがみ)の領域に達している翅月で、ワーストは本音を隠そうともしない花簪。