全部救ってやる

全部救ってやる

『着たい服がある』『踊れ獅子堂賢』などで知られる常喜寝太郎の連載作品。過酷な動物保護の現場を舞台に、動物保護活動家の久我が、東京でスタイリストを目指す星野スズと協力しながら、行き場のない動物たちを救うために奮闘する動物保護ドラマ。小学館「マンガワン」2024年4月29日から連載。「次にくるマンガ大賞2025」Webマンガ部門で第5位に選出。

正式名称
全部救ってやる
ふりがな
ぜんぶすくってやる
作者
ジャンル
動物・ペット
 
社会問題
レーベル
裏少年サンデーコミックス(小学館) / マンガワンコミックス(小学館)
関連商品
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動物保護活動家とスタイリスト志望が挑む過酷な保護活動

本作のテーマは「誰かのために生きる」ということ。動物保護活動家の久我と、スタイリスト志望の星野スズが、さまざまな事情を抱える動物と飼い主の問題解決に挑む。彼らが直面するのは、過剰な多頭飼育や悪質なブリーダーによって引き起こされる、目を背けたくなるほど過酷な現場の状況だった。劣悪な環境がもたらす動物たちの心身のストレスや病気、不衛生や悪臭といった問題が克明に描かれている。そんな過酷な状況の中で必死に生き抜こうとする動物たちの姿と、彼らを救うために奮闘する人々の努力がリアルに描写されている。

ネガティブな美容師が動物保護に挑む

スズは、カリスマ美容師の玉木三世のもとでスタイリストを目指していた。しかし、生まれながらのネガティブな性格が災いし、思うような結果を出せず、厳しい競争に疲れ果て一時的に実家へ戻っていた。そんなある日、両親の頼みで保護活動家の田村あけみのもとへ差し入れを持って訪れたスズは、そこで多頭飼育崩壊の凄惨な現場を目の当たりにする。そこで不衛生な環境ながらも、黙々と動物たちを救い続ける青年、久我と出会う。久我の卓越した技術と見返りを求めない献身的な姿に心を打たれたスズは、次第に保護活動に興味を抱くようになる。そして、長年の夢だったスタイリストの道をあきらめ、久我の補佐役として生きることを決意。動物保護の世界へ本格的に身を投じていくのだった。

動物保護活動の闇と葛藤

久我とスズが挑む保護活動の現場は、つねに困難に満ちている。不衛生な環境や予想外の繁殖、飼い主とのトラブルなど、さまざまな問題が彼らの前に立ちはだかる。問題は現場だけにとどまらず、同じ志を持つはずの保護活動家の中にも、彼らと対立する者が現れる。承認欲求に囚われたあけみ。真摯さゆえに方向性の違いから久我を敵視する、保護団体「DEFFEND」代表の黒田くるみ。彼らの存在が、久我とスズの活動をより複雑なものにしていく。中でも特に悪質なのが、「鈴木」や「小野」など複数の偽名を使って活動する詐欺師の男である。彼は人間も動物も、自分の利益のための「捨て駒」としか見なさないサイコパスであり、闇バイトの斡旋(あっせん)や寄付金詐欺など、あらゆる手段で人々を陥れる。久我とスズは、こうしたさまざまな妨害や困難に苦しみながらも、自らの信念を貫き、動物たちを救うために奔走する。

登場人物・キャラクター

久我 (くが)

保護活動家の青年。動物たちへの深い愛情を持ち、「目の前にある命をすべて救う」ことを信条としている。ただ保護するだけでなく、動物たちが将来幸せになれるよう、つねに最善の手段を尽くしている。その活動の原点は、小学生時代の悲しい体験にある。弟の陸斗と共にかわいがっていた愛犬のムギを、統合失調症を患った父親に山へ捨てられ、二度と会えなくなってしまった経験から、行き場のない動物たちを救うことを志すようになった。久我の活動は多岐にわたり、多頭飼育崩壊の現場でのケア、行方不明の動物の単独捜索、小学校での飼育授業の手伝いなど、すべて寄付を募らず私財を投じて行っている。その目的は、殺処分を食い止めるだけでなく、動物に不自由のない環境を整え、飼い主との絆をつなぎ止めることにもある。一方で、人間に対しては淡泊な態度を取りがちなため、周囲から誤解されることも少なくない。現在は弟の陸斗が久我の活動を手伝っているが、兄の度を越した行動は度々心配されている。

星野 スズ (ほしの すず)

久我のパートナーとして保護活動を共にする女性。幼い頃から要領が悪く、自分自身に嫌悪感を抱いていた。さらに、高校時代には不良グループからの嫌がらせで恥をかかされた経験が深いトラウマとなっている。かつてはカリスマ美容師の玉木のもとでスタイリストを目指して修行していたが、なかなか試験に合格することができなかった。ある時、玉木から「合格したければ、代わりに不合格にする同僚を選べ」という非情な言葉を告げられ、深く傷ついた彼女は夢をあきらめ、逃げるように実家へ戻ってしまう。失意の日々を送る中、母親に頼まれてある動物保護の現場へ向かう。そこで目の当たりにした過酷な現場に圧倒されるが、同時にひたむきに猫たちの命を救おうとする久我の姿に心を揺さぶられ、彼の手伝いをすることを決意する。活動を始めた当初は過去の経験からネガティブな言動が目立ったが、がむしゃらに動物たちと向き合う中で次第に自信を取り戻し、今ではそのひたむきな姿勢が久我にもよい影響を与えている。

書誌情報

全部救ってやる 1巻 小学館〈裏少年サンデーコミックス〉

第1巻

(2024-09-11発行、978-4098535989)

全部救ってやる 5巻 小学館〈マンガワンコミックス〉

第2巻

(2024-12-12発行、978-4098537600)

第3巻

(2025-03-12発行、978-4098540358)

第4巻

(2025-05-12発行、978-4098541010)

第5巻

(2025-08-08発行、978-4098542024)

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