あらすじ
少女 宮薙流々
愛倉市で暮らす女子中学生の宮薙流々は、ある日、砂浜で潮干狩りをしていた際に謎の宝石を拾う。貴重なお宝を見つけたと歓喜する流々だったが、うっかり宝石を割ってしまったところ、流々は破壊神・マグ=メヌエクを復活させてしまう。宝石は遙か昔、邪神を封印した封印の宝珠で、流々はそれを知らずに破壊してしまったのだ。復活したマグ=メヌエクであったが、往年の力はすべて失われ、力は貧弱で、姿は小さいものとなっていた。流々にも粗末に扱われるほど弱体化したマグ=メヌエクは、流々に拾われる形で彼女の家に居つき、共同生活を送ることとなる。マグ=メヌエクは自らの偉大さを見せつけることで流々を下僕にしようとするものの、マグ=メヌエクは破壊神であるため、破壊しかできずにその力を持て余し気味。雑用も満足にできず、トラブルを巻き起こしがちなマグ=メヌエクだったが、二人は共同生活をしていくうちに友人として絆を育んでいく。またマグ=メヌエクの復活に呼応して、新たな邪神・ナプタークが復活。マグ=メヌエクに対抗心を抱くナプタークは、彼に戦いを挑むが、ナプタークは復活直後で消耗していたことに気づかず敗北してしまう。次々と邪神が復活しつつも、のんきな空気に包まれた流々たちだったが、そこにかつて邪神を封印した聖騎士団の末裔であるイズマ・キサラギが現れるのだった。
学び舎に響く混沌の呼び声
邪神を打ち倒すべく使命感に燃えるイズマ・キサラギであったが、大暴れした結果、警察に捕まってしまう。武器も取り上げられ、団扇でマグ=メヌエクを打倒せんとするが、やる気だけ空回りしていた。そんな中、マグ=メヌエクはイズマの背後には、かつての同胞であるウーネラスがいることに気づき、彼女と対話する。ウーネラスは邪神を裏切って人間に味方しているものの、その行動原理は人類に萌えたというとんでもないもので、イズマとマグ=メヌエクの対戦すら楽しむ始末。新たなトラブルメーカーを加え、宮薙流々の日常はますます賑やかなものとなるのだった。そして夏休みも終わり、流々は再び学校に通い始めるが、マグ=メヌエクはそんな流々の様子を見て、学校に興味を覚える。流々の友人である尾瀬唯歌、小深山桔梗と知り合うマグ=メヌエクであったが、実はオカルトマニアであった桔梗はマグ=メヌエクに興味津々で、桔梗との出会いをきっかけにマグ=メヌエクはオカルト研究会に所属することとなる。一方、マグ=メヌエクに敗れたナプタークは再起の機会を図っていたものの失敗続き。落ち込んだナプタークであったが、その姿を見かねた藤沢鏻に拾われ、ふじさわ食堂でアルバイトとして働き始めることとなる。
北風と太陽
働き始めたナプタークだったが、宮薙流々の幼なじみである藤沢錬たちと暮らしていくうちに、料理に興味を覚える。バイト代ももらい、着々と自炊準備を整えていくナプタークであったが、お金の使い道を覚えた結果、金の亡者となってトラブルを巻き起こしたり、食材を求めた結果ひと騒動起こしたりしていた。そんな日々を過ごすうちに月日は流れ、12月も終わりに差しせまっていた。街はクリスマスムードに包まれる中、流々は久しぶりに母親が戻ってくることを知り、大きく喜んでいた。友人たちとの付き合いもほどほどに母親が帰ってくるのを出迎えようと準備に奔走するが、一人で不慣れな準備に集中して疲弊していた。そんな中、ウーネラスと錬の計らいで、宮薙家に人が続々と集まり、クリスマスの準備を手伝う。みんなの温かな思いに胸が震える流々だったが、クリスマス当日、そんな流々のもとに届いた知らせは近年稀に見る異常気象で大雪が降り、母親が帰ってこれないという知らせだった。ひどく落ち込み、思いつめる流々であったが、そんな流々をマグ=メヌエクは諭し、その力を振るう。マグ=メヌエクの放った力は分厚い冬の雲を消滅させ、雪を即座に溶かすことで、街を元通りにする。そして流々は母親と再会し、喜びの感情をあらわにするのだった。
「運命」のミュスカー
宮薙流々は母親の宮薙涙依と久しぶりの再会を果たし、一家だんらんの時間を過ごす。涙依はマグ=メヌエクの存在もあっさり受け入れ、彼の破滅使徒血盟の書を見て世界中の人間と友達になって世界征服をすればいいと提案する。マグ=メヌエクの引き起こすトラブルすら笑って楽しんでいる涙依は、娘と賑やかなひとときを過ごし、年が明けた頃に再び仕事のために流々と別れるのだった。一方、未だに邪神打倒に燃えるイズマ・キサラギであったが、年末にマグ=メヌエクが流々のために大雪を消し去った光景を見て、心揺れていた。マグ=メヌエクと再び決闘し、その真意を確かめたイズマは、流々によってマグ=メヌエクは変化したと結論を下し、矛を収める決心をする。しかしイズマはマグ=メヌエクの監視は必要だと判断し、流々たちの中学校に転入する。高校生にもかかわらず中学生として転入してきたイズマに周囲は大きく戸惑うこととなる。聖騎士団との戦いもひと段落ついたと思われたが、その後、立て続けに新たな邪神、ゾンゼ=ゲ、グ=ラが襲来。尾瀬唯歌、小深山桔梗たちの活躍で事なきを得たが、マグ=メヌエクとウーネラスは何者かが邪神の封印を解いて回っていると察する。そんな中、流々が商店街のくじでスキー旅行のチケットを手にする。流々は藤沢錬たちと共にスキーに向かうが、そこで一人の不思議な少年と出会う。実はその少年こそ邪神の封印を説いて回った犯人であり、その正体は邪神の一柱・ミュスカーであった。そして確率を操作する力を持つミュスカーは、人間を支配するためにマグ=メヌエクの力を欲していると流々たちに告げるのだった。大まじめに企みを話すミュスカーであったが、流々たちのマイペースさに終始ペースを乱されっぱなしで、怒って雪崩を引き起こして去ってしまう。流々たちは雪崩に巻き込まれるものの、マグ=メヌエクと駆け付けたイズマの助けで難を逃れるのだった。
「摂理」対「運命」
ミュスカーは自分の企みが失敗したのは、マグ=メヌエクと宮薙流々の絆にあると考え、二人の仲を引き裂こうと考える。しかし、流々とマグ=メヌエクの予想外の奇行に予想を覆されたり、刺客として送り込んだ閼伽村奏は人選ミスだったりと、立て続けに失敗。挙句の果てにはウーネラスがマグ=メヌエクの影武者として作ったコピーマグちゃんを本物とカンちがいして持ち帰り、そのまま1週間気づかないという失敗をおかしてしまう。怒ったミュスカーは実力行使に出て、それをいち早く察したウーネラスと対決する。ウーネラスもいつものおちゃらけた態度ではなく、本気でミュスカーと対決する。しかしウーネラスは力及ばず敗北し、手傷を負いつつ逃げる。直接対決を経て、ウーネラスは運命という強大な力を味方につけるミュスカーを倒すためには、流々とマグ=メヌエクの絆が鍵になるだろうと考えるのだった。
登場人物・キャラクター
宮薙 流々 (みやなぎ るる)
愛倉第一中学校に通う少女。登場時点での年齢は13歳で、血液型はO型。若干癖のあるオレンジ色の髪を長く伸ばし、青みがかった瞳を持つ。明朗快活な性格で、誰に対しても分け隔てなく接する。幼い頃に父親と死別し、母親も生活費と学費を稼ぐために海外赴任しており、中学生にして一人暮らしをしている。母親を安心させるため、節約生活を心がけており、食材を自力で確保すべく潮干狩りや釣りを趣味にしている。ある日、潮干狩りの最中、封印の宝珠を拾い、不注意で壊してしまったことでマグ=メヌエクと出会う。当初はマグ=メヌエクを変わった動物として、ペット扱いしていたが、いっしょに暮らすうちに友達となり、家族同然の存在となっていく。魚や米、納豆が好物で、特に納豆はマグ=メヌエクにあげて以降、共通の好物となる。年齢の割にかなりしっかりしており、基本的にマグ=メヌエクたちがトラブルを引き起こした際にはツッコミ役を担う。一方で母親に心配かけまいと自分一人で苦労を抱え込み、人に頼るのが苦手な部分があり、問題が起きても自分の胸の内にしまいがち。クリスマスではそのせいで自分を追い詰めてしまうが、マグ=メヌエクに叱責され、本音を表に出すことを覚え始める。趣味は少女漫画の読書だが、その割に鈍感で、藤沢錬の思いには気づいていない。
マグ=メヌエク
「破滅」の権能を持つ混沌の神。位階は第一柱。ピンク色のタコのような姿で、大きな一つ目を持つ。人々からは「邪神」「破壊神」として崇められ、恐れられていたが、聖騎士たちによって封印の宝珠に封じられた。宮薙流々がたまたま封印の宝珠を拾い、壊したことで現世に復活する。復活したばかりであるため、かつての力はほとんど失い、小さな姿となっている。権能「破滅の眼光」は目からビームを放ち、あらゆるものを破壊するが、現在は使うたびに体が小さくなってしまう。性格は尊大で、一人称は「我」。人間を「下等生物」と見下しているが、供物の見返りにきちんと願いを叶えようとする律儀な一面もある。人間からは邪神として扱われるが、本人は邪神と名乗ったことはなく、かつての破滅も人々が自分に願ったからであり、マグ=メヌエク自身は人間の善悪に頓着していない。復活後は流々を信徒にしようとするものの、自分の力にまったく興味を向けず、対等に接する流々に次第に興味を持っていき、それに伴って人間そのものに興味を持つようになる。信徒を増やすため「破滅使徒血盟の書」を作り、出会った人物の名前を書き記している。軟体動物のように体はある程度伸縮可能。そのため人間に擬態し、藤沢と名乗ったりするが、擬態の仕方があまりに下手なため、基本的に周囲からは謎の宇宙人扱いされている。流々から納豆をもらって以降、納豆が好物。また、なんでも口に入れて感想を述べるが、その内容はあまりにひどいため、「マズそうな食レポ」と言われている。趣味は読書。
藤沢 錬 (ふじさわ れん)
愛倉第一中学校に通う少年。登場時点の年齢は14歳で、血液型はA型。黒い髪を短く切りそろえている。宮薙流々とは幼なじみの関係で、家族ぐるみの付き合いをしている。思春期らしく流々のことを異性として気にしているが、まったく進展しないため、姉の藤沢鏻からは脈がないからあきらめろと諭されている。流々は鈍感であるために気づいていないが、端から見ればその思いはバレバレ。マグ=メヌエクにすらあっさり看破されるほどで、マグ=メヌエクがそれをバラしそうになったため、秘密にするのを引き換えに破滅使徒血盟の書に署名する。実家のふじさわ食堂の手伝いをしているため、料理の腕はかなりのもの。家の手伝いで忙しかったが、ナプタークがバイトに入って以降は自由な時間ができ、流々たちに頼まれてオカルト研究会に入部する。ツッコミ気質でマグ=メヌエクやナプタークに振り回されがち。マグ=メヌエクに服を貸して以降は、彼があずかり知らない場所で暴れているため、その評判が押し付けられ「謎の番長」として噂されている。学校では流々とは別クラスで、話しかけるタイミングが見つからずなかなか距離を縮められない。転入生のイズマ・キサラギとは同じクラスとなり、流々と距離感が近いイズマには嫉妬の感情を抱いているが、常識知らずなイズマに文句を言いつつ面倒を見ている。3年生に進級した際には流々と同じクラスとなる。
ナプターク
精神支配の権能を持つ混沌の神。位階は第五柱。黄緑色のヒトデのような姿で、五本の触手のうち二本を足に見立てて二足歩行する。触手のうち一本は頭に当たる部分で、頭の部分には大きな口があり、その中に一つ目が浮かんでいる。シンボルは「口」で、「味覚」に執着する。一人称は「吾輩」。「支配」の権能を持ち、声を介することであらゆる者の精神に干渉し、支配する「狂乱の咆哮」という力を持つため、「狂乱」の通称で呼ばれる。かつては強大な姿をした恐るべき邪神で、権能の力で享楽的な生活にふけっていたが、封印されたことで大幅に弱体化し、往年の姿は見る影もないほど小さな姿となっている。マグ=メヌエクに対抗心を抱いており、復活直後、ケンカを売りに行って権能を使ってヤドカリを100匹支配する。しかし、自分の力が弱体化していることに気づいていなかったため、力を無駄使いした結果、さらに弱体化し、権能も使えなくなってしまう。その後はまともに食事を手に入れることすらできなくなり、ゴミ箱を漁るほど落ちぶれ、藤沢鏻に諭される形でふじさわ食堂でアルバイトとして働き始める。性格は尊大で、すぐに調子に乗るお調子者だが、苦労して物を手に入れ、達成感に満足するアルバイト生活は存外肌に合っていたようで、日々汗を流す勤労生活を満喫している。また、当初は皿洗いや雑用ばかりの日々に嫌気が差していたが、料理を教えられてからはその楽しさに気づき、着々とレパトリーを増やしている。支配すれば望むものはなんでも手に入ったため、金の価値を知らないなど常識がないながらも知能は高く、学習能力も高い。しかし、金の便利さを学習したら金の亡者になったりと、基本間違った方向に学習して痛い目を見るのがお約束。あまりに同じような失敗を繰り返したため、次第にその行動は「ナプる」と動詞扱いされている。
イズマ・キサラギ
かつて邪神たちを封印した聖騎士団の末裔の少年。登場時点での年齢は16歳。青と赤のオッドアイの持ち主で、白まじりの髪をたなびかせたイケメン。いつも学ランを着ている。無駄に意味深な独り言が多く、仰々しいポーズを取っているため、周囲からは中二病だと思われている。しかし、実際に超人じみた身体能力と、超常現象を引き起こす魔術をあやつる歴戦の戦士で、ずば抜けた戦闘能力を持つ。一方で一般常識はないため、その戦闘能力を発揮した結果、周囲に甚大な被害をもたらし、毎回のごとく警察に捕まっている。このように明らかに周囲からは浮いているため、「世界観を間違ってる男」「バトル界の住人」と散々な評価を受けている。また無駄にアクションが激しいため、藤沢錬からは「運動量の多い男」と評されている。かつての聖騎士団がマグ=メヌエクたちを封印することしかできなかったのを悔やんでおり、今度こそ邪神たちを完全に討伐すべく使命感に燃えている。しかし、当のマグ=メヌエクたちが悪事を引き起こさないため、やる気だけ空回りして無駄にトラブルを引き起こすだけの結果になっている。自分でも薄々そのことを自覚し、節分対決を経てマグ=メヌエクと和解する。その後、マグ=メヌエクの討伐から監視に任務が変更され、宮薙流々のクラスに転校するが、2歳年上の高校生にもかかわらず愛倉第一中学校に来たためにツッコミを受けている。また高校生にもかかわらず、中学生の授業に付いていけないほど成績が悪い。当初はウーネラスが作った聖剣を武器にしていたが、警察に没収されたあとは武器を次々変え、団扇や魔法少女系のステッキで戦ったりしている。
ウーネラス
「摂理」の権能を持つ混沌の神。位階は第四柱。水色のクリオネのような姿で、女性的な仕草をする。シンボルは「心」で、下半身の部分に大きな逆さ模様のハートマークがあるのが特徴。600年前の聖騎士団との戦いでは、当時の人間たちの姿に「萌え」て、人間側に寝返った。ほかの邪神と同じく本体は封じられているが、分体を生み出して、人間社会を満喫している。「摂理」の権能は、現実世界に混沌の世界の摂理を持ち込むもの。「摂理の脈動」は一時的に物質に摂理を組み込むことで、道具に魔術的な効果を与え、誰でも魔術が使える「魔道具」を作り出すことができる。ただし、摂理の脈動で作った魔道具は魔力を失うと元の物品に戻ってしまうため、長期使用するにはさらに「摂理の胎動」を用いて、魔道具に魔力の自給能力を付与する必要がある。魔道具作りも含めてさまざまな能力に長け、肉体を液体化することもできる。知能も高いが、身体能力はほかの邪神に一歩劣り、特定の養分しか吸収できないなど弱点もある。魔術に長け、その立ち居振る舞いから「魔女」とも称される。邪神を封印した「封印の宝珠」もウーネラス自身が作り、人間に与えたもので、マグ=メヌエクからは「全ての元凶」と見られている。性格は非常にマイペースで享楽的。アニメを見るためにお金を代価にお願いを聞いたり、コスプレをしたりと、邪神の中で一番俗世にまみれている。イズマ・キサラギを気に入っており、彼の成長のためにいろいろ手を貸すが、その姿は反抗期の息子と母親のようだといわれている。人間と邪神のトラブルがあると高みの見物をして楽しんでおり、人間側に付いているがある意味一番邪神らしい邪神。一方で人間を完全に見下し、今の関係を壊そうとするミュスカーのことは大嫌いと公言しており、彼がマグ=メヌエクと宮薙流々に余計なちょっかいを掛けようとした際には珍しく本気を出してミュスカーと戦っている。
尾瀬 唯歌 (おぜ ゆいか)
愛倉第一中学校に通う少女。登場時点での年齢は13歳で、血液型はO型。茶色の髪を無造作に伸ばし、前髪を一つ結びのチョンマゲヘアにしている。全身からバイタリティをあふれさせた元気っ娘で、よくイタズラをしては周囲を困らせている。優等生の小深山桔梗とは性格が正反対だが、幼なじみの関係で非常に仲がいい。宮薙流々ともなかよしで、桔梗と合わせてよく三人いっしょに行動することが多い。身体能力が高く、特技は木登りと虫取り。言動が幼く、中身が子供のまま止まっているともいわれて孤立しがちなため、それがさらに尾瀬唯歌のイタズラをエスカレートさせてしまい、周囲からは「悪童」として扱われている。マグ=メヌエクと会った際には彼を散々からかって遊ぶが、彼に木から落ちかかったのを救ってもらい、その際のマグ=メヌエクの動きを見て一転して気に入る。ゾンゼ=ゲが襲来した際には、桔梗が被害に遭ったため、彼女を救うためにゾンゼ=ゲを捕まえる。ゾンゼ=ゲの暗澹(あんたん)の権能は他者の精神の裏側を引きずりだして精神をネガティブにするが、尾瀬唯歌は悪童だが純真で、裏表のない性格なために権能の効果がなかった。ふだんから周囲をイタズラで困らせているため、ゾンゼ=ゲが周囲を困らせている姿を気に入り、いっしょに行動するようになる。またゾンゼ=ゲも真っすぐな唯歌の賞賛に心救われ、暴走した力を鎮めることに成功する。
ゾンゼ=ゲ
混沌の神の一柱で、位階には数えられない「無位」の神。通称は「暗澹(あんたん)」。大きな一つ目を持つウニのような外見をしており、その見た目から「ウニ助」の愛称で呼ばれる。一人称は「自分」。非常にネガティブな性格で、ちょっとしたことで落ち込む。権能「暗澹の荊棘(あんたんのおどろ)」は、ゾンゼ=ゲが落ち込めば落ち込むほど体の棘が増え、棘に触れた人間の精神の裏側を引きずりだし、ネガティブなものにするというもの。ゾンゼ=ゲ自身、他者に迷惑を掛けるために自らの能力を嫌っているが、ゾンゼ=ゲの権能はもはや体質に近いもので、本人にも制御ができず周囲に迷惑を振りまいている。何者かに封印の宝珠から解放され、愛倉第一中学校に現れ、生徒たちをネガティブにして落ち込ませた。時には、イズマ・キサラギたちを権能でネガティブにするが、裏表がない性格の尾瀬唯歌には効果がなく、彼女に捕まる。その際、唯歌の真っすぐな誉め言葉で救われ、権能の暴走が静まり、そのままオカルト研究会の部室でペットとして飼われ始める。狭い場所が好きで、金魚鉢がお気に入り。部室では金魚鉢に入れられて飼われている。
小深山 桔梗 (こみやま ききょう)
愛倉第一中学校に通う少女。登場時点での年齢は14歳で、血液型はB型。黒い髪を三つ編みにし、眼鏡をかけている。生真面目で、性格が正反対の尾瀬唯歌とは幼なじみの関係で仲がいい。宮薙流々とも友達の関係で、三人いっしょにいることが多い。友人たちからは「キョーちゃん」と呼ばれている。実は周囲に隠しているが、オカルトマニアで、オカルト研究会に所属している。マグ=メヌエクのことも一目見て気になっており、マグ=メヌエクのことを通じて自分の趣味を流々たちに打ち明け、彼らの協力によって廃部寸前だったオカルト研究会を立て直す。オカルトを目の前にするとふだんのおとなしい性格から豹変し、嬉々としてオカルトを調べ出す。スキあらば邪神たちの肉片を回収しようとするため、ナプタークからは「一番ヤベー奴」として警戒されている。自分の趣味が他者に受け入れられず、嘲笑された過去があるため、自分の趣味を他人に知られるのを極度に恐れる。また、その過去からグ=ラとは通じ合うものがあり、グ=ラの言葉をきっかけに意気投合し、いっしょに暮らし始める。グ=ラとは急速になかよしになっており、グ=ラをハサミや武器代わりに使っている。
グ=ラ
混沌の神の一柱で、位階には数えられない「無位」の神。通称は「金剛」。おなかの部分に大きな口があるカニのような姿で、左右のハサミには顔のような模様がある。一人称は「俺様」で、愛称は「グラッシー」。見えっ張りな性格で、無位であることにコンプレックスを感じており、位階持ちを倒すことで成り代わることをもくろんでいる。権能「金剛の顎門」は肉体の再生と強化に特化した権能で、ハサミを大きな化け物に変えたりすることができる。ゾンゼ=ゲと同じく何者かに封印を解かれ、愛倉市の砂浜に現れる。マグ=メヌエクに勝負を挑むが敗北し、小深山桔梗と意気投合したことで、彼女と友情を育む。頭は悪いが良くも悪くも単純で、根は素直。マグ=メヌエクと勝負をした際も、桔梗を人質にしたが、勝負の際には桔梗の身が危ないからとあっさり手放している。
ミュスカー
「運命」の権能を持つ混沌の神。位階は第三柱。フード付きのローブを羽織った青髪の少年の姿をしている。「運命」の権能は不確かな未来を予見し、確率を確定する因果干渉の力で、過去にその力を使って自身の封印を予見する。そのため、あえて誰よりも早く封印されることで、一番早く復活し、邪魔者がまとめて封印されている中で暗躍をしている。ほかの邪神に比べてかなり力を取り戻しているため、ウーネラスの目を欺くため、人間の姿を取って行動している。ウーネラス曰く「人間アンチ」で、人間を「下等生物」と見下し、自分たち「上位存在」が導いてやるべきだと考えている。そのため、マグ=メヌエクの力を欲しており、彼を籠絡しようとしているが、宮薙流々がマグ=メヌエクと友達となったことで計画が狂い、二人の絆を引き裂こうとしている。ミュスカーの権能「運命の調律」は、一言で言えば確率を操作することでミュスカーにとって都合のよい現象を引き起こすもので、確率が0でなければくじで大当たりを当てたり、敵の攻撃がたまたまはずれたりする。また攻撃にも転用可能で、落雷を招き寄せて相手に落とすことも可能。非常に強力だが、ミュスカー曰く「ささやかな力」らしく、小さな力を積み重ねて使っているために消耗は少なく、ほかの邪神のように力の代償に肉体を消耗したりはしない。ただし、つねに権能を発動し続けているわけではなく、また人の心までは思いどおりに操作することはできない。人を見下す傲慢さを見せるが、根はまじめ。ミュスカー本人はいたってまじめに暗躍しているが、ほかの邪神や流々がマイペースであるためにシリアスになり切れず、彼らに振り回されることが多い。また、友人という存在にあこがれているらしく、コピーマグちゃんをマグ=メヌエクとカンちがいして持って帰った際には、彼が友達になってくれたと舞い上がり、1週間偽物であるのに気づかなかった。
閼伽村 奏 (あかむら かなで)
愛倉第一中学校で理科教師を務める青年。登場時点での年齢は27歳で、血液型はAB型。冷静で厳しそうな雰囲気を漂わせており、眼鏡をかけている。宮薙流々たちが3年生に進級したあとに赴任してきた新米教師で、規律に厳しく、流々の持ち物検査をしてマグ=メヌエクを没収した。実は邪神を崇める混沌教団の一員で、マグ=メヌエクを懐柔するためにミュスカーが送り込んだ刺客。邪神たちに忠実で、彼らを崇めることに余念がないが、その信仰する姿は「混沌舞踏」と呼ばれる奇怪なダンスで、端から見たら変態そのもの。ミュスカーはその踊るさまを見て「人選ミス」だと頭を抱えた。正体を現したあと、流々とダンス勝負をしてマグ=メヌエクの所有権を争い、ぎっくり腰になって敗北したが、次の日もふつうに学校を訪れて教師をしている。好物はバランス栄養食で、趣味は邪神崇拝。
宮薙 涙依 (みやなぎ るい)
宮薙流々の母親。流々とよく似た容姿をしている。登場時点での年齢は39歳で、血液型はO型。夫とは死別し、生活費と流々の学費を稼ぐため、流々と離れて海外で医療関係の仕事をしている。娘と離れて暮らすことに迷ったが、流々からの後押しもあり、娘に誇れる母親になるためにも、離れて暮らすことを決めた。年末に帰郷し、流々と再会する。穏やかな性格で物腰も柔らかいが、センスが非常にエキセントリックで、用途不明の謎の置物をお土産として買ってきたり、マグ=メヌエクをあっさり受け入れてモップ代わりに使ったりと、ぶっ飛んだ行動が多い。マグ=メヌエクのことを気に入っており、破滅使徒血盟の書を見て、世界中の人となかよくなって世界征服したらいいと提案している。年末年始を流々と過ごしたあと、再び仕事のために旅立った。
藤沢 鏻 (ふじさわ りん)
藤沢錬の姉。登場時点の年齢は16歳で、血液型はA型。黒髪をショートカットに整え、いつも気だるげな雰囲気を漂わせている。棒アイスが好物で、いつもくわえタバコのようにアイスの棒をくわえている。弟の同級生である宮薙流々のことを気に入り、彼女を甘やかすのを趣味にしている。また流々からマグ=メヌエクを見せられた際には、邪神たちの存在をあっさり受け入れている。実家のふじさわ食堂を手伝っていて、落ち込んだナプタークを見かねてバイトとして勧誘した。ナプタークをこき使っているがきちんとバイト代は支払っており、ナプタークがふらちな行動をした際には折檻している。ナプタークの奇行を何度も見ているうちに、それを「ナプる」と動詞扱いし始めている。いつも気だるげだが、決めるときはきちんと決める人物で、バレンタインデーの際に見せたキリっとした姿は、同性の流々たちですら見とれるほどかっこいいと評判だった。
藤沢 蘭 (ふじさわ らん)
藤沢錬と藤沢鏻の母親。登場時点の年齢は44歳で、血液型はA型。恰幅がよく、いつも人当たりのいい笑みを浮かべている。ナプタークのことを気に入っており、スキー旅行の際には息抜きのために連れて行っている。趣味はパズルとおしゃべりで、ビールが好物。ナプタークとは酒飲み友達でもあり、旅行ではいっしょに酒を飲んでいた。
藤沢 (ふじさわ)
マグ=メヌエクが人間に擬態した姿。藤沢自身はがんばって人間の姿になっているつもりだが、基本的に長身になったマグ=メヌエクが衣服を羽織っているだけで、明らかに異形の姿をしている。藤沢錬の体操服や学生服を使って変装することが多いため、服の名札を見て周囲からは「藤沢」と呼ばれている。マグ=メヌエクがコンビニにプリンを買いに行った際に店員が遭遇。代金替わりに大量の財宝を置いて帰ったため、その後店員は藤沢を「一つ目の宇宙人」として崇めるデスバンドを結成した。また、宮薙流々が3年生になった際にも、クラスメートとして紛れ込む。その際には中学生デビューをしようとした中学生に絡んだ結果、学校を牛耳る「謎の番長」と誤解され、下級生のあいだにその存在が噂されるようになる。ウーネラスが人間に擬態する際も、勝手に「藤沢」を名乗っている。
ヤドカリ
ナプタークが権能で眷属とした100匹のヤドカリ。素直な性格で、ナプタークをリーダーと慕っている。破滅使徒血盟の書には「狂乱の軍勢」の異名を載せている。ナプタークの眷属となったことである程度知能が上がっているが、ナプタークが「役立たずのゴミ」と言ったところ、真っ先にナプターク自身を選んだりするなど、難しい命令は理解しきれない。また邪神たちとは意思疎通でき、彼らに通訳してもらうことで人間とも会話ができる。ナプタークのお世話をするのはシフト制で、大多数は砂浜で生活をしている。
サメ
ナプタークが権能で眷属とした巨大鮫。釣り対決でナプタークが勝負に勝つため、とにかく大きな魚を支配下に置こうとしてうっかり眷属にしてしまう。「海原の覇者」とも呼ばれる。温厚な性格ながら、じゃれついてくるだけで船が転覆する巨大鮫で、ナプタークもあやうく海の藻屑(もくず)にされかかった。この経験から眷属であるにもかかわらず、ナプタークから怖がられている。なお、ナプタークのトラウマ的な存在となっているが、一度支配した存在は自分でも解くことができないらしく、そのまま支配下に置いている。性別はメスで、一人称は「アタイ」。サメ自身はヤドカリと同じくナプタークを慕っており、ヤドカリに頼まれて食材として魚を取ってきたりしている。
コピーマグちゃん
ウーネラスが作り出した、マグ=メヌエクを模した魔術人形(ゴーレム)。見た目はマグ=メヌエクそっくりだが、動作が機械的。ミュスカーがマグ=メヌエクの身柄を狙っているのを知り、その対策のために生み出された。自律学習機能を搭載しているため、マグ=メヌエクといっしょに生活して彼の行動を学習させられる。しかし、学習機能が暴走して暴れ回ったため、マグ=メヌエクに吹き飛ばされる。その後、壊れて「フム、ヨカロウ」としか言えなくなった状態のコピーマグちゃんをミュスカーが発見。偽物と気づかず、そのまま持ち去ってしまう。ミュスカーものちのち流石に本物と気づいたが、コピーマグちゃんのことを気に入ったらしくそのまま大事に持っている。ウーネラスはのちにコピーマグちゃんを基にして、学習機能をオミットして代わりに戦闘能力を付与した「量産型マグちゃんゴーレム」を大量に生み出している。
チヌ
柴犬の子供。マグ=メヌエクが雨の中で弱っているところを発見し、眷属にするべく宮薙家に持って帰った。マグ=メヌエクは当初、「血濡れし漆黒の猟犬」と名づけたが不評だったため、頭文字を取って「チヌ」と名づけた。マグ=メヌエクとは思念の共有で意思疎通ができ、彼によってしつけをされた。マグ=メヌエクが面倒を見ることを条件に宮薙家で飼われ始めるが、実は飼い犬で、迷子になっているだけだった。散歩の最中に元の飼い主のもとに戻ったが、飼い主が宮薙流々にお礼を言い、その後も交流を持つようになる。またその際に、飼い主によって正式に「チヌ」と名づけられた。
伝書バト (でんしょばと)
イズマ・キサラギが飼っている真っ白な伝書バト。年齢は2歳。ただの鳩ではなく、れっきとしたウーネラスの眷属で、「白翼の運び手」と名乗っている。聖騎士団の仕事に誇りを持って携わっており、イズマに似て使命感が強い。飼い主思いな忠実な性格で、イズマが落ち込んだ際には彼を元気付けようとヤドカリから魚を奪い、彼に渡そうとした。人間とは話せないが、ヤドカリとは意思疎通ができ、当初はナプタークの眷属である彼らを敵視していたが、魚の奪い合いを経てなかよくなっている。
場所
愛倉第一中学校 (あいくらだいいちちゅうがっこう)
宮薙流々たちが通う市立の中学校。度重なる学校の統廃合に伴って、校区が広い。一クラス25人前後で、各学年4~5クラスある。校訓は「自主・自律・自由」で、生徒たちの自主性を重んじており、オカルト研究会も部活動として存在する。オカルト研究会は活動実績もなく、部員も少ないことから廃部の危機に陥っていたが、のちに流々たちが入部し、マグ=メヌエクという完璧な活動実績を見せたことで廃部を逃れている。その出来事以降、マグ=メヌエクがオカルト研究会の部室を「影潜みし破滅の神殿」と名づけ、学校での活動拠点にしている。
マルノヤ愛倉店 (まるのやあいくらてん)
宮薙流々たちが暮らす愛倉市にある大型ショッピングセンター。キャッチコピーは「まんまる笑顔のショッピングモール」で、家具や電化製品、衣類、食品など一通りの商品を取り扱っている。映画館やゲームセンターもあるため、愛倉市の住人にとって憩いの場として人気。そのため、マルノヤ愛倉店にやって来ると愛倉市の人間は高確率で知り合いと出会う。海に面しており、テラスからの光景は地元民から絶景と好評。
ふじさわ食堂 (ふじさわしょくどう)
藤沢家が経営する食堂。藤沢蘭が女将を、夫が大将を務める。和洋中さまざまなメニューを取りそろえており、小さいながらかなり繁盛している。県外からも客が訪れるほどで、唐揚げ定食と豚の角煮定食が人気。女将の要望でデザートメニューも取り扱っている。最近、邪神・ナプタークがバイトとして働き始めている。
その他キーワード
破滅使徒血盟の書 (はめつしとけつめいのしょ)
マグ=メヌエクの持っているプロフィール帳。もともとは宮薙流々が母親から買ってもらったものであるため、デザインはかなりファンシー。復活後、信者を求めたマグ=メヌエクのために、流々がマグ=メヌエクにあげ、マグ=メヌエクが「破滅使徒血盟の書」と名づけた。マグ=メヌエクの出会った人や邪神にプロフィールを書かせてページを埋めていっている。宮薙涙依は順調に増えていくプロフィール帳のページを見て、世界中の人と友達になって世界征服をすればいいと提案している。
封印の宝珠 (ふういんのほうじゅ)
マグ=メヌエクたち邪神を封印した宝珠。ウーネラスが作り、聖騎士団に与えた。邪神たちを数百年にわたって封印し、復活して以降も、その力の大部分を失わせている。非常に強力なアイテムだが、作るためには巨大な魔術を行使しなければならないため、ウーネラスでも新たに作り出すのは難しい。