8年前の失踪事件に挑む姉妹ミステリー
姉の奈々(30歳)は、デビュー作がベストセラーとなり映画化もされた人気ミステリー作家。しかし、一人ではコーヒーもいれられないほど家事に疎い。そんな姉が大好きで、何かと身の回りの世話をしたがるのが妹で大学生の流々(20歳)。二人の叔父である和巳が心臓発作で亡くなり、流々は遺品整理のために、叔父が生前住んでいた長野県の山荘、八木沼荘を訪れる。叔母のアヴィーは8年前に失踪してしまっていたが、彼女に関するあることを思い出した流々は、アヴィーの行方を探ろうとする。本作の大きな特徴は、流々と奈々が別々の場所にいること。流々が得た山荘周辺の情報を、東京の自宅にいる奈々がスマホを通して知り推理する、いわゆる「安楽椅子探偵」というジャンルの推理ドラマとなっている。
失踪事件の発端
8年前のある秋の日、中1だった流々と姉の奈々、当時の奈々の恋人、野上透は八木沼荘を訪れた。そして、叔父夫婦の和巳とアヴィー、和巳の飲み友達の倉浦千里、多摩川平一平を加えた計七人で飲み会が開催される。流々とアヴィーが会ったのはこの日だけだが、流々は優しいアヴィーに好感を抱く。しかし、翌朝にはアヴィーは失踪しており、それを知った流々は、高熱を出して倒れてしまう。目を覚ました後も、流々は数か月間記憶が曖昧だったが、8年ぶりに八木沼荘を訪れ、思い出したことがあった。流々はアヴィーが失踪した夜、眠れなくて部屋を抜け出して湖に行ったのだが、そこでアヴィーは男と密会していたのだ。流々は男の正体を探り、アヴィーの行方を捜査しようとした矢先、八木沼荘は何者かに放火され、全焼してしまった。
様々な事実が絡み合い謎が深まる
アヴィーが会っていた男は誰なのか。8年前の夜、八木沼荘にいた男性は、和巳、野上、多摩川平、飲み会に間に合わずに翌日の昼に合流した来鯨篤の四人だが、それぞれにアリバイがあった。八木沼荘が全焼した後、流々は隣人の三浦家に泊めてもらうことになり、10歳の男の子、三浦そらと交流を持つようになる。奈々の大ファンであるそらは、アヴィーの失踪事件に興味を持ち、流々につきまとう。その後、アヴィーの妹の存在、緑子が何か隠しているのではという疑惑、多摩川平が襲われる事件など、様々な謎が絡み合い、アヴィーの失踪事件は複雑な様相を見せる。
登場人物・キャラクター
佐々々 奈々 (さささ なな)
30歳のミステリー作家の女性。黒髪のボブカットが特徴。同居している妹の流々なしには生きられないほどの「生活音痴」で、一人ではコーヒーもいれられない。大学在学中に書いたミステリーを、知り合いの編集者に持っていったところ、それがデビュー作となる。デビュー作『亡霊もまた血を流す』は、ベストセラーとなり映画化もされた。両親が交通事故で亡くなった後は、しばらく叔父の和巳が後見人になっていた。シャワー、食事、睡眠の時間は決まっていて、そのルーティンを崩すことはない。
佐々々 流々 (さささ るる)
都内の大学に通う20歳の女性。茶髪のロングヘアーが特徴。姉であり、人気ミステリー作家でもある奈々と同居している。姉のことが大好きなシスコン。両親が交通事故で亡くなった後は、しばらく叔父の和巳が後見人になっていた。その和巳が急逝したことから、遺品整理のために彼が住んでいた長野県の山奥にある八木沼荘を訪れる。そこで忘れていたある出来事を思い出し、8年前に失踪した叔母のアヴィーの行方を探ろうとする。







