厳しい現実を乗り越えるヒューマンドラマ
本作は、プロゴルファーを目指す中年男性、進の人生を軸に、ゴルフの楽しさだけでなく、その厳しさや苦悩を深く描いている。爽快なスポ根漫画とは異なり、現実の絶望や焦燥、周囲からの圧力や失望に苦しむ進の心情が、繊細かつ時に毒々しく掘り下げられている。一方で、進がプロを目指す過程で多くの人々と出会い、交流を重ねることで気力や生きがいを取り戻していく様子は、温かく感動的なヒューマンドラマとしても楽しめる。
中年男性、進の果てなき挑戦
桜武カントリー倶楽部に雇われた進は、ゴルフ未経験ながらも天賦の才を認められ、理事長の松永ひろしから賞賛され、期待を一身に背負っていた。松永らの手厚い支援を受けてプロテストに挑むものの、10年経っても合格できず、成果を出せない日々が続いていた。やがて、彼を持ち上げていた人々の態度は一変し、次第に厄介者扱いされるようになる。35歳になった進は、忘年会で「次こそは合格する」と虚しく決意を繰り返しながらも、研修生の桐島裕二ら後輩たちからも見下される存在となっていた。時には幻覚に苛(さいな)まれるほどの強烈なプレッシャーに耐え、プロへの夢を捨てきれずにいた進だったが、ついに松永が設立した後援会からも見限られ、すべての支援を打ち切られてしまう。
ライバルと理解者との交流
桜武カントリー倶楽部の理事長、松永の支援を失った進は、キャディーとして働きながら自費でプロテストに挑み続ける。しかし、なかなか結果が出ずに再び苦悩の日々を送っていた。そんな中、ライバルの裕二や、彼の努力を認め支える瀬戸架純との交流が、険しいプロへの道を支えていく。やがて、強いストレスを感じるたびに現れる小人のような謎の存在によって、プレイ中に不思議な現象が起こるようになる。それが彼のゴルフ人生に大きな転機と新たな葛藤をもたらすことになる。進を取り巻く環境やゴルフへの思いは決して明るく爽やかなものばかりではなく、無力感や虚無感に苛まれ、ゴルフ界の厳しい現実に直面することもある。そんな不安定な日々の中で、彼が奮闘と努力の末に何を感じ、何をつかみ取るのかが、本作の大きな見どころとなっている。
登場人物・キャラクター
二階堂 進 (にかいどう すすむ)
桜武カントリー倶楽部に所属する男性。年齢は35歳。26歳の時にキャディーとして採用され、理事長の松永にその才能を見出され、「ゴルフの申し子」と称賛される。しかし、プロテストに挑戦し始めてから10年が経過しても合格できず、次第に周囲のメンバーから見放され、孤立を深めている。そんな現状を自覚しつつも、プロゴルファーになる夢をあきらめきれずにいる。悩みを抱えるたびに夜の公園へ足を運び、一人でブランコに腰掛けては深いため息をつき、無力感や絶望感に苛まれている。
瀬戸 架純 (せと かすみ)
地下アイドルグループ「文々少女」に所属していた若い女性。芸名は「斎藤カフカ」。中身の薄く偏った価値観を持つ友人たちに嫌気がさし、アイドル活動に見切りをつけた。現在は、父親の義郎が営む中華料理店「中華宝楽」を手伝っている。そんなある日、店で進と出会い、結果が出せないにもかかわらず挑戦し続ける彼の一途な姿を「偉人」と称賛する。進の数少ない理解者の一人として、彼を応援するようになる。
書誌情報
二階堂地獄ゴルフ 11巻 講談社〈モーニング KC〉
第1巻
(2023-12-21発行、978-4065339763)
第2巻
(2024-03-22発行、978-4065349472)
第3巻
(2024-06-21発行、978-4065358450)
第4巻
(2024-08-22発行、978-4065365939)
第5巻
(2024-11-21発行、978-4065375334)
第6巻
(2025-01-22発行、978-4065381106)
第7巻
(2025-03-21発行、978-4065387931)
第8巻
(2025-06-23発行、978-4065398265)
第9巻
(2025-08-22発行、978-4065404805)
第10巻
(2025-11-21発行、978-4065415160)
第11巻
(2026-01-22発行、978-4065421420)







