あらすじ
破壊神、よみがえる
剣と魔法が存在する太古の世界で「破壊神」と呼ばれた女神は、破壊魔法を使ってありとあらゆるものを破壊し、いずれは世界のすべてを破壊して滅亡に導こうと目論んでいた。そんな破壊神の討伐に挑んだ「英雄」との死闘の末に相討ちとなり、二人は同時に命を落とす。だが、破壊神は肉体と魂を切り離す魔法を最後に使い、英雄もその魔法に巻き込まれ、二人は大きく時を超える。時は現代、日本のある病院で目覚めた破壊神は、華奢(きゃしゃ)な少女の姿になっていた。しかも、目の前に現れた少年は双子の兄と名乗り、彼の正体は相討ちになって死んだはずの英雄だった。家族は交通事故に遭って即死し、魂の抜け殻状態となった双子の兄妹、竹田優雨香と竹田快晴の肉体には、それぞれ破壊神と英雄の魂が入って復活し、彼女たちの祖母であるばあちゃんとの三人暮らしが始まる。現代に転生した破壊神は「ユウカ」として、英雄は「カイセイ」として生きることになり、宿敵であったはずの二人は双子の兄妹関係となり、平和な現代日本で不思議な毎日が始まった。ユウカはカイセイの提案・説得により、現代で厄介事を起こさないためにも人前で魔法を使ったり、人間や物をむやみに破壊することを禁じられる。さらにユウカは、生前の優雨香の生き方を真似(まね)ることで肉体になじんで、破壊神としての強力な魔力を取り戻すことを目指すようになり、女子高校生として生活することになる。退院からしばらく経った頃、優雨香が通っていた高校に登校したユウカは、事故で記憶が曖昧になったと説明し、優雨香のクラスメイトのニブやリサドンとの友人関係も元どおりとなる。相変わらず忠告を無視するユウカにあきれながらも、体育の時間を警戒するカイセイは、授業中に魔法を使って目立たないように念を押すが、重力破壊を使ったユウカは100メートル走の新記録を出してしまう。カイセイの強い視線を感じて慌てて記憶破壊を使ったものの、ユウカはクラスメイトとの交流を深めるのも悪くないと感じるようになる。その日の下校中、制限破壊の魔法で肉体の限界を超えた身体能力を発揮したユウカは、その反動で歩けなくなり、カイセイに背負われながら帰宅する。しかしその道中で、以前叩(たた)きのめした不良グループがユウカとカイセイに絡んできたことでピンチに陥り、カイセイは彼女を背負ったままで路地裏に逃げ込む。
破壊神、勉強する
双子の兄妹「カイセイ」と「ユウカ」として現代によみがえった「英雄」と「破壊神」の二人は、破壊神の強大な魔力を取り戻すため、高校生としての日々を送ることになる。そんなある日、ユウカは新聞部員の新野エーコに火災現場で破壊魔法を使っている決定的瞬間を写真に撮られてしまう。人の記憶を消すことはできても写真に写った証拠は消すことができず、ユウカは大ピンチに陥る。このままエーコが写真を公表してしまえば身の破滅につながるとカイセイに忠告されたユウカは、彼と共にエーコを追って写真の破壊に乗り出す。そしてトラブルはあったものの、二人はエーコの記憶を破壊したうえで、カメラの写真データを破壊することに成功し、無事に平穏な生活を取り戻すのだった。そんな中、お互いの成績が悪く、特にテストを軽視するユウカは留年の危機に陥る。次のテストに向けて勉強に励んでいた二人は、ユウカと同じクラスのリサドンに勉強を教わることになる。リサドンはギャルっぽい見た目に反して意外と勉強ができるタイプで、カイセイが苦手とする数学も得意としていた。それでも勉強に苦労するユウカは、数学の問題を魔法の「パラダイム破壊」によって解こうとしたことで、ノートに謎の数式が描かれる。それを面白がったリサドンはこの数式をインターネットで公開するが、この数式はひょんなことからある問題に苦悩していた増間の目に留まり、思わぬ結果をもたらす。そんなことも知らぬまま、破壊魔法だけではテストの成績は上がらないユウカは、追試を受けることでなんとか留年を免れる。そんなある日、ユウカはリサドン、ニブに誘われて海水浴に遊びに行くことになる。リサドンたちの希望でカイセイも加わり、海に向かった四人はさっそく水着に着替えて泳ぐことになる。お互いに対抗心を燃やしたユウカとカイセイは、遠泳対決をすることになるが、そんな二人をサメが狙っていた。サメに気づいたユウカは生体破壊の魔法で対抗するが、なぜかサメには通用せずにピンチに陥る。
破壊神、新聞部に行く
現代に復活した元・破壊神のユウカと元・英雄のカイセイは、特ダネ写真を求める新聞部に決定的瞬間を撮られてしまったり、海でサメに襲われたりと、トラブルに見舞われながらも楽しい日々を送っていた。そんな二人は、最近の運動不足解消のために学校のテニスコートを借り、アイス4個を賭けてテニス対決を開始する。カイセイは魔法使用を含めなんでもありのルールを提案し、どんな力も増幅させることができる自らの「増幅魔法」を解放することで、スポーツの域を超越した強力な技を次々と繰り出し、ユウカも自らの力を応用して対抗する。人間の能力を超越した破壊魔法と増幅魔法の激しいバトルが展開され、その勝敗の行方(ゆくえ)はテニスコートやテニスラケットを巻き込み、予想外の結果となる。後日、学校で竹田優雨香が所属していた漫画研究部の活動に復帰したユウカは、個性的な部員たちに漫画の描き方を教わることになる。ユウカは自らが得意とする破壊とは正反対の創造にあたる漫画制作の楽しさに没頭し、見よう見まねで自分だけの作品作りに勤(いそし)しむ。愛猫のデストロイヤーとの日常をもとに仕上げたほのぼのネコ漫画を部活で提出したユウカだったが、部長の甘地ケンタロウから、作風が以前と変わったもののなかなかいいと高評価を得る。さらにはケンタロウの提案もあり、ユウカの描いた作品が新聞部からも注目されるようになり、学校の壁新聞に掲載される漫画として大抜擢(ばってき)されることになる。さっそく新聞部に向かったユウカは、部長の長谷フミハルや部員の新野エーコと対面し、ユウカの猫漫画を気に入った彼らは今度の新聞に掲載したいという。この漫画を見ていると不思議と温かい気持ちになると褒められたユウカは、金にもならず腹が満たされるわけでもないのに、作品を褒められたことに不思議な喜びを感じる。しかし、校則の関係で新聞への掲載の報酬を謝礼金で支払うわけにもいかず、フミハルはある秘策で解決しようとする。
破壊神、風紀委員に目を付けられる
漫画研究部の作品作りに勤しんだり、自分の漫画が学校の壁新聞に掲載されたり、ゲームや買い食いをしたりと、ふつうの女子高校生らしい日常を楽しんでいたユウカは、時おり破壊神としての目的を忘れかけるほどに平和な現代になじんでいた。何かと口うるさい兄のカイセイの小言も気にすることもなく、現代女子高校生ライフを満喫するユウカだったが、遅刻や問題行動を繰り返すうちに、厳格な風紀委員の京口モモコに目を付けられてしまう。平和な日常生活が一変するかと思われる中、それでも破壊魔法で人々の記憶を破壊することで毎日を乗り切っていたユウカだったが、何かと非常識なモモコはある日、不良グループに絡まれて破壊魔法で敵の武器を破壊するユウカの姿を目の当たりにする。まるで魔法少女のような攻撃を見せたユウカにあこがれを抱いた直後、記憶破壊を喰らったモモコは、次の瞬間にはユウカへのある感情だけが残ってしまう。これをきっかけにモモコはユウカに対して恋愛に近い感情を抱くようになり、次の日に彼女を手紙で呼び出す。厄介者のモモコを警戒するユウカだったが、お互いへの感情が食い違っている二人の会話はまったくかみ合わず、ユウカは自分の正体に気づいたモモコに命を狙われていると誤解してしまう。なんとかその場から逃げ出そうとするユウカだったが、離れた途端に窓が爆発したり、モモコの発言をさらに誤解して彼女を猟奇殺人者とカンちがいするのだった。今までは身に降りかかるあらゆる難題も、破壊魔法で切り抜けてきたユウカはある日、漫画投稿で新人賞を取った砥堀サキに小さな嫉妬心を覚える。そんなもやもやした感情を心の奥に抱えたまま帰宅したユウカは、愛猫のデストロイヤーが家から脱走するトラブルに見舞われる。カイセイと手分けして周囲を探し回るも、デストロイヤーを見つけることはできなかった。破壊魔法で自分の分身を作り出しても見つからず、夜になっても為(な)す術がないユウカは、新聞部が作ってくれたビラを配っているリサドンに遭遇。ビラを見た通りすがりのヤキソバパン男が、デストロイヤーを保護してくれていたため、ユウカは無事に再会を果たす。そんなユウカを見て、彼女が以前と別人のようになったことに疑問を感じていた甘地ケンタロウは、彼女が描いた猫漫画への思いについてカイセイに語り出す。
登場人物・キャラクター
ユウカ
現代日本の女子高校生。古代で死にかけた破壊神が転生した姿。復活のために現代日本へと転生した破壊神が、交通事故で魂の抜け殻となった竹田優雨香の肉体に憑依(ひょうい)する形で魂が宿り、そのまま実質の死を迎えた彼女の肉体に宿ったことで復活。転生後は外側にはねた濃い茶髪のロングヘアで、1本のアホ毛が生えている。竹田快晴の肉体に転生していた英雄と再会を果たし、自分たちに起こった出来事や状況を教えられる。これ以来、自らは「ユウカ」として、英雄は「カイセイ」として生きることになり、彼の提案を受け、復活に向けて大幅に弱体化した力を回復させるため、生前の優雨香の生き方を真似ながら、カイセイ、ばあちゃんの三人で暮らす女子高校生として生活するようになる。魔力を復活させた暁には、英雄を倒して再び世界を破壊することを目標としているが、現代での生活をふつうに楽しんでおり、たびたび本来の目的を忘れかけている。退院後しばらくしたあとに、カイセイと共に優雨香が通っていた高校に復学し、彼女の友人であったリサドン、ニブと再会。この二人をはじめ生徒たちからは、事故で記憶喪失したために以前とは別人のようになったと認識されている。学校以外では基本的には家でダラダラしており、飼い猫のデストロイヤーと戯れたり、唯一の担当家事である買い出しに行ったりしている。意外にも芸術に関する美的センスと観察眼を持ち、ピカソの絵に対して鋭い観察力を見せたり、漫画研究部の部員が描いた漫画作品にも的確な評価を下している。さらには歌も得意で、カイセイからは美声で妙に上手(じょうず)と評されている。動物好きだった優雨香の影響により、生体破壊の魔法は使用できなくなっており、一度は無理やり使おうとしたものの、彼女の記憶を思い出すうちに考えを改める。基本的に好き嫌いはなくばあちゃんの料理をおいしく食べているが、転生後に初めて口にしたのが焼きそばパンだったため、焼きそばパンが一番の好物となっている。ふと立ち寄ったラーメン屋のラーメンの味に感動するも、食レポは下手(へた)。テレビゲームの存在を知ってからは、部屋でゲームをしながら菓子を食べることにはまっている。他人の恋愛フラグには敏感なところがあり、男女の営みに興味を持ち、両思いだと察した男女を見つけると魔法を駆使してでもくっつけようとすることがある。好きなものは冷蔵庫、ゲーム、漫画。
カイセイ
現代日本の高校2年生の男子。その正体は古代で死にかけた英雄が転生した姿。破壊神よりいち早く先に魂が現代に飛び、交通事故で脳死状態だった竹田快晴の肉体に宿る形で覚醒・復活する。無造作にはねた明るい茶髪の短髪で、生前の快晴よりも髪型が変わってワイルドな印象になっている。破壊神よりも早く転生できたため、彼女より状況を早くから把握しており、ユウカとして目覚めた彼女に自分たちに起こったことを説明した。これ以来、表向きはユウカの双子の兄の高校生として、現代に生きるようになる。ユウカには生前の竹田優雨香と同じような生活をしていれば、体に力がなじんで魔力を取り戻せると提案しつつも、彼女が再び破壊神として復活した際には命懸けで止めることを目的としている。これには人々に破壊神として認知されていないユウカを殺すと自分が犯罪者になってしまうという事情や、人間の生活になじんでトラブルを防ぎたいという目論見が絡んでいる。しかし、人前で破壊魔法を使って目立ったり、現代生活をふつうに楽しんで目的を忘れかけている彼女には苦労させられることが多い。学者を目指す優等生だった快晴の知識の一部を引き継いでいるおかげで成績は悪くないものの、数学のように知識だけでは解けない教科は苦手。ユウカとカラオケに行ったことがあるが、彼女と比べてやや音痴。元・英雄というだけあって正義感は強い方で常識もユウカよりあるが、現代は殺しもケンカもダメだと認識しつつも、一方的に叩きのめすのはOKだとして不良グループを容赦せずに暴行を加えた。基本的には非常識なユウカの行動へのツッコミ役となっているが、強盗事件が発生している銀行で口座を開こうとするなど、まれにボケ役に回ることもある。ユウカとはスポーツやゲームに食べ物を賭けて対戦することがあり、おもしろそうだからという理由で魔法ありのルールに変えて人間離れした戦いを繰り広げることもある。ヒマさえあれば筋トレをしているため、やや筋肉質な体型をしている。好物は調味料全般とお茶漬け。インスタントラーメンを含めたラーメンも気に入っているが、ユウカと同様に食レポは下手。
破壊神 (はかいしん)
ありとあらゆるものを破壊することが可能な「破壊魔法」を使う邪神。頭に2本のツノを生やし、獣人のような手足を持つロングヘアの美女の姿をしている。一人称は「ワシ」で、傍若無人で礼儀知らずなところがある。強い破壊衝動を抱えており、豪快で傲慢な一面を持つ。服の洗濯と水浴びを兼ねて川を泳いだりと、その生態は獣のように野生的でズボラ。古代では世界を破壊しようと目論んでいたが、「英雄」と呼ばれている青年と死闘を繰り広げ、予想外の彼の能力に翻弄されたのち、相討ちとなる。死ぬ直前に体と魂のつながりを破壊することで完全消滅から逃れるが、復活までには膨大な時間が必要となった。眠りについて時代を超えたのちに現代日本へと転生するが、その転生先は交通事故によって脳死し魂の抜け殻となっていた竹田優雨香の肉体だった。そのまま実質の死を迎えた優雨香の肉体に宿ったことで、ユウカとして現代に復活を遂げ、魔力が戻るまではカイセイの双子の妹として生きることになる。英雄よりも非常識で天然な一面があり、何事も破壊で解決しようとしている。勉強は苦手で、ユウカとしての生活でも勉強は苦労している。人間のことも見下しているため、なぜ人が群れたり友人を作ったりするのか理解できず、疑問を抱いている。
英雄 (えいゆう)
さまざまなものを増幅・増殖することが可能な「増幅魔法」を使う青年。左目の周囲に傷痕があり、褐色肌で長髪を首後ろで縛っている。世界を破壊していた破壊神との戦いに挑み、彼女の予想外の力に翻弄されたのち、破壊神が死ぬ直前に放った結合破壊の余波を受けて魂が分離され、現代まで眠りにつくことになった。現代では、竹田優雨香と同様に脳死状態だった竹田快晴の肉体に宿る形で覚醒・復活し、カイセイとしてユウカと共に現代を生きることになる。破壊神よりも早くから目覚めていたため、いち早く状況を把握して、快晴が知識豊富な少年だったこともあって現代にも順調に順応できている。破壊神よりは常識人で正義感も強いが、やや天然で腹黒い一面を持つ。増幅魔法を使うと、ただの安物の剣を神殺しの武器に変えることができるほどに強力だが、破壊魔法ほどの応用は難しい。目立たないようにしたいという思いもあり、転生後は筋力を増幅して高い身体能力を発揮したり、買った野菜を剣に変えるといった単純な使い方をしている。増幅魔法を使う際には増幅の対象を選ぶための選択肢もあるが、そこを逆手に取られることもある。趣味は体を鍛えること。過去のトラウマからスライムを苦手としている。
竹田 優雨香 (たけだ ゆうか)
高校2年生の女子。破壊神の転生先の器として選ばれた。濃い茶髪のロングヘアを首後ろに一つにまとめている。交通事故により両親は即死し、双子の兄の竹田快晴と共に魂が抜けて脳死状態になっていた。肉体は破壊神の転生により復活し、彼女は新たな姿であるユウカとして生きることになる。生前は努力家ながら少々ドジっ子で、動物から妙に好かれていた。趣味で漫画を描いており、部屋の机の上には描きかけの漫画が残されていた。幼少期は自分の名前に「雨」が入っているのが嫌で、快晴のような明るい名前の方がいいと思っていたが、晴れも雨も好きな母親からは晴れと雨の両方が組み合わされば最強の兄妹になれるという願いが込められている。これらの記憶はさまざまなきっかけによってユウカが思い出すことがあり、昔の体験や記憶も含めて彼女に少しずつ引き継がれている。貧乳なことにひそかに悩んでいた。実は快晴を慕うブラコンで、勉強はあまり得意ではなかったが、彼と同じ学校に通うために受験勉強に励んでいた。また、友情を超えた男同士の関係を描いた漫画を描いていた。動物好きで動物に懐かれやすい体質は例外なくユウカに引き継がれ、彼女がサメにすら懐かれる体質になると共に、生体破壊の魔法を使えない原因にもなっている。
竹田 快晴 (たけだ かいせい)
高校2年生の男子。英雄の転生先の器として選ばれた。明るい茶髪を短髪にしている。交通事故により両親は即死し、双子の妹の竹田優雨香と共に魂が抜けて脳死状態になっていた。肉体は英雄の転生により復活し、彼は新たな姿であるカイセイとして生きることになる。生前はおとなしく物静かな性格で、読書をしていることが多かった。学者を目指していたため、部屋には大量の本が置いてある。このためかなりの博識で、その知識や記憶は少しずつカイセイが思い出す形で引き継がれている。部屋にはわずかながらテレビゲームが置いてあるが、たまに勉強の合間に楽しむ程度だった。特に月のガピピーが登場するゲームがお気に入り。
ばあちゃん
竹田快晴と竹田優雨香の父方の祖母。小柄な体型で髪を一つのお団子にまとめており、おっとりとした家族思いで優しい性格をしている。交通事故により、息子夫婦と死別し、孫の快晴と優雨香が脳死状態になるという不幸に見舞われていたが、二人が目覚めた時は感涙していた。ただし、本来の優雨香と快晴の魂が消えてユウカとカイセイになっていることは知らず、二人は事故で記憶をなくしたために別人のようになったと認識している。二人の退院後はユウカ、カイセイの三人で平和に暮らしている。「JK」や「TKG」などの若者言葉も使いこなす、ノリのいいおばあさん。ユウカからは「婆」と呼ばれている。生き残った二人の孫を思う愛情は強く、ユウカたちから慕われている。料理も得意で、その味はユウカとカイセイからも絶賛されている。好物はチーズおかきで、苦手なものはきなこ。
ニブ
高校2年生の女子。竹田優雨香の親友でクラスメイト。ウェーブのかかった緑色のメッシュ入りのボブヘアで、眼鏡をかけている。一人称は「ボク」で、語尾に「~っす」を付けて話す。また、人の名前を「~氏」を付けて呼ぶ癖がある。本名は「仁豊野ヒメコ」。優雨香と同じく漫画研究部に所属しており、長編ファンタジー漫画を描いているが、4コマ漫画のような短い話を描くのは苦手。褐色肌の理系独身エルフの女性が、ゴーレムたちとスローライフを送る異世界ファンタジー漫画を執筆中。人が変わってしまったユウカに対しては、事故で記憶をなくしたと認識しているため、親しく接しながら改めて友人となった。海水浴の時にサメに襲われていたところをカイセイに助けられて以来、彼が気になっている。自分の容姿に自信がないため告白できずにいたが、リサドンに協力しもらったり、ユウカがおせっかいで魔法を使うことでカイセイといい雰囲気となる。好物は抹茶フラペチーノ。
リサドン
高校2年生の女子。竹田優雨香の親友でクラスメイト。三白眼で茶髪をサイドテールにまとめている。見た目は派手なギャルながら成績はよく、数学を得意としている。成績に悩んでいるユウカとカイセイに勉強を教えることもある。かっこいいからという理由で、大学の医学部を目指している。人が変わってしまったユウカに対しては、事故で記憶をなくしたと認識しているため、親しく接しながら改めて友人となった。本名は「ツルイリサ」。好物はたぬきうどん。
デストロイヤー
竹田家で飼われている猫。ユウカが「デストロイヤー」と名づけた。もとは捨て猫だったが、ユウカに最初から懐き、そのまま彼女に拾われて飼われることになった。カイセイにも懐いており、彼らに抱っこされたり頭に乗ったりしている。食事はユウカが乳糖を破壊して作った、「破壊神特製牛乳」を中心に与えられている。当初はユウカが世話をしていたが、今では世話の大半をカイセイが担っている。
新野 エーコ (にいの えーこ)
女子高校生。新聞部に所属している。黒のロングヘアを二つのおさげにまとめ、新聞部の腕章を付けてスクープを探し回っている。変な敬語を使う。煙幕をはじめとした七つ道具を所有しており、スクープのためにこれら道具のを駆使する。以前から部長の長谷フミハルに思いを寄せている。フミハルからは、まじめで能力は高いが校内新聞に掲載する漫画に砥堀サキのグロ漫画を勧めるなど、センスが独特と評されている。スクープハンターとして校内でも有名で、カイセイからも警戒されている。好物は立ち食い蕎麦(そば)。
長谷 フミハル (はせ ふみはる)
男子高校生。新聞部の部長を務めている。黒の短髪を真ん中分けにしており、眼鏡をかけたイケメン。頰を引っ張られたりコーヒーを吹きかけられても、眼鏡を上げるだけで平然としているクールガイ。「ジャーナリズム!」が口癖でつねにスクープを求めており、部員の新野エーコにもスクープを命じている。校内で発行している校内新聞に掲載する漫画にユウカの猫漫画を抜擢し、ほのぼのとした温かい絵柄の彼女の漫画センスを気に入っている。生真面目そうに見えるが、意外にも校則のグレーゾーンを突き、漫画の報酬として金銭を渡すのがダメなためユウカに商品券を渡したりしている。パソコンの扱いが得意で、自宅の自室には大量のモニターが置かれている。のちにデストロイヤーが脱走した事件では、迷い猫のビラを作ることで捜索に協力した。好物はゼリー飲料とサラダチキン。
増間 (ますま)
京戸大学の数学の教授を務める中年男性。黒髪短髪でポロシャツを着用しており、眼鏡をかけている。数学の未解決問題「OPQ予想」の証明をしようとしているが、10年以上経ってもなかなか答えに行きつかず、自分は数学の神に愛されていないと苦悩を抱えている。自分の研究室に籠り、研究室のメンバーの名前すら覚えられなくなっている。そんな中、研究室のメンバーである藤井がユウカの書いた図式を見つけ、それをもとにOPQ予想の証明を完成させた。好物は板チョコ。
藤井 (ふじい)
京戸大学に通う修士1年の女性。増間の増間研究室に所属している。ボブヘアで眼鏡をかけている。恩師の増間を尊敬している。「OPQ予想」の証明に苦悩する増間のことを心配していたが、インターネットで公開されていたユウカの一見支離滅裂な図式を先輩の直川に渡され、何か意味があるのではと推測してダメ元で増間に提出する。当初は相手にされていなかったが、数日後に増間が渡された図式をもとにOPQ予想の証明を完成させたことに感激し、あの図式は神様が書いたものだと思っている。好物はビール。
甘地 ケンタロウ (あまじ けんたろう)
男子高校生。漫画研究部の部長を務めている。目付きや言葉遣いは悪いが、趣味全開のかわいらしい絵柄の萌(も)え漫画で、美少女キャラが登場する日常系4コマ漫画を中心に描いている。絵は丁寧でかわいいが、ユウカからはオチが弱いと評されている。3年生で大学受験を控えているが、現実逃避で漫画を描いていることがある。新聞部が発行する校内新聞の4コマ漫画を描いているものの、受験勉強でいよいよ忙しくなって漫画に費やす時間がないため、新聞向け漫画の制作は断っている。後輩の砥堀サキの漫画は一般受けしないと思いつつも、ユウカの影響で作風に温かみが増したサキの漫画を高く評価しており、少しずつサキのことが気になり始めている。それと同時に、単に記憶をなくしただけとは思えないほどに人柄や漫画の作風が変わったユウカのことを不思議に思っている。好きなものはエナジードリンク。
砥堀 サキ (とほり さき)
女子高校生。漫画研究部に所属している。ロングヘアで目元が長い前髪で隠れているが、その下にある素顔はかなりの美少女。部長の甘地ケンタロウとは逆に、グロテスクな漫画を好む。好きなジャンルはゾンビや臓物といったバイオレンスやグロテスクな描写を含む漫画で、人体実験でサイボーグ化したシリアルキラー死刑囚たちが殺し合いをする殺伐とした漫画を執筆中。これらのセンスは部員たちにいまいち受けていないが、新聞部員の新野エーコには気に入られ、一時期は校内新聞の4コマ漫画を担当していたことがある。ケンタロウには以前から思いを寄せており、部活中によく彼のことを眺めている。のちに、ユウカのほのぼの系猫漫画の影響を受けて若干作風に温かみが加わり、投稿漫画が新人賞を獲得した。好きなものはセミの幼虫の素揚げ。
月のガピピー (つきのがぴぴー)
Sontendo製のゲーム機「Playitch」オリジナルのゲームに登場するキャラクター。四角い体に手足が生えた謎の生物。月に住んでおり、さまざまな場所を冒険している。月のガピピーが主役の、ゲームソフト「月のガピピー スーパーデトックス」は、お手軽なミニゲームも収録されており、竹田快晴もハマっていた。
京口 モモコ (きょうぐち ももこ)
高校2年生の女子。カイセイとは同じクラスメイト。ロングヘアをポニーテールにまとめ、口元にホクロがある。非常に厳格な性格で、風紀委員長を務めている。生徒の風紀を取り締まるために竹刀を持ち歩いている。成績優秀な凛(りん)とした美人で、ファンクラブも結成されている。涼しげな目とミステリアスな雰囲気を漂わせており、パーフェクト大和撫子(やまとなでしこ)と評される。マンションで家族と共に暮らしており、弟がいる。魔法少女アニメ「魔法少女 エレキテ・くりん」の大ファンで、正義感の強いヒロイン「富蘭九凛」に昔からあこがれて神とまで呼んでおり、彼女のようになりたいと願っている。遅刻や目立つ行動の多いユウカに目を付け、彼女を追ううちに破壊魔法を使っている瞬間を目にしているが、そのたびに彼女に記憶を消されている。しかしある日、ユウカが不良グループ相手に武器を破壊しているのを目にして、彼女に強いあこがれや尊敬を抱いた直後に記憶を破壊されたため、強いあこがれの感情だけが残されてしまう。これ以来、ユウカに恋愛感情に近いあこがれを抱いて積極的に行動するようになり、彼女からは猟奇殺人者だと誤解されている。好物はチョコミントアイス。
ヤキソバパン男 (やきそばぱんおとこ)
気弱な性格の男子高校生。不良たちからカツアゲされていたところを、転生直後に病院から脱走していたユウカに助けられる。この時にユウカが腹を空かせていたために、カバンに入れていた焼きそばパンを渡した。これをきっかけに、ユウカの一番の好物は焼きそばパンとなった。のちに、脱走した猫のデストロイヤーを保護したことでユウカと再会した。
福崎 コウタ (ふくさき こうた)
高校2年生の男子。カイセイのクラスメイト。制服の下にパーカーを着用している。カイセイのとなりの席で、恋愛がしたい、彼女が欲しいなどとつぶやいている。同じクラスの京口モモコには強いあこがれを抱いているが、彼女のことは高嶺の花のように思っており、ファンクラブに怒られるからと近づけずにいる。かなりの噂(うわさ)好きで、カイセイからも警戒されている。
集団・組織
銀行強盗 (ぎんこうごうとう)
謎の銀行強盗集団。口座開設のために銀行に来ていたカイセイとユウカがたまたま遭遇した五人組で、一見ふつうの銀行強盗グループに見えるが、なぜか全員が日本刀で武装している。リーダーは忍者で、高度な技術で作り出された刀は退魔の力を宿しているため、破壊魔法をも弾(はじ)ける。魔法を目にしても冷静に対応できるなど、判断力・戦闘力共に優れている。最終的には容赦なく攻撃を仕掛けるユウカとリーダーの一騎打ちとなり、彼女がいくつもの破壊魔法を重ねがけしたことで撃退される。
その他キーワード
破壊魔法 (はかいまほう)
破壊神とユウカが使用する魔法。名前どおりさまざまなものを破壊できる。使用には体力を消耗するため、空腹時は使えないか、大幅に弱体化する。英雄の持つ「増幅魔法」と比べてその応用範囲は非常に幅広く、鉄やプラスチックをはじめとする物質はもちろん、重力・次元・記憶・制限・データなど物質以外の形のない対象や、認識さえできれば概念的な存在まで破壊が可能。物質以外であれば、応用次第で破壊のみならず復元も可能になる。具体的には敵の攻撃を止めたり、高所から無事に着地できる「速度破壊」、自分の肉体の制限を破壊して身体能力を上げる「制限破壊」、近くにいる人間の記憶を消去する「記憶破壊」、人間以外の生物に変身する「DNA破壊」など、その種類は多数存在する。人を含む生物の体を壊せる「生体破壊」もあるが、ユウカは動物好きだった竹田優雨香の影響により、動物相手では生体破壊が使用不可能になっている。起きている時に意識して使った破壊魔法はもちろん、寝ぼけて使ってしまった場合でも作用することがあり、その場合はユウカ本人の意思とは関係なしに予想を上回る効果を周囲にもたらすことがある。
クレジット
- 原作
-
へじていと
書誌情報
全部ぶっ壊す 6巻 集英社〈ジャンプコミックス〉
第3巻
(2022-08-04発行、 978-4088832098)
第4巻
(2022-10-04発行、 978-4088832722)
第5巻
(2023-01-04発行、 978-4088833729)
第6巻
(2023-02-03発行、 978-4088833873)