男たちの楽園に現れた女神
定年退職した平均年齢70歳の男性たちは、人里離れた山奥で気楽な老後人生を送っていた。そんなある日、四人の男たちの前に謎めいた美女が現れたことから物語は始まる。「教授」「ドク」「キザ」「大将」と呼ばれる、一癖も二癖もある個性的な男性たちが、彼女との触れ合いをとおして、青春時代の恋心を取り戻す姿が描かれている。彼女の素性と、人と距離を置きたがる教授とのミステリアスな関係性や、徐々に明らかとなる彼女の目的など、人生の意味を考えさせられるヒューマンドラマとなっている。
ミステリアスな女神
男性の楽園に現れた女神は、若い頃にドラマに出演したこともある元女優だった。「お嬢」という愛称で呼ばれることになった彼女は、男性たちの求める魅力的な女性を演じ、自らが語る素性も相手によってまったく違うものだった。そんなお嬢は、唯一「教授」と呼ばれる男性に特別な感情を抱いている様子。教授はドクの知人で、山奥に移り住んでからも家にこもりがちながら、何かと物事や人間を観察する癖を持つ、知性あふれる佇まいの男性。お嬢はそんな教授に対してとある目的を隠しながら、男たちと共にスローライフを楽しんでいく。
女神がもたらす穏やかな変化
本作は、定年後の田舎暮らしを満喫していた四人の男たちが一人の女性を巡ってくり広げる大人の恋愛と、豊かな老後生活を描いている。男四人だけで過ごしていた山奥に、お嬢と呼ばれる美女が移り住んできたことで、彼らは青春時代が蘇ったかのように色めき立つ。中でも幼なじみのキザと大将は、昔から女性を巡って競い合う関係で、まるで学生時代に戻ったようにお嬢のご機嫌取りを始める。自由人のドクは彼らの様子を楽しげに見守りながらも、お嬢の抱える秘密を見抜き、彼女との仲を深めていく。教授もまた、一歩引いた立場からお嬢と朝の散歩を日課とし、かけがえのない時間を重ねることとなる。
登場人物・キャラクター
教授
物静かな老齢の男性。とある山奥で暮らす四人の男性の一人で、1年前にこの土地へ移住した。物静かな性格で、人や自然などあらゆるものを観察することを好んでいる。あまり人の輪に溶け込もうとしないが、これは観察のために一歩距離を置いたところに身を引いているためで、特に人と接することを避けているわけではなく、食事会や農作業の手伝いなど、声をかけられば応じる社交性は持ち合わせている。趣味は古本を読むことで、ジャンルを問わずあらゆるものを読む乱読家である。好奇心や知識欲が非常に強く、青春時代に見た映画の台詞(せりふ)を諳(そら)んじたり、森に住む動植物の名前を的確に言い当てたりと、その知識は多方面に及ぶ。その立ち居振る舞いや博識さから「教授」というあだ名で呼ばれている。この土地へ来るまでは工事現場をはじめとした日雇いの仕事に就いていたと語っており、移住した際にはカバン一つの身軽さだった。
お嬢
多くの謎を秘めた老齢の美女。とある山奥で暮らしていた四人のもとに、入居者募集告知を見たといって現れると、数日も経たないうちに住み着くようになった。20代の頃に昼ドラの女優として活躍していた元有名人だが、その後の経歴については謎が多い。キザには、件(くだん)の昼ドラで女優を務めたあとにニューヨークのブロードウェイにあこがれ、単身渡米したが道半ばで挫折し、これまで独身だったと語る一方で、大将には昼ドラで共演した男性と結婚したものの死別したと語るなど、相手に応じて発言がコロコロ変わる。また、何らかの目的があってこの土地に訪れた素振りも見せており、特に教授について観察している様子が窺(うかが)える。
書誌情報
僕らが恋をしたのは 4巻 講談社〈KC KISS〉
第1巻
(2021-12-13発行、 978-4065259665)
第2巻
(2022-05-13発行、 978-4065278529)
第3巻
(2022-11-11発行、 978-4065295465)
第4巻
(2023-05-12発行、 978-4065314449)