ホラーを装ったドタバタギャグ
本作は現代に蘇(よみがえ)った祟(たた)り神「屋跨斑(ヤマタギマダラ)」と、人間たちの交流が面白おかしく描かれている。祟り神は、かつて人間に恨みを抱き、恨みが晴れた現在も人間と接点を持たないように暮らしていた。しかし、祀(まつ)られていた祠(ほこら)に足を踏み入れた三十木谷日向と三十木谷薫から興味を抱かれたあげく、「ダラさん」のあだ名をつけられ、これをきっかけに二人の姉弟とかかわりを持つようになる。三十木谷姉弟のほかにも、薫に倒錯した感情を抱く五十子美和や、神職でありながらまったく霊感を持たない梛など一癖も二癖もある人物が多く、彼らの奇行にダラさんが否応なしにツッコミを入れる日々を送ることとなる。
祟り神「ダラさん」と姉弟の心温まる交流
三十木谷日向と三十木谷薫は、オーストラリア人の父親と日本人の母親のあいだに生まれた姉弟。姉の日向はボーイッシュな外見で、弟の薫は美少女と見まがうほどの容姿を持つことから、たびたび兄妹とカンちがいされている。二人は天然ボケなうえに怖いもの知らずで、祟り神であるダラさんと対面した時も、物怖じせずに親し気に声をかけ、直ぐに懐いてしまう。当初ダラさんは、二人の姉弟の言動に戸惑いを隠せずにいたが、やがて理解を示すようになり、ダラさんが現代社会に順応するきっかけとなる。
ダラさんの壮絶な過去
物語は基本的にコメディタッチな展開に終始しているが、ダラさんが祟り神になった凄惨な過去の出来事も明かされる。生前のダラさんは、かつて祓(はら)い屋の巫女(みこ)として活動しており、卓越した霊力と優しい性格から多くの人々に慕われていた。しかしその一方で、見た目が悪かったことから両親や姉から冷遇されており、特に姉が思いを寄せていた大工の青年、十郎太妹と親密な仲になったことで激しい憎悪を向けられ、やがて谷跨斑のいけにえにされる形で殺害され、「屋跨斑(ヤマタギマダラ)」として蘇ったのである。蘇った直後は、自らを陥れた人間たちへの憎しみに駆られていたが、現在はすでに憎しみから解放されている。また生前のダラさんとその関係者の過去は、メインエピソードの合間を縫う形で定期的に掲載されている。
登場人物・キャラクター
ダラさん
上半身は人間の巫女で、下半身は家屋を跨ぐほど長大な蛇体を持った異形の祟り神。三十木谷日向が住む村の裏山にある祠に封印されていたが、集中豪雨の影響で祠の封印が解け、現世に復活を果たす。しかし、復活してから最初に出会った三十木谷日向と三十木谷薫が、ダラさん自身をまったく怖がらないどころか懐かれるようになる。見た目は怖いが、実際はお人よしの常識人で、日向たちの非常識な言動に対して、ツッコミを入れることが多い。祟り神としての名前を「屋跨斑(ヤマタギマダラ)」というが、初めて会った時に薫から「山田さん」とカンちがいされ、人前に出るときは山田さんを名乗っている。昔から祟り神であったわけではなく、かつては巫女を務める人間だったが、家族に陥れられるかたちで命を落とした時の遺恨によって蛇神「谷跨斑」と融合し、現在の姿となった。しかし、すでに復讐すべき相手がいないこともあって現世に対する恨みはなく、日向や薫との日常を楽しんでいる。また、人間であった頃の名前を忘れていたため、それを知った薫から「ダラさん」のあだ名で呼ばれるようになる。
三十木谷 日向 (みそぎや ひなた)
とある片田舎の中学校に通う2年生の女子。スカートだと落ち着かないからとズボンを履き、髪を乾かすのに時間がかからないからとショートカットの髪型で、ボーイッシュな風貌をしている。明るい性格で、その容姿も相まってやんちゃに見られがちだが、三十木谷日向自身はインドア派で、囲碁や将棋を趣味にしている。土砂崩れで崩壊した祠を見に行った際に、半人半蛇の異形のダラさんと遭遇するものの、まったく怖がることなく、むしろ懐いてしまう。霊感が非常に強く、ふつうの人間では触ることすらできないダラさんの体に触れられるうえに、油性ペンで落書きすることもできる。また、学校では男女問わずに人気が高いが、ダラさんや弟の三十木谷薫と遊ぶことを優先しがちで、少々ブラコン気味。
書誌情報
令和のダラさん 4巻 KADOKAWA〈MFC〉
第1巻
(2022-11-22発行、 978-4046818515)
第2巻
(2023-05-23発行、 978-4046824141)
第3巻
(2023-11-21発行、 978-4046831934)
第4巻
(2024-06-21発行、 978-4046837523)